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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第8章 過ぎ去りし幻想を求めて

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#210 シオンの水泳教室

 王族のプライベートビーチでの海水浴とバーベキュー。

 その主役の焼肉は巨大な肉の塊りを回転式コンロでじっくりと焼く作業である。

 まるでモンスターハンティングの回転式肉焼き器みたいだ。


 しかしながらゲームと違ってリアルでは肉が焼けるまでめっちゃ時間がかかる、そこで僕たちは先に海水浴を楽しむのだった。


「あ⋯⋯あの留美さん、一緒に泳ご⋯⋯」


 しかし僕の声を聞き終わらないうちに留美さんはダッシュで海へと飛び込んで⋯⋯消えた。


 速い! まるでマーメイドのようだ留美さんは。

 ⋯⋯そんなに早く泳ぎたかったのだろうか?


 留美さんと海水浴を楽しもうと思っていたから次にどうするか、すぐには思いつかない。


「真樹奈さん! 今日は泳ぎで勝負です!」

「お前は影ゴルファーXかよ!? でもいいよ、勝負だ!」

「真樹奈! 目薬ならこのドラゴンポシェットに入れて準備してるから、あとで私がさしてア・ゲ・ル!」


 そう言いながらリネットと姉は水泳対決をしに行ってしまった。

 というか姉と映子さんの会話にはたまに意味がわからない事がある⋯⋯これがジェネレーションギャップか?


「うおおおおりゃああああ!」

「はああああ! はああああ!」


 そして元気いっぱいに子供みたいに姉さんとリネットは水泳勝負を始めたようだった。


「真樹奈~ファイト!」

「リネットちゃん! ママの仇を討って~!」


 どうやら昨夜の麻雀勝負で王妃様は負けたらしい⋯⋯いっさい忖度しないあたりが実に姉らしい。


 こうして次々と僕の周りから人が居なくなる。

 オシロン先生はサングラスかけて寝る気マンマンだし。

 王族ファミリーには話しかけずらいし⋯⋯。


「あっ君! 一緒に泳ご!」


 そう思っていたら僕に話しかけてきたのはシオンだった。


「おう、そうだな」


 こうして僕とシオンは一緒にこの美しい海で泳ぐことにした。

 ⋯⋯泳ごうとしたのだが。


「がぼっ、ごぼっ、がぼ⋯⋯⋯⋯⋯⋯ごぼ」

「シ、シオン──!?」


 あっけなく水没するシオンだった。




「はあ! はあ! ⋯⋯泳げない!?」

「シオンお前⋯⋯泳げなかったのか?」


 よくよく考えると僕とシオンは一緒に水泳などした記憶が無かった。

 まああったら小学生時代のシオンが女だったと、さすがに気づいていただろうから無くて当然か。


「⋯⋯ねえあっ君。 私⋯⋯そもそも泳いだことあったっけ?」

「ないんじゃないかな?」


「⋯⋯交通事故前の事はよく覚えてないけど、その後に泳いだことは無いな私」


 まあシオンはガチの引きこもりタイプだからな。


「じゃあ僕が教えてやるよ」

「ほんと! あっ君!」


 こうして僕はシオンに泳ぎを教える事になったのだが⋯⋯。


「今日中にあのくらい泳げるかな?」


 そう遠くの姉とリネットを目で追いかけるシオンに僕は。


「いや、アレは無理」

「だよねー」


 そうキッパリと無理をさせないことにしたのだった。




「じゃあ水泳教室をはじめるぞ!」

「はい! アリスケ先生!」


 先生か⋯⋯まさかシオンにそう呼ばれる日がこようとは。


「シオン、まず泳ぎ方の前におぼれない方法を教える」

「いきなりそんな奥義を!?」


 奥義って大げさな⋯⋯。


「いや単純だから。 ようは水の中で目を開けて息を止めるだけ」

「ほうほう」


 シオンは意外に素直だった。


「まず体が水に沈むのは当たり前だと思おう。 ようはその時パニックになって無駄にもがいて水を飲むのがいけない」

「なるほどー」


「最初は立って足が着くくらいの場所で息を止めて海に漂おうか」

「はーい! わっかりましたー!」


 そしてすぐに言われたことを実践するシオンだった。


「おー!? これたのしー!」

「だろ? べつに泳がなくても楽しいもんさ」


「⋯⋯じゃあアレは楽しくないの?」


 そうシオンが指差す先には。


「くっそー! また引き分けか!」

「もう一本! もう一本勝負です、真樹奈さん!」


「くそったら~! もうこれで最後だからなリネットぉ!」

「勝つまでやめませんよ、私は!」


 ⋯⋯もう何度目かの水泳競争に入る姉とリネットだった。

 てかもうしんどいなら負けてやればいいのに、姉も負けず嫌いだからなあ⋯⋯。


「まあアレも楽しみ方の一つさ」

「だね」


 まあこっちはこっちでマイペースに楽しもう。

 そう思っていたら。


「ヘイ! アリス。 こいつを使いなよ!」

「お? サンキュー! レジェイド!」


 なんとレジェイドが貸してくれたのは小型の酸素ボンベだった。


「あ! これってアニメとかで泥棒がよく使うやつだ!」

「そうそう、ルピン三世とかが使うアレだ!」


 僕とシオンは喜んでそれを咥えて海に潜った。


 ⋯⋯水中眼鏡ごしに見るこの国の海はとても綺麗だった。

 まあこの辺はまだ水深2メートルもないんだけど、それでも海底まで日の光が届く素晴らしい透明度だった。


 ⋯⋯おっとシオンは大丈夫かな?

 そう思って僕はシオンを見上げたら⋯⋯なんかプカプカと大きなものが漂っていた。


 ⋯⋯不思議だ、あんなに大きな浮袋があるというのに浮かばないのかシオンは?

 あ、そうだ!


「シオン! お前、息を大きく吸い込んだまま潜ってみろ!」

「え? こう?」


 やっぱり思った通り、シオンはあまり息を吸い込んでなかったようだ。

 この肺の中の空気の量で浮いたり沈んだりするという事を理解するとシオンも自由に動けるようになってきたようだ。


 ⋯⋯まあ犬かきでだが。

 しかしシオンはそれで構わなさそうだった。


 速く泳ぐよりこうして海に漂うクラゲごっこの方が好きらしい。

 この辺の好みは僕と同じかな?


 こうして楽しい時間が過ぎていくのだった。




 そして僕とシオンは海を出る。

 そろそろ肉が焼ける頃だし⋯⋯。

 そう思って僕が先に海を出て歩いていると留美さんがこっちに来て。


「⋯⋯ずっと一緒に泳いでたんだ」

「うんまあ⋯⋯」


 なんかすごい圧を感じる⋯⋯。


「あー楽しかった」


 そう呑気なシオンの声が後ろから聞こえてきて。


「あ! シオン──」


 そう言いかけて振り返ろうとしたら!?

 ガシッと留美さんが僕を抱きしめて僕の頭を抱え込んで離さない!


 ⋯⋯なんで!?


「アリスケ君、見ちゃんダメ! 紫音さん水着! 水着が!」

「え? あれ⋯⋯!? あははは。 ヤバかった。 ありがと、るーちゃん」


 ⋯⋯どうやら聞こえる会話的にシオンの水着が外れかけていたとか、そんな事らしい。

 見なくて良かったと思う反面、この留美さんの胸に強く抱きしめられるという幸運!


 その一方で姉とリネットの会話も近くから聞こえる。


「やっと勝利です! ブイ!」

「⋯⋯くそ。 このスタミナおばけめ」


 どうやら姉とリネットの水泳対決も終わったらしい。

 結果はリネットの勝ちらしいが、まあ体力的に姉が先に音を上げたというところか?


 ⋯⋯まあ、若さの差だな。


「真樹奈! 目薬さしてアゲル!」

「おー頼む、映子~」


 負けた姉はさっそく映子さんに甘えていた。


「あ~映子の膝枕、気持ちいい⋯⋯」

「くっ! この胸が邪魔で目薬がさせない!」


 とかじゃれ合う姉と映子さん。


 キリキリキリ⋯⋯と、僕を抱きしめる力が増す留美さん。

 そろそろ放して⋯⋯痛い⋯⋯痛い。


「リネット! このお兄様の焼いた肉がそろそろ食べごろだぞ!」

「はい兄様! いま行きますね!」


 普段は塩対応なリネットもこういう時は素直に兄に近づくのか。


「おーい! 有介と留美も、いつまでもじゃれてないで肉食うぞ! 肉!」


「⋯⋯はい」

「行こうか、留美さん」


 こうして僕と留美さんもようやく離れてあちらへと向かうのであった。

 そしてその途中でシオンがこそっと話しかける。


「ねえあっ君? るーちゃんのパフパフ⋯⋯どうだった?」

「え? 痛くてそれどころじゃ⋯⋯」


 あれ? そういえばアレは完全にパフパフ!?

 ヤバい! せっかくの貴重な体験が痛いくらいしか記憶にないなんて!?


 先に歩いて行く留美さん⋯⋯。

 とても「もう一回して」とは言えない僕だった。


 そんな留美さんに遠慮なく近づくシオンは。


「るーちゃん意外とダイタン、なんだねえ~」

「あーあー! なにも知りません、覚えてません!」


 そう大声でごまかす留美さんだった。


 今の留美さんはどんな顔なんだろうか?

 ⋯⋯そして僕は。


 こうして忘れられない思い出がまた一つ増えたのだった。

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