#209 留美と塗るヌルぬる!?
ラズリアス王子といっしょに無言で肉を焼いていた僕だったのだが⋯⋯。
「あの⋯⋯アリスケ君。 ⋯⋯その⋯⋯サンオイル、塗ってくれないかしら?」
そう話しかけてきたのはなんと留美さんだった!?
「え⋯⋯あ⋯⋯え? サンオイル? その誰かに塗ってもらえば⋯⋯」
そう僕はやんわり断ろうとしたのだが⋯⋯。
「いまアイス食べてて手がベトベト~」
「その、私もなのでごめんなさい」
と⋯⋯シオンとリネットはアイス食べてた。
そして姉たちの方を見てみると。
「私は塗ってあげてもいいんだけどさ~」
「だめよ真樹奈! 真樹奈は私以外の女にサンオイルを塗らないで!」
「は~い」
そうはちきれてこぼれそうな映子さんの肉体に隙間なくサンオイルを塗っている姉だった。
じゃあ映子さんが塗ってやれよ⋯⋯と思ったがとても言える雰囲気では無いし。
そしてオシロン先生を見るとせわしなく写真を撮っていてこちらも無理そうだった。
とうぜん王族ファミリーに頼むなんて出来るわけないし⋯⋯。
「⋯⋯少年、レディを待たせるんじゃない。 恥をかかせるなよ」
そう隣で肉焼いている手を止めずにラズリアス王子が言った。
この人はこの時はじめて僕に微笑んでくれたような気がした⋯⋯。
こう言われてしまった以上僕がサンオイルを塗る以外ないな。
そう覚悟を決めた僕だった。
そしてこの場を僕は離れて留美さんにサンオイルを塗りに行く。
その後で、ひとり肉を焼くラズリアス王子が何かブツブツ言ってるが⋯⋯、
「⋯⋯くくく、そうか彼女が居たのか少年には。 まさかリネットが彼氏を連れて来たのかと焦っていたのだが杞憂だったようだ。 まあいつまでも天使なリネットに彼氏などまだまだ早い。 そもそも俺が認めた男でなければ──」
⋯⋯僕には遠くて聞こえなかった。
僕は留美さんに連れていかれる間ずっと考えていた。
留美さん⋯⋯自分でサンオイル塗れないのか? ⋯⋯と。
しかしその疑問はすぐにわかった。
「⋯⋯じゃあ、おねがい」
ぶはっ!?
留美さんがその長い黒髪をたくし上げるとそこには⋯⋯ガバっと背中の開いた水着姿が!?
どうなってんのこの水着?
前から見たら普通のワンピースタイプだと思ってたのに背中が完全に丸見えだった。
⋯⋯なんかネットで見た『貧坊ちゃま』とか『童貞を殺すセーター』とかいうものを思い出す。
「そ⋯⋯その! こういう水着だとその⋯⋯背中に手が届かなくて⋯⋯。 だからアリスケ君に⋯⋯塗ってもらえないかと?」
留美さんの顔が真っ赤だった。
うんうんたしかに、このままだとこんなふうに背中が真っ赤に日焼けして大変になるもんね。
そうだよね仕方ないよね、じゃあ僕がサンオイルを塗るの当然だよな⋯⋯⋯⋯そんなわけあるか!
「⋯⋯お願いします」
「うん⋯⋯」
最後は僕の目も見ないで頼む留美さんだった。
この様子から留美さんがとても恥ずかしい事を僕に頼んでいるという自覚があるのはハッキリとわかる。
⋯⋯しかし妙だな?
普段クールな留美さんがこんな事を想定しておらず、あまつさえ僕なんかに頼みに来るというこの不自然なこの状況を?
⋯⋯⋯⋯わかった! これは罠だな!
これはきっと留美さんは何かの罰ゲームをさせられているに違いない!
姉さんの考えそうな事だった。
まったく姉はいつもいつもろくでもない事を考えやがる⋯⋯デザートのプリンは没収だな。
つまりこの場所で僕が留美さんにサンオイルを塗っていると──。
『あー! 有介が留美にエッチなことしているぞ~』
とか言ってみんなが乱入してくるパターンに違いない!
なんて卑劣な罠なんだ!
⋯⋯そうなると、することは決まったな。
「じゃあここでサンオイルを⋯⋯」
そんな留美さんの腕を握って僕はハッキリと言った。
「留美さん! ここじゃない、もっと別の場所へ行こう!」
「え!? ちょっと待って? その引っ張らないでよアリスケ君!?」
僕は構わずそのまま留美さんと一緒に走り出すのだった。
そしてかなり離れた岩陰に留美さんと一緒に身を隠して⋯⋯。
「⋯⋯ここなら大丈夫そうだな」
「なにがなの? アリスケ君?」
「いやなに⋯⋯これで悪しき姉さんの陰謀は未然に防げたという事さ」
「⋯⋯? なにが?」
キョトンとする留美さん⋯⋯カワイイ。
「ここで少し時間を潰して戻れば言い訳もできるよ、姉さんには」
「何の言い訳? それよりもサンオイル塗って欲しいんだけど⋯⋯」
⋯⋯まだ言うか。
⋯⋯⋯⋯いやいや確かに罰ゲーム関係なくサンオイルは塗っとかないと留美さんのスベスベのお肌が大変な事に!
それにこんなエロい水着の日焼け跡とか残ったら⋯⋯2学期に入ってもまだプールの授業は少しはあるし目立つだろう、それはあんまりだ。
「⋯⋯つまり僕がサンオイル塗るしかないようだな」
結局する事は変わらないらしい。
「じゃあ⋯⋯お願いします」
そう顔を真っ赤にして頼む留美さんだった。
こんなの僕以外の男が見たら100%勘違いしちゃうに決まってる!
僕だから冷静に勘違いせずにすんでいるんだからな。
「⋯⋯じゃじゃじゃ⋯⋯塗らせていただきます」
「お願い」
そう留美さんは岩壁に手を当ててこっちに背中を見せるのだった。
⋯⋯この場所に連れ込んだのは間違いだったかもしれない。
なんかすごくエッチな事をするようにしか思えない。
いやいやいや! これはただのサンオイル塗るだけだから!
ぜんぜんエッチな行為ではないんじゃよ!
そして僕はボトルを傾けて⋯⋯留美さんの背中にサンオイルを一滴たらした。
「ひゃんっ!? 冷たい!」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
情けなくひたすら謝る僕だった。
「その言い忘れてたけどサンオイル塗る時は手で温めてから塗って欲しいの⋯⋯」
「お⋯⋯お、おう。 そうさせていただきます」
つまり僕の人肌が留美さんに伝わるという事では?
やべー、どんどんドキドキしてきた!
つまり姉はこんな難しい事をさも平然と映子さんにしていたという事か?
⋯⋯オトナだ姉は、初めて僕は姉を尊敬したかもしれない。
「⋯⋯そのもう十分に温まってると思うのだけど?」
「⋯⋯そだね」
僕は考え事しながらずっと手でサンオイルを温めていたようだ⋯⋯無心で。
「じゃあ⋯⋯行くよ」
「うん⋯⋯きて、アリスケ君」
サンオイルだよな? ただサンオイル塗るだけなんだからな、これは!
緊張して震える僕の手が初めて留美さんの白い背中に触れた⋯⋯。
「⋯⋯っん」
留美さんは必死にこらえていた。
僕だったらたぶん耐えられないで笑うんじゃないだろうかこれ?
とにかく時間をかけずにさっと塗ってしまおう、そうしよう。
「⋯⋯これで終わり⋯⋯と」
「その、もうちょっとだけ⋯⋯水着との隙間にも塗り込んで欲しいんだけど⋯⋯」
あーはいソウデスヨネー。
確かに動くとズレちゃうもんね水着は⋯⋯。
「いいんだね? その水着の中に指が入るけど?」
「いいよ。 その⋯⋯2センチまでなら」
2センチ! それが僕に許された絶対防衛ラインだ!
そこから僕はもう何も考えては居なかった。
後に僕は配信にてこの夏の旅行の事をリスナーに報告する時に、この時の事だけは言わなかった。
いやアカバンされちゃうかもだからね!
「⋯⋯もう後は自分で塗れるかな留美さん?」
「うん⋯⋯あとは自分でできる」
⋯⋯すげー気まずい。
しかし僕はやり遂げたのだ、この困難なミッションを!
そう僕が感動に打ち震えている間に留美さんはさっさと残った手足の肌にあっさりとサンオイルを塗ってしまうのだった。
「⋯⋯早いね」
「アリスケ君が時間をかけすぎただけでしょ?」
「ハイ、その通りです。 本当にごめんなさいです」
「いや、謝って欲しいわけじゃ⋯⋯」
こうして僕たちはようやくみんなの所へと戻るのだった。
そしてようやく僕と留美さんがみんなの所へと戻ると。
「あ、やっと戻ってきた」
「どこ行ってたの?」
「あー! るーちゃんお肌テカテカでツヤツヤだ!」
「サンオイルを塗ってもらっていたんですね」
そう出迎えられた。
なんかめっちゃ恥ずかしい。
そしてシオンが俺のところへと走ってきて。
「ねー、あっ君! 私にも塗って!」
とか無茶ぶる。
え⋯⋯? 僕が塗るのシオンにも? ここで? みんなの前で?
むりムリ無理!
留美さんにさえ必死だったのに、こんなぽよぽよのシオンにだなんて犯罪すぎる。
「⋯⋯私が塗ってあげるわ紫音さん」
「え? 私はあっ君に⋯⋯あ、ハイ。 お願い留美サン⋯⋯」
そう無抵抗に留美さんにサンオイルを塗られるシオンだった。
「きゃん! ちゅべたい!?」
「がまんしなさい!」
そう手荒く手早く塗っていく留美さんだった。
⋯⋯あの留美さん? 冷たいから温めてから塗るのでは?
なんかそんな事も言い出せない迫力の留美さんだった。
「ハイ終わり」
「⋯⋯全身⋯⋯くまなくさわられた~」
⋯⋯そうか。
サンオイル塗りはただの作業だったんだな。
僕はなんか勘違いしていたようだ。
僕はいつかまた留美さんにサンオイルを塗る日に備えてハートを鍛えていかなきゃと決意するのだった。
「るーちゃんって意外とテクニシャンだね⋯⋯」
「そうかしら?」
留美さんってすごいなー。
僕も見習わないと。
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