#167 ⋯⋯そして現在
ん⋯⋯もう朝か?
ずいぶん長く寝ていたような気がするが、まだ時間は朝の6時だった。
でも起きてみんなの朝ごはんの支度をしないと⋯⋯。
そう思い僕はまだ寝足りない頭でベッドから起き上がるのだった。
昨日は夜遅くまで僕たち『ホロガーデン』と『虹幻ズ』のミニ四君対抗戦の収録があったのだが⋯⋯。
家に戻ってくるとそこには小学生に見間違えてもおかしくない美少女が待っていた。
そう、彼女こそが僕たちホロガーデンの元メンバーだった深山揚羽さんだったのだ。
まあそんな揚羽さんと姉さんたちは久しぶりの再会で昨夜は遅くまで飲んで騒いでいたんだと思うが⋯⋯。
僕と留美さんは先に休ませてもらったからな⋯⋯はたしてどうなっているのか?
僕は恐る恐ると部屋を出てリビングに入った。
すると最初に気がついたのは芳醇な味噌の香りだったのだ。
「この匂いは⋯⋯揚羽さん?」
キッチンで料理をしていたのは、なんと揚羽さんだったのだ。
「あら、おはよう弟君。 キッチン使わせてもらってるわよ」
「⋯⋯それはいいですけど、揚羽さん朝食作ってるんですか?」
「朝食というか米炊きとシジミの味噌汁作ってただけ」
「なんでまたお客様の揚羽さんが?」
「⋯⋯まあタダで居候する以上、食事当番くらいはするわよ。 それに⋯⋯それ」
そう揚羽さんがお玉で指さした先には⋯⋯。
「えいこ~、くっつくなよ暑苦しいなあ⋯⋯」
そう腹をだしてだらしなく寝ている姉と、
「えへへ、まきな~だいすき、ちゅっちゅっ」
そう大事に抱えた一升瓶にキスしまくる映子さんの姿があった。
「⋯⋯いつまで飲んでたんですか皆さん?」
昨夜は僕と留美さんは0時くらいで先に休ませてもらったからな。
「んー、たしか3時くらいまで飲んで騒いでたわね」
「てことは揚羽さん2時間くらいしか寝てない?」
「まあね。 このあと少し寝るわ、コレを作ったら」
シジミの味噌汁は二日酔いに効くからな、それで作ってたのか。
まあ材料はもともと僕が同じ目的の為に買っておいた物なんだが。
「それにしても使いやすいキッチンでびっくりしたわ。 これは真樹奈の仕事じゃないわね、弟君が?」
「ええそうです。 僕がここに住むようになってから姉さんは一度もキッチンに立ってませんから」
「真樹奈らしいわね。 それにしても真樹奈の妹のアリスちゃんが⋯⋯ねえ」
「驚きましたか?」
「そりゃもう、でも納得もあるかな? ところどころ違和感あったのよねー、真樹奈の妹さんの話って」
「姉はみんなにも僕が妹だって言いふらしてたんですか?」
「そうよ。 「だって弟が居るとバレたら炎上するかもしれないだろ」だって、変なとこだけ気が回るやつよねー」
「まあ姉なので」
「真樹奈だもんねー」
そう僕らは笑いあった。
そうこうしているうちに留美さんが起きてきて朝のシャワーを浴びに行った。
その間にやっと姉と映子さんも起きてきた。
「おはよ姉さん」
「⋯⋯おはよアリスケ」
シャワーの終わった留美さんが揃うとようやく朝食になった。
今朝の献立は揚羽さんが作ったシジミの味噌汁と僕の焼いた魚である。
「「「「「いっただきまーす!」」」」」
こうしてみんな揃っての朝食になった。
「ん⋯⋯アリスケ出汁変えた?」
「今日の味噌汁は揚羽さんが作ったから」
「それでか、あんがと揚羽」
「どういたしまして」
「あいかわらず揚羽ちゃんは料理が得意よね」
「家が料理屋やってるだけよ。 それよりこの魚⋯⋯火の通し方が絶妙ね、やるわね弟君」
「どういたしまして」
「キッチンの整理整頓ぶりといい、調味料や材料のストックを見ても料理する奴だとは思ってたけど、いい腕だわ」
「そうだろそうだろ、私の弟だぞ」
「姉さんも料理する?」
「なんで? アリスケが毎日作ってくれるのに?」
⋯⋯もしも僕が居なくなったら姉はどうなるのだろうか? 不安だ。
「でも女としてはアリスケ君の料理には少し嫉妬するわ」
そう言うのは留美さんだった。
「気にしなくていいのに⋯⋯」
「そうだぞ留美。 私はぜんぜん気にしてないからな」
姉さんは少しは気にしろと言いたいが⋯⋯無駄なのでやめた。
「留美ちゃんがどれだけ料理出来るのか知らないけど、あんまりこの弟君と比較しても意味ないわよ」
「どういう事ですか揚羽さん?」
どういう事なんだろ?
「だって弟君の料理って典型的な『男の料理』だもん」
「男の料理?」
「要するに趣味でやってる凝り性のこだわり料理ね、この魚の焼き加減を主婦はやらない出来ない、もっと効率化を目指すから」
⋯⋯なるほど、一理あるな。
たしかに僕の料理は自己満足の世界だ。
現状は毎日作ってるけど本気で作る時は時間も材料費も際限なく使うしな。
⋯⋯まあ時間が無い時は手抜きとは言わないが、手早く作れるようにも準備はしているが。
「うーん、それでも好きな人の為に私はがんばりたい、かな?」
⋯⋯留美さんが好きな人の為に!?
⋯⋯⋯⋯まあいずれ留美さんもそういう人ができるのだろうな、きっと。
「いい留美ちゃん。 男なんて『好きな女の子が作ってくれただけで』料理の味なんか気にしないわ」
すげー事言うな揚羽さんは⋯⋯。
「おーおー言う言う。 恋人なんか居たことない女が」
「ほんとほんと」
「やかましいわね! このレズバカップル!」
そう揚羽さんは姉さんたちと言い争っていたのだった。
しかしこの時、僕には違和感があった。
「⋯⋯あれ? 揚羽さんって付き合ってた人が居ないの」
「そうよ。 私こんな見た目でしょ、彼氏なんか居るわけないじゃない」
⋯⋯おかしい?
たしか揚羽さんは彼氏が居たことで炎上してVチューバーを引退したはずなのに?
しかしその事を僕は言い出す事ができなかった。
こうして朝食が終わり⋯⋯。
「真樹奈ベッド貸して、ちょっと寝る」
「いいけど、食ってすぐ寝たら太るぞ」
「寝る子は育つよ! この揚羽ちゃんには成長性しかないし!」
「無いでしょ? 揚羽ちゃんもう20歳なんだし」
「やかましい! 映子が私と同じ歳の時にはそんなに育ったんだからまだ私にだって可能性はあるわよ!」
そう怒って揚羽さんは姉の寝室へと寝に行ったのだった。
僕は食器の片づけを留美さんとしながら⋯⋯。
「姉さんは揚羽さんと仲いいんだね」
「おう。 だって可愛いだろ、あの女」
「⋯⋯」
たしかに⋯⋯しかしそれを僕が認めたらロリコン認定されそうで不安である。
「そういえば映子さんは揚羽さんには嫉妬しないんですか?」
これまた留美さんも言いにくい事を聞くなあ⋯⋯。
「嫉妬? 揚羽ちゃんに? するわけないわよ。 真樹奈が子供好きなのはよくわかってるし」
なるほど。
姉の好みは映子さんのような豊満な女と、からかいたくなる子供なのは間違いない。
「つまり揚羽さんは姉の浮気の対象には無いと」
「そうよ」
「おーいアリスケ、言い方~」
そんな姉を無視して片づけを終えた僕たちだった。
そしてしばらくした頃だった。
ピンポーン!
チャイムが鳴った。
「姉さん出て、僕は昼ごはんの準備で忙しい」
「仕方ないわね」
姉は渋々とインターホンに出て来客の対応をした。
「あんた達、来たんだー!」
⋯⋯? なんだ? 姉の知り合いか?
少なくとも木下さんではないな、あの対応は。
「ささ、上がって上がって! でも静かにね、今我が家には眠り姫が居るから」
その姉の声のトーンはいつもの悪だくみモードだった。
「姉さん誰だったの?」
「へへー、ナイショ」
これは覚悟しとかないと、この来客に。
そして玄関の前まで来た来客の為に姉がドアを開けた。
「みんなひさしぶり~! でも静かにね、今ヤツが寝てるから」
姉が招き入れたのは3人の女性だった。
とうぜん見たことのない人達である。
「おっじゃまー」
「ほな上がらせてもらうで」
「お⋯⋯おじゃまします」
⋯⋯あ。
僕の特技『ダメ絶対音感』が発動した!
この人達はもしかして!
揚羽さんだけでなくさらに3人もの来客を迎え、いっきに騒がしくなる我が家であった。
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