#166 1年前へのプロローグ! ホロガーデン、星々が集いし銀河(ヴィアラッテア)
私、栗林真樹奈はなんかしらんまにVチューバーに成ることになった。
いやマジで理由がわからん?
二日酔いで記憶が飛んだんかもしれないけど⋯⋯まあいいか。
私がVチューバーに成ることになってしばらくしてメンバー全員が集まって、いろんな説明会を泊まり込みで行う事になった。
なんていうのか合宿みたいなもんである。
私は中学生の頃は吹奏楽部でフルート奏者だったから、あの頃は何度も合宿をしたもんだ。
なんかなつかしい学生時代の気分だった。
まあ今でも大学生なんだけどね。
合宿ではVチューバーに必要な知識やボイストレーニングを叩き込まれた。
まあこれが辛いのなんの!
指導員のおっさんに何回も怒られた⋯⋯ちくしょう。
少しはお世辞を言え! やる気出させろよ! こちとら素人なんだぞ!
え? 「嘘ついてそれで変な自信持たれると困るから」ですか⋯⋯。
⋯⋯そうですかそうですか⋯⋯クソ。
この教習が私ひとりだけだったら絶対にキレてて帰ってたな⋯⋯マジで。
でも私の他にも居たメンバーたちのおかげでなんとかやってこれたと思う。
そういう意味だとこの合宿の効果はあったんだろうな。
この合宿で一番なかよしになったのは相川映子さんだ。
この人⋯⋯私よりもおっぱい大きい人で、合宿所のお風呂で揉ませてもらって感動した!
それに音楽というかアイドル的な知識や技術が始めっからあって、ミソッカスな私の練習にずっと付き合ってくれた恩人である。
2人目は深山揚羽ちゃん。
⋯⋯ちゃん付で呼ぶと怒るけどしかたない。
この子⋯⋯めっちゃ背が低いし可愛いから。
可愛い可愛いすると喜ぶけど、高い高いしたらキレた⋯⋯めんどくさい奴。
3人目は朝倉來未ちゃん。
この子はまだ中学生でびっくり!
⋯⋯アリスケのいっこ年下かー。
すごいな、この若さでVチューバーになるとか。
でも本人は「なんでこんなところに⋯⋯」とかめっちゃビビりまくりの小動物だった。
⋯⋯これは保護せねば。
4人目は十六夜明日菜さん。
Vチューバーの訓練的には私と同じ初心者で一緒に怒られる仲である。
しかし凄腕のプログラマーとの事で、なんでプログラマーなのにVチューバーを?
という思いと「私だけ完全に素人じゃねーか!」という気分になった。
5人目は南那奈さん。
メンバーの中では唯一私よりも年上だ。
背が高いしおっぱいも大きい、モデルかなんかだと思ったよ最初は!
でも話をしてみるとかなりの人格破綻者で安心した。
ここに集められたのがいいかげんなイロモノ集団だという事がわかり納得したかからだ。
ん⋯⋯私もイロモノでいいのかって?
あたり前じゃん! 私がイロモノじゃなければ何なんだよと。
2日間の訓練が終わり私たちは集まって話し合うことになった。
呼び出したのは私達を集めた木下マネージャーである。
この人も美人だし声が綺麗だし、一緒にVチューバーしないのだろうか?
「これからお話して決めるのは皆さんがVチューバーとしてデビューする際の『設定』です」
「設定って⋯⋯なに?」
「画面の中のVチューバーのキャラクターがただの人間とかよりも、エルフとか獣人とかそういった付加価値があると人気が出やすいので」
「属性やね」
「そうですね。 明日菜さんの言う属性です」
⋯⋯よくわからん?
でもまあ私達の今後の為の設定を、みんなで考えることにしたのだった。
「なぜみんなで揃って?」
「個別に決めるとキャラが被るかもしれないし、それに自分の個性を客観視できてない人も居るかもしれませんから」
「なるほど。 つまり自分はアイドルだと思ってる揚羽に「アンタは小人じゃん」と言ってあげるための集まりなのね、コレは」
「なんだとこの真樹奈!」
「おー! やるのか揚羽!」
「ケンカはやめなさい! ふたりとも!」
「「はーい」」
私と揚羽は一緒に木下さんに謝った。
⋯⋯お互いに足を踏み合いながら。
しかし私はこの揚羽を嫌いではない、いやむしろ大好きなのである。
これはあれだな「好きな子ほどイジりたい」というアレだろう。
いちいちリアクションがかわいいからな揚羽は⋯⋯。
「ところでイラストレーターは誰なの? 全員バラバラなの?」
そう揚羽が質問した。
「イラストレーターは会社で契約している方数人と、社外のフリーの方を何人か、全員違う絵師でデザインしてもらう予定です」
「全員バラバラなの?」
「そうです。 デビュー後、たとえば夏で全員分の水着の衣装を発注する⋯⋯といったような仕事が一気に6人分だと回らなくなるからですね。 それにファンもバラエティーにとんだキャラデザの方がウケもいいでしょうし」
明日菜の質問に答える木下さんだった。
「なるほどなるほど」
私と同じでまったくわかってないような態度の那奈である。
「⋯⋯これはどの絵師をゲットするかで運命が分かれそうね」
そうつぶやくのは揚羽だった。
⋯⋯この子ホントに真面目で真剣だなあ。
「いちおう皆さんに希望を聞いて選んでもらいますが、ご期待に添えない場合もありますので」
木下さんはどこの誰だかわからん6人分のイラストレーターの参考画像を私達に回した。
それを私達は真剣に選ぶ。
「⋯⋯みんな決めた?」
「うん」
「どう決める?」
「ジャンケンで勝ったやつから好きに選ぶ」
「それでいいです」
「せやね、それで恨みっこなしやで」
そして私達の運命を決めるであろう大ジャンケン大会が行われたのだった。
結果は揚羽が1番で私がビリだった。
まあ私はどのイラストレーターが良いとかぜんぜんわからんから残り物でいいけどね。
「じゃあ私から選ぶね⋯⋯この人」
揚羽は迷うことなく、ひとりのイラストレーターの絵を選んだ。
「かわいいタッチの絵ね、揚羽」
「見ただけでわかるわよ。 西城パステル先生の絵だって! ⋯⋯私ずっとファンだったの」
「そう」
⋯⋯西城パステル? 全然知らん、まあ揚羽が好きな絵師で、みんなも納得ならそれでいいか。
そしてその後、それぞれ自分のイラストレータを選んだ私達だった。
たいしてもめずにすんで木下さんも心なしかホッとしたようだった。
「ところでこの絵が私達のアバターじゃないわよね?」
「ええ、それはたんにイラストレータさんの絵の資料なので、これから皆さんに合ったキャラデザをしてもらいます」
そう揚羽の質問に木下さんは答えた。
「ん⋯⋯? じゃあ私達のこの姿をイラストにするって事?」
私はあんまりわかってなかった。
「そういう訳ではありませんが、例えば真樹奈さんが幼稚園児のキャラを演じるとなったら大変でしょ? だから演じやすいように自分に違和感のないキャラを今から決めてそれを清書してもらうのよ」
「ほうほう⋯⋯」
いや幼稚園児をやれと言われればやるよ、私は。
まあ見た人はどう思うかわかんないけど⋯⋯少なくとも有介には見られたくないな、アイツなら絶対にバカにするから。
こうして私達はみんな自分のキャラクターをどうするのか真剣に考え始めた。
⋯⋯ん? 私はどうなのかって?
「私はこの探検隊みたいなお姉さんのままでいいけど?」
私は最初のラフ画の印象が自分に合っていると思った。
「そうですか? でも髪の色とかはどうします? この金髪のままでいいですか?」
「うーん金髪かー。 金髪は映子のイメージなんだよなあ、私は」
「そうなの真樹奈? じゃあ私は金髪にしようかしら?」
「真樹奈は赤毛とかそういうイメージね」
そう揚羽が言った。
「赤毛かー! うん。 そうかも!」
こうして私のキャラクター・マロンのデザインは、ほとんどこのラフ画のままで髪の色を赤に変える程度の修正だった。
ちなみにマロンという名前は私の苗字が栗林だからである。
「じゃあ私は金髪のエルフね」
そう映子は自分のキャラをそう決めた。
「映子! おっぱい大きくしとけよ!」
「そ⋯⋯そうね」
こうして映子のキャラ・エイミィはおっぱい特盛の金髪エルフになった。
もしも私がこの時言わなかったら映子のエイミィは、おっぱいが小さかったかもしれないのだ。
感謝したまえ、君たち!
「んー。 ウチはなんでもいいんやけど⋯⋯王様になりたい」
そう言ったのは天才プログラマーの明日菜だった。
「なぜ王様?」
「ウチは自分の世界を創るウィザードなんや! だから王様になりたい!」
⋯⋯意味がわからん?
魔法使いなのに王様って?
まあ明日菜がやりたいなら何でもいいけど。
こうして明日菜のキャラクターは短いピンクの髪の毛にちょこんと小さな王冠の乗った女王様、ナージャになった。
「うへへ。 ウチの世界を創るで~」
まあ本人が楽しそうで何よりである。
「アタイはなんかこうギャンブラーって感じにしてくれ!」
そう希望を出したのは性格破綻者の那奈である。
その後いろいろ検討を重ねた結果、那奈のキャラは白髪でお団子ヘアーの謎の中国人風になった。
「それでいいの那奈?」
「いいじゃんこれで! アタイこれでガッポガッポ稼ぐアルよ!」
超ハイテンションで高笑いする那奈だった。
まあ本人が気に入ったのならそれでいいんだろう。
こうして那奈のキャラクター・ジュエルが完成したのだ。
「なんで宝石?」
「ゲン担ぎ」
意味がわからん。
「揚羽はね、こう⋯⋯セクシーな大人のキャラにして!」
その場の全員大爆笑である!
「あの揚羽さん? あまり本人と違ったキャラにしては混乱しますよ」
そう止める木下さんだった。
「いいでしょ別に! 『なりたい自分になる』それもVチューバーじゃない!」
とまあ本人の強い希望で揚羽のキャラクターは長い銀髪の軍服を着たキャラになったのだ。
「なんで軍服?」
「かっこいいじゃない」
揚羽はよくわからん奴だと思った。
「でもよー、せめて種族はピクシーにでもしようぜ」
そう那奈が提案したが⋯⋯。
「やだ! なんか可愛くない!」
「うーん、ピクシーへの種族偏見やね。 ならフェアリーとかは?」
「フェアリー! 妖精か! うん! それならいいわ! この揚羽ちゃんの可愛さにピッタリね!」
後日⋯⋯『長い銀髪の妖精で、軍服を着ている』というキャラデザを依頼された西城パステル先生は大変困ったらしかった。
『なぜ軍服なんだい?』
そういうパステル先生の試行錯誤もあって揚羽のVチューバーのキャラクター・ルシファが生まれたのだった。
「えへへ⋯⋯。 大人の女!」
まあいいか、揚羽が気に入ったのなら。
⋯⋯それに今後ずっとコスれるネタだと思えば。
最後は來未だ。
「私は⋯⋯その目立たない見た目ならなんでも⋯⋯」
「「「「「⋯⋯」」」」」
だめだ、この自己主張の仕方を知らん小動物じゃ何も決まらん。
そう思って私達は⋯⋯。
「とりあえずギター持たせろ!」
「音楽家キャラだとはハッキリさせたいわね!」
「ミニスカートのロックな衣装で!」
「髪の色は青がよくね?」
「せやね! それで片目隠れたナイーブな感じも追加や!」
そう私達で言いたい放題に決めてあげたのだった。
「あわわわわ!? 皆さんそんな!」
そんな來未に木下さんは。
「私もこのデザイン案はいいと思うけど、來未さんが嫌なら変える?」
そして來未は⋯⋯。
「そっ! それでいいです! その皆さんの思いがこもったそのアバターなら私でも⋯⋯勇気が出るかも⋯⋯」
こうして來未のVチューバーキャラは青髪のロック少女の『あくみん』になったのだ。
「えへへへ、私のあくみん。 ⋯⋯あれ? 私だけ名前ひらがな?」
「いいんじゃね? 何なら私も『寿得瑠』にするか?」
「ジュエルってそういう意味なの那奈?」
でも結局は。
「やっぱり『あくみん』のままでいいです。 ずっとこの名前でやって来たんだし、それに⋯⋯もう私はひとりじゃないから」
こうして私達のVチューバーアバターのデザイン会議は終わったのだった。
その日の夜。
私達の合宿最後の夜。
明日になればいったんみんなそれぞれの故郷に戻りバラバラになる。
だから私達はヴィアラッテアの本社ビルの屋上へとやって来た。
その日の夜空はとても綺麗だった。
「綺麗な夜空ね。 見て天の川よ!」
そう私が指さすと全員がそれに注目した。
「このお父様の芸能会社『ヴィアラッテア』の意味は、イタリア語で天の川の事なのよ」
「へー、そうなんだ」
「『星々の集まりが、夜空に輝く銀河になる』という思いで会社の名前がこうなったらしいわ」
「へー、ロマンチックやなあ」
「まるでアタイたちみたいだな」
「そ、そうですね!」
「揚羽ちゃんはひとりでも輝けるけど⋯⋯あんた達と一緒ならもっと楽しそうだし、つき合ってあげるわよ!」
最高のメンバーだった、この6人は。
出会ってまだ数日だったけど、みんなどこかしら『自分は他人とは違う』そんなコンプレックスを持っていたような気がする。
しかしみんなで集まってみると、そんな悩みがどれだけちっぽけだったのか思い知った。
「みんな! 手を合わせよう!」
「いいわね」
「いいねーやろうぜ!」
「みんなノリノリやなあ」
「せ⋯⋯青春! こんな青春を私なんかが!?」
「ちょっと恥ずかしいけど⋯⋯まあ付き合ってあげるわよ、この優しい揚羽ちゃんは」
満天の夜空の下で私達は円陣を組んで──。
「「「「「「ヴィアラッテアVチューバーチーム『ホロガーデン』いくぞー!」」」」」」
ずっと一緒だと思ってた、このメンバーは最高だって。
考えもしなかったのだ、私達の前からこの揚羽が居なくなるなんてことを⋯⋯。
この時の私達は思ってもいなかった。
あの時の私達はデビューしたてで経験不足で実力不足だった。
だから揚羽を守れなかった。
もしもこの先⋯⋯揚羽を守れるのなら、私は⋯⋯。
いや私達は絶対にそうするだろう。
これは私達『ホロガーデン8人の』大切な仲間を取り戻す、戦いのお話なのだ。
⋯⋯そして現在、いま再び星々が集う。
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