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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第5章 青い空と海の島から来た正義の姫君

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#104 ママたちがやってきた!

「おー、始まったみたいね」

「うるさいから窓閉めてよ、姉さん」


 夏休みの午前中、開けた窓の外からはヘリが飛ぶ音がひっしりなしに聞こえていた。

 そう、このマンションの最上階のペントハウスにリネット姫の家具が運び込まれているのだ。


「ほいほい」


 そういって姉は窓を閉めた。

 するとピタッとヘリの音は消える⋯⋯。

 あいかわらず良い防音性のマンションだった。


「まさかお姫様が同じマンションに住むことになるなんてね⋯⋯」


 隣で僕と一緒に夏休みの宿題をやっている留美さんもボヤく。


「でもリネット姫はけっこう親しみやすい人でよかったよね」

「ホントそう⋯⋯」


「お姫様なんかだとこう⋯⋯『立巻きロール』なタイプを想像するからね」


 姉のお姫様像ってそんななんだ⋯⋯。

 でもリネット姫がそんな「お~ほっほっほっ!」みたいな子じゃなくてホント良かったと思う。


 そんな事を話しながら僕たちが宿題していると姉のスマホに着信があった。


「ん⋯⋯誰だ?」


 どうやらメールらしいな、誰だろ?


「あ⋯⋯ママからだ⋯⋯」

「え!? 母さんから!」


 母は今、実家で父さんと水入らずで仲良くしているハズ⋯⋯。

 この夏休み中に1回は実家に帰ろうかと思っていたが⋯⋯その催促だろうか?


「違う違う。 母さんじゃなくて『マロンのママ』の由衣先生から」


 由衣先生⋯⋯たしかVチューバーマロンの原画家の人でペンネーム『五月雨由衣』という漫画家兼イラストレーターだ。


「姉さん、由衣先生と知り合いなの?」


 僕なんか自分のママのオシロン先生とは会ったことすらない。


「ん⋯⋯2年くらい前からの知り合い」

「2年前? マロンのデビューの1年前から? なんで?」


 姉さんとイラストレーターの先生。

 どこに接点があったんだろう?


「由衣ママはさ、マロンを描く前からヴィアラッテアと契約していたイラストレーターで、2年前の夏コミの時に企業ブースで本出してたのよ。 で⋯⋯その時まだ私はヴィアラッテアのコンパニオンだったから売り子とかして、その後の打ち上げで一緒に飲んだ仲よ」


「なるほど⋯⋯」


 聞いてみれば単純な関係だった。

 姉さんのスマホいつ連絡してるんだろ⋯⋯っていうくらい他人のアドレス登録多いからな⋯⋯。


「それで由衣先生がなんなんですか?」


 留美さんもこの会話に加わる。


「えっと⋯⋯『今日遊びに行っていいか?』だって」


 まあ宿題は午前中だけだし問題ないか。


「あ⋯⋯続きがある。 なになに? 『ひとり連れて行くけどいいか?』だって?」

「誰?」


 由衣先生ならともかく部外者をあまり招きたくないな⋯⋯。


「へー、オシロン先生だって! 良かったじゃんアリス! ママに会えるよ!」


 そうニヤニヤと笑う姉だった。


「え!? オシロン先生が来る!?」


 なんか急に緊張してきた。

 一応チャットとかで会話はしたことあるけど⋯⋯リアルの本人があのノリとは限らないしな⋯⋯。


「でもそのお二人って⋯⋯アリスケ君のこと知りませんよね?」


 そう留美さんが心配してくれる僕の秘密の事を。


「⋯⋯由衣は知ってる、アリスケの事」

「なんでさ!」


「だってアリスどころかマロンのデビュー前からの付き合いだったし⋯⋯その時に『弟が居る』って言ったから」


 それなら仕方ないか⋯⋯。

 こうして僕たちは宿題を済ませてママたちの訪問に備えるのだった。




 そしてお昼の少し前に来客が来た。

 ママたち襲来である!


「おじゃましまーす!」

「おじゃまします⋯⋯」


 なかなかテンションの差のある2人だった。


 ひとりは黒っぽい服装の活発そうなお姉さんで、もうひとりは白系のワンピースを着た清楚そうな女性だった。


「いらっしゃい! どぞー」


 そう姉が2人を招き入れたのだった。

 それを僕と留美さんはリビングから見ていた。


「なんか緊張するね」

「そうね」


 そんな僕たちを目ざとく見つけたのは黒っぽい方の人が先だった。


「お! 君が噂の弟君だね。 マロンからよく聞いてたよ! 私はマロンのママの五月雨由衣。 ⋯⋯で、こっちが」


「⋯⋯オシロンです。 その初めまして⋯⋯」


 なんか消え入りそうな声で、でもしっかりと僕と留美さんを見て挨拶する。

 ⋯⋯毎度のことだが今回も留美さんをアリスだと思ってるんだろうなー。


 しかしオシロン先生は留美さんを一瞥だけして、その後ずっと僕をじ~と見つめ続ける。


「⋯⋯もしかして君がアリス?」

「──!?」


 そうハッキリと僕の方を見ながらオシロン先生は断言したのだ!


 僕は姉と由衣先生を見るが「いやいや!」というジェスチャーを返す。

 つまり2人は僕の事がアリスだとは言ってないのだオシロン先生に!


「⋯⋯よくわかりましたね。 そうですボクがアリスです。 初めましてオシロンママ」


 そう普段のアリスボイスで応えたら⋯⋯。


「はぐぅ!?」


 オシロン先生は叫びながら倒れたのだった!


「オシロン先生──!!?」


 ── ※ ── ※ ──


 夢を見ていた⋯⋯。

 そう夢を。

 カスミソウのようなひとりの銀髪美少女が実は⋯⋯男の娘だという妄想(ユメ)を⋯⋯。


 うふふ⋯⋯。

 ぐへへへへぇ⋯⋯。


 ── ※ ── ※ ──


「はうあっ!?」


「おー、帰って来たか龍華!」

「はっ⋯⋯!? 琥珀!? ここに私の理想の男の娘が居たんだけど!」


 龍華? 琥珀? お互いの本名だろうか?

 どうやら由衣先生とオシロンママはリアルネームで呼び合う仲らしい。


 てか⋯⋯『私の理想の男の娘』ってなんだよ?


「どうやら見た目通りの人ではなさそうね、オシロン先生って⋯⋯」

「みたいだね留美さん⋯⋯」


 見た目は小柄で清楚そうなオシロン先生なのになぜか⋯⋯強烈な腐敗臭(ダークエナジー)がただよい始めていた。


「気を付けなさいアリスケ君。 オシロンは腐ってるから」


 ⋯⋯知ってて連れてきたのか、由衣先生は?

 その由衣先生は僕の気持ちを見透かすようにニヤニヤ笑っていた。

 こうして改めて自己紹介をすることになった。


 まず黒い方の女の人。


「私はペンネーム『五月雨由衣』。 本名は皐月琥珀です。 マロンのママよ!」


 そう活発に挨拶する人だった。


 そして小柄で白い方の人の番だった。


「私がオシロンです。 本名は⋯⋯尾城龍華⋯⋯です。 ⋯⋯アリスちゃんのママです!」


 そう僕の事をガン見してて怖かった⋯⋯。


「初めまして、アリスの中の人の有介です。 その⋯⋯男でごめんなさいオシロン先生」

「いいのよ! そんな事は! むしろ最高っていうかさ!」


 急にオタク特有の早口でハイテンションになるなあ⋯⋯オシロン先生は。


「その⋯⋯Vチューバー、ルーミアをしている芹沢留美と言います」


 そう控えめに挨拶する留美さんだった。


「えーなになに? なんでルーミアまでここに居るのよマロン? やっぱあんたのハーレムなの、ココ?」


「ハーレムとか人聞きの悪い。 ここは私の城よ!」

「⋯⋯つまり後宮ね!」


 ⋯⋯どうやら由衣先生は姉という人物をよく知っているようだった。

 そしてその頭の中ではドロドロのストーリーが描かれているようだった。


 はたしてこんなママたちが何しに来たんだろ?


「ところで由衣ママ。 いま大丈夫なの? 締め切りヤバイ時期なんじゃないの?」

「あ~夏コミの事? めっちゃヤバいよ! それなのに来ちゃった!」


 ⋯⋯なにやってんだろ、この人?


 夏コミとは毎年お盆の時期にやっている同人誌即売会『コミュニティ・マーケット』の事だろう。

 たしかその夏コミで由衣先生と姉さんは知り合ったんだっけ?


「あいかわらずロックな人生ね、由衣は!」


 そう笑う姉もまたロックな人生だと思うぞ。


「そんな忙しい時期になぜ⋯⋯?」


 そう留美さんは当然の疑問を投げかける。


「⋯⋯最後の追い込み前の充電よ、充電!」


 よくわからないことを言う由衣先生だった。


「その、琥珀はマロンの取材に行きたいって⋯⋯」

「私に? なんで?」


「そんなのマロンが新しい妹作ったからに決まってるでしょ! アリスやルーミアに続いて今度はポラリスのブルーベルにまで!」


「えー! マロンのこと本にするの? 由衣ママは!」

「当たり前でしょ! ママなんだから乱用しますよ、職権を!」


 そうケタケタ笑う由衣先生だった。


「でっ! ついでだったんで龍華も連れてきた。 この子ほっとくと家から出ないし」

「そんな! 引きこもりみたいに言わないでよ~」


 どうやら目的は姉さんへの取材とオシロン先生へのイタズラってことらしいな。

 まあオシロン先生は僕の正体をあっさり見ぬいちゃったけど。


「⋯⋯そんなに私って、マロンさんの妹だと思われているの?」

「ごめんね留美さん。 姉が迷惑かけて⋯⋯」


「いや迷惑だけど⋯⋯迷惑じゃないっていうか! 何言ってんだろ私⋯⋯」


 そんな僕らを2人の先生と姉がニヤニヤしながら見ている。


「ほうほう⋯⋯」

「⋯⋯これはこれは!?」


「いい子たちでしょ!」


 興味津々なお客様とドヤ顔の姉だった。


 こうして僕はオシロン先生と由衣先生という絵師(ママ)たちに出会ってしまったのだった。

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