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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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03 ガシャーン! ガシャーン!

 重々しい衝撃とともに、金属甲冑が倒れ込む。

 傍目には、まるで糸が切れた人形みたいに見えただろう。

 というか、実際に魔力糸は切れちゃったんだよね。

 その衝撃で甲冑はバラバラになって中から毛玉が―――なんてことはない。


 そこらへんはすでに対策済みなのですよ。

 内部で留め金を掛けて、ちょっとやそっとじゃ外れない構造になってる。

 それでも、この状況は大変によろしくない。


「ふ……ははっ、まさかと思ったが本当に効くとはな。魔獣を従えるような奴は罪も深いということか!」


 細目職員が勝ち誇ったみたいに笑い声を上げる。

 失敬だなあ。

 そりゃあカルマはマイナスぶっちぎりだけど、ボクは犯罪者とは違う。

 システム的に妙な方向へ突き進んでるだけで、罪深いって意味じゃないはず。


 でもまあ、『懲罰』が弱点っていうのは間違ってないんだよね。

 『極道』とかでも抵抗しきれないくらいに効果覿面だし。

 しばらく動けそうにない。


 おまけに、甲冑を着た状態で倒れ込んじゃったのもマズイ。

 各パーツは外れてはいないんだけど……捻じ曲がっちゃってる。

 関節部が、有り得ない方向に。

 肘とか膝とか、人間だったら確実に折れてるよね、ってくらいに変な角度がついちゃってるよ。


 細目職員は慌ててるからか、ボクの異常さに気づいてない。

 でも冒険者の中には怪訝な顔をしてる人もいる。

 これは、うん、一気に危機的状況に追い込まれちゃったね。


 ただ、いますぐ命の危機ってワケじゃないんだけど。


「お、おい、おまえたち、今の内にコイツを縛り上げて―――」


 その声を遮ったのは一号さんだ。

 細目職員との間合いを一瞬で詰めて、メイドパンチからの足払い。

 床に倒れた相手を、そのまま魔術の縄で拘束した。


 メイドさんズはカルマどころか、ステータスも無いみたいだからね。

 必然、『懲罰』も効かない。

 万が一の護衛役として連れてきてよかったよ。

 この場の冒険者くらいなら、一号さん一人でも制圧できそうだし。

 それに、ボクもすぐに動けるようになった。さすがに『懲罰』にも慣れてきたってことだね。


「な、なんだよ、コイツは……」


 冒険者の誰かが怯えたような声を漏らした。

 普通に立ち上がったつもりだったんだけどね。

 関節部が変な方向に曲がってたから、奇妙に見えたのかも知れない。

 ギギ、とか金属が擦れる音も聞こえちゃったし。


 はぁ。仕方ないね。

 ここまで怪しまれちゃったんじゃ仕方ない。

 なるべく穏便にして、良い関係にしておきたかったのに。

 ボクが積極的に人付き合いをしようなんて間違ってたのかも。

 でも、努力はしたんだ。

 苦手なことを頑張ったんだから、誉められてもいいくらいじゃない?

 ラノベ主人公だったら、「よく頑張ったね」って頭を撫でてくれるはず。

 って、それだとボクがヒロイン側になっちゃうけどね。


 と、余計なこと考えてる場合じゃないか。

 のんびりして逃がすワケにはいかない。

 そう。一人も逃がせない。


『ご主人様?』


 カシャン、と肩部装甲を開く。

 折角だから、『万魔撃・模式』の試し撃ちに付き合ってもらおう。








 口封じ完了。

 これでボクが魔獣だって知ってる人間はいなくなった。

 一安心、とはいかないのがもどかしいところだね。


 むしろ、ここからの方が面倒くさいかも。

 帝国とか冒険者ギルドとか、あれこれと文句言ってくるだろうし。

 どう説明したものやら。


 それに、ある意味では初めての人殺し体験とも言える。

 これまでも、人攫いとか魔獣攫いとか、大勢をブチ殺してきた。

 だけど今回は少しだけ意味合いが違う。

 そう、口封じだ。

 細目職員や密偵さんはともかく、他の冒険者は巻き込まれただけ。

 何の非も無かったと言える。

 だから、ボクもあまり気分はよろしくない。


 今更って気もするんだけどね。善人ぶるつもりもないし。

 街との取引とかがあって、社会性を思い出したのかも。

 精神衛生のためにも言い訳が必要だね。

 人殺しの言い訳なんて、見苦しいことこの上ないんだけど―――、


 だけどまあ、ここは魔境だし。安全が保障された現代社会じゃないし。

 生き残るためには許される手段でしょ。

 アレだ、緊急避難ってやつだよ。

 ボクの正体がバレると、人間から敵視されて命の危険もある。

 だから口封じするしかなかった。

 嫌だったんだけどねー。自分の命が懸かってたんだから仕方ないねー。


 うん。正当化完了。

 まあ、やっちゃったことをあれこれ考えても無駄だよね。


『今後の人間への対応は、如何いたしましょう?』


 そう、大切なのはそこだね。

 建設中だったギルド支部は、人も物も綺麗さっぱり焼却しちゃった。

 だけど、北にある街には説明の使者くらいは送った方がいいかも知れない。


 そんな訳で、屋敷に戻って作戦会議中。

 部屋のソファでゴロゴロしながら、一号さんと話し合ってるだけなんだけど。


『全滅の、報告だけしよう。向こうが悪い。ボクが殺した。詳細は伏せる。聞かれても答えない。無視。そんな感じで』

『承知致しました。ですが、そうなると敵対する可能性が高いと思われます』

『向かうのは、メイドさん三名で、大丈夫?』


 最近はボクもかなり言葉を覚えてきた。

 身振り毛振りより随分とマシになったね。

 まだ少し拙い言葉遣いになるけど、意思疎通が楽になったのは嬉しい。


『街の戦力も大方は把握できております。三名であれば、争いとなっても脱出は確実に可能でしょう』


 使者と言っても、今回は、殺しちゃったよ報告になるからね。

 大人数に剣を向けられるかも知れない。

 でも大丈夫そうなので、突撃サインを出しておく。

 任せて、結果待ちだね。


 その間に、ボクはボクで出来ることを片付けておこう。

 備え有れば憂い無しって諺もあるからね。


『戦争の準備ですか?』

『違う。防衛の準備。とりあえず、この拠点を守る。その強化』


 どうもメイドさん翻訳は、一段過激になる傾向にあるね。

 結果的には正解になるかも知れないけど、まだ人間と積極的に争う段階じゃない。

 あくまで目的は防衛。

 のんびり過ごせる生活を守るのが大事。

 そのために拠点防衛力の強化を進めていこうと思う。


 これまでも武装の強化や魔術研究なんかは進めてきたけど、それをより進める感じかね。

 まずは早期警戒のための見張り塔の設置。

 ギルド支部を建てるために作ったやつを、拠点を囲う形でも置いていこう。

 侵入者を自動で発見してくれる魔法装置は便利だし。

 魔力供給は、警備役のラミアにやってもらえばいい。

 周辺の巡回はこれまでも行ってたから、その際に見張り塔も回ってもらえば、労力はさして変わらないからね。


 望めるなら、また外部に頑丈な城壁を築いて二重の防御にしたい。

 でもさすがに、そこまでの余裕は無いね。大工事になっちゃう。

 いっそ、この島から完全に人間を追い出せば楽になるのかな。

 だけど、そこまでするのは非道な気がする。


『人間と、本格的に戦って、勝てると思う?』

『……不明です。敵戦力の情報が不足しております』


 まあ、そうなるよね。

 ボク自身、けっこうな戦闘力を得た自覚はある。

 弱点になる『懲罰』対策も徐々に進めてる。

 だけどこの世界のことは、まだ狭い範囲しか知らないからねえ。

 あんまり調子に乗ると、手痛いしっぺ返しを喰らいかねない。


「人間と戦うのかニャ? なら、あたしがまとめて燃やしてやるニャ!」


 元ファイヤーバードが籠の中でなにか言ってる。

 以前の姿で言ってくれたら、どうぞどうぞってお願いしたくもなったかも。

 でもいまは小さな赤鳥なので、まったく頼りになりそうもない。


「雷鳥のヤツも呼ぶといいニャ。アイツ、あたしよりずっと過激だからニャぁ」


 そういえば、サンダーバードも怖いんだよね。

 いつひょっこり会うか分からない。

 その時のためにも、やっぱりボク自身をもっと鍛えておきたい。


 片付けておきたい魔獣もいるし、ちょうどいいかもね。

 いまは遠くまで探索に行くのは得策じゃないけど、手近なら構わないでしょ。


『明日、時間あるかな』


 メイドさんも誘っておこう。

 お弁当とか、他にもあれこれと用意してもらえるだろうし。

 いや、お弁当は現地調達でいいか。


『湖まで、ピクニックに行かない?』


 もちろん遊びに行くんじゃないよ。

 だけどまあ、ちょっとだけ気分転換。

 たまには焼き魚とか食べてもいいと思うんだ。



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魔眼 ジ・ワン   LV:17 名前:κτμ


戦闘力:9480

社会生活力:-2780

カルマ:-7860

特性:

 魔眼種   :『八万針』『完全吸収』『変身』『空中機動』

 万能魔導  :『支配』『魔力大強化』『魔力集束』『破魔耐性』『懲罰』

        『万魔撃』『加護』『無属性魔術』『錬金術』『生命干渉』

        『上級土木系魔術』『障壁魔術』『深闇術』『連続魔』

        『魔術開発』『精密魔導』『全属性耐性』『重力魔術』

        『炎熱無効』

 英傑絶佳・従:『成長加速』

 手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』

 不動の心  :『極道』『不屈』『精神無効』『恒心』

 活命の才・弐:『生命力大強化』『頑健』『自己再生』『自動回復』『悪食』

        『激痛耐性』『死毒耐性』『下位物理無効』『闇大耐性』

        『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』

 知謀の才・弐:『鑑定』『精密記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』

 闘争の才・弐:『破戒撃』『回避』『剛力撃』『疾風撃』『天撃』『獄門』

 魂源の才  :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』

 共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』

 覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則改変』『即死無効』

 隠者の才・壱:『隠密』『無音』

 魔眼覇王  :『大治の魔眼』『死滅の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』

        『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『破滅の魔眼』

 閲覧許可  :『魔術知識』『鑑定知識』『共通言語』

称号:

『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』

『悪業を積み重ねる者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』

『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』

『人殺し』『君主』『不死鳥殺し』


カスタマイズポイント:270

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