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07 魔獣の壁を越えて

《総合経験値が一定に達しました。魔獣、オリジン・ユニーク・ベアルーダがLV15からLV18になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》

《行為経験値が一定に達しました。『水冷耐性』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『高速吸収』スキルが上昇しました》

《特定行動により、称号『蛮勇』を獲得しました》

《『無謀』は『蛮勇』へと書き換えられます》

《称号『蛮勇』により、『下位物理無効』スキルが覚醒しました》


《条件が満たされました。『生存の才・弐』は『生存の才・参』へと強化されます》

《条件が満たされました。『知謀の才・壱』は『知謀の才・弐』へと強化されます》

《条件が満たされました。『闘争の才・壱』は『闘争の才・弐』へと強化されます》


《魔獣、オリジン・ユニーク・ベアルーダは進化可能です》

《進化承認後、新たな固体を設定します》

《特殊条件が満たされました。進化による強化項目が追加されます》





 水面に浮かんで、大きく息を吸い込む。

 咳き込む。

 ひとしきりゲホゲホ言ってから、空気の有り難味をたっぷりと味わう。


 あ~……死ぬかと思った。

 本当に、心底から死ぬかと思ったよ。

 ギリギリのところで、巨大魚竜を仕留められた。

 『吸収』しきっての勝利だ。

 直後、巨大魚竜はボロボロに崩れて、体内にあった空気も勢いよく放出された。

 その空気に吹き上げられる形で、ボクも水面まで脱出できたという訳だ。


 とはいえ、まだ魚竜の群れは残っていたはずだけど―――。

 水中を確認してみると、どうやら逃げ去ったみたいだね。

 揃って背を向けて離れて行ってる。

 ボスを倒されて脱兎の如く、ってところかな。

 仇討ちをしようとか考えるのはいないみたいだ。

 そこらへんの行動は魔獣だね。やっぱり自分の生存が最優先らしい。

 ボクなんかを倒しても、得られるものは何もないしねえ。


 でも正直、助かったよ。

 毛針や魔眼を撃ちまくったから、ボクもかなり消耗してる。

 魔力の残りも、大きいのを一発撃てるかどうかだ。

 逃げてくれるなら、しばらくこうして浮かびながら回復を待とう。

 まさか、アレ以上に巨大な魔獣が現れるのは無いと思いたい。

 超古代魚竜とか……いないよね?







 無事に岸へと辿り着く。

 静かな湖畔へと戻ってきたよ。

 そこらへんで木々が倒れていたり、地面が裂けていたり、大変な有り様だ。

 巨大魚竜が暴れたおかげだね。

 折角、景色も綺麗で過ごし易そうだったのに。

 ボクが怒らせた所為?

 いやぁ、あんな凶暴な魚がいるのが悪いでしょ。

 早々に駆除できたのは、結果としては僥倖だって言えるかもね。


 この湖だけでなく、ここら一帯が、あの巨大魚竜の縄張りだったんだと思う。

 戦いの最中にも、魚竜以外の魔獣は姿を見せなかった。

 たぶん、普段から近づかないようにしてるんだろうね。

 だとすると、ボスが倒されて魔獣の移動が起こりそうだ。

 生態系の変化ってやつだね。

 でも、今すぐにどうこう、っていう訳でもない。


《行為経験値が一定に達しました。『沈思速考』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『魔力圧縮』スキルが上昇しました》


 少なくとも一晩か二晩か、静かな湖畔で過ごせるはず。

 魔力回復を図りつつ、辺りも見て回っているけど、やっぱり魔獣の姿はない。

 つまりは、拠点を作るのに良い場所だ。

 安心して進化もできそう。

 前回の進化だと、数時間は眠ってたみたいだからね。

 充分な警戒と準備が必要でしょ。


 ただ、少し気になる場所も見つかった。

 湖に面して、花畑が広がっていた。樹木と花で平らな土地を囲む形になっている。

 学校のグラウンドくらいのスペースはあるね。

 そこに草花と、破壊の跡が残されていた。

 破壊の跡は、たぶん魚竜が暴れたものだろうね。

 地面が綺麗に切り裂かれている部分がある。水流カッターの跡は分かり易い。

 あと、何かを食い散らしたような痕跡もあった。

 血液か体液か、異臭を放つ黒い染みも目に留まった。

 ほんの少し前に、派手な狩りがあったみたいだ。

 綺麗な花畑と、凄惨な残り香と、アンバランスな光景だね。


 問題なのは、こういう場所って魔獣を引き寄せそうだっていうこと。

 残飯に集まってくる、みたいな?

 危険な匂いを嗅ぎ取って避ける魔獣もいるんだろうけどね。

 いずれにしても、あまり長居したい場所じゃない。

 狩られた側の魔獣は何なのか、その点は気になったけど、ボクは一通りの観察を終えると森へと足を向けた。


 拓けた場所っていうのは活用できそうなんだけどね。

 良い拠点になりそう。

 でも今は、早々に進化するための寝床が欲しい。

 まあ、この森で確実な安全なんて無茶な要求ではあるね。

 なので花畑から少し離れてから、ボクは穴を掘ることにした。


 地中だからって安全とは限らない。

 巨大魚竜のブレスは貫通してきたし、ミミズみたいなのもいるからね。

 だけど土壁を固めれば、ミミズの襲撃くらいは防げる。

 『土木系魔術』のおかげだね。

 まだ穴を掘ったり、土を固めたり、あるいは木を少し移動させたりと、単純なことしか出来ない。

 だけどやっぱり魔法は便利だ。

 単純なものでも組み合わせれば、家くらい作れそうだしね。


 さて、地下室完成。

 しっかりと固めた壁や床は、『貫通針』や『衝撃の魔眼』にも少しは耐えられる。

 絶対とは言えないけど、ミミズ程度には食い破れないはず。

 時間が掛かるので、まだ戦闘では使えないけどね。

 天井には、ちゃんと空気を取り入れる管も作っておいたよ。


 それじゃあ進化―――の前に、やっておくことがある。

 折角だから、ポイントを使い切っちゃおうと思う。

 ちょうど区切りがいいからね。

 進化すれば、100か200は貰えるはずだし。

 それに、さっきの戦いで”才能”の部分も強化されていた。

 ポイントに頼らなくても、努力次第で”才能”も伸ばせるってことだ。

 ここは早目に強くなるのを優先しよう。


 で、現在のポイントは580。

 何処に割り振るかの問題だけど、極フリしていこうと思う。

 なるべく長所を伸ばす方針で。

 その結果―――、


 『魔導の才』に500ポイントを注いで、一段階強化しました。

 『万能魔導』になりました。以上。


 もうちょっと強化できるとも思ったんだけどね。

 残念ながら、ひとつだけで終わっちゃった。

 『魂源の才』や『不動の心』も強力そうだから、伸ばせるか試してみた。

 だけどシステムの答えは『条件を満たしていません』だった。

 どうも”壱”とか”弐”とか付いていないのは、それなりに上位の才能な気がする。

 以前に強化した『魔眼の覇者』もそうだしね。

 それでも何かしらの条件さえ満たせば、まだ成長させられる望みはある。

 強くなっておいて損は無いだろうからね。

 生き延びるためにも、貪欲に上を目指すよ。


 そのためにも、そろそろ進化しておこう。

 今回は選択先がなかったけど、妙なメッセージも出てたね。

 新たな固体を設定、とか。

 ちょっとワクワクする。

 それじゃあシステムさん、なるべく強力なのをお願いするよ。


《申請を受諾。進化を開始します》


 ボクは静かに目を閉じて、意識を手放す。

 高揚感はあったけど、それもすぐに暗闇に溶けていった。




《魔眼、ジ・ワンへの進化が完了しました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》

《進化により、『九拾針』が『八万針』へと強化されました》

《進化により、『操作』が『支配』へと強化されました》

《進化により、『高速吸収』が『完全吸収』へと強化されました》

《進化により、『空中遊泳』が『空中機動』へと強化されました》


《進化により、『全属性耐性』スキルが覚醒しました》

《進化により、『状態異常耐性』スキルが覚醒しました》

《進化により、『精神無効』スキルが覚醒しました》


《条件が満たされました。『生存の才』が『活命の才』へと強化されます》

《特殊条件が満たされました。『魔眼の覇者』は『魔眼覇王』へと強化されます》

《特殊条件が満たされました。『死滅の魔眼』スキルが解放されます》

《特殊条件が満たされました。『災禍の魔眼』スキルが解放されます》



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魔眼 ジ・ワン   LV:1 名前:κτμ


戦闘力:7280

社会生活力:-3280

カルマ:-6350

特性:

 魔獣種   :『八万針』『完全吸収』『変身』『空中機動』

 万能魔導  :『支配』『魔力大強化』『魔力集中』『破魔耐性』『懲罰』

        『万魔撃』『加護』『無属性魔術』『錬金術』『生命干渉』

        『土木系魔術』『闇術』『高速魔』『魔術開発』『全属性耐性』

 英傑絶佳・従:『成長加速』

 手芸の才・参:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』

 不動の心  :『極道』『不屈』『精神無効』

 活命の才・壱:『生命力大強化』『頑健』『自己再生』『自動回復』『悪食』

        『激痛耐性』『猛毒耐性』『下位物理無効』『闇大耐性』

        『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』

 知謀の才・弐:『鑑定』『沈思速考』『記憶』『演算』『罠師』

 闘争の才・弐:『破戒撃』『回避』『強力撃』『高速撃』『天撃』

 魂源の才  :『成長大加速』『支配無効』『状態異常耐性』

 共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』

 覇者の才・壱:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則改変』

 隠者の才・壱:『隠密』『無音』

 魔眼覇王  :『大治の魔眼』『死滅の魔眼』『災禍の魔眼』『衝撃の魔眼』

        『闇裂の魔眼』『凍結の魔眼』『雷撃の魔眼』『破滅の魔眼』

 閲覧許可  :『魔術知識』『鑑定知識』

称号:

『使い魔候補』『仲間殺し』『悪逆』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』

『悪業を積み重ねる者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』

『エルフの恩人』『魔術開拓者』


カスタマイズポイント:300

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