表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/185

17 単眼仲間……?


 死毒との戦いは丸一日くらい続いた。

 いやぁ、自分で使える毒ながら、本当に恐ろしいね。

 でも生死の境を彷徨ったおかげか、得るものも大きかった。


《行為経験値が一定に達しました。『自然治癒』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『自動回復』スキルが解放されます》


《行為経験値が一定に達しました。『瞑想』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。スキル『瞑想』と『高速思考』が統合され、スキル『沈思速考』が解放されます》


 スキル統合。

 そういうのもあるのか。

 『沈思速考』って名前からすると、気持ちを落ち着けて、速く考えるのをサポートしてくれるのかな。

 ん~……あ、魔力回復が早まってる?

 これまでも『瞑想』してると、魔力は幾分か早目に回復してた。

 自分の内側から魔力が湧き出るようなイメージを作ってたんだけど……、

 それを自然に行えるようになったみたいだね。

 もっと落ち着いて心を沈めれば、さらに回復速度は上がる、と。


 うん。これは嬉しいスキルだ。

 我ながら器用な真似ができるようになったものだね。

 さて。毒もほとんど抜けた。

 あとは完全な回復を待って、今度こそ拠点作りに挑戦しよう。


《行為経験値が一定に達しました。『自己再生』スキルが上昇しました》


 ウツボカズラに溶かされた足も、ようやく再生が終わった。

 でも今日は動くのは危険だね。日も暮れかけてる。

 だけど丸一日も食事をしていないので、お腹が空いてる。

 何か食べたい。でも草木くらいしかないんだよね。

 死毒まみれのミミズは危険だし。


 あ、でも成長途中だったウツボカズラがあるか。

 毒針で倒したけど、魔眼ほど強い毒じゃない。

 それに、ボク自身の体で作った毒だから、耐性もあるんじゃないかな?

 ってことで、試食。

 うん……悪くないね。そこらへんの野草よりも油が乗ってる感じ。

 ちゃんと成長させてから食べた方がよかったかも。

 まあ、仕方ないね。安全とは言い難かったから。

 残った分だけでも、『吸収』も使って全部お腹に納めておこう。


 それじゃあ、完全に日が暮れる前に簡易拠点も作ろうか。

 魔力にはけっこう余裕が出てきてる。

 草やツタを編むくらいなら、いくらでも出来るね。

 だけどやっぱり、それくらいじゃ拠点の防御として心許ないんだよねえ。

 これまでは無事に過ごせたけど、寝ている時に襲われたら本当に危ないよ。

 地面の下からミミズが、「こんにちは、死ね」って来るかも知れないからねえ。


 どうしたものかね?

 木柵とか作りたいけど、そんなのは魔力全快でも難しい。

 そもそも使える木材と言えば、細い枝くらいだ。

 毛針だと、”切る”とか”加工”とかが出来ない。

 スキルを取るか、『土木系魔術』で試行錯誤するか、どっちにしても魔力不足だ。


 とりあえず、今日のところは木の上で休もうか。

 怪鳥の襲撃は怖いけど、枝を組んで隠れておけば大丈夫かな。

 あと、念の為に周囲にいくつか落とし穴も掘っておこう。

 適当な木を選んでよじ登る。寝床を作っていく。

 まだ陽が暮れたばかりだけど月が昇っていた。


 ……やっぱり異世界なんだよね。

 青白い月と、赤い月がある。

 なかなかに綺麗な光景だね。

 本当に幻想的で、ゆっくりと鑑賞できないのが惜しくなってくるよ。






 ぐっすりと眠って、陽が昇るよりも早くに目が覚めた。

 意識はすっきりしている。

 早目に寝たおかげか、それとも睡眠耐性のおかげかな。

 ともあれ、今日からあらためて活動開始だ。

 目指せ、拠点作成。


 と、その前に周囲の安全を確認しておこうか。

 ミミズに囲まれている、なんて状況だったら困るからね。

 一応、『危機感知』なんてスキルもあったけど、安心には程遠いね。

 むしろ『五感強化』の方が頼れるかも。

 贅沢を言うなら、レーダーみたいなスキルも欲しいところだね。

 人間の感覚だったら無理だと思うところだけどね。

 仮にも体は魔獣なんだから、素早く敵の接近に気づけてもいいとは思う。

 もしくは、そういった魔法でも見つけられると楽になるね。


《行為経験値が一定に達しました。『待機』スキルが上昇しました》

《条件が満たされました。『静寂』スキルが解放されます》


 んん? またなんかスキル解放だ。

 待機から静寂か。

 じっとして静かにするのが得意になるスキルってことかな?

 サバイバル生活だと、少しは役に立ちそうだね。

 変に音を立てて、厄介な魔獣とか引き寄せたくないから。


 さて、周囲の安全確認よし。

 お腹も空いてるし、今度こそ食料確保を優先だね。

 川の位置は覚えてるから、ひとまず水場の確保はできてる。

 この体だと水は必要なさそうだけど、いざって時に使える可能性もあるからね。


 ともあれ、食料を探そう。

 最低限数日分の食料は確保しておきたい。

 数日分がどれくらい必要なのかも分からないけど、まあ適当に。

 この毛玉体だと、食事の量は少なくて済むからねえ。

 なにせ、体自体が小さいし。

 だけど『吸収』を使うと、体の大きさ以上の獲物も食べ尽くせるんだよね。

 そこらへんも謎だ。


 っていうか、この世界自体が謎だらけだね。

 まあ、いまは有りのままを受け入れるしかないかなあ。

 余裕があったら、この世界の一般常識とかも知りたいよ。


《『常識』は閲覧許可を取得可能です》

《カスタマイズポイントが足りません》


 あるの!? 投げ捨てるモノじゃないんだ!

 しかし常識が買えるって、すごいな、異世界。

 そういえば『魔術知識』とか『共通言語』とかもあるんだし、驚くほど不思議ではない、かな?

 また本みたいな形で読めるんだろうか。

 そういえば、地球では愛だって買えるって話があった。

 コンビニで売ってるんだっけ?

 まあいいや。どっちの世界もすごいってことで。

 それよりも、そろそろ出掛けよう。


 森の中をひょいひょいと進む。

 基本的には木の上を移動。

 普通に歩くよりも速度は落ちるんだけど、遠くまで見渡せるので幾分か安全だ。


《行為経験値が一定に達しました。『登攀』スキルが上昇しました》


 木登りにも慣れてきたね。

 最初は八本足ってどうなのかとも思ってたけど、本能なのか、自在に操れる。

 単純な運動能力なら、もう人間だった頃より上なんじゃないかな?

 体育の成績は下から数えた方が早かったからねえ。


 でもいまのサバイバル生活だと、積極的に体を鍛えておくべきだよね。

 『俊敏』とかは特性に表記されなくても役立ちそうだ。積極的に上げておきたい。

 いざという時の戦略的撤退のためにもね。

 あと、腕立て伏せとかしたら腕力アップ系のスキルも上がるのかな?

 まあ足しか無いのに、どうやって腕立て伏せするのって話なんだけど。


《行為経験値が一定に達しました。『剛力』スキルが上昇しました》


 えっちらおっちら、石を担いで歩いてみた。

 スキルアップ!、と喜んでばかりもいられないね。

 お腹空いてるのに、なんでさらに疲れるようなことしてるんだろ。

 思いついたから、つい、ね。

 でもこういう鍛錬は、もっと余裕がある時にしよう。

 ってことで、石を捨てる。

 ズゥン、と。


 え? 石を捨てた音じゃないよ?

 森が揺れた。

 っていうのはちょっと大袈裟だけど、とにかく震動が伝わってきた。

 重い物を落としたような。

 しかも一回じゃない。断続的に、音と震動が響いてくる。


 なんかマズイ。

 危機感知に頼らなくても分かるよ。

 木陰に隠れながら、近づいてくる大きな音の正体へと目を向ける。

 ほどなくして、ソイツは現れた。


 背丈は周りにある樹木とほとんど同じくらい、五メートルほどもある。

 人型。緑色の皮膚に覆われた全身は、石よりも硬そうな筋肉の塊。

 木をそのまま持ってきたような棍棒を片手で持っている。

 単眼の巨人だ。

 サイクロプスってやつだね。特殊部隊や大量破壊兵器じゃない方の。


 とりあえずは一体だけか。

 ミミズみたいに群れてたら、こうして観察するのも怖かったかもね。

 でも人型で、一応は武器を持つ知能はあるんだよね。

 もしかしたら、仲間を連れてきて集落を作るくらいの知恵もある?

 そうなったら厄介だね。

 まあ、そうなったらボクが拠点を移せばいいんだけど……と、足を止めたね。


 巨人は、きょろきょろと周囲を見回す。

 何かを探してる?

 まあいいや。ああいう危ない奴には近づかないのが一番だよね。

 静かに離れよう―――、

 そうボクが足を動かした瞬間、巨人が棍棒を振り上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ