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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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20 帰還と、新たな情報


 土くれで作った円盤を飛ばす。

 ボクの世界だとフリスビーと呼ばれるものだ。

 そのままだと重いので、重力魔術で軽くしてある手の込んだ玩具だ。


 追い掛けるのは黒狼と、竜人幼女。

 他の子供、幼ラウネや幼ラミアたちも周りで遊んでいる。


『難しいかとも思ったけど、すっかり馴染んでるね』

「ご主人様の威光によるものかと判断します」


 ボクはただ彼女を拾っただけ。

 ちょっぴり泣かせはしたけど、ほとんど躾なんかはしていない。

 この拠点に戻ってくるまで、一号さんに散々叱られたのが効いたみたいだ。


 根は素直なんだろうね。

 外で魔獣を見つけると、すぐに齧りつくような狂暴さも持ってるけど。

 ともかくも、もう放っておいても大丈夫そうだ。


『大陸はまだ混乱してる?』

「はい。各地で竜による被害が拡大しております。ですが魔族領では、また別の状況も出てきているようです」

『別の状況って?』

「竜の排除は、ほぼ完全に成功しております。しかし魔族領の中央では被害も出ており、その混乱に乗じて……」


 なにやら深刻な話のようだった。

 だけどその深刻さも一切無視して、元気一杯の声が割って入ってきた。


『毛玉ぁ、もう一度投げろ! 竜が狼に負けるなど認められんのだ!』


 竜人幼女が唇を尖らせて駆け寄ってくる。

 フリスビーを咥えた黒狼も一緒だ。


『空飛べば勝てるんだから、ムキにならなくてもいいのに』

『我は竜だぞ! 地上だろうと空だろうと、すべて制覇せねばならんのだ!』


 勝手な理屈を述べながら、竜人幼女は黒狼を撫でる。

 抱きついて、頬擦りして、存分にモフっている。

 黒狼は迷惑そうに目を細めていたけど、為すがままになっていた。


 騒々しい子供だけど、喧嘩するよりはいいか。

 もう一度フリスビーを投げてやってから、ボクは屋敷へ戻ることにする。


『大陸が落ち着くまでは、やっぱり時間が掛かりそう?』

「推測ですが、少なくとも半年は、各国が竜の対処に追われるかと」


 あるいは、異界門が残っていたら状況は違ったかも。

 残った竜の群れも、元の世界に逃げ帰れたんだから。


 だけど援軍が来るかも知れなかったし。

 システムさんだって”星降らし”とかで門を壊そうとしてたし。

 いまの状況は、ボクとしては望ましい。


 でも大陸の人達にはちょっぴり同情する。

 外来襲撃が完全に終息するのは、もう少し先になりそうだ。








 大陸での竜騒動とは裏腹に、この島は平穏が保たれている。

 魔境とか呼ばれてるのに。皮肉なものだ。

 ちょこちょこと拠点に寄ってくる魔獣はいるけど、ラミアたちをはじめ、迎撃部隊が活躍してあっさり仕留めてくれる。


 おかげでボクは、ごろごろする生活に戻れた。

 いや、以前よりも充実した怠惰生活だね。

 何もせずにベッドで転がってるだけじゃない。

 転がりながら、電子書籍みたいなもの、に目を通していく。


 メイドさんたちが作ってくれた魔法道具だ。

 枕サイズの鉄板に、複雑な魔術式が組み込まれて、様々な映像を呼び出せる。

 大型のスマホ、と言うほど高機能じゃない。

 茶毛玉を通した映像や、幾つかの記録しか見られない。

 だけど暇潰しには充分だ。


 大陸の各地に潜入した茶毛玉のおかげで、色々な本の写しなんかも読める。

 どうやって本の写しなんか取ったのか?

 それはまあ、各地にある図書館とかに高性能茶毛玉が忍び込んで。

 夜中とか、人がいない時間帯にちょこちょこっと。

 とある図書館では、夜中にうろつく毛玉が噂になっているとか。


 多少の情報漏洩は仕方ない。

 これまでも見つかって撃ち落とされた茶毛玉はいたからねえ。

 それ以上の収獲があったんだから良しとする。


 いまボクが目を通しているのは、過去の外来襲撃に関する史料だ。

 本当ならもっと前に読みたかったんだけど、予定よりも襲撃が早かったのが悪い。


 だけど史料からすると、外来襲撃の予定がズレるのは珍しくないらしい。

 だいたい十日前後はズレてる。

 それでも三十日以上も早かったのは記録にない。

 何百年も前に起こったのもあるから、何処まで正確かは分からないけど。


 それよりも、過去の敵や、こちらの世界の戦いぶりが気になっていた。

 システムさんや勇者頼りな部分はあるけど、人類も奮戦していて―――。


「ご主人様、お時間をいただけますか?」


 声を掛けてきたのは一号さんだ。

 ボクは画面に向けていた視線を上げて、話を聞く姿勢を取る。


「先日、リュミリスより聴取した異界門に関する話です。彼女が知っていた儀式や唄、そこには魔術式にも似た効果が隠されていると判明致しました」

『つまり、異界門が開けるってこと?』

「いえ。残念ながら、そこまでは至っておりません」


 んん? どういうこと?

 なんだか複雑な話になりそうかな?


「推測ですが、儀式や唄だけでは部品が足りない形になるようです。龍神とやらがそれを埋めるのか、他に要素があるのか、不明な部分が多々あります」


 ん~……例えるなら、扉を開く鍵のパーツが少し手に入った、ってこと?

 小さな一歩ってところかな。


 そういえば、メイドさんたちは元々、故郷である異世界へ帰るための研究にも使われていたんだっけ。

 その研究からの積み重ねもあって、今回の結果が得られたってことか。


 でも、まだまだ異界門を操るのは難しそうだ。

 あんまり期待はしてなかったから、進展があっただけでも喜ぶべきかな。


『竜力ってのは、何か分かった?』

「恐らくは魔力に似たものかと。代用は可能だと推測します」


 あくまで推測か。

 分からないことだらけでも、それも仕方ないね。

 そもそも自分で異界との扉を開くなんて、これまでは考えもしなかった。


「いま以上の情報を得るためには、やはり開いている異界門の調査が必要かと」

『それは、完全に消滅させちゃったからねえ』


 破片くらいは残ってるかも知れないけど、死獄結界の中だ。

 あそこに踏み込んで調べられるものじゃない。

 消し去る前に茶毛玉で潜入はしていたけど、詳しい調査は無理だった。


 メイドさんが直接に近づければ違っただろう。

 だけど現状では、次の外来襲撃を待つしかない。

 何十年か、あるいは百年以上も先になるかも知れないけど―――。


 そこまで考えて、ふと思い出した。


『ひとつ残ってるんだっけ? 開いたままの異界門が』

「はい。二百年以上も前のものですが」


 年代はあまり関係ないんじゃないかな。

 同じ技術が使われているかも分からないし。

 それに、いまも”開いてはいる”けど、”解放はされていない”。

 氷漬けにされているはず。


「よろしければ、調査の検討をお願い致します」


 一号さんは調べたいみたいだけど、どうしようかな。

 それがある場所も問題だ。

 史料によると、エルフ領にあるんだよねえ。

 近づくだけでも、ボクなんかは真っ先に攻撃されそうだ。


『考えておく。でもあんまり気乗りしない』

「承知致しました」


 食い下がるでもなく、一号さんは静かに一礼する。

 折角の提案だけど、機会はずっと先だろうね。

 興味が無い訳じゃない。

 エルフと獣人が同居してる島って話だし、見てみたいとも思う。


 だけど偵察だけなら茶毛玉でもできる。

 だからしばらくは、ボクが直接に訪れる事態はないはず―――。


 そう思っていたんだけどね。

 三日後、新たな情報が入った。

 エルフ領に、敗走した竜軍団の一部が向かっている、と。



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