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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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16 邪龍軍団vs帝国軍vs毛玉③


 邪龍と勇者が本格的に戦いを始めた頃、ボクはこっそりと移動を始めた。

 森を抜けて、小高い丘の上へと転がる。

 念の為に飛行もしない。一号さんにも近くの森で待機してもらった。

 見晴らしの良い場所だけど、ボクなら草むらに隠れられるからね。

 『隠密』や『暗殺』スキルが役立つ時だ。

 竜が真上を飛んでも見つからない自信があるよ。


 逆に、竜軍団の陣地は丸見えだ。

 巨大な異界門も隠しようがない。

 門の前には、副ボス黒龍が座り込んでいるのも確認できる。


 そう。ボクの狙いは、異界門と黒龍だ。

 邪龍? あんな化け物は勇者サガラくんに任せるよ。

 もしも戻ってくるようだったら、すぐさま逃げる。

 そのためにメイドさんに監視してもらってる。

 予定外の事態が起これば、すぐに知らせてくれる手筈だ。


 ボクがいる丘の上と黒龍陣地は、充分に離れている。

 魔術だってまず届かない。

 黒龍のブレスを向けられたら、安全とは自信を持っては言えないけど。

 まあ見つかっても、撤退する余裕くらいはあるはず。


 ただ気になるのは、黒龍の配下にも数千体の竜がいることだ。

 あの竜軍団、意外にも強烈な集団攻撃技を持ってる。

 集団戦術じゃなくて、集団攻撃。


 邪龍が出陣した後、またシステムさんによる”星降らし”があった。

 異界門を狙ったものだ。

 黒龍も高い戦闘力を持っているけど”星降らし”は防げないはず、とシステムさんは考えたんだろう。

 その判断は妥当だった、とボクも思う。


 だけど黒龍は数千の竜軍団と素早く陣形を整えて、一斉にブレスを吐いた。

 そして見事に巨大隕石を撃墜してみせた。

 単純にブレスを束ねたというより、魔術的に力を集束したみたいだった。

 『万魔撃』も、小毛玉と合わせて威力を高められる。

 竜たちは魔法陣も浮かべてたし、似たようなものかな。


 ともかくも、その集団ブレスは脅威になりそうだった。

 だから、狙うのは一撃虐殺。

 油断している竜軍団を、不意打ち一発で壊滅へと追い込む。


 今更だけど、悪どい戦い方だなあ。

 竜軍団にちょっぴり同情するよ。

 だけどあんな連中がいたら迷惑だからね。先に攻めてきたのは向こうだし。

 よし。同情終わり。


 ってことで、そろそろ仕掛けようか。

 草むらを静かに掻き分けて、竜軍団の全容を視界に収める。

 黒龍の姿も確認できた。

 異界門も合わせて、黒龍も竜軍団もすべてをまとめて狙う。

 視線の先は、奴等の中心部、その頭上だ。

 それじゃあ―――『重壊の魔眼』、全力発動!


《行為経験値が一定に達しました。『暗殺』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『魔力集束』スキルが上昇しました》



 黒龍軍団の上空に、小さな黒い球体が現れる。

 それはまだ効果を発揮しない。奇妙な影でしかない。

 けれど、どんどん膨れ上がっていく。

 何体かの竜が気づいて首を傾げた。

 黒龍も顔を上げると、一拍の間を置いて目を見開いた。


 だけどもう遅い。

 直後、天地が逆転する。

 黒球が重力の中心となって、周囲のなにもかもを呑み込んでいく。

 竜たちは混乱して雄叫びも上げたが、その声まで歪み、消えていく。


 一瞬にして数百体、あるいは千体以上の竜が、黒球に吸い込まれて潰された。

 咄嗟に抵抗するものもいた。

 空へと飛び立とうとするもの、地面に爪を立てて踏み止まろうとするもの―――、

 黒龍も四ツ足で地面を掴んで留まっていた。


 だけど『重壊の魔眼』は、ここから本領を発揮する。

 周囲のすべてを呑み込み、溜め込まれた重力が、一気に解放された。


 正しく天地崩壊だ。

 真っ黒な破壊が吹き荒れる。

 天を割った黒い柱は何処まで伸びたのか、その先は見て取れない。

 大地も割れて、無数の亀裂が走った。

 遠く離れていたボクの場所まで、ビリビリと震動が伝わってくる。



《外来種の討伐により、経験値に特別加算があります》

《総合経験値が一定に達しました。魔眼、バアル・ゼムがLV9からLV18になりました》

《各種能力値ボーナスを取得しました》

《カスタマイズポイントを取得しました》

《行為経験値が一定に達しました。『重壊の魔眼』スキルが上昇しました》

《行為経験値が一定に達しました。『一騎当千』スキルが上昇しました》

《特定行動により、称号『大量殺戮者』を獲得しました》

《称号『大量殺戮者』により、『唯我独尊』スキルが覚醒しました》



 ボーナスタイムの効果もあって経験値大幅ゲット。

 そしてまた物騒な称号をいただいた。

 システムさんには色々と言いたいことが溜まってる。

 だけどいまは、目の前の状況を確認するのが先だ。


 やがて崩壊が収まると、そこには元の形を留めているものはひとつとして残っていなかった。

 いや、”ふたつ”だけ残ってる。


 まずは異界門。

 何ヶ所か罅割れて、傾いてはいるけれど、抉れた大地の上で聳え立っている。

 とんでもなく頑丈な造りらしい。


 それと、黒龍もまだ生きていた。すごい。

 どうやら咄嗟に魔術障壁を張って身を守ったみたいだ。

 輝く障壁がいまも明滅している。

 だけど全身血塗れ。大きな翼もボロボロ。

 後ろ足の一本は奇妙な捩れ方をして、もはや動くのも辛そうだ。


 まあ当然だよね。

 『重壊の魔眼』は、ボクが持つ攻撃手段の中でもトップクラスの凶悪さだ。

 対する黒龍の戦闘力は、推定で五万から六万。

 不意打ちで喰らって生きているだけでも大したもの。


 あ、しかもまだ余力もあるみたいだ。

 黒龍の全身から魔力光が放たれる。

 流れ出ていた血が止まって、ゆっくりとだけど傷を塞いでいく。

 回復するつもりらしい。


 そうはさせない。草むらから飛び出す。

 ボクと、そして先行させておいた小毛玉が。

 小毛玉なら、もしも発見されて潰されても代えが利く。

 なので、ギリギリまで近づけさせておいた。


 六体の小毛玉は黒龍を囲む形で接近する。すでに”溜め”も完了していた。

 そして放つのは『万魔撃』だ。

 野太い光の筋が六本、黒龍へ襲い掛かる。


 強い魔力の気配を察して、咄嗟に黒龍も反応した。身構えて障壁を張る。

 だけどそこは信頼と実績の『万魔撃』だ。

 慌てて張られた障壁なんて突き破る。


 巨体の黒龍にとっては、野太い閃光も爪楊枝みたいなもの。

 だけど突き刺さった光は、体の内部まで破壊するように爆裂を起こす。

 痛々しい雄叫びを上げて、黒龍は激しく仰け反った。


『ッ―――何者だ、貴様らは!?』


 む? 念話? 黒龍が小毛玉に向けたものか。

 でも今更、話す必要なんてない。

 こっちが何者かなんて知らせないし、命乞いだって聞かない。


 だけどちょっとしぶといみたいだし、念の為にプランGを発動させよう。

 空中を駆けながら、『爆裂針』を飛ばして合図を送る。

 森の中に隠れている一号さんに向けたものだ。


『死に行くトカゲに、ひとつ忠告をして差し上げましょう』


 合図を受けた一号さんが黒龍に語り掛ける。

 黒龍が慌てた様子で首を回した。何処から念話が送られたか探ってるようだ。

 だけどもちろん、一号さんは完璧に隠れている。


『無駄な抵抗は止めて、命を差し出すべきです。それが貴方と、いまも貴方の世界にいる者たちのためになります』

『我らの世界、だと……まさか!?』

『異界への扉が開いているのです。逆侵攻がないと、どうして言い切れるのです?』


 本当は、異世界へ赴くつもりなんて一切無いけどね。

 何が起こるか分からないし。面倒でもあるし。

 でも脅しとしては効果的だ。


『いえ、正確に言えば、すでに侵攻は始まっております』

『戯言を! 有り得ぬ! 我らはずっと扉を守っていたのだぞ!』

『貴方がたは体が大き過ぎるのです。故に、小さなわたくしたちの接近も察知できなかった。本当に、何も見落としがないと言い切れますか?』


 黒龍の顔が蒼ざめたみたいだった。

 その隙に、また小毛玉が『万魔撃』を叩き込む。

 怨嗟みたいな咆哮が上がって、黒龍の翼が根元から千切れ飛んだ。


 むう。トドメになるかと思ったんだけど。

 本当にしぶといね。

 でも、もう一発くらいで終わるかな?


『すでに小型の魔法装置を、あちらの世界へ送り込んでおります。小型とはいえ破壊を行うのに特化したもの。世界そのものにも打撃を与えます』


 実はこの話、半分は本当だったりする。

 高性能茶毛玉がこっそりと異界門をくぐってるんだよね。


『ご主人様の平穏を乱した罪は、死ですら贖えぬほど重いのです。故郷である世界を救いたくば、己の罪を悔い、無様に地べたへ頭を垂れ、泣きながら死になさい』

『ぐっ……バカ、な……我らは世界を守るために―――』


 黒龍の返答を待つ義理はない。

 ボクはトドメを撃ち込もうとした。

 だけどそこで、大きな魔力の動く気配がした。


 異界門からだ。

 開け放たれた扉の奥から、眩い光が溢れてくる。

 なんだか嫌な予感がした。


 撤退するべきか―――、

 そう身構えた瞬間、無数の影が飛び出してきた。


 考えてみれば、おかしなことじゃない。

 元より異界から現れたのは、邪龍や黒龍だけでなく、竜の軍団だった。

 軍なのだから、援軍だって有り得る。


 ボクの浅はかさを指摘するみたいに、竜の援軍が姿を現した。



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