23 戦い終わって
巨大亀の戦闘力は、不死鳥には及ばないくらい。
ボクはそう見積もった。
だけど、ちょっぴり上方修正するべきかも。
ファイヤーバードやサンダーバードが戦えば、たぶん圧勝する。
巨大亀は手も足も出ないで倒されるはず。
だけどそれは、単純にスピードが違いすぎるから。
防御力に関しては、巨大亀の方が上回ってる。
そして、攻撃力は互角―――。
ボクに迫ってきた太い水流ブレスは、かなりの威力だった。
小毛玉の『静止の魔眼』を打ち破るくらいに。
静止が効いたのは、ほんの一秒足らず。
回避するには充分な時間だったけど、ヒヤリとさせられた。
やるじゃない。巨大亀、グブラブル・グァルヴォン―――ん?
なんで巨大亀の名前が分かったんだろ?
あ、もしかして『解析』の効果かな?
自然と頭に名前が浮かんできたんだけど、いまは構ってる場合じゃないか。
ともかくも、この巨大亀、油断ならない相手だ。
だけど怖くはないね。
動きは鈍いから、いつでも逃げられるっていう余裕がある。
妙な進化でもされたら厄介だし、この機会に確実に仕留めるとしよう。
まずは死角になりそうな背後を取る―――と、そうはさせてくれない?
巨大亀の甲羅、その外周はギザギザに尖ってる。
無数の棘がついてるみたいになってるんだけど、それが撃ち出された。
弾丸みたいな速度で、ボクに迫ってくる。
しかもその棘、甲羅から伸びた触手で操られてる。
触手の先端に棘がついてる、って言った方が正解かな。
完全にボクを敵だと認識してるね。
数十本の触手が連携して、空にいるボクを叩き潰そうとしてくる。
巨木で作った鞭を振り回されてるみたいだ。
その風圧だけでも、弱っちい毛玉なら吹き飛ばされそう。
死角はなし、ってことか。
でも甘い。このくらいの攻撃なら、ボクの速度なら余裕を持って避けられる。
一気に触手の群れを抜いて、巨大亀の真上を取る。
そして、肩部装甲を解放。
『万魔撃・模式』、発射。
両肩から放たれた魔力ビームは、巨大亀が張った障壁を貫いた。
やっぱり『万魔撃』の特性なら、亀の障壁は破れるみたいだ。
だけど、その防御力自体は貫けなかった。
分厚い甲羅をちょこっと焼いただけ。
むう。ちょこざいな。
だったら他の攻撃で―――と、また触手が襲ってくる。
回避しつつ、ハルバードで反撃。
ガツン、と。
弾かれた。なにこの触手、すっごく硬い。
小型亀の肉は簡単に斬り裂けたのに、こっちは別格みたいだ。
刃こぼれもしてる。
メイドさんも自信作って言ってたのに、この亀の表皮はそれ以上ってことか。
素材として、少し持って帰りたい。
倒す理由が増えた。でも、この硬さをどうしたものか?
試しに魔眼を放つ。触手へ向けて。
《行為経験値が一定に達しました。『凍晶の魔眼』スキルが上昇しました》
威力を抑えた魔眼だけど、反射されなかった。
僅かな氷が、触手に纏わりつく。
お? イケる? 本体以外は反射防御が付いてないのかな?
なら、躊躇することはないね。
小毛玉から、次々と『凍晶の魔眼』を発動させる。
触手を凍りつかせていく。
巨大亀も攻撃に気づいて身じろぎする。
ボクの方へ首を向けて水流ブレスを放ってくる。でも、遅い。
回避して、その頃にはもうほとんどの触手が凍りついていた。
やっぱり防御だけじゃダメだよね。
攻撃こそ最大の防御。
いや、ボクが攻撃に偏ってるから言う訳じゃないんだけどね?
ともかくも、これでこっちの態勢は整った。
周囲に人がいないのは確認できてる。お城からも、角度的に見えない。
”溜め”を作る時間も取れた。
だから、胸部装甲を開いて、ボクの本体を覗かせる。
小毛玉も集めて、幾つもの眼で巨大亀を睨む。
そして、最大威力の『万魔撃』を叩き込んだ。
分厚い亀の甲羅が溶ける。
少しの抵抗を見せたけど、魔力ビームは巨大亀の内部まで届いた。
巨体の中心部を焼き砕く。
城壁も一呑みできそうな口から、けたたましい悲鳴が響き渡った。
でも、まだトドメじゃない。
『万魔撃』は効いたみたいだけど、桁外れの巨体に対しては、細い槍で刺した程度のダメージだ。
いや、内部を焼いて炸裂するから、銃弾くらいの威力はある?
どっちにしても、一撃じゃ致命傷まで届かなかった。
巨大亀が緑色の血を吐きながらも蠢く。
そこへ、もう一発『万魔撃』を叩き込む。
また亀は苦しそうに身悶えするけど―――マズイね、再生してる。
防御力だけじゃなく、生命力も優れてるみたいだ。
ボクの魔力とどっちが上か、根競べをするのは厳しいかな。
負ける気はしないけど、それよりもっといい手がある。
凍りついた触手を何本か叩き斬りながら、巨大亀の背中へ突撃する。
そのまま取り付いて、ボク自身から毛針を伸ばした。
甲羅があったら無理だったろうけど、傷口ができたいまなら可能だ。
『絶対吸収』、発動。
《行為経験値が一定に達しました。『絶対吸収』スキルが上昇しました》
《行為経験値が一定に達しました。『生命力大強化』スキルが上昇しました》
これまでの『吸収』だと、生きてる相手には幾分か抵抗された。
それでも効果的な技だったけど、ボクが取り付かないといけないから、手強い相手には使い難かったんだよね。
だけどこの『絶対吸収』は違う。
接近技なのは同じだけど、吸収力が段違いだ。
掃除機の比較CMで見せられるくらいに段違いの吸引力。
生きてる相手だって、瞬く間に吸い尽くせる。
地味だけど恐ろしい技だよ。
たぶん、並の人間相手なら一秒足らずで決着がつく。
掴まえたら終わり、って考えると、ねえ?
そんな相手、ボクだったら絶対に近づきたくないね。
吸収する側で本当によかった。
生命力や魔力、それに、もっと根源的な何かも一気に吸い上げて―――。
《総合経験値が一定に達しました。魔眼、バアル・ゼムがLV4からLV5になりました》
《各種能力値ボーナスを取得しました》
《カスタマイズポイントを取得しました》
《行為経験値が一定に達しました。『時空干渉』スキルが上昇しました》
ほんの十秒足らずで、巨大亀は吸い尽くされた。
真っ白な灰になって散っていく。
断末摩の悲鳴を上げる暇もなく、完全に消滅した。
素材としては、ちょっと勿体無かったかもね。
だけど『万魔撃』で散った甲羅の破片もあるし、触手も斬り落とした分は残ってる。あとで回収しておこう。
ともかくも、ボスは片付いた。
今回は妙なタマゴも残ってない。
あとは、小型亀が十数匹か。さっさと蹴散らすとしよう。
《特定行動により、称号『英雄』を獲得しました》
《称号『英雄』により、『魅惑』が覚醒。『英雄の才』が承認されました》
街を襲っていた魔獣を退治して一件落着。
めでたしめでたし。
そうして綺麗に片付けばいいのに、残念ながら人間ってのは面倒くさい。
ボクは何者なのか?
何処から来て、何が目的なのか?
自分たちは本当にもう安全なのか?
知らんがな。
いや、ボク自身のことはともかく、街の安全とか聞かれても困るよ。
とりあえず、魔獣は全部片付けた。
街のことは、自分たちで勝手にどうにかして欲しい。
元々、ボクの目的はそっちじゃないからね。
助けたんだから最後まで責任を取れ?
そんなこと言う人がいたら、海に投げ捨てるね。
幸い、住民たちは遠巻きにボクの様子を窺ってるだけだったけど。
住民っていうか、もう避難民か。
話し掛けてきたのは、その避難民たちの代表らしき人だ。
ハゲてる。服装からして、そこそこの地位にある魔術師っぽい。
中年のおじさんだ。
「まずは、お礼を言うべきでしょうね。助けていただき、深く感謝致します」
やや頼りなさげだけど、落ち着いた物腰の人だった。
あんまりボク自身の話はしたくないけど、この人に聞いた方が早そうだ。
ボクの目的は、まず縦ロール幼女の捜索だからね。
街中を探してもいいけど、貴族っぽかったから、有名人かも知れない。
聞き込みをしてもいいでしょ。
「ところで、お聞きしたいのですが……そちらはベアルーダ種なのでは?」
ボクが話を持ち掛けようとしたところで、ハゲおじさんが小毛玉を指差した。
む? ベアルーダ種?
確かに、以前のボクはそんな種族名だったけど―――。
「実は、私の教え子が、その魔獣と少々縁がありまして……」
そうしてボクは知らされる。
縦ロール幼女が、もうこの国にはいないこと。
そして、人質となっていることを。
まだこの章は続きます。が、次回更新まで少しだけ休憩させてください。
再開は年末か、年始か、前回ほどはお待たせしない……予定です。
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魔眼 バアル・ゼム LV:5 名前:κτμ
戦闘力:65800
社会生活力:-4160
カルマ:-12520
特性:
魔眼皇種 :『神魔針』『絶対吸収』『変異』『空中機動』
万能魔導 :『支配・絶』『懲罰』『魔力大強化』『魔力集束』
『万魔撃』『破魔耐性』『加護』『無属性魔術』『錬金術』
『上級土木系魔術』『生命干渉』『障壁魔術』『深闇術』
『魔術開発』『精密魔導』『全属性大耐性』『重力魔術』
『連続魔』『炎熱無効』『時空干渉』
英傑絶佳・従:『成長加速』
英雄の才・壱:『魅惑』
手芸の才・極:『精巧』『栽培』『裁縫』『細工』『建築』
不動の心 :『極道』『不死』『精神無効』『明鏡止水』
活命の才・弐:『生命力大強化』『不壊』『自己再生』『自動回復』『悪食』
『激痛耐性』『死毒耐性』『上位物理無効』『闇大耐性』
『立体機動』『打撃大耐性』『衝撃大耐性』
知謀の才・弐:『解析』『精密記憶』『高速演算』『罠師』『多重思考』
闘争の才・弐:『破戒撃』『超速』『剛力撃』『疾風撃』『天撃』『獄門』
魂源の才 :『成長大加速』『支配無効』『状態異常大耐性』
共感の才・壱:『精霊感知』『五感制御』『精霊の加護』『自動感知』
覇者の才・弐:『一騎当千』『威圧』『不変』『法則無視』『即死無効』
隠者の才・壱:『隠密』『無音』
魔眼覇皇 :『再生の魔眼』『死獄の魔眼』『災禍の魔眼』『衝破の魔眼』
『闇裂の魔眼』『凍晶の魔眼』『轟雷の魔眼』『重圧の魔眼』
『静止の魔眼』『破滅の魔眼』『波動』
閲覧許可 :『魔術知識』『鑑定知識』『共通言語』
称号:
『使い魔候補』『仲間殺し』『極悪』『魔獣の殲滅者』『蛮勇』『罪人殺し』
『悪業を極めし者』『根源種』『善意』『エルフの友』『熟練戦士』
『エルフの恩人』『魔術開拓者』『植物の友』『職人見習い』『魔獣の友』
『人殺し』『君主』『不死鳥殺し』『英雄』
カスタマイズポイント:50
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