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毛玉転生 ~ユニークモンスターには敵ばかり~ Reboot  作者: すてるすねこ
第4章 大陸動乱編&魔境争乱編
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12 OHANASIをしよう

 空中から、街門の正面に降り立つ。

 よく訓練された兵士なのか、ボクが近づいた時点でこちらに気づいていた。

 だけどさすがに動揺は隠せていない。


「な、何者だ!?」


 数名の兵士が武器を構えて、黒鎧を睨んでくる。

 まずは軽く『威圧』をオン。

 それだけで膝を震えさせる兵士もいた。

 よし。バッチリ効いてる。

 最初の一歩は計画通りだね。

 あとは簡単な説明をして、総督の屋敷まで押し通る、予定だったけど―――、


 あれ? なんか、バタバタと兵士が倒れていくんですが。

 白目を剥いてる。

 失禁してる人もいる。


『っ、ご主人様……申し訳、ありませんが……威圧を抑えていただけますか?』


 ふあっ!? 背後のメイドさんズまで苦しそうにしてる。

 そうか、進化で『威圧』効果も桁違いに上がってるんだね。

 オフ! オフー!

 まさか、こんなに効くとは思ってなかった。

 『威圧』の効果も調節できるように練習しないといけないね。


 ともかくも、メイドさんたちは無事。だけど少しふらついてる。

 兵士たちは倒れて意識を失ってる。

 その中心に立つのは、禍々しい黒甲冑。

 どう見ても悪役です。本当にありがとうございました。


 って、ボケてる場合じゃないね。

 まだ取り返しはつくはず。手当てを―――、


「な、何事だ! これは―――!?」


 ボクが動くよりも早く、また別の兵士集団が駆けつけてきた。

 あからさまな警戒の目を向けてくる。

 むう。どうしよう?

 話し合いが目的だったのに、その席へ着くだけでも難しそうだ。







 黒甲冑が兵士を虐殺―――なんて事態は辛うじて回避された。

 駆けつけてきた兵士の中に、ルイトボルトさんがいたおかげだ。

 彼は話が通じる帝国騎士だからね。

 威圧したら気絶されちゃったー、って事情を話したら、引き攣った顔をしながらも街へ入れてくれた。


 数名の兵士に先導されながら街路を進む。

 遠目にしか見たことがなかったけど、中に入るとけっこう広く感じるね。

 けっして都市とは言えないけど、村落よりも一段上ってところかな。


 だけど街というよりは基地だね。

 建物は、大勢が寝泊りする兵舎がいくつも並んで建てられてる。

 一軒家なんてほとんど見掛けられない。

 冒険者もいるって話だったけど、ギルドの建物も、道すがらには確認できなかった。


 真っ直ぐに街の中心へ向かって、大きな屋敷の前へと到着する。

 ふむ。ボクの屋敷より大きい。

 だけど壁とかは、ボクが作った方が頑丈そうで立派だね。

 門に彫刻なんかが施されてる分、こっちのが細かいところに手が込んでるみたいだ。


「総督へ話を通してきます。申し訳ありませんが、少々お待ちを」


 ボクは黙ったまま頷く。

 後にはボクとメイドさんズ、それと数名の兵士が残った。


 兵士たちは、まだ警戒の目を向けてきてる。

 そんなに気を張らなくても、ボクに暴れるつもりはないんだけどね。

 だけどまあ、フレンドリーに接するっていうのも無理か。

 この黒甲冑もあからさまに禍々しいし。

 そもそも、ボクは軽やかな会話とか苦手だし。


『ご主人様、やはり突然の訪問は無礼と取られたようです。総督は声を荒立てていますね』


 メイドさんがこっそりと念話で伝えてくれる。

 すでに街へ潜入してたメイドさんは、この総督府の中まで探ってくれていた。


『ルイトボルト氏が宥めてくれています。やはり穏当に交渉を進めるならば、彼に代表を務めていただくのが良策かと推察します』


 ボクはちらりと振り返って、頷くだけしておく。

 あとは黙って待つ。

 腕を組んで。仁王立ちで。

 蒼ざめた顔をした兵士たちに見つめられながら。

 『威圧』の調整を試しておこうかなあ、と思い始めたところで、ルイトボルトさんが戻ってきた。







 屋敷の内装はなかなかに綺麗だった。

 部屋には絨毯が敷かれて、調度品も揃ってる。

 辺境にあっても、さすがは大国の貴族ってところかな。


「おぬしがバロール殿か。冒険者ギルドには、随分と過激な挨拶をしたと聞いている」


 応接室でボクが向き合ったのは、帝国総督クルーグハルトさん。

 長いね。総督さん、でいいか。

 なかなかに渋い顔をした中年のおじさんだ。


 過激って言ったけど、この人の方がずっと過激だと思う。

 魔獣皆殺し思考だって、潜入メイドさんの調査で判明してるからね。

 その考えを改めてくれたなら、仲良くできたかも知れないのに。

 危険な人だ。油断ならない。


 でも考えが合わないからって、すぐに暴力に訴えるのは短絡的だよね。

 予定通り、事前の練習通りに、台詞を描かせてもらう。


『当方も、そちらのことは存じている。補給が途絶えて難儀しているそうだな』

「なっ……!」


 総督さんが目を見開く。

 ふふん。こちらの密偵は優秀なのだよ。

 驚かせたところで、一気に脚本を進めさせてもらうよ。

 暗記するのも大変だったんだから、無駄にはしたくないし。


『飢えるのは辛いだろう。こちらで手を差し伸べてもいい。助け合いの精神は大切だからな。幸い、こちらは食料に恵まれている』

「……高潔な心構えだな。だが、心配には及ばぬ。航路に現れた魔獣も、近い内に討伐されるはずだ」

『そういった事情も承知している』


 帝国軍は強いらしいからね。

 大陸の半分近くの領土を占めてるっていう話だし。

 リュンフリート公国の方は困ってるだけらしいけど、帝国はすぐに軍の準備をして、海の魔獣退治に乗り出してる。


 魔境に残された仲間を助けるために奮戦、海の魔獣を討ち払って、時間は掛かっても物資を届けてくれる―――。

 そう信じてるみたいだ。

 目の前の総督さんもそうだし、外の兵士たちも、まだ物資が残されてるので追い詰められてはいない。


『だが、私には関係ない』


 もう決めちゃったからね。

 帝国にも宣言して、認めてもらうとしよう。


『私は、この島全土を手中に収めると決めた』

「っ……それは、どういう意味だ? 宣戦布告とも受け取れるぞ?」

『この島は、知恵を持つ魔獣の領土とし、人間とは緩やかな交流を行っていく。いまはまだ隣り合う時ではない。故に、出て行ってもらおう』


 人間との戦争がしたい訳じゃないよ。

 むしろ取引は積極的に行いたい。

 だけど互いに警戒しなきゃいけない状態だし。

 領土が接してるだけでも気を緩められないし。


 なので、海を挟んでの交易くらいが丁度いい。

 そういう結論に達した。


『心配せずとも、安全は保障しよう。こちらで船を作り、大陸まで届けてやる。この街にいる全員をな。無論、武装解除はしてもらうが』

「―――ふざけるな!」


 テーブルを叩いて、総督さんは勢いよく立ち上がる。


「そんなものを認められるか! 貴様は、我らに魔獣に屈服しろと……っ!」


 ボクの姿が消えた。

 相手には、そう見えただろうね。

 隣にいたルイトボルトさんも、なにをされたか分かっていない。


 唖然とする二人の背後に、ボクは音も無く立っていた。

 そして、軽く肩を叩いてやる。


「っ!? い、いつの間に!?」

『抵抗するだけ無駄だ。私がその気になれば、この街すべてを焼き尽くすことも簡単なのだぞ?』


 ついでに、軽く『威圧』をオンにする。

 メイドさんが苦しまない程度に調整して。

 それでも騎士二人は言葉を失って、一歩後ずさる。


『十日待つ。賢明な選択を期待する』


 威圧を切って、ボクは部屋を出て行く。

 あんまり長居すると、まだ言葉が拙いのがバレちゃうからね。


 でも、こっちの主張は伝えた。

 あとは遅くとも十日後には決着がつく。

 なるべく穏便に済ませたいんだけど、どうなるかな?

 総督さんの悔しそうな顔からすると、期待はしない方がいいのかもね。



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