05 スキュラをすきゅう
感想欄を見て、100話達成だと気づきました。
応援ありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。
スキュラ集団発見の報告で、ひとつ気になる点があった。
小型の反応が二十ほどあるということ。
もしや、と思った。
だって、これまでの経験からすると、ねえ?
スキュラ幼女がいるんじゃないかなぁ、って思えちゃうんだよね。
銀子や幼ラウネとの出会いもあったし。
ラミアには卵まで差し出されたし。
そもそも、この世界に来て初めて会ったのも幼女だった。
もうこれは、そういう縁があるものだって諦めていいのかも知れない。
だから今回も、新たな幼女との出会いがある―――、
そんな予想は、半分正解で半分ハズレだった。
『小型の反応の半分は、狼型の魔獣だと判明しました』
狼? そういえばスキュラって、下半身に犬が生えてるみたいな話もあったっけ。
それが犬じゃなくて、狼になってる?
しかも生えてるんじゃなくて、別の魔獣になって一緒に行動してる?
いや、スキュラが従えてるって感じなのかな?
『どうやら狼型の方は、斥候を務めているようです。こちらの存在に気づかれました。申し訳ございません』
『構わない。けど、気づいて、その後の様子は? 向かってくる?』
『いえ。逆に離れていくようです』
なるほど。ひとまずは敵対的じゃないってことだね。
話が通じる可能性が高まった。
味方に引き込めるなら、その斥候能力は頼りになるかも。
何が目的なのか、何処から移動してきたのか、訊ねたいことも色々ある。
『それと、幼いスキュラも十名ほど混じっているようです。保護されますか?』
『うん。穏便に……』
とりあえずは様子見だね。
だけど一号さん、なんで幼スキュラがいるって分かった直後に、ボクが保護するかどうか聞いてきますかね?
しかも、それが当り前みたいに。
そりゃあ子供を酷い目に遭わせる趣味はないよ?
お城でも、子供たちと遊んでやってるよ?
でもべつに、ロリコンって訳じゃない。
むしろ、そういう業の深い人たちを糾弾する側だよ?
『ご主人様の趣味を理解し、その意図を汲み取るのも奉仕人形の務めです』
理解してないし。
むしろ、勘違いしてるし。
こういう時に即座のツッコミが入れられないだけでも、やっぱり喋れないのは不便だね。
『ともかく、いまは、その魔獣集団の監視を』
そこまで文字で書いたところで、背後で大きな水飛沫が上がった。
ラミア部隊だ。
そういえば、まだ狩りを続けてたね。
でもなんか様子がおかしい?
また一匹、魚竜を仕留めたみたいだけど、その死体を放って岸に上がってくる。
随分と慌ててるけど―――、
湖の真ん中あたりから、一際大きな水柱が上がった。
もしや巨大魚竜!?、とボクも身構える。
いや、毛玉体だから身構えるもなにもないんだけど、心情的に。
ともかくも警戒心を揺り起こす。
だけど予想は外れた。巨大魚竜じゃなかった。
現れたのは魚竜の群れだ。
数十体が一斉に空高くへと舞い上がる。
でも狙いは、ボクでもラミアたちでもなくて、湖の岸も越えてその先へ向かっていく。
城の方へ向かってる? いや、少しズレてるかな?
『彼女たちに追われて逃げ出した、といったところでしょうか。こちらへ突撃する形での撤退は、少々不自然ですが』
一号さんの言った通り、魚竜たちは慌ててるみたいだね。
逃げ出したっていうのは間違いじゃないと思う。
前方への撤退なのは、考え無しなのか、それともシマーヅさん的な精神でも持ち合わせてたのかな?
どっちにしても、ボクたちにとっては好都合だ。
当初の目的は、湖の安全確保だからね。
『あの魔獣がいなくなるのは、我々にとって良いことなのでしょうが……』
一号さんも事態を冷静に観察してた。
無表情のまま、少しだけ声に懸念の色を乗せる。
『逃げていく方向からすると、スキュラ集団と遭遇する可能性があります』
おおう。間が良いのか悪いのか。
魚と蛸の喧嘩が始まっちゃうのかな?
イメージからすると、蛸の方が捕食する側の気もするけど、魔獣には常識なんて通用しない。
どうなるか分からないね。
ここはひとつ、様子見に出向いた方がよさそうだ。
それにしても、この島は魔獣の移動が多いね。
アルラウネやラミアも、落ち着ける場所を探してた。
思えば、最初に会った巨人も、そういった探索の途中だったのかも知れない。
それだけ激しい弱肉強食環境にあるってことなのかな。
だけどそうなると、ますますスキュラの行動が謎だ。
魚竜たちが逃げ出したのは分かる。
追い払おうとしたのは、他でもないボク自身だからね。
でもスキュラって、海辺で暮らすものじゃないのかな?
下半身は蛸、というか海生生物っていう話だし。
現れた方角も西側だし、海のあるところからやって来たのは間違いなさそう。
だとすると、何かしらの理由で生活圏を追われたとしても、海沿いに移動すると思うんだよね。
あ、海と言えば―――、
この前、ファイヤーバードと派手な戦いを繰り広げちゃったんだよね。
もしかして、その影響もあったり?
なにかこう、バタフライエフェクト的に、生態系が乱れたとか?
…………。
…………うん。ボクは悪くない。
たとえそうだったとしても、暴れたのはほとんどファイヤーバードだし。
ボクはささやかな抵抗をして、運良く勝てただけだからね。
毒を流したのだって、ほんのちょっぴりだし。
魔法的な毒だから、時間で消えたはずだし。
《行為経験値が一定に達しました。『多重思考』スキルが上昇しました》
まあ、あれこれ考えてても仕方ないよね。
杞憂で終わる可能性だって高い。
スキュラ集団の事情も、直接に聞いてみればいいんだし。
『どうやら、好ましい状況になっているようです』
湖から飛んできたボクたちの下では、魚竜とスキュラの戦闘が始まってる。
経緯はともあれ、見事に鉢合わせしちゃったみたいだね。
形勢は、やや魚竜が有利かな。
数はスキュラの方が若干多いけど、魚竜の方が個体では強い。
鱗に覆われた体はそこそこ硬いし、水流ブレスも樹木を薙ぎ倒すくらいの威力はある。
スキュラ側は打撃力不足みたいだ。
黒毛の狼が噛みついたり、スキュラが触手から小さな針を出して叩いたりしているけど、魚竜に大きなダメージを与えるには至っていない。
それに、数の多さを活かしきれてないね。
あんまり集団戦をする種族でもないのかな。
おまけに、幼いスキュラもちらほらと見掛けられる。
そんな幼スキュラを守りながらの戦いだから、不利にもなる。
でもスキュラと意思疎通が可能なのはハッキリしたね。
戦いの最中にも、其々に言葉を交わしたり、クイーンっぽいスキュラが指示を出したりしてる。
魔術を使って応戦するスキュラもいるけど、やっぱり不利な状況は覆せそうもない。
ちなみに、クイーンっぽいスキュラは銀色の触手をしてる。
他のスキュラは赤くて、やっぱり蛸っぽいね。うねうねしてる。
『ご主人様が援軍として現れれば、彼女たちに恩を売れるでしょう』
一号さんが黒い。
無表情だけど、暗黒微笑が似合いそうな台詞だ。
まあ確かに、このまま観戦してるのもよろしくない。
そろそろ助けに入ろう。もちろん、スキュラの方を。
べつに、幼スキュラがいるからって理由じゃないよ。
元々、魚竜は狩り尽くすつもりだったし。
スキュラから情報も得たいし。黒狼はカッコ可愛いし。
もふもふ仲間として助太刀しよう。
『我々は、負傷者の手当てを行います』
うん。ボクはやっぱり攻撃役だよね。
まずは、『威圧』をオン。
途端に戦闘が止まって、魚竜もスキュラもこちらを見上げる。
唖然としてるその頭上から、『万魔撃』を叩き込んだ。




