出立
翌朝
私と土方サンと平助クンは屯所を出立し、近藤サン達より先に江戸へと向かった。
平助クンは近藤サンらより先に江戸へ着き、すべき事があるそうで、出たのは私達と同時だったが、気付けばどんどん先へと急いでいた。
普通の男性であれば京から江戸まで半月程度であろうが、私が行くとあってその倍の一月は掛かるであろうと計算していた。
永倉サンと代わると土方サンは言っていたが、近藤サンの護衛も兼ねた人数配置であった為、結局のところ他の誰かと代わる事はなく、私達が追加されただけであった。
江戸までの道のり、宿場街を経由して行くのだが、私の生まれ故郷も昔は宿場街として栄えていた場所だったので、そこを通る事も楽しみの一つだった。
8月6日に屯所を出立。
様々な宿を経由し、私の生まれ故郷をも通過しつつ、
9月6日には、私達は江戸へと到着する。
「近藤サン達より早く着いちまったか?とりあえず……石田村に向かうぞ」
「石田村って、日……野ですか?」
「多摩郡石田村と言やぁ、俺の生まれ故郷だ。お前の故郷よりかは栄えているぞ?」
土方サンは意地悪く言った。
「私の生まれ故郷だって……ですねぇ。私の時代には少しは栄えていますよ! そりゃあ東京、いえ江戸とは比較にもなりませんけどね」
私は必死に反論する。
「悪ぃ、悪ぃ」
土方サンはそう呟くと、私達は日野へと歩みを進めた。
「さて、着いた。まずは此処に寄らねぇとな」
土方サンに連れられた場所。
そうそれは……
日野宿本陣
いや
佐藤彦五郎邸
であった。
「こ……これは」
現代で何度か日野に訪れた事のある私は、思わず息を飲む。
日野宿本陣として現代にまで現存している史跡が、目の前に完全な形で佇んでいたからだ。
もちろん。
現代では無くなってしまっていた門もまだある。
「おい、どうした? でけぇから緊張してんのか?」
土方サンは心配そうな表情で尋ねた。
「いえ……大丈夫です」
立ち尽くす私の手をとると、土方サンは門の中に入って行った。




