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桜前線此処にあり  作者: 祀木 楓
第15章 蛤御門の変
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桜と島田


 私は、何か妙案は無いかと頭を巡らせる。


 一人であるならば、此処を抜け出す事は容易い。


 しかし、島田サンという見張りを付けられてしまった。


 私が此処を抜け出そうと画策したとしても、大柄な島田サンに簡単に担がれて終わるだろう。




 ともなれば……





 真っ向勝負しかない。





「島田サン……私の願いを聞いては頂けないでしょうか?」


 私は、島田サンに話し掛けた。


「桜サン……申し訳ありませんが、私は副長より貴女を預かる身です。副長の元に行きたいのは分かりますが……私はそれを許すわけにはいきません」


 思った通りの答えが返ってくる。


「私は土方サンの所に行きたいのではありません」


「では……願いとは何ですか?」


 島田サンは困惑する。


「私は、友の最期を……見届けたいのです。以前、私が命を助けた者が居ります。その方は……今日、最期を迎えるのです」


「最……期?」


「私が救った命……ならば、最期を看取るのも私の役目。どうか……会わせて下さい! お願い……します」


 私は涙を抑えきれず、泣きながら懇願した。


「桜……サン」


 島田サンは、涙を流す私に言葉を詰まらせる。


「島田サンには悪い用にはしません。策ならあります」


「だが……しかし」


「まず、此処の者には私と島田サンは屯所に戻ると伝えて下さい」


「副長達が戻って来てしまうのでは?」


「それは心配に及びません。土方サン達は明日は、天王山に向かうはずです。屯所に戻るのは明後日以降となるでしょう」


「私は……どうすれ。」


 島田サンは私に尋ねる。


「島田サンは……先に屯所に戻って下さい。私も、明日中には屯所に戻ります!」


 私の言葉に島田サンはしばらく考えると尋ねた。


「桜サンは……何処に行くのですか?」


「鷹司……邸です」


「私も行きます。でなければ、許可できません!」




 お互い歩みより、島田サンが鷹司邸まで付き添う形で話に決着がついた。




「急がなければならないのでしょう?」


 島田サンはそう言うと、私を軽々と抱えた。


「し……島田サン!?」


「貴女が歩くより、こうした方が早い!」




 宿を出ると、鷹司邸へと駆け出した。





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