表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜前線此処にあり  作者: 祀木 楓
第15章 蛤御門の変
82/181

密談 ― 長州 ―



 池田屋の騒動から箔がつき、幕府直参の話まで出た新選組。


 一方


 仲間を殺傷・捕縛された事に対する怒りの念が渦巻く長州藩。




 元々長州は京への復帰を目指し活動していたのだが、その活動の中でも長州藩士は思想が二分化していた。



 「急進派」と「保守派」

 


 「急進派」とは、「武力をもって京に乗り込み、長州の無実を訴える」という思想で、来島又兵衛らがこれに当たる。


 対して


 「保守派」とは、「もう少し慎重に様子を伺い、絶好の機会が来るまで待つべきだ」という思想で、現時点では高杉晋作や桂小五郎、久坂玄瑞らがこれに当たる。




 長州の藩士たちは連日連夜、会合を秘密裏に行っていた。

 



「池田屋での一件以来、我らの同士となる者が急激に増えている。今が絶好の機会ではないのか?」


 来島が皆に問い掛ける。


「だが……高杉らは未だに、かような武力行使に反対の意を唱えているが、これは如何する?」


 この場にいる皆が急進派とは言えども、同じ長州藩士である保守派を蔑ろにする事も出来ない。


「以前の高杉は確かに豪傑な男であった。だが、どうだ? 今の高杉なぞ脱藩の罪で投獄される身。かようの者は単なる腰抜けだ! 恐るるに足らん」


「……しかし」


「今こそ我等が同士達の敵を打ち、先の政変における藩主の冤罪を雪ごうではないか!!」



 連日の会合により、上洛出兵の方向で長州藩士達の意向も日に日に固まっていった。






 激派から保守派へと転向していた久坂も、最終的にはこれに加わる事となる。



 久坂の運命の歯車も、静かに動き始めていた。



「桜……私はどの道、己の運命を変える事は出来そうにないよ。此処で果てる事が私の使命であるというならば……私は、受け入れよう」



 久坂は、月を見上げ呟いた。



 あの日、桜から聞いた世の流れ。



 そして……自分の末路。



 此度の戦いは無駄な事なのかもしれない。



 しかし



 その一つ一つが積み重なり、歴史を紡いでいくのだ。



 そう考えると、一見して無駄と思われる出来事も、有用な事なのだ。



「私の死が、先の世を造る礎となるならば……世の為、私は喜んで逝く事でしょう」



 久坂は手にしていた杯を一気に飲み干した。



「あの日、折角助けてもらった命なのだが……な」



 久坂は、桜との出逢いや長州藩邸で共に過ごした日々を懐かしみ、ふと笑みを溢した。



「桜……貴女は生きなさい。私の分まで……いつまでも、いつまでも」










 7月18日、夜




 長州勢はついに、御所を目指して進軍した。























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ