一泊二日
ある程度支度を済ませてから、医務室の整理や病床の隊士たちの見廻り行う。
総司サンの薬は山崎サンに託した。
「そろそろ行くぞ」
土方サンの声掛けに、荷物を持ち立ち上がった。
「痛っっ!」
「荷物……寄越せ」
土方サンは私の荷物を取り上げる。
「外に籠を用意させた。……お前、その足じゃ歩けねぇだろ?」
遠出となるので、土方サンは私の足を気遣って籠を用意してくれたようだ。
「挫きなんざ……石田散薬で充分なんだがな」
土方サンはポツリと言った。
「だが……たまには温泉と言うのも悪くねぇか」
少し嬉しそうな表情をしている。
「温泉なんて、楽しみです!!」
そう言い、私たちは屯所を後にした。
しばらくすると、予約していた温泉宿に到着する。
「遠いところ、よくおいで下さりました」
温泉宿の女将は、私たちを出迎えると部屋へと案内してくれた。
「わぁ……凄く豪華ですねぇ!!」
「当たり前だ……この宿で一番の部屋だからなぁ?」
部屋も勿論だが、部屋から見える景色も格別だ。
「温泉……入ってきても良いですか?」
「ああ……行ってこい」
「行ってきます!!」
着替えの浴衣を持ち、早速温泉に向かう。
浴室は露天風呂となっており、かなりの広さだった。
今は他に客はなく、まさに貸切状態だ。
「わぁ。すごい!」
嬉しくて仕方がない私は、痛む足も忘れ浴室に駆け込む。
体を洗い、お湯に浸かった。
「良いお湯~。ほんと幸せ!!」
そろそろ上がろうかと思ったその時
ガラッ
浴室の扉が開いた。
あり得ない人のあり得ない姿に、私は目を白黒させる。
「ひ……ひひ土方サン!?」
「部屋で一人で待つのも暇だったからなぁ……」
土方サンは悪びれた様子もなく、呟いた。
「いや……そうじゃくて! ここ……女湯ですよ?」
「はぁ? 何言ってやがんだ? ここは混浴だ。」
「う……嘘っ!?」
そう言われてみると、浴室への入り口は1つしか無かったような……。
当の私はというと……湯あみ用の着物を着ているとはいえ水を吸っている為、かなり透けてしまっている。
持っていた手拭いで、慌てて前を隠した。
風呂の端に、土方サンとは背を向けるようにして浸かる。
浴槽に入ってきた土方サンは
「お前……何でそんな端にいやがるんだ?」
と言った。
「……恥ずかしいからですっ!」
「今更……お前、何言ってやがんだ?」
土方サンは私の手を掴むと、自分の方へ引き寄せた。
後ろから私を抱き締めるような体勢をとると
「まぁ……たまには、こういうのも悪くはねぇな」
と呟いた。
私は、恥ずかしさで全身が紅潮する。
さながら、茹で蛸のようだ。
その姿を見た土方サンは
「面白ぇ奴……」
と腹を抱えて笑った。




