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桜前線此処にあり  作者: 祀木 楓
第4章 長州 ― 藩邸での出来事 ―
29/181

情報


 その頃、屯所では……



 自室に籠ってしまった土方に代わり、山南が指揮を執っていた。



 既に監察方は散り散りになり、情報集めに当たっている。



「原田クンと斉藤クン、永倉クンは島原に向かって下さい。島原付近で起きたとなれば……目撃しているものも居るかもしれません」




 その時



 一人の女性が屯所に駆け込んで来た。



「土方はん! 土方はんに通しておくれやす!」



 女性は……



 そう、あの帰り道に土方と親しそうに話していた女性だった。



「……どうした?」



 土方が自室から顔を出す。



「大変どす! 藤堂はんを斬った者がわかりましたんや!」



 その言葉に土方の表情が変わる。



「……誰だ?」




「長州の……高杉晋作どす!」



「な……に?」




 女の言葉に、土方は一瞬時が止まった様に感じた。




「それは……確かな情報か?」




 精一杯平然を装い、女に尋ねた。




「へぇ。置き屋の女郎が話してはりました。高杉がえらく執心している娘が居ると……。ここ数日は、その娘の情報を間者に集めさせていたそうどすえ。新選組はんがお探しの娘は……長州藩邸に居ると見てええ」




「そう……か。分かった。礼は後日……改めてする。今日はもう……下がれ」




「ひ……土方はん?」




 気付けば土方は既に走り出していた。




 高杉に連れ去られたとしても……長州藩邸に居るとは限らない。



 しかし、土方は一厘の望みに賭けるしか無かった。



 独りで藩邸に乗り込むなど無謀な事は百も承知だ。




 だが、冷静になど……なっては居られなかった。

 






「大変どす! 土方はんが…長州藩邸に独りで行ってしまいはりました! いくら土方はんでも無謀どす!」


 先程の女性が、幹部が集まる部屋に飛び込み叫んだ。


「……あんの馬鹿が!」


 近藤は肘掛けを思い切り叩く。


「みなさん。長州藩邸にすぐに向かって下さい。土方クンを追うのです!」


 山南が幹部たちに告げると、皆一斉に屯所を飛び出した。



 残った山南と近藤は顔を見合わせると、同時に溜め息をついた。



「なぁ。山南クン……トシのあんな顔……今まで見たことが無かったんだよ。それ程に酷い面ぁしてたんだ」



「奇遇ですね。……私も、彼があんな風に取り乱す所は初めて見ましたよ。彼も人の子なのですね」



「無事……だと良いがな」



「そうですね……」












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