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桜前線此処にあり  作者: 祀木 楓
第 20章 西本願寺での暮らし
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組織編成


 新たに入隊した隊士たちも徐々に新選組に慣れてきた頃。



 組織としての確立を目的として、新体制となる事が私達幹部の前で発表された。



 広間に集められた私達は、トシから説明を受ける。






 局長 近藤勇


 参謀 伊藤甲子太郎 山南敬助    


 副長 土方歳三                 


 組長  


 一番組長 沖田総司     


 二番組長 永倉新八


 三番組長 斉藤一     


 四番組長 松原忠司


 五番組長 武田観柳斎    


 六番組長 井上源三郎


 七番組長 谷三十郎     


 八番組長 藤堂平助


 九番組長 鈴木三樹三郎   


 十番組長 原田左之助


 医務方相談役   蓮見桜


 諸士調役兼監察  山崎烝 篠原泰之進 


荒井忠雄 服部武雄 芦屋昇

     

吉村貫一郎 尾形俊太郎


 勘定方      河合耆三郎 尾関弥兵衛 

酒井兵庫 岸島芳太郎


  計  134名






 トシは中央に大きな紙を広げた。



「まずはこれを見てくれ。総勢134名となった新選組だが、それに伴い隊の再編成を行いたいと思う」


 皆は紙を覗き込む。


「局長と副長は勿論そのままだが……伊東サンと、現在は長期休暇中の山南サンは参謀という役職となる」


「参謀って何だぁ?」


 平助クンが尋ねた。


「参謀とは、近藤サンの補佐役だ。近藤サンも表舞台に出る機会が増えてきただろう? つまり、参謀というのは、そういう機会に近藤サンに知恵を貸してやる役だ。それはやはり、頭のキレる者じゃなくちゃあ務まらねぇ……その点、伊東サンは新選組内じゃ最も学があるからな。この役職は伊東サンが適任だろう?」


「土方サン、私をあまり持ち上げないで下さいな。私などまだまだ……とるに足らない存在です」


「伊東サン、謙遜はしねぇでくれよ。この役職はアンタ以外にゃ出来やしねぇさ。だが、これは大変な役職だろう。そこで……だ、隊士の面倒などの雑務は、これまで通り俺が取り仕切るさ。その分伊東サンには、近藤サンの補佐に専念してもらいてぇからな」


「そうですか……お気持ちは良く解りました。土方サンにそこまで言われてしまっては仕方がありませんね。そのお役目、しかと果たさせて頂きましょう」



 トシに持ち上げられた伊東サンは、すっかり上機嫌だった。


 参謀など本来ならば、名ばかり上等な役職なのだが……


 トシの口の……いや、交渉術の上手さに私は感心していた。




「副長である俺の下には、これまでの副長助勤がいるわけだが……今回それを十に分けた。一番組組長の総司で始まり、十番組組長の左之までだな」


「良いじゃん、良いじゃん。副長助勤って言うより、八番組組長って言う方が格好良いモンな!?」


 平助クンは目を輝かせている。


「各組長の下には伍長を二名置き、それぞれの伍長の下に五名の平隊士がくるってぇわけだ。要するに、一つの組には組長を含めて十三名という事になるな」


「へぇ、何だかすごいねぇ。組長だなんて……」



 総司サンがふと呟いた。



「それから、従来の通りに山崎を筆頭に監察方や、勘定方もあり……今、回新たに増やしたのはこれだな。医務方相談役だ」



 トシは紙を指差した。



「すっげぇなぁ。嬢ちゃんにも立派な肩書きが出来て良かったじゃねぇか」


「はい、何だか嬉しいですよねぇ」



 私は笑顔で原田サンに応えた。



「それで……だ」



 トシは説明を更に続ける。



「隊士が増えた分、医務も桜一人じゃ大変だろうと思ってだな……」


「土方サン、嬢ちゃんにゃあ優しいねぇ。俺も土方サンに優しくされてぇや」


「うるせぇ。新八、茶化すんじゃねぇ! ……っと、どこまで話したか分かんなくなっちまったじゃねぇか!」



 トシは眉間にシワを寄せた。



「えっと……私のところ、医務室にも人を増やすという所までです」


「あぁ……そうだったな。この先、病人や負傷者も増えるかもしれねぇ……その時に、こいつ一人じゃあ手が回らねぇだろう?だから、数名くれぇ増やそうかと思ってんだ」



 トシが簡単に説明をした。



「嬢ちゃん!! 一つ聞いても良いか?」

 

「何ですか? 永倉サン」


「その……医務室に人を増やすってのは……やっぱり女なのか!?」


「それはまだ考えては居ませんが……私の下ですからねぇ。できれば、女性の方が私は嬉しいですね」


「よしきたっ! 募集をかける時にゃ、俺も面談してやる!! 士気を保つ為にも、とびっきりの美人を入隊させなきゃだしな」


「もうっ! 永倉サンはそればっかりなんですから!」



 ニヤつく永倉サンを軽蔑の眼差しで見る。




「さて……こんなモンだろう。今日の会議はこれで終いだ」




 トシの言葉に、解散した。








 その晩



「今日の会議での話なんだけどね」


「ん? 何だ?」


「医務室に人を増やすって言ったでしょ?」


「あぁ、それがどうした?」


「入隊してすぐに医術を……っていうんじゃなくて、やっぱりある程度の知識を先に教えた方が良いと思うの」


「まぁ、人の命に関わるからなぁ……そりゃあそうだな」



 私の言葉に、トシも賛同する。



「だから、入隊してしばらくは医学や技術を学んでもらって、それから実践してもらうのはどうかなぁって。その為の塾を開きたいの」


「塾……か。今やお前も立派な医者だもんな。その知識と技術がありゃあ、先生もやれんだろうよ」


「この時代だからこそ、私なんかが医者としてやっていけてるけど……実際、私の知識や技術なんて……もとの時代の医者のそれの一割にも満たないよ。だから、私なんかが医者を育てるなんて出来ないけど、医者の補佐をする人を育てる事はできるかもしれない」


「医者の……補佐?」


「看護人。私の時代で言う看護師かな」





 この時代だからこそ、一介の看護学生が持つ知識でさえも、この時代の医者よりも遥かに膨大な知識を持っているという事になる。



 技術は、所サンや医学所で学び、更に実践する事で経験を積んできた。



 それでも、この時代では『立派な医者』と評されるが、元の時代の医者や看護師と比較してしまうと、やはりそこまでの知識や技術力は無い。



 だからこそ、私が医者を育てるなど無理だと思ったが、看護師に近い存在の人を育てる事はできるかもしれないと考えたのだ。





「看護人……ねぇ。お前がやりたいと願うなら、やってみりゃあ良いさ」



 トシは笑顔で言った。



「うんっ、ありがとう。私、やってみる! あのね……トシ」



「何だ?」



「やっぱり、私。トシが大好きっ!」



「そりゃ、どーも」



 トシは小さく呟く。







 鳥羽・伏見の戦いでは新選組にも甚大な被害が出ると史実にはある。




 その際には、多くの人手が必要となるだろう。




 それまでに……何とか、看護人を育て上げたいと考えていた。




 私なんかが……とも思うが、新選組の為にもやるしかない。




 新たな目標を胸に、私は眠りについた。





























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