プロローグ
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桜の花が咲き乱れる今日、私は上級生となった。
昨年首位をキープし続けたお蔭で、総代として入学式での挨拶という面倒事まで任されて……
新入生の喜ばし気な笑顔とは裏腹に、私の気分は下降していた。
「総代なんて……そんな器じゃないんだけどなぁ」
入学式では、用意していた挨拶を読み上げる。
役目を果たすと、私は足早に席へ向かった。
「さっすが桜だね。やっぱり、ギリギリ進級した私とはデキが違うわ」
席に戻ると、親友の瑞季が私に笑顔で言う。
「そ……そんな事ないよ! 私だって、本当に緊張したんだよ? もう、頭の中なんて真っ白で。私……ちゃんと言えてた?」
私は、瑞季の反応を伺うようにして尋ねた。
「緊張って……まったまたぁ、よく言うよ。サクってば、うちらの入学式の時も、新入生の挨拶を堂々とやってたじゃない? 頭も顔も良いなんてさぁ……ほんと羨ましいわぁ」
瑞季は、私をじっと見つめて言った。
それから……入学式は淡々と進み、あっという間に終わりの時を迎える。
総代という大役を終えた私は、本当に肩の荷が降りる思いだった。
その後の授業も終え、下校の時刻。
私はみんなと別れると、いつもの桜の木の下で本でも読もと思い、重い荷物を抱え裏庭へと向かった。
バイトまでの時間潰しによく利用しているこの場所。
この桜の大木は、樹齢200年だかと言われていて、江戸時代あたりからあるらしい。
何故だろうか……
この木の傍らに座ると、不思議と心地良く……安心する。
満開に咲き誇る大樹から鞄へと視線を移した私は、読みかけの歴史小説を取り出そうと、鞄に手を入れた。
その時
一際大きな風に巻き上がる桜の花びらに、私は目を奪われる。
「……綺麗」
天を仰いだその瞬間
日差しのせいだろうか?
突然の強い目眩に襲われる。
その強さに耐える事は叶わず……急激に視界が暗転して行く。
「私……どうし……ちゃった……の?」
薄れゆく意識の中、最後に目に映ったものは……
視界一杯に咲き乱れる、薄紅色の桜の花々だった。




