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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
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斥候

※これは中島視点の物語です

咲良ちゃんと仲直りをした次の日・・・。

その日は私は朝早くから学校へ行くことにした。


そもそもこの問題の原点を探れば、「引き裂き」を解除すればいいのだ。

これさえ解除してしまえば、生徒会と絆同盟はぶつからない。

彼らはこれを解除するために同盟を結成したのだから、争う理由がなくなるのだ。


「・・・」


ただ生徒会は外部に対しては厳しい組織だ。

だから桶狭間くんが川口副会長に迫った時、生徒会が彼にペナルティをかした。


外部からの解除が不可能に近い以上、内部から解除を試みるしかない。



「・・・きてるかなぁ・・・」



とはいえどもこんな朝早くに幹部たちはきているのだろうか・・・?

まぁ、最悪は会長に直接頼み込めばいい話でもある。



いなかったらどうしよう・・・?

そんな不安を寄せつつも、生徒会本部会議室に到着した。

私は軽くドアを2~3回ノックする。



「・・・はい。」


中から出てきたのは3年首脳部の一人の福島さんだった。



「・・・あなたは・・・」



彼女とは一度直接話している。

・・・絆同盟に潜り込め、と賤ヶ岳さんに言われたときだ。



「通せ。」



後ろからは、もう聞きなれた、しかしそれにしては聞くたびに体中に力がはいって身構えてしまうような声がした。

・・・賤ヶ岳さんの声だ。



「しかし彼女は・・・」


「いいから。」



その声で彼女は渋々私を通す。

無理もない。

彼らのなかでは私はもうとっくに生徒会をやめた人間なはずだ。



「・・・なんかあったんですか?」



会議室の中に入ると、そこにはまだこんな早朝だというのに幹部が誰一人として欠席することなく席についている。

強いていえば足りないのは会長本人、というところか。


皆真剣な表情であると同時に、お互いににらみ合いをきかせている。

おそらく相当な口論が行われていたのだろう。


しかしいくら“真面目”で“働き者”な生徒会であっても、こんな早朝から幹部勢ぞろいというのは珍しい。

むしろこれは「何かあった」という風に疑うのが自然だ。



「あなたには関係のないことです。」


福島さんがそんなことをいうが・・・



「福島、お前は黙ってろ。」



賤ヶ岳さんの言葉に何も言えなくなってしまう。



「すまないな、今はちっと取り込み中でな。・・・席を変えて話そう。」



でたでた!!

まぁ~たコレですか・・・。


まぁ、コレをやられるといつもムチャぶりをされるわけだが・・・

さすがに絆同盟潜入以上のムチャぶりはもうこないだろう。



「悪いな、少し席を外すぞ。その間にでも会議を進めといてくれ。」



彼がそういって席を外すと、私は彼に連れられ、となりの会議室へとやってきた。



「なんやかんや言いつつも、B組の反生徒会勢力潜入の件、のんでくれたんだってな。」


「・・・えぇ。」



さすがは3年副会長。

・・・情報が早い。



「・・・あの・・・会長は?」



この話は直接会長に頼み込んでしまったほうが早い。

・・・というより、単に「引き裂き」解除のお願いを賤ヶ岳さんにしたくないだけなのだが。

彼に頼んだら絶対何か言われるもん・・・。



「あ?そういや今日はまだ見てねぇな。」


「・・・」


「・・・そういや3年幹部の一人が“会長はいま、一人で考えたいっていってる”とか言ってたっけか・・・」



彼は思い出すかのようにボソッといった。



「まぁ、できればこの会議には会長自ら参加してほしかったんだけどな。」



彼は少し残念そうにいった。


まぁ、それはとりあえずいい。

会長は現在取り込み中のようだ。



「なんか会長に用か?よければ俺が伝えといてやるが。」



・・・困ったなぁ・・・

これ、言うべきだよね・・・

でもこの人には言うべきじゃないよね・・・

でもでも時間がないのもたしかなんだよね・・・



「・・・?」


私が「どうしようどうしよう」とうろたえていると、彼は「なんなんだ・・・?」といった顔をしている。


まぁ、一応彼も3年副会長だ。

一番会長に近い人物であるのもたしかなことである。


仕方ない・・・

今頼れるのは彼しかいない以上、彼に言うしかない・・・。



「あの・・・引き裂きを解除してもらえませんか?」


「・・・」



この言葉で彼の顔つきがかわったのはすぐにわかった。



「お前に頼んだのは相手方の内部情報の把握のみだったはずだ。・・・こっちの運営に口を出せ、とはいっていないんだがな。」


「ですがこちらが一歩引き下がれば、不毛な戦いなどしなくてすみます。」


「不毛?戦いは価値があるから行うもんだ。」


「同じ学校内の生徒と生徒がにらみ合うことになんの価値があるっていうんですか!!」



・・・つい感情的になってしまった・・・。

でも・・・学校内部で同じ学校の生徒同士が戦うことに意義なんてありはしない・・・。


・・・もう逃げないと決めた・・・

何もできなかった“あの時”とは違う・・・!

私は昨日、咲良ちゃんと仲直りしてそう誓ったんだ・・・



「前にも話したとおり、ここで引けば反生徒会勢力の勢いをとめられなくなる。・・・逆にここで強気を見せれば相手を牽制することができる・・・!」


「戦いは減らしてこそ価値を見出すものじゃないんですか!」



彼の言うように、戦いが価値を見出すとは私には到底思えない。

戦いは避けることで、その価値を見出すのではないだろうか・・・。


たしかに彼の理はかなっている。

しかしいかなる時も、暴力でそれを解決しようとしてはいけない・・・。

結局暴力を使った争いは傷跡しか残さない・・・。


それこそ学年主任の歴史の授業で培ってきた知識なのではないか・・・。

仮に学年主任にそういった考えはないとしても、私にとってはそう理解している。



「戦いを減らす・・・か。ならなおさらお前の言っていることは無駄なことだな。」


「・・・え?」


「今日の放課後、生徒会は反生徒会勢力全体に対して総攻撃をかける。」


「・・・な・・・」



・・・え?

・・・な・なにそれ・・・。



「反生徒会勢力全体って相手の数は!?」


「数だけならこちらの3倍の数、と五稜郭が言ってきている。」


「さ・三倍・・・!?」



反生徒会勢力が・・・そんなに!?

そんな数、一体どこで隠れて集まっていたのだろうか・・・。

おそらく生徒会が弱気なのをみて一気に勧誘したのだろう・・・。


この生徒会の大体の人数が約50人。

それに対し三倍ということは、約150人。

この学校全体の人数は600名以上。

単純計算で3分の1より若干少ないぐらいを一度に相手しないといけない。


しかもこの総攻撃をかけて戦いが終わる、ということは考えられない。

おそらく相手も総力をあげて対抗してくるはずだ・・・。

反生徒会勢力同士で手を組んで。



「宣戦同時攻撃による奇襲によって一気に前線を押し上げ、相手の数を減らす。」



そうか・・・

だから今日はこんなにも朝早くから幹部総動員で会議だったのか。



だがいくら奇襲が成功しようにも・・・

相手はこちらの3倍だ。

その数をたった1回の奇襲だけで覆せるとも思えない。

必ず囲まれて各個撃破されていくのがオチだ。


つまり・・・この計画は無謀だ・・・



「む・無茶です!3倍の戦力差をたった1回の奇襲で覆せるとは思えません!!それに持久戦になったら・・・」



持久戦になれば消耗戦になる。

そうなれば数の少ないこちらは圧倒的不利になってしまう。

けが人の数も敵味方関係なく相当なものになる・・・。



「だからこそ早期決戦を決める為に奇襲を行う。その後はこちらは飛沫の作った武器によって相手が体勢を整えきる前に押し切る。」



飛沫くんの作った武器って・・・

まさかあのガス銃!?



「あのガス銃を使うんですか?」


「あぁ、あれを使えばこちらの被害は少なくて済む。」


「・・・そんな・・・」



アレの威力は五稜郭さんが実験したのをみたが・・・

竹刀なんかと比べ物にならないほど高威力なものだった。



「危険ですし、無謀です!すぐに中止の案を出してください・・・!」



あんなものを使えばけが人が増えるだけだ。

しかも狙う場所によっては非常に危険な武器へとかわる。


・・・目の前にいるのは3年副会長、この組織のNo,2だ。

彼が反対を出せば、必ず会議は傾く。


今ならまだ間に合う・・・!

こんな無謀なこと、やめにして欲しい・・・!


だがかれの返答は私の想いを裏切るものだった。



「残念だがこれはすでに決定事項だ。」


「・・・どうして・・・」



どうしてこんなことに・・・。


きっと彼にだってわかっているのだろう・・・

これが無茶な計画なことに。


少なくても今までの生徒会にて考えられないほどガサツな計画でもある。

この総攻撃のあとの持久戦のあと、どこまで行けば戦いを終わらせるのだろうか。

相手も押されれば味方勧誘を始め、戦火は広がり続ける。

相手を全滅させる、なんて到底無理な話だ。


だからどこまでやれば交渉にでるのか、などを普通は決めるだろう。

・・・だが今回はそのようなことも賤ヶ岳さんは言っていない。

それに総力戦のあとの具体的な計画も決まっていない。



これほどまでに無謀な計画だというのに、ここまでガサツな計画の立て方・・・

あまりにお粗末なものだ。



「こちらが弱気なのを見せすぎたせいだ。そのせいで相手方が調子にのりはじめた。・・・こちらとしてもできる限り譲渡してきたつもりだが、もうさすがに限界なんだ・・・。」


「・・・」


「だからこの際、相手が数人増えようが関係ない。」



戦う相手に絆同盟が増えても・・・問題ない、と?


・・・「引き裂き」を解除しないのは反生徒会勢力に生徒会の弱腰を見せない為だったのに・・・

結局その反生徒会勢力とやりあうのであれば、牽制の意味もなにもないじゃないか。



「反生徒会勢力に攻撃をかけるなら、引き裂きを無理に継続して相手を牽制する必要は・・・」


「わからないのか?この学校の生徒はほとんどの者がこの生徒会制度に対して少なからず不満をもってる。・・・だがそれが表に現れないのはこちらに力があるからだ。」


「・・・」


「これ以上弱気なところを見せれば、敵の数が3倍から5倍に、そして10倍にと増えてしまう。」



そ・そんな・・・


・・・この生徒会はそんなところまで追い詰められていたのか。

前に賤ヶ岳さんから追い詰められているという話はきいていたが・・・

この生徒会にこんな無謀な計画を作らせるほどだ。


・・・事態は私が思っている以上に深刻なものなのかもしれない。



「この戦いで反生徒会勢力を一掃できれば再び威厳をたてることができる。・・・この戦いは価値があるものなんだ・・・!」



威厳がたてれば生徒会に逆らう者はいなくなる。

もうこのようなことは起こらなくなる・・・。



「・・・」



私は何も言えなかった・・・。

引き裂きを解除してもらうどころか、まさか戦線を拡大するなんて話を聞かされるなんて。




私は会議室を出たあと、トボトボと廊下を歩く。

どこへ行こうか、なんて決まっていない。


引き裂き解除はあの様子ではまず不可能だ。

・・・それができない以上、次はどう手を打てばいいのか。

引き裂きが解除できない以上、絆同盟と生徒会との争いは回避できないものとなる。



「・・・」



こうなったら、川中さんたちに頑張ってもらうしかない。


今、絆同盟は生徒会ではなく、川中さん率いる「第5同盟」に目がいっている。

彼らが粘ってくれれば・・・

そう、生徒会が反生徒会勢力との総力戦を終え、威厳が保てる状況になった時まで彼らが粘ってくれれば・・・

すでに反生徒会勢力を一掃し、心配がなくなった生徒会からも引き裂きを解除してもらえるだろう。


幸いなことに絆同盟は希望的観測しか行なっていない。

となると、今日1日ではまず無理だとして・・・

何日間もつだろうか・・・。


可能ならば裏から支援しねければならない。



「・・・面倒なことになったなぁ・・・」



そんな愚痴をこぼしていると、誰もいない早朝の廊下で声がした。



「・・・?」



不思議に思ってそちらへと向かって歩いていく。



「・・・ッ!!」



そこには一人の女子かこう3人の女子と1人の男子。


男子がバケツに入った水を囲まれている女子にかける。

それをみて女子3人が笑い合う。



「・・・」


・・・高校になってから初めて目撃した・・・いじめだ。



・・・助けてあげたい。

けれど気持ちとは逆に体は動こうとしなかった。

動こうとすると、脳裏に中学の時にいじめられた自分の姿が思い浮かぶのだ。



「・・・ひどい・・・」



壁に隠れながらも何もできない無力さを思い知る。

私の中学時代のいじめはあそこまでひどいものではなかった。



そんな時に足音が聞こえた。



「・・・うわ・・・最悪・・・」



ついそんな言葉を出してしまう。


そう、歩いてきた人物は飛沫だった。

ガス銃を作り、男子の一部からは絶大な信用を置かれている。

だけれど彼は「性格が悪い」と一年のなかでは特に有名な話だった。

そんな彼ならこの場でいじめっ子たちととも彼女をいじめだしてもおかしくはない。


だがなんで彼がこんなところにいるのだろうか。

生徒会内部の組織の一部、「ジャスティス」のリーダーの彼ならあの会議に参加していてもおかしくはない。



「おいおい、随分楽しそうなことしてんな。」



彼は5人の前にたっていう。

予想通りの言葉だった。



「なんだてめぇ・・・?」


「ちょっと、彼イケメンじゃない?」



男子は敵対心満々で彼を睨むが、後ろの女子3人はヒソヒソと話している。

・・・彼を知らないとは。

おそらく2年か3年だろう。



「てめぇらじゃねぇ、そこの女にいってんだよ。」


「・・・は?」



この言葉に皆は目を丸くする。

彼の言う“そこの女”というのはほかでもない、いじめられている女子のことだった。



「ここまでやられても何も言わないなんて相当M属性があんだな、幸せそうで何よりだ。俺だったらやり返しちまうよ。」



彼は苦笑しながらに言う。


・・・皮肉だ。

彼にはこの状況が理解できないのだろうか。

それともわざと彼は皮肉をいっているのだろうか。



「・・・わ・私は・・・」


「なんだてめぇ、こいつに味方する気か?」



彼女が何かを言おうとする前に男子がしゃべる。



「ちょっと、ヤバイよ。彼、よくみたら生徒会だよ!」



彼のえりに菊の紋章があることに気づいた女子の1人が男子をとめる。

だが男子はそれでも引こうとしない。



「生徒会?生徒会がなんだ。・・・てめぇ、生徒会だからって容赦すると思ってるのか?」


「しなくていいよ、じゃなきゃ張り合いがねぇ。」



それに負けずと飛沫も対抗する。



「クズどもが。寄ってたかって1人を取り囲んで楽しいのか、低脳ども。精神的にいってるんじゃねぇの?」


「あぁ、もう1回言ってみろ!」


「何度でも言ってやるよ、低脳ども。クズだっていってんだよ、てめぇの存在そのものが。」



そう言うと、相手は彼の胸ぐらを掴む。

それと同時に飛沫は彼を投げ飛ばした。



「・・・この程度か?・・・いばってたわりに雑魚だな。」



彼は手をバキバキ鳴らしながら、飛ばされた男子のほうへ近づく。

・・・一瞬でどちらが強いか、見ていてもわかるほどだった。


男子はその差を直接感じ、後ろへ後ずさっていく。



「・・・」



飛沫がそれから足で床をドン!と踏むと、それにびっくりしたのか一目散に男子は逃げていった。



「・・・さて次はお前らか。誰から顔の整形したい?」



彼は今度は女子3人組へと近づいていく。

もちろん女子3人もガタガタと震えながら後ずさりしていき、やがて走って逃げていった。




「・・・ったく。いつまで隠れて見てる気だよ、負け犬。」



うっ・・・

バレてる・・・。



「・・・あなたが彼女を助けるなんて意外でした。あなたならいじめに加わると思ってましたよ・・・」



ホントに意外なことだった・・・

だけど少しだけ彼を見直したところでもある。



「いや、こいつを助けたつもりはねぇ。ウジのわいた脳みそだと、擁護するとすぐそいつの仲間だと思うらしい。・・・その程度の判断能力しかできねぇガキを見ると、ぶちのめしたくて仕方がなくなっちまうんだ。」



なんと殺伐とした理由・・・!!


そんなことを思っていると、彼はいじめられていた女子の前にたつ。

・・・だが彼は決して彼女に優しくなんてなかった。



「いつまでも座りこんでんじゃねぇよ負け犬が。歩くのに邪魔だろうが。」


「なっ!?」


「す・すみません・・・」



彼の言葉に私は「彼を見直した」と思ったことを後悔した。

やっぱり彼は彼だ、そう思わされる。



「すみません・・・?だったらとっととどけっつってんだよ、負け犬が。」


「ちょっと!!なんてこというんですか!!」


「いじめるやつもクズだが一番クズなのはいじめられても何も反論できねぇてめぇなんだよ。俺ァ負け犬は嫌いなんだ。」



彼の目は恐ろしく冷たい目だった。

彼女を見下す目・・・。

そんな目で見られるのはホントに苦しいことだった。



「皆が皆、あなたみたいに強いわけじゃないんですよ!!」



私はつい自分もいじめられていた、ということから感情的になって彼にいい迫ってしまう。



「・・・強いとか強くないとかそんなのしらねぇよ。でも今のままじゃダメだってホントは自分で気づいてるんだろ?気づいててなんでなんの努力もしねぇんだよ。まわりがかわらねぇなら自分がかわるしかねぇだろ。」


「・・・」


「現にこいつは俺が来ても“助けて”の一言すらいえやしねぇ。そんなんならいつまでたってもこの状況を打開できるわけねぇだろうが。」



彼の言う事は正しいのかもしれない。


・・・けどそれは所詮いじめを経験したことのない人の言うことだ。



「・・・いじめはそんなに簡単なことじゃないんですよ。そのつらさはやられた人しかわかりません・・・やられたようなこともないくせに知ったような口をしないでください!!」



もし助けてっていって相手が逆上してしまえばもっといじめがひどくなるかもしれない。

それにその人をも巻き込んでしまうかもしれない。


だから人に迷惑をかけない、これ以上ひどくならない・・・

そういった安定の意味では黙って耐えることを選択するのが普通でもある。



「負け犬はいつもそうだ。自分から勝手に殻に閉じこもって、自分ではなんの努力もしねぇくせに、いつも自分が被害者だと思い込んでやがる。そういう思い上がりが一番ムカつくんだよ。」


「それでもし「助けて」っていっていじめがひどくなったらどうするんです?その人まで巻き込まれたらどうするんです?・・・そんなことを考えたら“助けて”なんて言えないですよ。」


「助けてって言えない、いじめがひどくなるかもしれない、そんなの口実に過ぎないだろ。ホントは自分がかわる為の勇気がないだけだろうが。」



・・・やっぱりいじめられたことのない人と話しても話が通じない。

私たちと彼は違う一線を歩んでいるのだ。



「・・・というか、お前、なんでそんなでかい口叩けんの?ただ何もせずに見てるだけも、いじめた彼らと同等のクズのくせに。」


「・・・えっ・・・?」



・・・その言葉は今の私に響きすぎた。


何もせずに見ていた・・・。

たしかにとめることはできなかった。


そんな私は・・・私も彼らと同等・・・?



「黙って見てるってことはいじめを黙認してるってことだろ?見てるだけのやつも実質はいじめに加わってんのと一緒だっつってんだよ。」


「わ・私はとめようと・・・」


「思ったってか?・・・思っただけなんて誰にでも言い訳として言えるんだよ。その分誰にでもできる。口と態度が一致しない奴のことなんざ誰が信用すんだよ。」



・・・彼の言葉一言一言が私の心の奥底をえぐる。

・・・実際えぐられるような、胸の苦しみを覚える。



「・・・じゃぁ・・・」


「俺からすればてめぇの列記としたいじめっこの一人だ。・・・・・・まだわからねぇのか、ゴミクズ。俺の前から失せろっていってんだよ。そこの負け犬も一緒にな。」



私も・・・いじめっこ・・・?


私は中学の時から・・・彼らいじめっ子とは同類にならない・・・

そう決めてここまで歩んできた。


それなのに・・・

結局彼からみれば私は中学以降はいじめられた過去がありながら、いじめた側に組みしていた、ということになるの・・・?



「・・・」



彼の見方が世間の見方ではない。

むしろ彼の見方は異質なのかもしれない。

けれど誰がどう見る、とかそういうことはどうでもよかった。

誰がどう見ようと、誰一人からしても自分が「いじめっ子」としてだけは絶対に見られたくなかった。


ずっとずっとそう思いながらここまで歩んできたのに・・・





私は何も言えないままその場を後にした・・・。

歩いて去るのも忍びなくて、走って去っていった。

・・・去るというよりも逃げる、というほうが自然なのかもしれない。



「・・・」



そのあと、ずっとボォ~ッとすごした。

・・・なんだか笑えてきた。

今までの自分の行いそのものが「思うだけ」の「言い訳」に過ぎなかった、そんな気にさえなってきてしまう。


時間はちょうど8時。

そろそろ生徒もチラホラと登校してくる時間だ。



「・・・あ・・・」



ふと思い出す。


・・・昨日、絆同盟のメンツと一緒に今日登校すると約束していたんだった・・・。

「明日から一緒に登校しようぜ!!」

そう誘ってきたのは桶狭間くんだった。

その時はつい嬉しくて、仕事を後回しにして頷いてしまった。


・・・やっぱりこういう面からみても自分の甘さが見て取れる。

飛沫くんに厳しいことを言われて、自分が今までどれだけ軟弱な考えと行動をしていたのか、が見えてくる。



「・・・行かなきゃ。」



とはいえども、約束は約束だ。



(口と態度の一致しない奴のことなんざ誰が信用すんだよ)



彼の言葉を思い出す。


・・・彼の言うことは正しい。

だからこそあんなに彼の言葉が自分に響いたのだ。



「・・・今に見てろ・・・」



二度とあんなこと言われないように・・・

拳に力を入れる。





それから私は絆同盟の待ち合わせ場所へといった。


皆、早いもので待ち合わせ時間よりだいぶ早くきたつもりなのに4番目だった。

桶狭間くん、関ヶ原くん、将軍さん、五月雨くん、そして私・・・。


つまりきていないのは十六夜くんと咲良ちゃんの2人だけだった・・・。



「・・・なんだ、やけに浮かない顔してんな、中島。」


「・・・え?」


「はっ!?まさか俺らと登校するのが嫌で・・・」


「そ・そんなことはないですよ!!」



・・・まぁ・・・その、落ち込んでいる理由なんて口が裂けてもいえない。



「・・・もし皆さんがいじめられたらどういう対応をします?」



先ほどのいじめられていた女子。

彼女はどうすることが正解だったのだろうか。


もちろんその行動に正解などないかもしれない。

けれど私は視野が狭すぎたのかもしれない。


先ほどの飛沫くんとの口論では私にも反省すべき点がある。

私は彼女のいじめられていたところの一部と、自分の経験だけを頼りに話をしてきた。


人は皆、違う考え方をする。

・・・私は自分からの視野でしか見れていなかった。


もっと多くの人の意見をきいて視野を広げないと、ちゃんとした口論ができない・・・



「え!?中島ちゃん、いじめられてんの!?」


「おし、俺が潰す!!」


「え!?いや、例え話ですよ、例え話!!」



私は焦って訂正する



「ホントに?」


「えぇ、別に私はいじめられてませんので大丈夫です。」


「そうか・・・。まぁ、俺だったら仲間に相談するな。」



と桶狭間くん。



「そうだなぁ・・・信用できる仲間・・・ちょうどこのメンツだな!!」



彼はニッと笑う。



「安心しろ、まずお前がいじめられることはないっぺ。」


「例え話だよ、例え話。・・・やっぱさ、一人で悩むってのはつらいと思うんだよな。いじめられてる分、なんかカッコ悪いし、言いにくいじゃん?他人を巻き込んじまいそうでもあるしさ。」


「ホントにカッコ悪いのは寄ってたかって自分より弱い一人を囲むことでしか自分の強さを表現できない、いじめてる連中なんだがな。」



と将軍さん。



「けどさ、どんなに言いにくいことでも信用できるメンツになら話せるもんだ、多少恥ずかしくてもな。仲間ってのは仲良くしてることだけの存在じゃねぇ。いざとなれば思いっきり頼る、んでいざ頼られれば全力で助ける、それがホントの仲間って奴だよ。」


「・・・」


「あいにくここのメンツは目の前の仲間が苦しんでる状況を見て見ぬふりをするほどできてねぇことも知ってるしな。こいつらなら絶対助けてくれんだろ!」


「ま、弱い者の盾となるってのは男として本懐だっぺな。」



そんなことをいって男子たちは盛り上がっている。

しかし私としては完全に唖然である。


・・・そういえば私も咲良ちゃんに守ってもらったっけなぁ・・・。

そんな咲良ちゃんも彼らを頼ってここにいる・・・。

なんとなく不思議な何かを感じる。



「・・・中島ちゃん、こういう奴らなんだよ、絆同盟ってのは。考える前に体が動いちまうような連中だが、信用度だけは保証できる、そんな変な連中なんだよ。」



桶狭間くんは苦笑する。


・・・たしかに変わった人たちなのかもしれない。

普通はこんなに人を信用できない。

しかも私に至っては昨日に初めて彼らと話したのに、それでも今は彼らと同じ仲間として扱ってくれていた。



絆同盟・・・なるほど、でもこの人たちなら納得できる。

同盟名に「絆」とつけた理由が。



そんなことを思っていると十六夜くんと咲良ちゃんがやってきた。

待ち合わせ時間よりちょっとだけ遅れている。



「よぅ、みんな・・・待ったか?」


「あぁ・・・遅いぜ、お前ら。」


「悪ぃ悪ぃ、買い物してたんだ。」



片手にはおそらくコンビニか何かで買ったと思われるもの。

もう片手で咲良ちゃんと手をつないでいる。

・・・のだが・・・なぜか咲良ちゃんはムクれている。


はは~ん、女心のわからない十六夜くんのことです・・・

また何かやりかしましたね・・・



「おぅ、中島。お前も一緒にこれからいくのか?」



しかしそれに対し、何もなかったかのように彼は私に話しかける。


ま、話しかけてくれるのは非常に嬉しいのですが・・・

咲良ちゃんのことも気にしてあげてください・・・。



「はい!私も同盟参加者ですし!!」


「いやぁ~、女性2人目ということで、テンションあがるぜ!!」



その瞬間に「シーン」とする。

皆、何かを言いたそうだったが、あえて誰も何もいわなかった。


・・・私にはこの流れの意味がよくわからなかった。



「うっしゃぁ!今日は説得の日だ!!気合いれていこうぜ!!」



桶狭間くんがそう元気よく言って、一同は学校へと向かい始めるのだった。

歩きながら桶狭間くんがさりげなく十六夜くんにきく。



「・・・なんで咲良ちゃんはムクれてるんだ?」


「いや~、面白いんだよ、聞いてよみんな!実はさぁ・・・」



と十六夜くんが言おうとすると、咲良ちゃんが思いっきり十六夜くんの足を踏みつけた。



「ダァァアァアアアアアアアアアアアアアア!!」


「はいはい、ざまぁざまぁ。」



相変わらずの五月雨くんの煽り。



「なんで今日は女子陣が凹んでるんだ?なんかあったのか?」


「な・なんでもありません!」

「なんでもない!!」



私と咲良ちゃんの声がまじる。



「そういやなんで中島ちゃんは敬語なんだ?」


「・・・え?」


「いや、別に俺らはタメでいいんだけどな。・・・というかむしろタメのがいいかな、敬語だと妙に力が入っちまうからな。」



桶狭間くんは苦笑する。



「敬語のほうが慣れてるんですよ。」


「ふ~ん。」



なんてことをいうが、これは口から出たでまかせだった。

まぁ、実際なれているというのもあるのだが・・・

それよりも私としては、また生徒会のように、入ってしまった以上彼らに異存してしまうことが怖かった。


今回はあくまで生徒会の仕事としてきているのを忘れてはいけない。

最悪の場合は生徒会か絆同盟かを選ばないといけないが、その際に彼らに異存してしまった場合どうすることもできなくなってしまう。


タメ口なんかで話したらそれこそ彼らとの距離が縮まりすぎてしまう。

・・・ある程度敬語で距離をとっておく必要があるのだ。


私にとって敬語は彼らとの「言葉の壁」であり、最後の壁にするつもりでもあった。

どんなに彼らと親しくなっても、敬語である以上は距離をとっていると自分に認識させることができるからだ。





その後学校について、朝学活となった。

朝学活が終わると、私はすぐに“ツテ”に頼ることにする。


朝、絆同盟の皆と合流する前にメールを出しておいた相手だ。



私は集合場所へと行く。

一応誰にもつけられていないことを確認して。



「・・・遅いなぁ・・・」



そろそろ1時間目が始まっちゃうよ・・・


そんなことを思っているとようやく待ち合わせ場所に一人の男子がやってきた。



「悪い!!遅れちまった!!」



その男子は走ってきたらしく、息切れしていた。

・・・ま、ガサツな割に律儀な男子である。


彼の名前は“河越 城武”。

今は第5同盟、つまり川中さんや時津風くんのチームと一緒だが、昔は「夜戦」なんて呼ばれるグループのリーダーをしていた人物で、私が咲良ちゃんを助けることができなかった、例の事件の犯人である。



「・・・」



私が彼を信用するその一番の理由は、あの例の事件で彼自身かなり反省している、ということを本人がいっていた事だ。

あの事件後、私は私なりにいろいろ頑張ってみて彼と接触した。


彼を咲良ちゃんに謝らせる、というのが目標だったがさすがにそれは叶わなかった。

だが彼の口からは多くの後悔の言葉が出たことを覚えている。



「で、なんだ、用って。」



しかし「反省している」ということと、「咲良ちゃんを許す」ということは別物ではある。

実際彼もまだこの同盟で活動を続けている。


私が彼を信用するのは「咲良ちゃんのことを許しそうだから」ではない。

話がわからない人ではない、根は良い人・・・

そう理解しているから彼を頼るのだ。



「今日にB組のメンツ、今では“絆同盟”というんですが彼らが咲良ちゃんをもう許してくれ、といいにくるはずです。」


「・・・なんでそんなことを俺に言う?」


「あなた方第5同盟にはこれに対してできるだけ粘って欲しいんです。」



その言葉で彼は「わけわかんね」という顔をした。

それは当然だろう・・・。



「・・・なんでだ?お前、あいつの友達じゃねぇのか?」


「それはそうなんですが・・・」


「ならなんで引き伸ばす?お前らとしては1日でも早く、この第5同盟に解散して欲しいんだろ?」



ごもっともなことだった。

普通はそうだ・・・

今の私も生徒会が絡んでいなければ、一刻も早く解散して欲しい、と思っていると思う。



「・・・安心しろ、この第5同盟はもうじきに解散する。」


「・・・え!?」



その予想もしなかった言葉に私は動揺する。


・・・もうじきってことはもう解散が目に見えている、ということ!?

そんなに早くに解散されては困る・・・!



「・・・俺はもういいと思ってるんだ。・・・今回のあいつは真面目にあの男子を追いかけてる。・・・今までとは違う・・・そう見ててわかるんだよ。」


「・・・」


「あいつが本気なのを知ってて邪魔をするほど俺らは嫌な連中じゃない。この件を今日の朝に皆に相談したら皆も頷いてくれた。・・・後は時津風と川中だけの状況だし、あの2人が頷くのも時間の問題なんじゃねぇかな。」



皆が気づき始めた・・・ということか。

今、第5同盟がやっていることはもはや他人の恋路の邪魔であり、彼らが意図した意味は既にもたない、ということを。


だがたとえどうであっても、ここで彼らが解散してしまえば生徒会と絆同盟の争いは避けられなくなる。


・・・正直言って戦力的な面で絆同盟の負けは確実だろう。

だが現在生徒会は反生徒会勢力に総攻撃をかける、といっている。

それと並列して争いが行われれば、どちらが勝つかはわからなくなる。


どちらが勝つとかそういうのは私にとってどうでもいいことだった。

・・・結論的にいえば、どちらかが勝てばどちらかが負け、失うことになる。

たとえどちらを失おうとも、私にとっては共通の悲しみしか残らない。



・・・両方を守るためには戦いの回避しかないのだ・・・

そのためには・・・この第5同盟に頑張ってもらうしか・・・!!




「・・・その解散の話、もう少し後に引き伸ばせませんか?」


「・・・なんか事情がありそうだな。」



彼も察してくれたのか、頷きはしないものの、理解はしてくれたようだ。



「だが俺一人じゃ解散延期は無理なことだ。延期させるには他の第5同盟のメンツの理解を得る必要があるが、さっきも言ったとおり、俺らにはもう動く建前がねぇ。」


・・・つまり建前が欲しい・・・と。



「彼らは“引き裂き”を解除するために動いています。」


「・・・ま~た面倒なのに目ぇつけられたな・・・」



河越は苦笑しながら、椅子に座った。



「・・・で?」


「あなた方が解散すれば彼らは確実に生徒会と対峙するでしょう。」


「おいおい、そっちのリーダーはそんなに馬鹿なのか?いくら引き裂きを解除するにしても、生徒会に真っ向から喧嘩売るなんざ頭のいってる行動にしか思えないぞ。」



・・・その頭のいってる行動を彼らは確実にするから困っているのだ・・・。



「生徒会と対峙すれば、確実にけが人もでますし、最悪学校から追い出されます。」


「・・・だろうな。」


「でも詳しくは話せませんが、引き裂きはもう少し待てば勝手に解除されるんです。」



まぁ、勝手に解除されるというか・・・

反生徒会勢力との争いが終わったら、私が内部から解除を要請するのだが・・・。


もはや反生徒会勢力との争いは防げない。

生徒会全体がやる気に満ち溢れてしまっている・・・。



「なら簡単だ、連中にそのことを教えてやりゃいい。」


「それができないから困ってるんです。」



彼らにこのことをいえば私自身が「生徒会なのでは?」と疑われる。

そうなればもはや何もかもが水の泡になってしまう。



「・・・その勝手に解除されるってのは本当なんだろうな?」


「えぇ、信頼できる生徒会の生徒から聞きましたので。」



・・・というか、私自身が生徒会なのだが・・・。


そう私が言うと、彼は少し考え込んでいるようだった。



「お願いします!ここは咲良ちゃんや皆を助けるためだと思って・・・!」


「・・・わかった、やれるだけのことはしてみる。」



そういうと彼は椅子からたった。



「ただしあんまり過度に期待はしないでくれよ?」


「はい、ありがとうございます。」


「今度俺におごることな。」


「え~・・・」



彼はそういって苦笑すると、背伸びを1回してから部屋を出て行った。



(これでよし・・・と!)



まずは1つ対策をとれた。





それから1時間目が終わり、順調に時間が流れていく。

3時間目が終わったあと、私はもう1人の協力者と待ち合わせをしていた。

待ち合わせ場所は生徒会本部会議室。


集合時間の5分前にすでにそこにいたところを見ると、彼もまた相当マメな人間だと伺える。



「・・・おや、早かったですね。」


「・・・あなたがそれをいいますか。」



呼んでおいた方が呼び出された方より来るのが遅いって、なんというか・・・うん。


そこにいたのは西本だった。

1年は基本的に皆信用できようだが、1年の大半は下層部である。

あんまり諜報部の存在を知られてはまずいので、我々の存在を知っている1年に協力を求めるしかない。

その中でも彼は会議の場での発言力なども考慮し、一番信用できる、という結論に至ったのだ。



「まぁまぁ、お互いに早く集合場所にきた、ということは良いことじゃないですか。」



たしかにそれはそうなのだが・・・



「それで用件というのは?」


「あの・・・非常に頼みづらいことなのですが・・・今、ある生徒たちに「引き裂き」が出ているのはご存知ですよね?」


「えぇ。」


「それを解除してもらえないか、会議で言ってもらえませんか?」



賤ヶ岳さんに協力が仰げなかった以上、こちらは信用できるメンツに頼るしかないのだ・・・


とはいえ、いくら西本くんでも所詮は1年生。

賤ヶ岳さんは3年だし、発言力の違いは大きすぎる・・・


それに西本くんからすればこれは賤ヶ岳さんを敵にまわす、ということでもある。

簡単に頷いてはくれないだろう・・・。



「あぁ、いいですよ。」


「・・・え?」



・・・だが意外にも彼の答えはあっさりだった。



「え?いいですよって・・・」


「何か問題でも?」


「いや、もっと「なんで?」とか聞いてこないのかな~、と。」


「そんなことわかりきってますしねぇ・・・」



たしかに彼は私たち諜報部がいることも、そしてジャスティスたちとの絡みもあるなら私が何をしているかも知っているはずだった。



「そもそも天王山会長自身はこの「引き裂き」について強行的な姿勢は見せていません。こちらが交渉すれば頷いてくれるんじゃないですかね。」


「でも賤ヶ岳さんを敵にまわしますよ?」


「それはいつものことですよ。元々私は彼の進める3年幹部のみによって統制させる生徒会内部制度について反対でしたからね。それに今回の総攻撃も・・・ですかね。」


「・・・じゃぁ、今回の反生徒会勢力に対する総攻撃に関しては・・・」


「我々一年は賛成はしていません。・・・まぁ、こちらにもやる気満々の人間もいる以上、断固反対として通すこともできなかったんですが。1年の意見は両極端に別れてしまって、まとめるのも一苦労ですよ。」



彼は呆れ顔で苦笑する。



「もはや開戦は避けられない状況ですが、戦力差が圧倒的ですからね。」


「・・・どうしても避けられないんですか?」


「えぇ、こちらとしては開戦派を抑え込みつつもだいぶ譲渡したつもりで、可能な限りこの争いを回避しようとしました。・・・ですが、あっちも相当やる気のようで。」


「・・・」


「人数を集めて力をもってしまった以上、その力を使いたくてしょうがないんでしょうね。」



たしかに人数でいえば3倍・・・。

そこまで集めてしまえば、使ってみたくなる気持ちもわからなくない。



「ですが持久戦になったら・・・」


「そうなんですよね。厳島さんは2日は保障するって言っていますが、それ以降はどうなるかわからない、と。」



2日・・・

今日が金曜日だから、今日と月曜日といったところか。

・・・逆にいえば火曜日なった地点で、その後どうなるかわからない、と。



「2日で・・・終わらせられるんですか?」


「まぁ・・・絶望的ですね。」



ですよねー。

相手もやりたがっている以上、多少の犠牲ですぐ折れるとも思えない。


どこまでも無謀な計画だ・・・。



「だからできるだけ開戦は避ける方向で頼む、というのが厳島さんの意見でした。」


「・・・」


「私も全く同意見だったんですが、しかしやると会議で決まってしまった以上、やるしかないんですよ。」



おそらく会議では相当もめたのだろう。

生徒会としても苦渋の選択だったのかもしれない。



「・・・ではお願いしますね。」


「はい、たしかにお引き受けしました。」



なにはともあれ、これでできる限りの対策はできた。

あとは彼らに期待するしかない。








4時間前になる前、五月雨くんに話しかけられる。



「中島、将軍知らね?」


「え?将軍さん・・・ですか?」


「そうそう。」



・・・たしか授業が終わったあとにすぐ教室を出て行ったような・・・。



「なんか最近休み時間にあいついねぇから困るんだよな・・・」



そういえば今日も2時間目前も、3時間目前もいなくなっていた。



「今のうちに昼休みの川中と時津風の説得の件の計画でもたてようかと思ったのに。」


「ちょっと探してきますよ。」


「え・・・あ、悪い、お願いするわ。俺は他のメンツ集めてとくな。」


「はい、お願いします。」



そういって私は廊下をでた。


たしか彼が向かっていったのはこっちの方向だったはず・・・。

そんなあやふやな記憶でいっても、結局どこにいったかは知らない地点であまり意味はないものとなっている。



・・・5分ぐらい探し回っただろうか。

どうにもなかなか見当たらない。



すると目の前の会議室から先生がでてきたのが見えた。



(あの会議室は今の時間使ってないはず・・・)



その会議室を覗いてみると、中に将軍さんがいた。

会議室の中では、普段は勉強にやる気がこれっぽっちも感じられない将軍さんがメモらしきものを見返しながら、何かを考え込んでいるようだった。




「・・・あの、将軍さん?」


「ん?あぁ、中島か・・・」


「なにしてるんですか?」


「ちょっと調べ物をな。」



そういってメモを見せてくる・・・。



(こ・これは・・・!)



そのメモに書いてあったことは生徒会内部のことだった。

それも生徒会のメンツしか知らないようなことまでギッシリ書いてある。

・・・事実私ですら知らないこともたくさんあった。


内容は構成からメンツ、最近の出来事に、過去の出来事などなど・・・。

彼は一体どこからこれだけ調べ上げたのだろうか。



「こんな情報、どうやって・・・」


「ここ最近、先生たちに聞いて回ってたんだ。」


「何のために・・・。」


「いや、引き裂きの件でもしかしたら生徒会とも対決しなきゃならないかもしれないだろ?その時のために一応な。」



・・・先生たちって・・・


先生たちといえば皆、生徒会派だと思っていた。

少なくてもほとんどはそうだろう。


しかしまさかこちら側に協力的な先生もいるとは・・・。

先生立ちも必ずしも生徒会の味方だけ、という一枚岩ではない、ということか。




「正直絆同盟全体では第5同盟が怪しいってなってるが、あてつけだと俺は思うんだよな。」


「え?」


「・・・彼らを疑うのは結局、俺らが生徒会とやりあいたくないからって面もありそうだよ。彼らが黒幕なら生徒会とはやりあわずに済むからな。・・・そんな淡い期待でこの組織は進んでいるが、結局確率としては生徒会が一番黒幕の可能性が高い。・・・となればいずれ連中と戦わないといけないからな。」



彼はそういってメモを見返す。


・・・まさに備えあれば憂いなしだ。

しかし協力的な先生がいるにしても、これだけの情報をよく集められたものだ。



「・・・よくここまで集めましたね・・・」


「あぁ、まぁな。・・・彼を知り己を知れば百戦殆うからず。まさにこの言葉だな。情報は多い方がいい。」



さすがは将軍・・・!!


彼がなぜ「将軍」と呼ばれているのか、改めてその理由を知った気がした。



「・・・んで情報を集めるうちにおかしなことに気づいた。」


「はい?」



彼はメモの途中で指をとめる。



「これ、見てみろ。」



彼が指差したところは今の会長、天王山会長についてのことだった。



「今の会長、天王山薫はこの情報を見る限り、かなり甘いところがある。」


「・・・」



それは4月になって天王山先輩が会長になってから、今日に至るまでのこと・・・。

何度か反生徒会勢力と生徒会勢力がぶつかり合っているようだ。

そして生徒会はその度に相手を拘束しているが、何のペナルティもなしに解放していた。



「これらは生徒会から攻めたんじゃない。相手に攻められたパターンだ。」


「え?それなのになんで・・・」



普通攻められて相手を捕まえたら、かなり重いペナルティがつくはずだ。

生徒会がせめて捕まえた相手でさえ、ペナルティがつくという話なのだから。



私は彼の資料を見返していて、ある単語が目に付いた。



「この“ダレン”ってなんですか?」



よく見ると、ここ最近の反生徒会勢力による一連の攻撃に関してのメモにほぼ必ず“ダレン”という言葉がでてきている。



「反生徒会勢力の一番でかい組織らしい。」


「じゃぁ、この“ダレン”が生徒会へ先制攻撃を?」


「・・・らしいな。この他の組織が生徒会へ攻撃を仕掛けた例がないからなんともいえないが、“ダレン”だから許されている、という可能性もあるな。」



・・・おそらく捕まえた相手の処罰は生徒会本部会議室での会議で行われるはず。

となると、そこでダレン側を擁護している幹部がいる可能性がある、と?


少なくても、会長であればどんな人でも自分の組織が攻撃されて黙って許す、とはしないはずだ。

となると、生徒会のなかに敵対している組織とつながっている人物がいる可能性があるということになる。


しかも1人や2人とは考えにくい。

会議そのものを動かすレベルだから数人はいるだろう。



「そもそも天王山会長は1年の時から、うちの高校の帝国主義に反対していた人物らしい。」


「・・・え?」


「にもかかわらず、最近の生徒会は勢力拡大を異常にしている。」



よかった・・・

彼のノートには「諜報部」のことは流石に書かれていなかった。


しかし最近の生徒会の勢力拡大は確かに凄まじい。

新設された部だけでも、我々「諜報部」と、「ジャスティス」がある。


この勢力拡大で私は完全に今の会長、天王山さんは「拡大派」なのかと思っていた。

だが彼女は「帝国主義」に過去に反対していた。


つまりそれって・・・

今の状況と結びつかないじゃない・・・。




「こんな人が無理に引き裂きを続けるか?」



そういえば西本くんもさっき、「引き裂き」について会長は強硬派ではないっていってたっけな・・・。



「・・・」


「あとこれは風の噂なんだが、いつかまではわからないが、近日に生徒会は反生徒会勢力に総攻撃をかけるらしい。」



・・・そこまで情報漏れしてるとか・・・。

うちの生徒会の情報管理はどうなっているのだろうか。



「それは例の“ダレン”にですか?」


「それはわからん。」



さすがにそれはわからないか・・・



「だが今までの経緯からするに“ダレン”には攻撃されても許す傾向にあるってことは少なくても“ダレン”には甘いってこった。だから生徒会からダレンに攻撃することはないんじゃないか?」



つまりダレン以外の反生徒会勢力を根絶やしにする・・・と?

でも、もしそうであれば「3倍」という数字はどこからきているのだろうか?




「この情報を見る限り、天王山会長はかなりの穏便派だ。・・・そんな人が部下に総攻撃を命じるとも到底思えない。」


「・・・」


「・・・指導者がかわったのか・・・それとも・・・いや、まさかな。」



指導者がかわった、ということはまずないだろう。

だがそう言われてみれば、最近会長を見ていない。

命令はいつも3年幹部を通じてのものだった。



「・・・」



たしかにこれはおかしい気がした。



「・・・しかしすごいですね・・・」



ホント、まさに将軍という感じだ・・・。



「これ・・・将軍さんがリーダーやったほうがいいんじゃないですか?」


「それは何か、桶狭間じゃ頼りないってか?」


「い・いえ、そういうつもりは・・・」



彼は苦笑しながらにメモを閉じて立ち上がった。



「“優れた参謀は勉学で生み出せるが、優れた指揮官は戦場でしか生み出せない”ってな。」


「え?」


「東郷平八郎の言葉だ。・・・俺なんざ所詮はどんなに頑張っても参謀クラスだよ。」


「・・・」


「ホントにリーダーに向いてるのは何に対しても挑戦的で、尚且つ人を見る目が良いことだ。」



う~ん、そういうものなのだろうか・・・。

イマイチつかめない。



「あいつはたしかに感情で走っちまうところはあるが、それを除けばまさにリーダーに適役だと思うぞ。特にあいつの人を見る目はホントにすごいもんだ。」



正直そうは見えないけど・・・。

まぁ、将軍さんがそういうなら、そうなんだろう・・・。


その程度の理解しか浮かばなかった。



「行こうぜ。中島がきたってことは、第5同盟の説得の計画でもたてるんだろう?」


「え・えぇ・・・。」



ホント・・・

なんでもお見通し・・・ですね。






その後、第5同盟の説得の計画をたてて、4時間目が始まり・・・

そして昼休みがやってきた。


・・・五稜郭さんに先ほど将軍さんにきいた「おかしなこと」についてメールを送るべきか迷ったが・・・

そうこう迷っているあいだに咲良ちゃんにご飯を誘われてしまった。



「よし、全員集まったわね!!」


「腹減りすぎて死ねる件。」


「ま、もういい時間だもんな。」



咲良ちゃんに連れられてやってきたところはこの学校の屋上だった。

そこには絆同盟のメンツが勢ぞろいしていた。



「おっ、きたきた!!」


「飯一緒に食おうず。」



どうやら絆同盟はいつもここでご飯を食べているらしい。

お昼であまり彼らを見かけないのも納得だ。



「いただきまーす!!」



皆でこんなことをいって各自ご飯を食べ出す。

・・・なんというか、懐かしい給食を思い出す。



「・・・ここの鍵、どうやってあけたんですか?」



普段は屋上は鍵がかかっていてあかない。

なのにどうやってここに皆はきたのだろうか。



「ふっふ~ん、中島ちゃん、これはな、違反なのだよ。」



桶狭間くんがちょっとおちゃらけながらに言う。



「ま、平たくいえばここの鍵を無断でパクってきたのね。」



咲良ちゃん、それは平たくまとめすぎでしょ!!



「いや~、一回バレた時は死ぬかと思ったわ。学年主任にマジギレされて焦った焦った。」


「あ~・・・」


「桐山先生は後ろで笑ってたけどな。」



・・・安定の桐山先生である・・・。



「最近は将軍が作ってくれた偽物の鍵をかけてきてるから、まずバレないぜ!!」


「ま、発泡スチロールでできてるから、さわったらすぐにわかるんだけどな。」


「あんな鍵、誰もさわりゃしねーよ。俺が一番最初に取ったとき、ホコリかぶってたもん。」


「というか、鍵をとりはじめてからバレるまで結構時間かかったしね。」



と十六夜くんも言う。


・・・なんと悪い集団だ!!



「華癒輝ィ~、これを知ったからにはあなたも共犯よ~。」



え!?

咲良ちゃん、それはひどすぎます!!



「そうだ、バレたときは中島が主導した、ということにしよう!!」


「この腐れ棺桶の首を差し出すに100万ジンバブエドル。」


「なぜおとなしく一票制にしないんだっぺ・・・。」



なんだかひどい巻き込まれようだが、きっとこれはまだ慣れていない私への彼らなりの心遣いなのだろう・・・。

そう思うと、少し嬉しいものだった。



その後のなんやかんやで楽しくお昼を過ごし・・・

ついに第5同盟の説得の時間がやってきた。



・・・河越くんは上手くやってくれているだろうか・・・。


そんな不安を抱きつつも、計画をすすめる。

作戦では私が元中である川中さんを皆のところにまで呼んで、そこで交渉する、ということだった。



「じゃぁ、よんできますね。」


「あぁ、頼んだぞ。」



そういって彼女のところへと向かう。



「川中さん、ちょっと頼みごとがあるんですか・・・」


「ん?どうした?」


「あの・・・木の上に教科書が載ってしまって。」



・・・馬鹿か、私は。

なぜもっとまともな事を考えなかったし。



「・・・マジか。よし、手伝ってやる。」



そして釣れるっていうー。

川中さんは時々わからないです・・・




その後、うまく川中さんを誘いだしに成功して、交渉が行われるが・・・

なかなか粘り強い。


私個人としてはもちろんそちらのほうがありがたいが・・・

川中のノラリクラリな態度にこちら側は徐々に熱くなっていく。


いくら川中さんといえど、所詮交渉では1人だけだ。

彼女も時間が経つにつれて徐々に押されていく。



そんな時に時津風くんもやってきた。

まさにグッドタイミングという奴だと思った。


しかし予想外なことに時津風くんは絶対川中さんに着くと思っていたのに・・・

こちら側についた。

それによって交渉は一気にはかどってしまった・・・。



結局最終的には川中さんは時津風くんをつれて去っていってしまった。

この交渉が成功したかどうかはわからない。



しかし怖いところは成功した可能性が十分にある、ということだ。

・・・もし成功してしまえば、次は打つ手がない。





そんな不安の中、時間はあっさりと過ぎ去っていってしまう。

気がつけばもう放課後である。



・・・未だに河越くんからも西本くんからも連絡がこない。

やはりここはある程度疑われる事も覚悟の上で「引き裂き」はほっておけば勝手に解除されることを言うべきなのか・・・。


しかしバレてしまえば今後の対策がすべてできなくなってしまう。

・・・リスクが高すぎる。


そんなこんなで迷っていると教室の扉があいた。



「よぅ、諸君。元気にやってるか?」


「時津風!?」



やってきたのは時津風くんだった。


絆同盟のメンツは会議をしていた。

私はちょっと休憩をとらしてもらっていて、彼らからだいぶ離れたところにたっていて、不安に仰がれながら夕日に染まる外を眺めていた。


彼らからだいぶ離れた場所からでも彼が間違いなく、時津風くんであるということがわかった。

・・・彼がここにきたということは・・・川中さんの説得は成功してしまったのだろうか・・・



嫌な予感がした。



「お前らいいこと教えてやる。今日から、俺と川中もお前らの同盟に入ってやることにしたから。」


「はぁ!?」



皆は目を丸くする。


・・・どうやら私の嫌な予感は的中してしまったようだ。

こういういらない時ばかり的中するから困る。



「そういうことだ。これから私たちも時津風の言うとおり、同盟に参加させてもらう。」



川中さんも教室へ入ってくる。


間違いない。

彼女と時津風くんがきたということは・・・

第5同盟が解散した・・・。



「・・・なんだ・・・こりゃぁ、罠か?」


「まぁ、嫌ならいいんだぜ?俺らは断られれば入らない、それだけだしよ。」



まずい・・・。

第5同盟がこんなに早く解散してしまうなんて・・・。


いくら解散目前と河越くんに言われたとしても、こんなに早くに解散するとは想定外だった。

川中さんと時津風くんならもう少し粘ると思っていたのに・・・

それに第一、希望的観測しか行っていなかった絆同盟が交渉をこんなにも早く完了させるとは・・・。


第5同盟という壁がなくなってしまった以上・・・

彼らが生徒会に進んでいくのは確実なことになってしまった。



「な?言ったろ、不安は抱くだけ無駄だって。」



桶狭間くんがボソッと笑いながらに言った。

いつの間にこっちにきていたのだろうか・・・。



・・・別に彼に悪気があったわけではない。

そんなことわかっていた。

だけど・・・彼の言葉に私は「カチンッ!」ときてしまった。



「・・・どうしてですか・・・?」


「え?」


「どうして希望的観測しか行なってなかったあなた方が、こんなに物事を簡単に・・・!」



私は今まで不安要素をできる限り検討して物事を行ってきた。

それでもいざ成功させるということは難しかった。


それに比べ、彼らはそんな不安要素を無視して計画をたててきた。

私より遥かに楽な計画の立て方だった。

・・・にもかかわらず、こんなにも簡単に計画を成功させてしまった・・・!


なんというか・・・今まで真面目に不安要素を検討してきた自分が馬鹿みたいに見えてきてしまう。

彼の言葉は今までの私のやり方そのものを否定するかのようで・・・

・・・言葉にならない感情が体中を駆け巡った。



「不安だって立派な成功要因の1つですよ?それを検討せず、希望的観測しか行ってこなかったあなた方がなんで・・・」


「・・・たしかに俺らは希望的観測しか行ってきてなかったし、希望的観測と現実は違う。そりゃ俺にもよくわかる。」



彼の同情にも似たような言葉にさらにムッとくる。

同情なんてしなくていい。



「だけど不安要素の塊と現実も違うだろ?」


「!!」



彼のその言葉に私は言い返す言葉が見つからなかった。



「不安だって成功要因の1つだってのも頷ける。・・・だが不安ってのは考えれば考えるほど湧いてきやがる。・・・お前は不安にとらわれすぎてたんじゃねぇか?」


「・・・」


「・・・なんかお前、いつも追い詰められたような目をしてたからな。」


「え?」


「もう少し力を抜いて物事を見てもいいんじゃねぇか?」



そう言うと、彼は皆のほうへと走っていった。


・・・なるほど・・・

将軍さんが言っていた、「人を見る目」についてようやくちゃんと理解できた。



「・・・」



今日の朝に「凹んでいる」と言われてからできる限り絆同盟の前では余裕をもった態度でいようとしていた。

しかし結局それは無駄なようだった。


・・・たしかに桶狭間くんは人を見る目がある・・・

リーダーに向いているかもしれない。

そう直接肌で感じた瞬間だった。


さすがはあの将軍さんが推すだけはあるなぁ・・・

とも思うが、パッと見るだけでは、言っちゃ悪いが無能の塊のような桶狭間くんのそういった能力を見抜けた将軍さんの人を見る目も中々のものだと思わされる。



「・・・はぁ・・・」



なんだかいろいろ考えていると頭が痛くなる。

私はつい苦笑してしまう。


・・・もう少し力を抜いてもいい・・・か。


その言葉を思い出して、再び苦笑してしまう。

・・・やれやれ、「周りが考えていない」のではなく、「私が考えすぎ」だったとは・・・



私は窓をあけて、深呼吸を1回すると、再び彼らの元へと戻る。



「ちなみに川口は関係ねぇぜ。」


「え?」


「ただ・・・生徒会そのものが動いてる。」



・・・これで絆同盟は生徒会へと直進することは確定となった。

・・・回避は不可能となってしまった。




その後、川中さんと時津風くんも絆同盟に参加することになった。



「元中同士、よろしくな。」



時津風くんがそんなことを言う。


思えば川中さんと時津風くん、それに咲良ちゃんと皆、元中のメンツである。

ここまで元中の仲が集まるというのもいいものだ。


しかも過去からみれば川中さんと咲良ちゃんが共闘するなんてまず考えられないことだし・・・

いろいろと感動する点がある。



「こちらこそよろしくお願いします。」



しかし彼らが絆同盟に参加したということは第5同盟がなくなったことは確実。


ここまできてしまっては・・・もはや最後の手段を使うしかない。



「あの、ちょっといいですか?」


「なんだ?」



みんながこちらを向く。

皆、作戦を考えていたなか、あまり発言をしない私の声に少々驚き気味でもあったようだ。



「えっと、私も個人でいろいろ調べてみたんですが、信頼のできる生徒会の友達から聞いた話によると、引き裂きはほっておいても解除されるらしいです。」


「え?それ、ホント!?」



十六夜くんは喜んで話に入ってきてくれた。


だが慎重なのは桶狭間くんや関ヶ原くんだ。



「それは誰からの情報だ?」


「名前を出したら生徒会にバレてしまい、辞めさせられてしまうかもしれないので名前は出さないで欲しい、と本人が。」


「・・・」



シーンとした空気が流れる。



「相手が生徒会である以上、やりあうにはリスクが高すぎる。ここは少し待ってみてもいいんじゃない?」



十六夜くんがこういうが・・・



「・・・これも噂なんだが、生徒会は近日に反生徒会勢力に総攻撃をかけるらしい。」



次に口を開いたのは将軍である。



「生徒会としては無理に戦火を拡大させるのは防ぎたいはずだ。」



・・・そうですよね・・・普通はそう考えますよね・・・

そういう考えの上司たちだったらどれだけよかったか・・・



「生徒会といっても人数に限りがある。無理に手中を広げると人数が回りきらなくなる。」


「・・・つまり?」


「その情報は生徒会が俺らの争いと他の反生徒会勢力との争いを並列して行わせないためにする為の策略として嘘の情報を教えた、という可能性もありえる。」



・・・将軍さんの意見に皆が頷く・・・



「逆に考えれば、彼らの戦力が反生徒会勢力に集中しかけている今がチャンスともいえるわけだ。」


「だけれど、その総攻撃の噂もあくまで噂ですよ?生徒会側がこちらの開戦を望んでいたら、あえてそういう情報を流してこちらに開戦するよう仕向けるはずです。」



・・・皆は黙り込む。


片方は敵となる生徒会、そして片方は噂・・・

どちらも信用度は低い。


どちらを信用すべきなのか迷っているんだ・・・



「だがもし生徒会が開戦を望んでいて、こちらを開戦させるためにそういう情報を流したんだとすれば、すでにこちらの意図はバレていることになる。」


「・・・たしかに。」


「そうなれば下手に時間をあけて待っていれば先手をあっちに打たれる可能性もある。」



将軍の一言で皆の目の色がかわる。


・・・だがたしかに私が言った「生徒会の策略」だとしたら、相手はこちらが反生徒会運動を行おうとしていることを知っている、ということになる。

・・・となれば、時間をかけて「引き裂きが解除されるのを待つ」ことをしている間に、相手から先手を打たれてしまう可能性は十分にある。



「・・・」



私は反論できなかった。


ここで自分が生徒会だといってしまい、すべてのことを皆に言うのもありかと思ったが・・・

それを信じてもらえなければアウトだ。



「・・・ここは計画通りにいこう。」



やがてリーダーである桶狭間くんが口を開いた。

それに全員が頷いてしまった。


・・・最後の手段すらダメだったとは・・・。





その後全員で作戦会議は終了した。

計画は完成していた。


それは月曜日の朝会で桶狭間が舞台へと上がり、皆に反生徒会を呼びかける、というものだった。

これが生徒会への宣戦布告にもなるし、うまくいけば一般生徒を味方にすることもできる、というものだった。



私としてはこの絆同盟の「初撃」を生徒会によって未然に防ぐことで開戦を防ぐことを考えついた。

すなわちこの作戦を上へ報告するのだ。

そして事前にこの作戦を不可能にさせることで、開戦を防ごうという考えだ。


その為には、皆と一度帰ったあと、また学校にこなければならない。

今日の放課後といえば、「生徒会の総攻撃」が実施させる時間でもある。


ちょうど例の将軍からきいた「おかしなこと」の報告もあるし、総攻撃の結果も気になる。

・・・戻って悪いことはないだろう。








その日は帰り道に皆、寄り道でファミレスによっていった。

ファミレスに入ってから出るまでの時間は結構長かったと思う。

楽しい時間ではあったが。


・・・やはり断るべきだったか。

しかし皆が行くというのに私だけ断るというのも気が引ける、そんな理由でついていったわけだが・・・

予想以上に時間をとられてしまい、若干の後悔が・・・。


もし私が生徒会でなければきっとこういうことも考えずに、楽しめたのだろうな・・・

と考えるとちょっと残念な気もした。



そういえば生徒会のメンツとはこういうことしたことがなかった・・・。


もし可能ならば絆同盟のメンツと生徒会のメンツでこういうことをしてみたいなぁ・・・

・・・可能なら・・・ですが。


そう思うと少し切ない感じもした。




何はともあれ、その後咲良ちゃんと帰っているとき、、咲良ちゃんが急に立ち止まった。



「・・・どうしたんです?」


「ちょっと待って。約束があるの。」


「は・はい・・・」



こんな時間に約束?


私は首をかしげる。


それからすると、後ろから声をかけられた。



「咲良。」



もっとも声をかけられたのは私ではなく、咲良ちゃんだったのだが・・・


声がした方向へ向いてみると、そこには1人の女性がたっていた。

えりには菊の紋章。



(せ・生徒会!?)



私は焦った。

その人はほかでもない、賤ヶ岳さんの部下の1人で、3年首脳部のうちの1人である片桐さんだった。


・・・今日の朝は盛大に賤ヶ岳さんともめた。

結果、彼が私の行動を監視するために、部下を送り込んできたのではないか・・・。

・・・反生徒会勢力の監視役が監視されるなんて、もはや失笑レベルである。



「先輩!」



咲良ちゃんもこの人を知っているようだ。

どうやら知り合い同士のようだ。


咲良ちゃんが呼ばれた当たり、用は私ではなく咲良ちゃんだと考えると・・・

多分私に用はない、なら大丈夫だな・・・


と何の根拠もないのに安心する自分がいる。

どうやらこの人が約束していた人らしい。



「この方は?」



私は知っているのにわざとらしくきく。



「あ、この人は片桐先輩。私の中学のときの先輩だったのよ。」


「どうも。」



片桐さんもこちらに頭を下げる。



「はじめまして。」


「・・・それで先輩、生徒会の件、どうですか?」


「やっぱり引き裂きは生徒会からですね。」



・・・咲良ちゃんにも協力者がいたのか・・・!!


しかもその協力者が三年首脳部の一人である・・・。

人脈恐るべし。



「あと近日に生徒会の反生徒会勢力に対する総攻撃があるみたいなんだけど、何かわかります?」


「それなら既に始まっています。初戦は継続中ですが、生徒会が圧勝中のようです。」


「・・・そう。」



奇襲でどこまで反生徒会勢力にダメージを与えられたのだろうか・・・。

気になるところではあるが、あんま詳しくはここではきけない。



「内部から引き裂きは解除できそうですか?」


「まだ探ってみただけなのでなんともいえないんですが、多分不可能だと思います。現在の幹部のほとんどが強硬姿勢派で、穏便派は私と数えるばかりの幹部たちだけです。」



・・・ということは片桐さんは穏便派ということか。



「それに生徒会は現在反生徒会勢力との対決で忙しくて、引き裂きなどに手が回りきっていません。多分会議そのものが後回しにされてしまうと思います。」


「・・・わかりました、ありがとうございます。」


「・・・もう少し何かわかったらまた連絡します。」


「お願いします。」



そんなことをいって片桐さんは学校方面へ帰っていった。


おそらく連絡できるのが今しかなかったのだろう。

学校では誰かに見られて生徒会の耳に入ったらアウトである。





それから私は咲良ちゃんと別れて、急いで学校へ戻る。

時間はすでに午後8時をまわっている。


こんな時間までいるかな・・・

いや、いるな、うん。



朝とは違う謎の確信を持ちつつ、情報処理室へと足を運ぶ。



「失礼します。」


「おう!お疲れ。」



そこには予想以上に多くの人がいた。


五稜郭さんにハルさんはもちろん、厳島さんに山崎さん、鷹村くんもいた。



「あれ、鷹村くん、なんでここにいるんですか!?」


「一日の報告だよ。・・・ついでに総攻撃の結果を聞きにな。」



・・・まるっきり私と同じじゃないか・・・



「総攻撃の結果はどうだったんですか!?」


「あぁ、成功したよ。」




山崎さんが「まずは一段落」といった感じでため息をつきながらに言う。



「この初撃はなんとしても成功させたかったからな。・・・上手くいってよかったよ。」



おそらくこの計画だけでも相当な時間を会議に費やしたのだろう。

努力が報われたというべきか。


山崎さんは安堵の表情を浮かべている。



「今日だけで反生徒会の集まりを4~5つ潰したやった。」


「え!?それってすごいことじゃないですか!!」


「どれも弱小集団だったがな。」



弱小集団・・・

ということはやっぱり“ダレン”への攻撃は行なっていない?


だが五稜郭さんはため息をつきながらこう続けた。



「だが未だに反生徒会勢力として一番でかい組織が健全なのもいただけないな。」


「・・・ダレンへの攻撃は行われなかったんですか?」


「打連のことを知ってるのか!?」



この場の皆が驚きを隠せないようだった。



「お・おい、中島。ダレンってなんだ?」



この場でわかっていないのは鷹村くんただ一人だと思われる。



「反生徒会勢力で一番大きな組織です。」


「生徒会打倒連合、略して俺らは打連って呼んでる。」



山崎さんがさりげなくそんなことをいう。

なるほど・・・ダレンっていうのは生徒会打倒連合の略称で「打連」ということだったのか。



「彼らへの攻撃はちゃんと行われたよ。」



厳島さんがそう言ったあとに山崎さんが口を開く。



「今回の奇襲は二方面作戦だったんだ。戦力を二分割して一方が“ダレン”の総会議に奇襲をかけて戻ってくるっていう陽動係。そしてもう一方が相手が混乱してる間に孤立した弱小集団を攻める係として行動した。」



つまりダレンへ攻撃が行われた、ということは「3倍」という数字はやはりダレンも含んでいることになる。


だが疑問点が残る。

今までの生徒会は“ダレン”へかなり甘かった。


その原因は幹部たち・・・おそらく3年幹部のなかに“ダレン”とつながっている人物が数人いて彼らを擁護しているからなのだろうが・・・

今まで彼らを散々擁護してきたその幹部たちが、今回のダレンへの攻撃だけ例外的に許したとは考えにくい。


だが実際に攻撃が実行されているところをみると、“彼ら”は反対しなかったように思える。

過去に何度も会議を動かし、打連へのペナルティを打ち消してきたことを可能にしてきた人たちだ。

今回だってそれができたはずだ。


しかし今回はそれをしなかった?

・・・なぜ?



「・・・成功したんですよね?」



考えられることは・・・罠・・・か。



「あぁ。今回の打連の会議は過去最大だったらしくてな。・・・連中の幹部クラスの連中も目の前まで攻め込まれて相当ビビってたって話だ。」


「実際相手の幹部も何人か捕えられたしね。」


「すげぇ成果じゃねぇか。」



鷹村くんが感激している。

たしかに聞いているとかなりの成果だ。



「それだけの成果を与えられたのに、なんで相手は健全なんです?」


「あのなぁ・・・」



山崎さんは頭をかきむしりながらため息をついていった。



「打連はあくまで打倒“連合”なんだよ。」


「・・・つまり・・・?」


「連中には基幹となる組織が3つある。・・・俺らが潰したのはその1つに過ぎない。」



つまり残り2つは健全である以上・・・

打連の組織としての抵抗能力はまだまだ健全である、ということか。



「1つも潰しきれてねぇだろ。・・・逃げられた生徒や幹部だって多くいる。」



つまり今回の奇襲で生徒会は打連に局地的なダメージしか与えられていない、ということか。




「つまり“打連”全体からすればダメージは軽微ってことだね。」


「故に今後も油断を許さない状況に立たされてるわけだ。」



五稜郭さんは「先が思いやられる」といった表情をする。



「まぁ、とはいえども暗い話ばっかでもないぞ。」


「・・・え?」



暗い雰囲気になったのを察してか、山崎さんが笑顔でこちらをみた。



「まず第一にこっちの被害はほとんどなかった。」


「奇襲だったっていうのもありますし・・・やはり飛沫さんの新しい武器がだいぶ役にたちましたよね。」



やっぱりアレを使ったんだ・・・。



「最もオレらの二方面作戦が完了して油断した際に、連中にグループ単位でかけられて犠牲は少し増えたがな。」



グループ単位ということは・・・

小さい争いでそこらじゅうで起こった、ということか。


やはり相手は数で押している分、各個撃破を狙ってきている・・・というのがわかる話である。



「それにしたって相手に与えたダメージと比較すれば、こっちの被害はほぼゼロに等しいぐらいのもんだろ。」


「たしかにな。」



それだけ被害が少ないのは喜ばしいことだが・・・

今後相手は警戒しているだろうし、二度とこんな大規模な奇襲計画は行えない。


というのに相手の残存勢力はまだまだ健全・・・。

これでホントに初撃として「成功した」と言えるのだろうか。


たしかに成功はしたのだろうが・・・

もう一押し欲しいところでもあった。



「それに今回の件で生徒会の本気を目のあたりにした弱小同盟のいくつかはビビって解散しちまったらしいしな。」


「ホントですか!?」


「あぁ。」



戦わずして勝つ・・・。

こちらに犠牲もでないし、あちらにも犠牲がでない。

これほど良いことはない。




「・・・捕まえた反生徒会勢力の生徒たちはどうするんです?」


「それは上が決めることだからな。・・・ただ上も今は忙しくてそんなこと考えてられないようだから、しばらくは生徒会が管理するんじゃねぇか?」



管理するって・・・



「どうやって?」


「武器を取り上げたあとは、少し謹慎を学校から出させるみたいだね。で、だいぶ今の状況が片付いたら1人ずつ呼び出して対応してくみたいだよ。」


「おいおい、また遊撃作戦の時みたいになるんじゃねぇだろうな。」



遊撃作戦???


・・・ま、話の流れからして生徒会が攻められた時のことなんだろう。



「今回は3年だけで決めないで、2年や1年の意見もきくってさ。」


「・・・どうせ聞くだけだろ?連中はこっちが何言っても“検討する”の一点張りだろうよ。」



・・・今まで生徒会が攻められた際の相手へのペナルティは3年だけで決めてたのか・・・。

やはり3年の中に打連とつながっている人がいるのは確実になった。



「検討して欲しいのは連中の頭ん中だろ。」



山崎さんがそんなことを言う。



「・・・先輩たちは3年の一部が打連とつながってるって考えないんですか?」


「いや、いくら3年でもそれはねぇだろ。連中とて自分の立場ぐらいはわきまえてるはずだ。」


「というかむしろ潰してやりたいと思ってるんじゃねぇか?」


「え?」



五稜郭さんの言葉に私は思わず聞き返してしまう。



「今回の計画そのものを考えたのは3年だしね。彼ら、異常に打連とやりあいたがっていたよ。」



厳島さんは呆れ顔でいう。



「遊撃作戦の時の仕返しだろうね。・・・あれは生徒会のメンツも潰したと同意に、生徒会内部での3年のメンツも潰しちゃったからね。」


「・・・え?あれの何もなしのペナルティは3年が推し進めたんじゃないんですか?」


「そんなことしたら生徒会内部で大喧嘩になるわな・・・。ま、今も似たようなもんだが。」



五稜郭さんは頭を抑えている。



つまり3年が何もなしのペナルティにしたのにはやむを得ない理由があった、ということか。

・・・が、それをしたばかりに三年のメンツを潰してしまったので、仕返しに今回の騒動に至った、と。



だがこれで3年が打連とつながっていることは否定できるようになったが・・・

将軍の言っていた「おかしなこと」が再び臭ってきた。




「・・・今回の開戦命令ってホントに会長からでたんでしょうか?」


「うん、そうきいてるけど。」


「というか、じゃないとこの生徒会は動かないだろ。」



たしかに「じゃないと生徒会は動かない」という理屈は頷けるが・・・

ここでも“聞いてる”だけで、誰も会長自身がその命令を口にしたところを見たものはいない。




「ちょっと気になることがあるんですが・・・いいですか?」


「ん?」



私は将軍さんからきいた「おかしなこと」について皆に説明した。

はじめは皆、「ありえない」という顔をしていたが、話が進むにつれ、だんだん集中して話を聞いてくれるようになった。



「・・・たしかに会長自身がこの命令を口にしたところは見たことないな。」



しばしの沈黙のあと、一番最初に口を開いたのは五稜郭さんだった。



「命令されるのはいつも3年からだったしね。」


「だが・・・この生徒会には会長を支持している人が多くいる。いくら3年といえどそんなことしないだろ?」


「3年全員が手を組んでいるとは限りません。一部の人間が他の3年幹部にデマを流すだけで話は流れていきます。」



そして協力者は3年だけとも限らない。

・・・会長を幽閉、そして脅すことだけなら2年や1年でもできる。



「・・・信じられないな。」


「・・・というより信じたくないね。」



皆は顔を見合わす。



「まぁ、よく生徒会内部でも言われたもんだぜ、“天王山さんはかわった”ってな。最初はごく小さなことだったんだが、それがどんどんエスカレートしていくにあたって、“会長って立場ってどんな気分なんだろうな?”ってよく皆と話し合ったもんだ。」


「だけれどそれは会長が変わったんじゃなくて、指揮する者が変わっていたとしたら?」


「・・・」



生徒会にしては珍しく静かである・・・。



「よし、調べてみよう。」



この沈黙のなかで、また最初に口を開いたのは五稜郭さんだった。



「え?本気でいっているのかい?」


「このくそ忙しい時に“宝探し”なんてしてる場合じゃねぇのはお前も承知なはずだぞ!?」



厳島さんと山崎さんがそれをとめようとする。



「くそ忙しいのは百も承知だ。・・・だがもしこれがホントだったらどうする!?」


「どうするってったって・・・」


「オレらの中で会長は天王山会長一人のはずだ。ほかの誰でもない。」


「・・・」


「オレはその天王山会長の命令に従ったのであって、その他の奴の命令に従うつもりはない。」



彼女は相当に天王山会長のことを信頼しているようだった。


だがこの言葉の意味は別の意味ももっている。

組織とは常に上が動かすものだ。

・・・一番上が揺らげば、下にも必ず影響する。

そうなれば組織そのものがかわってきてしまう・・・。


・・・もっといえば今回の開戦は皆、会長の命令だと思って動いてきた。

それが会長の意志で、生徒会の行く末だと考えてきた。

しかしそれが会長の命令でなかったとしたら、今回の開戦そのものが意味のないものになってしまう。



「・・・で?調べてどうするんだい?」



次に口を開いたのは厳島さんだった。



「調べてこの事がホントだとわかったとしたら、どうする?」


「・・・」



この言葉に五稜郭さんは一瞬口を濁す。



「・・・説得をする。」


「ムリだったら?」


「・・・実力で排除するまでだ。」



その言葉に厳島は深いため息をつく。



「今は仮にも反生徒会勢力とやりあってる状況だよ?この状況で味方を減らすなんて・・・」


「・・・もし交渉が決裂すればもはや味方ではない、打連と組みして生徒会をこの無謀な戦いへ導いた裏切り者だ。」


「違う、ボクがいってるのは彼らのことじゃない。・・・彼らとて今は生徒会、ボクたちと同じ武器をもってるんだよ?」



そういって思い浮かぶのは飛沫の作ったガス銃だった。



「もし実力手段を投じれば同士討ちで士気は下がり、反生徒会勢力よりも犠牲が増える可能性もあるっていってるんだ。」


「だが事の実態が下に伝わればそれでも士気は下がる。・・・それに裏切り者をこのまま野放しにしておけば、組織そのものの風紀が乱れる。」



お互いに沈黙する。


だがたしかに強硬手段を使って相手に徹底抗戦でもされたら・・・

生徒会側の犠牲は反生徒会勢力との争い以上のものになるだろう。


次に口を開いたのは山崎さんだった。



「仮に指揮権が会長に戻っても、ここまでやってしまった以上、打連も引き下がるわけにはいかないだろうし、争いが終わるわけでもない。」



この言葉に全員が口を閉ざした。


・・・そう、今更裏切り者を見つけても遅いのだ。

それは確固たる事実だった。




「・・・ったく、会長の命令は絶対だ。」



そういって立ち上がったのは五稜郭さんだった。



「攻めるなといわれれば攻めない、けど守るなといわれてもオレは守る道に進む。」


「お・おい、どこにいくんだ!?」


「ちょっくら調べてくるだけだよ。・・・まだ裏切り者がいるって決まったわけじゃねぇ。こんなん、なければないが一番いいに決まってんだ。」



彼女はそう言い残して、情報処理室からでていった。




「・・・ったく、生真面目め。そうまでして同士討ちをしたいのか。」



山崎さんが愚痴る。



「・・・っていっても一番やりたくないのは彼女だと思うんだけどね。」



厳島さんがため息をついた。



「全くだ、言ってやんないでくださいよ、山崎さん。・・・一番やりたくないのは五稜郭さん自身なのはあなたもわかってるでしょう。」


「・・・」



鷹村くんの言葉に、山崎さんも困り顔で頷いた。


そういえば前に「私が辞めたら悲しいですか?」と聞いた時・・・

彼女はすごい寂しそうな顔で寂しいって答えていたっけかな・・・。


“1人増える分にはいいが、1人減っちまえばいつも通りの光景が戻せなくなっちまうからな”


あの表情が脳裏から離れない。

私が絆同盟に潜入したのは争いを回避したいというのもあったけど、やっぱりあの表情に勝てなかった、というのもあったのかもしれない。




「・・・あいつは組織を人と人で作っていく輪でできてると思ってるからね。・・・輪っていうのはどんなに汚い円でも必ず1周してすべてがつながるようにできてる。逆にいえば1人でもかければその円は二度と描けなくなる。・・・それはあいつが一番わかっていることだと思うよ。」


「・・・」


「ボクたちの円はたしかに形のいいもんじゃないかもしれない。けど彼女はそんなこの輪を気に入っているといってた。・・・できることなら、このまま形を崩さずにゴールしたいんだよ。」



その言葉を聞くと、山崎さんも急に立ち上がった。



「・・・しゃぁねぇな。こんな時に仲間を疑っちまうのは大和魂が足りねぇんだ。」



・・・え?



「いっちょあのバカに大和魂とはなんなのかを説教してきてやる!!」



そういって彼はセカセカと部屋を出て行った。



「なにいってんだ・・・あの人・・・」



鷹村くんが目を点にして言う。


・・・なにか猛烈な勘違いをしていた気がするんですが・・・



「・・・やれやれ、素直じゃないね。・・・素直に五稜郭を手伝ってくるっていえばいいのに。」



厳島さんは苦笑しながら彼の出て行った方向を見ていた。


・・・そういえば前に五稜郭さんが山崎さんを元気づける時もおんなじようなこといってたような・・・。

全く、素直じゃない2人だ。




「まぁ、一番やりたくないと思っている奴が強がって“やる”っていってるんだ。ボクももう少し大人にならないとね・・・」



彼女がボソッとそんなことをいった。



「・・・厳島さん、どちらへ?」


「ボクも調べ物を・・・ね。・・・ハル?」


「はい?」


「彼女には悪いことをしちゃったよ。一番やらせたくない役を任せちゃった上に、くだらない文句まで言っちゃった。・・・あいつが帰ってきたら「悪かった」と伝えてもらえないかい?」


「はい、わかりました。」



そういって彼女も出て行ってしまった。

・・・彼女の言葉から、厳島さん自身もやりたくないとは思うものの、この件がホントだった場合はやらないといけない、と思っていたのだろう。




それから15分ぐらいした後、五稜郭さんと山崎さんが帰ってきた。

ハルさんは早々に厳島さんからの伝言を伝えていた。

それに対して五稜郭さんは「そうか、律儀な奴め」と苦笑しながら頷いていた。




「で、どうだったんですか、調べた結果は。」


「まだちょっとしか調べてないから何とも言えないが妙だったな。」


「・・・といいますと?」


「とりあえず会長とは話せたよ。」


「どうでした?」


「ま、どうと言われてもいつもの会長だったな。」



五稜郭さんは苦笑した。

だが打って変わって表情がよくないのは山崎さんだった。



「・・・嫌な感じがしたがな。」


「はい?」


「“会長のお手伝い”だかなんだか知らないが、話をするにも何にも必ず3年幹部が1人ついてきやがる。・・・あれじゃ見張られてるみたいだぜ。」


「・・・」


「見方がかわるだけでこんなにも居心地がかわるもんなんだな。」



彼は椅子に深く腰掛けてため息をついた。



「ま、いずれにしてももうちっと調べる必要がありそうだな。」


「あぁ。」


「・・・ということで今日はオレは泊まっていくから。」



・・・え!?



「ちょっ、この学校って泊まっていいんですか!?」


「まぁ、飯や歯磨きはコンビニで買えばいいし、シャワーは部活動用に設置してあるし。・・・困るのは寝床ぐらいだな。」


「いざとなったらここら辺の椅子を並べて寝るしかねぇな。」



おいおい・・・と鷹村くんが口をあけている。




「マジで泊まるんですか!?」


「しゃぁねぇだろ、こっちはくそ忙しくて昼間は調べられねぇんだからよ。」



ハルさんの質問に五稜郭さんは困り顔で答える。


そんな時にちょうど放送が入る。

“生徒会生徒は全員本部会議室に集合”とのことだ。




「行くか・・・」


「はぁ、残るっていったら皆の嫌味をきかされるんだろうなぁ・・・鬱だ・・・」


「まぁ、そういうなよ。俺と一泊できるんだぞ!!」


「余計に鬱だわ・・・」


「大丈夫ですにゃん、僕は嬉しいですにゃん!!」


「オレはぜんぜん嬉しくない件。」



そんな幹部たちの愚痴を聞きつつ、本部会議室へと向かう。



「・・・鷹村くんはどうするんですか?」


「俺も泊まっていこうかなって思ってる。中島は?」


「私もです。・・・ま、こうなったのは私が変なこと言いだしたのが原因ですし。」


「ま、たしかにそうだわな。」



・・・こうもあっさり肯定されると、なんか逆にいにくくなったりもするわけですが・・・。



「それにここまで来た以上、真相を知りたいしな!!」



鷹村くんは笑顔でそう答える。


・・・鷹村くん、もしかして楽しんでます?

この大変な事態を楽しんでます???




本部会議室へとつくと、すでにほとんどの生徒が集まっていた。

ここで今日の全体解散をするようだ。



「え!?五稜郭さん、帰らないんですか!?うわっ、幹部はお仕事がたくさんあって大変だー、俺、下層部でよかったぁ・・・」


「おい、黙れ。オレも帰りたくなるだろうが。」


「いやー、俺も仕事ほしいなー!!でももうないし、帰ろうー!!」


「野郎ォ・・・殺されないと気がすまないみたいだな。」



案の定、五稜郭さんは下層部の皆にからかわれている・・・。



「フハハッ!!夜の学校とか燃えるだろ!!幽霊とかでたらバッチリカメラにおさめてやるぜ!!!」



一方、異常にハイテンションなのは山崎さんである・・・。

下層部、上層部の両者を相手に「学校へとまる」ということを自慢している。


下層部は目を輝かせてきいているが、上層部の冷たい目はまたひどいものだ。



「先輩、じゃぁ、学校七不思議について調べてきてください!!」



しかも変なこと頼まれてるし・・・



「ま・任せろ!!」


「山崎、足が震えてるぞ。」


「ば・バカ野郎!!これは武者震いだ、フハハッ!!!」



楽しそうでなによりです。

当の本人にそんな余裕はなさそうだが・・・。



「ハルさん!!なにか深夜に2人に進展があったら教えてくださいね!!」



ハルさんはというと、砕川さんに・・・こちらも変なことを頼まれている。



「厳島さんが泊まるというのなら私も・・・。」


「いや、いいって。悪いし。」


「いえ、責任者を一人にするほうが悪いです。」


「いや、こんな個人の理由できみまで巻き込むほうが悪いよ。」


「いえいえ、責任者が泊まるといえば部下が泊まるのが普通です。ここで厳島さんだけを泊めるのは悪いですって。」



厳島さんと凛動さんはいつまでアレを続けるつもりなのだろうか・・・。



・・・大体15分ぐらいだったか。

3年幹部の長い話を聞かされ、だいぶ長引いてしまった。


ようやく「解散」の言葉が部屋に響き渡り、少しずつ人数が減っていく。



「・・・ん?お前らは帰らないのか?」



人数が減ってきた中、未だに残っている私たちを見て五稜郭さんが声をかけてくれた。



「調べる原因ができたものも私が変なことをいったからですし、私も残ります。」


「変に気を遣う必要はないぞ?」


「いえ・・・それに私も残ることでお手伝いとかできるでしょうし。」


「・・・そうか。」



そう1回頷くと、ちょっと嬉しそうに「ありがとうな」といって、また先ほどまでたっていた場所へと戻っていった。


それから一同は一旦情報処理室へと戻っていった。

どうやら今日に残るのは私たちと2年幹部たちだけらしい。



私たち以外いなくなった学校で私たちは調査を始めるのだった・・・。



                                「斥候」  完

ヒロインとしてのスペック



卯「きた!!今回は私のターンよ!!」


十「え~、前に「自己紹介」やったじゃん。」


卯「懐かしいわね、そんなのもあったわね。」


五「懐かしいといえば、最近、「そこに空があるから(ポケモン)」を見たらめっちゃ感動した件。」


十「懐かしすぎだろ。」


五「それから昔のポケモンのメドレーを聞いてたら、いつの間にか泣いてる俺がいましたよっと。」


五稜「きめぇな、おい。」


五「人の感動を壊すな!w」


五稜「いや、暗い部屋のなか、画面だけを見つめてお前が泣いてる姿想像すると・・・」


五「※いつもはニヤついてます」


五稜「もっときめぇよ。」


五「(´・ω・`)」


五稜「ま・まぁ、それをいったらオレはクレしんのオトナ帝国で猛烈に泣いたな。」


山「・・・え?wwwお前って泣くの?www」


五稜「氏ね。」


山「今の時代、タヒねなのさ!」


十「そんなこと、ドヤ顔で言われましても・・・」


五稜「世代の違いを感じるわ~・・・」


十「いや、そんなに世代かわってませんからw」


五稜「普通に「しね」で変換すると一番最初に「氏ね」が来るオレは末期。」


十「それはひどい(;´Д`)」


五「だがオトナ帝国はたしかに神だった。」


五稜「個人的にはヒロシの回想よりも、最後の東京タワーみたいなところがヤバかったな。ヒロシの名言もさることながら、みさえの階段で泣いた。」


五「あそこはボロボロになりながらも走り続けるしんのすけがマジでかっこいい件。」


山崎「俺としてはアッパレやヒヅメもいいけどな・・・」


五稜「あれは終わり方が卑怯なんだ!・・・泣いたけどな。」



山「俺的に懐かしいといえば、ガンプラを昔によく作ったな。ヅダとかよく作った。」


五「仕様で壊れる奴かw」


山「あの仕様が好きだったw個人的にはイフリート改をガンプラで出して欲しいな・・・」


紀「やっぱガンダムといえば宇宙世紀だよな!!」


十「百式命!!」


五「他にロボットアニメといえばガンダム、マクロス、エヴァ、アクエリオン、ギアス、エウレカあたりか・・・。」


神「自衛隊もマクロスほどにミサイルが撃てればなぁ・・・」


十「おい、ミサイル1本いくらすると思ってるんだ!?」


飛「ロボットアニメといえば云々?おいおい、ゾイドを忘れてもらっては困るぜ!!」


十「まさかエロゲー厨がゾイドを知ってるとは・・・。」


飛「ゾイドとか漢魂を燻られるアニメだったわ。」


五「レッドリバーの戦いとか今でも鮮明に覚えてるぞw」


十「安心しろ、帝國製だwwwwwww」


五「だが起爆装置は共和国製(笑)である」


十「最初モルガをみて「うわっ、きめぇwwwなぜもっとかっこいいデザインにしなかったしwww」って思ったのに、いつの間にか、かっこよく見えてた僕は末期。」


西「それは俗に言う、“地球防衛軍”の蜘蛛がキモかったのが、いつの間にか可愛く見える現象に似ているのでは?」


飛「似てねぇよw」


十「蜘蛛・・・僕、Gは許せるけど、蜘蛛はガチでムリなんだ・・・。」


中「え!?Gは飛ぶんですよ!?」


十「でもカサカサするだけじゃん。・・・蜘蛛は巣からすでにキモイからね。」


西「昆虫キモォォォス!!、ですね、わかります。」


十「いや、僕がわからない。」


西「とりあえずあのゲームやると蜘蛛トラウマになりますよw」


時津風「まさかお前がEDFをわかるとは・・・」


西「知ってるも何もやりましたから。・・・ディロイのきしめんはムリゲーでした。」


飛「き・きしめん・・・だと!?」


十「いや、多分お前の期待してるものではないと思うぞ。」


飛「ナーサリィ☆ライm(ry 」


五「いや、お前がそもそもゲームやってる様子とか想像できないんだが・・・。」


西「ハハッ、よく“イトダー”とか“サンダー”したもんですよwww」


時「4が楽しみすぎて・・・」


西「とりあえずディロイとダロガのプラモ希望。」


時津「じゃぁ俺はヘクトルで。」



神「プラモといえば俺も昔はよくやったな。まぁ、ガンプラじゃなくて兵器類だったんだが。」


卯「あんたはどんだけ兵器類が好きなのよ・・・」


長篠「あぁ、赤城とかあのゴチャゴチャ具合を作り上げるのが楽しかったな。」


神「赤城といえば、チョロQマリンQボートの俺の愛機だった!!」


十「またクソ懐かしいものを・・・」


五「カーン!ですね、わかりますw」


神「停泊している船を撃ちまくったりしてたな。」


十「あったあったwww」


神「QボートとコンバットチョロQが今の俺を作った!!」


山「平たくまとめると元凶なわけだな・・・」


神「レインボーウィングスなんてなかった」



五稜「おいおい・・・なんかついていけなくなってきたんだが・・・」


山崎「どのへんからだ?」


五稜「ゾイドあたりからか・・・。」


山崎「だいぶ前じゃねぇか!!」


卯「大丈夫よ、私なんてほぼ最初からわかってないから。」


十「とりあえず要点としてはゾイドはデスザウラーがかっこいいということだ。」


西「今までに一言もそんな言葉聞いた覚えないんですけどね・・・」


神「あと自衛隊は早々にYF-21(マクロス登場機体)を配備すべきだということだな。」


十「だからミサイルが足らないと・・・」


飛「その頃ドイツは40mmの鉄板を数秒で撃ち抜くレーザー兵器の実験を成功させるのだった。」


神「よし、ドイツに頼んで、メーサー車をつくって特生自衛隊を設立しよう!!」


長篠「マジめな話をすると22DDHと24DDHが楽しみすぎて・・・」


神「飛龍を上回る排水量だもんな。・・・だが潜水艦に「そうりゅう」ってつけたせいで22DDHに「そうりゅう」「ひりゅう」ってつけられないじゃないか!!」


飛「お前はどこにキレてるんだよ・・・」


十「・・・この話なら咲良もわかるんじゃない?」


卯「私が知ってるのは旧日本陸軍のみよ。今の兵器なんてさっぱりよ。」


飛「ヒロインならちゃんとそういうところも勉強しとけよ!!」


卯「なにそのムチャぶり!?」



十「というか今更なんだけどさ、なんでまた咲良ネタなのさ。ここはやっぱ第一回の「おまけ」で人柱とかした僕のをリニューアルしてやるべきだと思うんだよね。」


卯「ちょっ!それじゃタイトル詐欺じゃない!!」


五「もうだいぶタイトル詐欺な件。」


五稜「そもそもお前がそのタイトル詐欺に導いたんだけどな。」


紀「すでにタイトルは死んでいる。」


山崎「そうだ、今からタイトルを書き換えればいいんだ(迫真)」


卯「冗談じゃないわよ!!」


五稜「そういえば前回のおまけぐらいで金ヶ崎が「小説を書き換えよう」みたいなこといってただろ?」


山崎「あぁ、言ってたな、そんなこと。」


五稜「その後運営に見つかって盛大にBANされた件。」


五「運営ってうp主じゃんwww」


飛「ざまぁwwww」


山崎「ネトゲーかよ・・・」


五稜「お前も今、おんなじようなこといったからBANされるんじゃね?」


山崎「ちょっwww俺はまだ死にたくないwwww」



卯「じゃぁ、ちゃんと進めればいいじゃない。」


飛「えー、じゃぁこのカンペ読めばいいの?・・・“なんで咲良さんは生きてるんですか?”」


卯「絶対書いてないでしょ!!」


飛「そもそも俺はよ、“自分可愛い”って思ってる女嫌いなんだよね。」


卯「え?・・・ごめん。」


十「そこ認めるのかwww」


卯「ま、最初のほうは無駄な自信があったからね。男子は全員バカだと思ってたし。」


五「ひでぇwww」


卯「ま、“好き”っていえば簡単に釣れたからね。それに“好き”っていえば簡単に作業もしてくれたし。」


飛沫「最低だろ、こいつ。」


卯「でも実際は自分が一番バカだったんだけどね。・・・ホントに好きな人ができて、バカやってきたなって思うわよ。」


五「なにこの真面目な展開。そういうのは本編でやれよ!!」


卯「あんた本編でも最近ふざけてるじゃない!」


五「バ・バレた・・・だと!?」


五稜「ま、人はやらかしたのを知って進歩するもんだからな。」



飛沫「にしても好きでもない奴とイチャついてたんだろ。・・・ねーわ。」


卯「ま、手を組むぐらいはしてたわね。・・・それでも相手は時々感づきそうになるから、その時に“好きだよ”って言ってごまかしてたわ。」


五「女の子怖い(´・ω・`)」


飛「そしてその後はエロゲー展開、と。」


卯「してないわよ!!てかキスすらしたことないし。」


飛「いや、それは嘘だろ。そんな嘘いって今更人気稼ぎとは甘いんだよ!!」


十「てかお前はエロゲ脳すぎるだろ。」


飛「うるさい!!ここはヒロインを変更させるチャンスなんだよ!!」


西「まずは・・・政権交代!!」


飛「お前も黙れ。今日ぐらい真面目にやれ。」


西「・・・やれやれ、五月雨さんじゃないですが、おまけを本気でやるのはあんま好みじゃないんですがね。」


五稜「てかこいつ、どんだけヒロイン嫌いなんだよ・・・」


飛「ヒロインは好きだ。だがその好きなヒロインの立場だからこそ、こんな女を俺は認めん!!」




五稜「なんかきな臭くなってきたな。せっかくのおまけの場の空気を崩す前にとめる・・・か。」


西「・・・いえ、やらせてあげましょう。」


五稜「おい!」


山崎「西本に賛成だ。・・・いい加減あの飛沫の卯月嫌いもなんとかしないといけねぇし・・・同じ男ならわかるんだよ、あいつの気持ちも。」


五稜「・・・は?」


山崎「男ってのは何かに熱中する生き物だ。一人でプラモとか黙々と作って勝手に達成感に浸って喜ぶ意味のわからない人種なんだよ。だがそれだけ好きなものへの思い入れは桁違いに違うもんなんだ。・・・それはあいつも一緒なんだよ。・・・その対象が俺がプラモで、十六夜がアニメで、五月雨が東方で、西本は国家で、そしてあのバカがエロゲだった、それだけだ。」


五稜「いや、意味わからねーし。」


厳島「なんか語りモードのスイッチが入っちゃったみたいだね・・・」


山崎「あいつがエロゲやギャルゲが好きだってのは、それだけヒロインへの立場への思い入れもあるってこった。・・・自分の好きなもんだからこそ、汚されたくねーんだよ。まして自分がかかわるもんはな。・・・俺もギャルゲかなんかやってたら、あいつと同じ気持ちだったのかもな。」


五稜「わかったら。もういいから。」


山崎「あいつが好きなもんは俺と共通しねぇが、好きなもんがあるって点では共通してる。だから気持ちがわかるって話だ。・・・ロマンだよ、ロマン。」


十「まぁ・・・たしかにわかるかも。」


五稜「・・・ったく、ホント意味のわからねー人種だな、男ってのは。ロマンって言葉だけでこの「おまけ」の場を壊すつもりかよ?(棒 」


山「バカだよな?www俺もつくづくそう思うわwwwwだが、それが男ってもんなんだよ。」


厳島「それにしてもこのバカ、ノリノリである」


西「・・・そういう意味では卯月さんの言う「男はバカ」っていうのは正しいのかもしれませんね。」


五稜「まぁ・・・いいんじゃねぇの、そういうのも。嫌いじゃねぇよ、オレは(トオイメ 」


五「なにこの真面目な話の嵐、怖い((((;゜Д゜))))」


時津「無駄に壮大すぎだろ。」


五「こんなの絶対おかしいよ!」


時津「お前は歪みなさすぎだろ。」



飛沫「そもそもお前がヒロインとして認められるのは見た目だけじゃねぇかwww性格とかスペックとかどう考えてもヒロイン向きじゃねぇだろwww」


卯「なによ、私にだってそれなりのスペックはあるわよ!!」


飛「え?じゃぁ何できるの?飯とかつくれるの?」


卯「そ・それは・・・」


飛「掃除とかできるの?」


卯「・・・できません。」


飛「金持ちのボンボンだもんな。なにが社長令嬢だよ、響きはいいかもしれねぇが独立したら何もできやしねー甘ちゃんじゃねぇか。そのくせ男遊びは一人前ってか。」


卯「・・・そ・それは・・・」


飛「この小説の最大の弱点は頼りない主人公と、ビッチなヒロインなんだよ。」


十(え!?僕も巻き添え!?!?)



飛「男遊びだけが得意なくせにキスもしたことない?笑わせんなwwww」


卯「ホントよ?・・・一番最初の初恋の時はいろいろ試行錯誤したけど相手が鈍感すぎてね。・・・それ以降は好きでもない相手だったし、する気もなければ“好き”って言葉だけでいってればよかったし。」


十「なぁ、飛沫。お前にとってヒロインってなんだよ?男の役にたてばいいって思ってないか?それだったらお前も昔の咲良と一緒だぞ。」


飛「んなこたぁねぇ。多少スペックが足りてなくても許せるもんはある。ただしコイツの場合は見た目と社長令嬢ってだけでヒロインの座についている。それが気に食わねぇ。」


十「・・・」


飛「しかも男好きのビッチだ。・・・主人公への愛さえ本物なんだかわからねぇ。」


時津「それなら俺が保障してやるよ。」


飛沫「・・・てめぇは余計なところで・・・」


時津「こっちは本編でヒロインに面白半分で喧嘩うったんだからなwww」


十「え???言い分明らかに違うでしょ!!」


時津「ま、細かい事は気にすんな。言い分はなんにしろ、こっちは本編でこいつが一途なのを見てきたからな。」


飛沫「それに仮にこいつの男遊びが過去のことだとしても、被害にあった連中が報われないだろう。特にお前さんのリーダーだって直に違いを受けてるじゃねぇか。」


時津「まぁ、な。それが原因で第5同盟に付き合わされるはめになったわけだ・・・。が、これはお姫様かわなかの前じゃ絶対言わねぇ事なんだが、アレの悪いのは卯月だけじゃねぇと俺は思ってる。」


飛「・・・は?」


時津「お前が“女は一途に限る”っていうように、女からみれば“男にも一途であってほしい”もんだろ?・・・お姫様の彼氏は、お姫様がいるのに卯月のところへいった。・・・それは男子が女遊びをしてるってことだろう?」


飛沫「・・・」


時津「少なくてもお姫様の彼氏は、卯月に誘われても既に付き合ってるお姫様を優先すべきだったんだ。それをしなかった地点で、その彼氏にもお姫様を傷つけた責任はある。・・・卯月だけを責めるのはお門違いだな。」


飛沫「それは第5同盟の存在そのものを否定するってことか?」


時津「違う。たしかに卯月も悪かったかもしれない。俺らは次なる卯月の被害を増やさないために動いた。それは今でも間違ってなかったと思ってる。・・・だが卯月だけじゃなくて、どのカップルの被害者も男にも悪い面はあるっていってるんだ。」


飛沫「・・・」


時津「安心しろ、そもそも卯月がお前のいう“見た目”と“社長令嬢”だけが武器なヒロインだったら、あいにくどっちもこの主人公には効かねぇ。」


飛「終わらねぇじゃねぇか!」


時津「終わらない話を誰が書くんだよ・・・」


飛「いや、今の筆者ならありうる。無計画の塊だからな。」


五「・・・たしかに。」


時津「どの話にも始まりがあるのと同時に終わりがある。・・・終わりがないなんてことはねぇよ。つまり終わりがあるってことは卯月に“見た目”や“令嬢”以外の武器で主人公を攻略するってこった。」


飛「・・・」


時津「それにプラスで今、本人は一途だ、これのお前の望むヒロインポジションのスペックのどこに不足がある?」


飛「・・・だが主人公はどう思ってるかわからないだろ?」


十「別に僕は咲良がヒロインでいいと思うよ。」


飛「男遊びしまくってた女だぞ?」


十「別に過去の咲良のことなんざ興味ないし。・・・僕は今、咲良といる。だから大事なのは今の咲良だよ。」


飛沫「・・・」


十「今の咲良を見てると、主人公を攻略しようと必死だよ。むしろ彼女が主人公になってもいいんじゃないかなって思うぐらいだぜ。」


五「なにいってんだwwwこの主人公wwww」


山崎「お前は何かをネタにしないと気がすまないのか・・・。」



十「もちろん僕は付き合う気はないけどねwwwwだってアニメのほうがいいしwwww」


五「なんかさ・・・主人公のほうが病気な気がしてきたんだけど・・・」


飛「・・・どっちも病気だろ。・・・ったく、もう好きにしろ。」


スタスタスタスタ・・・



山崎「行っちまいやんの。」


西「あれは重症ですね・・・」


十「失敗したかな・・・」


西「いや、成功でしょうね。」


山崎「だな。」


五稜「・・・それも同じ男としての勘か?」


山「いや、ありゃ確実だろ。」


五稜「・・・やはり男はわからん。」


西「飛沫さんは飛沫さんでツンデレですからね~。」


山「おいおい、あいつがツンデレだったら、めっちゃたちの悪いツンデレじゃねぇか。」


西「本人曰く、“ツンデレは好きだが、3次元でそれはやめとけ”だそうですが、そのくせ自分がツンデレ化してるのに気づかないのは皮肉ですね。」


神「だがそれがいいッ!!」


五稜「頼むからこれ以上、生徒会が変な目で見られるようにするのはやめてくれ・・・」



卯「・・・みんな・・・ごめん・・・あとありがとう。」


時津「まぁ、思ったことをいっただけだぜ、俺は。」


十「そうそう。」


五稜「今回はこの辺でいいんじゃねぇか。」


山崎「だな。飛沫も不在だしな。」


西「では今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!」



一方飛沫は・・・



飛沫「・・・ったく、周りに助けられるようではヒロインとしてまだまだだな・・・」



まだまだ卯月に対して厳しい飛沫でした・・・



                         完



今回の感想


本編は1話にまとめようとしたのですが長くなったので2話にしました。

その結果がこれである。


めっちゃぎこちない、というか、変な終わり方しとるwwwww

・・・しょうがないんです、ここがちょうど半分ぐらいだったんです!!w


おまけ?

なぜあんな真面目にやったか?


・・・最近は恋愛要素もないですしね~・・・

やりたいからやった!!w

後悔はちょっとしてるw


最後に今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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