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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
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決戦(Ⅴ)

決戦。

それはすべてを終わらせるための最後の大勝負。


・・・最後ということは両者とも本気の全力のガチで攻防を行い、それは大きな勝負となる。

ということは文字通り、戦いの行方を決める、ということである。



諸君は次のうちどちらが勝つと思う?

全校生徒約600人と生徒会総勢約60人。

いや、この場では600人VS40人か。


大抵の人なら迷わず「600」と応えるだろう。

僕もそれが正解だと思っている。

圧倒的数での差、常識的に考えて確実に「600」が勝つだろう。



ところがそんな常識が通用しないのが我が校の生徒会の連中なのである。

この場であっても自ら「40」を犠牲にして、残り「20」にすべてを任せる気でいる。

そこから幹部を減らせば、わずか数十名となるだろう。



「・・・」



目の前にも1人、生徒会の幹部がいる。


2年生徒会副会長、山崎。

彼も生徒会の幹部のうちの1人だ。

しかも「副会長」という極めて高い「地位」・・・とでも言おうか?

それにいる。



知っての通り、幹部というのは指示・指揮をしたり、作戦を立てたり、チームをまとめたりする人のことを言う。

そんな幹部が・・・

そして彼に至っては非常に高い地位。

そんな男ですら、一般の生徒会生徒と混じって攻撃を仕掛けてこようとしている。




もし・・・

今、ここで連中の攻撃を許してしまえば残り「20」の生徒会は何を思うだろうか・・・?

目の前の「40」はこの行いが生徒会のためだと思ってやっている。

その考えは生徒会全体に浸透しているため、おそらくかわることはない。


山崎も先ほどいっていたが・・・

「名誉の全滅」という考え方になるだろう。

2年生徒会副会長である山崎、そしてその下で動く警備部約40名は生徒会の盾としてのさきがけとなる。

それは一種の「英雄」扱い。



となれば残りの「20」は幹部だろうがなんだろうが・・・

「生徒会の権力維持と組織の存続」、たったそれだけの目的のために自らを犠牲にしてまでやってくるだろう。

・・・犠牲は増え続ける。


冷静に考えれば「組織の威厳・権力」は残っても、その権力を使う者がいなければ意味ないというのに。

生徒会は“形なきモノ”を大きな犠牲をだしてでも守り抜いて勝利したとして、その後に何を思うのだろうか?



誰にでも勝敗なんて見えきっているのに・・・

両者ともに大きな被害を被ることとなる。

・・・なんと虚しく愚かで儚い。



「・・・」



生徒会は「組織には人が必要」ということを理解できているのだろうか?

権力よりも何よりも、それを実行していく人こそが何よりも重要だと理解している生徒は何人いるのだろうか?


「生徒会は権力と威厳のもとに成り立っている」

「無敗の歴史、それこそが生徒会のすべて」


そんな“幻想”に惑わされている彼らは権力という名のシステムにばかり目が行き、それよりもっと大切なものがあることをすっかり忘れてしまっている。




悲しい幻想けんりょくに惑わされた警備部の生徒たちは、こうしている間にもゆっくりと確実にこちらに進んできている。


・・・すでに僕と咲良によって2回も進行を邪魔されている。

下手をすれば過激派の登場・そして反撃の可能性もありうる。



しかしそれでも全校生徒は警備部の生徒が1歩こちらに進むたびに、1歩後ろに下がる。

どんどんギュウギュウになる。




「よっ、将軍。」

「合流できたか。」



すると後ろで心強い声がきこえた。


五月雨の声だ。

川口の護衛は上手くいったのだろうか。



「川口に悪いことをしちまった。」

「どうした?」

「2人警備がいてな。・・・1人ならどうにかできたんだが・・・」



五月雨は言葉を詰まらせる。

もう1人は警備し続けている、ということか。



「だからもう一度違う手でどかそうと思ってる。」



とりあえずは途中報告、ということか。



「・・・その必要はない。」

「え?」

「川口なら大丈夫だ。あいつだって自分でも曲げられない強い思いを持ってる。」



その将軍にしては具体的な根拠のない言葉に咲良と五月雨は不安気な顔をする。

それをみて将軍は苦笑して言った。



「あいつを信頼しろ、といったのはお前だろ、五月雨。」

「・・・そうだな。」



その言葉に五月雨は頷き、咲良も納得したような顔つきになった。



「あと川中に会った。」

「時津風と一緒じゃなかったの?」



その言葉には将軍ではなく咲良が反応した。



「いや、どういうわけかは知らんがあいつは1人だった。おそらく厳島さんに飛沫をとめてもらおうと考えてるんだろうが・・・川口のいってた凛動さんとやらが現れた。」

「・・・」



凛動は厳島を守っている生徒・・・

と川口からきいた。


そんな凛動がなぜ川中と出合った?



予想外の人物の登場に将軍は目を細めた。




「俺の報告は終わりだ。・・・で、ここの状況はどうなってるんだ?」

「・・・見ての通りよ。」



咲良はまた1歩下がりながら言った。



「なるほど、わからん。」

「・・・」



咲良の目つきが若干・・・

というかだいぶかわった。



(どこもかしこも苦戦中・・・か。)



五月雨はそんな咲良をみてもお構いなしに苦笑するが・・・

内心ではそんなことを思っていた。



体育館・本部会議室前は見ての通り。

廊下では、川中が別行動をとるぐらいだ、苦戦中なのは目に見えている。

放送室だって、さっきまでいい調子で放送してたのに今じゃうんともすんとも言わない。




「それだけ生徒会の意志は強かったということだ。」



将軍はそれを察したらしく、こんな言葉をいった。



(卯月があれだけ訴えてもダメ・・・生徒会の意志はどうすれば砕ける・・・)



五月雨は咲良の訴えを途中から見ていた。

というか、体育館についたときにちょうど咲良が「ずっと俺のターン」状態になっていたところだった。



何にしろもう打つ手がないのはたしかなことだ。

咲良が、皆が、あれだけ訴えてもダメだったのだから。



何か新しい案を考えようともでてこない。

それに時間は刻々と近づいている。

困り果てていたそのときだ。


生徒会の連中の進行がとまった。



「どうしたんだ?」



そんなことを小言で言いつつも、目の前の山崎は体育館の後ろのほうを目を細めてただただ見つめていた。


僕もその視線のほうを見てみると・・・

どういうわけか、横1列そろって進行してきた生徒会の陣形が崩れている。


・・・もっといってしまえば、武器は壁側に転がり・・・

警備部の生徒3名が尻もちをついて座り込んでいた。


中心には1人の男性。



彼は無言で体育館からみて後ろ側を入り口から右側へと歩き、今度は後ろから山崎のいる前部へと歩く。

彼の歩く道の途中にいる警備部はどういうわけか道を勝手にあける。


おかげでどんどん山崎との距離を詰めていく。



「・・・あいつ・・・」



五月雨は肩を落とす。

五月雨自身も驚いているようだった。



「どうした?」

「鬼ごっこをした相手なんだよね~、あいつ。」

「・・・生徒会か。」



つまり五月雨が誘導してきた相手・・・ということか。

たしかによく見れば襟に菊の紋章をつけていた。


そんなこんなで彼はついに山崎の前にまでたどり着いていた。



「・・・何のつもりだ、貴様。まさか邪魔をするつもりではあるまいな?」

「いえ、ただ質問したいことがありまして。」

「質問・・・だと?」



山崎は首を傾げる。


山崎の守りを固めるべく、まわりの警備部の生徒も動き始める。

そして山崎の前に、もともといた2人とプラスで2人。

計4人が集まった。



「えぇ、質問です。」

「・・・」



その断定付けた言葉に山崎は警戒をする。



「・・・あとにしてくれないか?今の状況をお前も理解しているだろう?」

「いえ、重要なことなんです。」



山崎の前にたつ男は諦めのそぶりを見せようとしない。

山崎はため息をつき、仕方なくきくことにしたようだ。



「いいだろう、なんだ?」

「あ~っと・・・」

「おっと、手短にしろよ。」



出鼻を挫かれ、質問する側の生徒は少しムッとする。



「・・・副会長、念のためお聞きしますが“警備部の誇り”ってなんですか?」

「・・・なに?」



山崎の態度に質問した生徒は笑みをうかべる。

まるで勝ち誇ったかのように。



「ですから“警備部の誇り”ですよ。さっきここで諦めれば警備部の誇りが穢れる、とかどうとか言ってたじゃないですか?」



その言葉に山崎は拳にグッと力を入れて、目の前の男をにらみつける。




「仁井、貴様ぁ・・・厳島に何を吹き込まれた?」

「何にも。」


仁井とよばれるその男は軽くその質問に答えた



「そんなわけがあるか!!つい先ほどまで貴様も事を進めていたではないか!!」



山崎は怒りをあらわにする。


この期におよんで裏切るつもり・・・

そう考えたのだろうか?



「俺がここまで事を進めてきたのはそれが“学校のためになる”と信じてきたからです。」



それは川口の考えと似ていた。



・・・だが今は全校生徒・・・

ついには学校そのものすらこちらについた。


どうみても「学校のため」というのは無理がある。




「そうか・・・学年主任か・・・あのじじいが!」



目の前の男もその言葉は否定しなかった。



「副会長、質問にお答えになってください。」

「・・・たかが警備部1年責任者ごときが調子にのるな!!」

「それが答えですか?」



仁井は山崎に1歩近づいて確認をとる。



「ここで生徒会のための動きをとめるものは味方であろうが、すべて敵と見なす!!やれ!!!」

「・・・それが答えなんですね。」



山崎の言葉と同時に目の前の4人が一斉に仁井の方向へと走り出す。

それをみて、仁井は少し悲しそうにそれが仁井の質問に対する山崎の答えだと認識した。



仁井はそれから右手にもっていた竹刀を使って、まず先頭2人のバットを強くはじき、相手のバランスを崩させる。

そこに足を出し、先頭2人は転倒した。



さらに1人の竹刀の大降り、胴を狙った攻撃を彼は態勢を低くして軽やかにかわして相手の後ろへとつく。

そして生徒の背中をガッと押して、前に転倒している2人のほうへ押し出す。

当然ながら突然背中を押された生徒はバランスを崩し、転倒している生徒に足を引っ掛けて、立ち上がろうとしていた2人の上からさらに転倒する。



その圧倒的強さを目の前に最後の4人は弱気に1歩下がった。

その一瞬の隙をついて、最後の1人の竹刀を弾き飛ばすと・・・

まっすぐ山崎に向かって走っていく。



「くっ・・・」



山崎も持っていた竹刀で守りの態勢をとる。


仁井は相手が攻めてこないことをいいことに、幾度もあらゆる角度から攻めていく。

山崎はその猛攻に耐えてはいたが、徐々に後退していき・・・

最終的に後ろは壁、となり下がれなくなった。



背中に壁がぶつかり、山崎が後ろを確認した隙に竹刀を強くはじいて山崎の首からわずか3cmといったところで先端をとめる。



「警備部の誇りが何なのかも知らないくせに知ったような口をきいてんじゃねぇよ、ペテン師が!!!」



仁井の地位に逆らった言動・そしてこの暴言に皆が驚く。

彼の一喝に山崎も退きをとる。



「今の4人みたいな連中じゃ相手にならねぇ。守りを固めるならジャスティスの連中かもともとの警備部、あとは時津風でもつれてこいよ。」



ちなみに仁井は闇討ち時に参加し、時津風が陽炎と戦う前に1対1で勝負をした相手だった。

それから今度は山崎ではなく、警備部の生徒たちを見渡して口を開く。



「おい、もともと警備部だったやつは“警備部の誇り”が何かを知ってるだろ?」

「・・・」


その問いに警備部の生徒たちは顔を見合わせる。


今の警備部は半分以上が他の指揮可能部から移動してきた生徒会の生徒だ。

闇討ちと同時に警備部の一時的に強化するため、ほとんどの部からほぼ全員を警備部に移動させた。


そして警備部のなかから、運動部に所属している者やずば抜けて運動神経が良いものを抜き出して作り上げたのが治安維持部、今のジャスティス配下と賤ヶ岳の配下だ。

それによって一部警備部からも生徒がいなくなったが、それでももともと人数が生徒会指揮可能部のなかで一番多かったのが警備部なわけで・・・

今でもそれなりに多くの人数が残っている。




もともと警備部だった生徒たちの態度は戸惑いばかり。

その態度に仁井はため息をつく。



「んだよ、初心ばかりのまわりに影響されすぎちまったのか?」



それから今度は先ほどよりも強い口調で言う。


「お前らは厳島さんから“たった1つだけ覚えていろ”と言われたことまでまわりに影響されて忘れちまったのか!?」



その言葉で警備部の生徒の一部の態度が変わり始めた。



「“警備部は攻めるための部ではなく守るための部だ。そして守るべき対象、我々がなるべき形は生徒会の盾ではなく、生徒の盾だ。”」



その言葉に全校生徒も驚く。

いや、驚くといっても厳島を全く知らない人が・・・だ。

厳島と少しでも関わりがある生徒は皆、「彼女らしい」という顔をして頷いている。



「俺は闇討ちの時、この言葉を覚えていたにもかかわらず参加した。」



それは自分の意志で厳島に逆らった、ということを遠まわしにいっていた。



「それが学校のためとなると思ってた。厳島さんみたいな甘い考えなどでは学校など支えられない。学校を荒らす連中には受身ばかりではなく、積極的に攻めることが大事、それが正義だと思ってた。」



この言葉は決してもともと警備部だった生徒だけにいっている言葉ではない。

今の全警備部の生徒たちに言っている言葉でもあった。



「俺はついさっきまでずっとこの考え方だった。結局学校が生徒会を手を切るといってきたとき、やっと生徒会の動きが学校のためのものではないと気づいた。」

「・・・」

「そして今や全校生徒が立ち上がってる。本当、笑っちまうぐらい気づくのが遅すぎだよな・・・川口もと副会長を見習わないとな。・・・な、陽動くん?」



(なぜバレたし・・・)



仁井は苦笑して、五月雨のほうを向いていった。

五月雨は五月雨で苦笑するしかない。




「ま、陽動くんの陽動に見事にひっかかったおかげで、俺はこの状況をとめる力に微量わずかながらなれる。」



それは川口、陽炎に続く生徒会側からのこちらの理解者、ということだった。



「お前らだって本当はもうたくさんなんだろう?だけど生徒会の誇りを汚すわけにもいかない。だから捨てられない。・・・だが今、武器を捨てることは警備部の誇りは守り通す、ということにもなる。」

「仁井、わかったような口をきくな。皆、もうたくさん?冗談じゃない、勝つまではやり続けなければならない。」



仁井は山崎の言葉に呆れ顔をする。



「でもそれはあんたの本心じゃないだろ?なぜ勝つことにそこまでこだわるかは知りませんが、俺にはその選択があなたの本当の本心ではないように見えます。」

「易々とよくそんな甘ったれた言葉がいえるな?」



このままでは決着はつきそうにない。

切り札は最後までとっておけ、とはよく言うがここは仕方がない。



「ならなんで!!」

「?」

「なんでさっき、そこの女性の言葉に山崎さん、あなたも含めて皆が黙り込んだんです?」



ちなみにそこの女性、というのはまぎれもない、卯月咲良のことだ。



「なぜ1人の男性が一番危険なところにきてまで何かを語りかけようとしているのに真面目にきかないんです!?なぜ1人の女性が強くあなた方に訴えかけているのに本心で答えないんです!?」



ちなみに1人の男性・・・

とやらは僕のことらしい。



「そんなの決まっている。聞く必要がないからだ。そして本心を突いた言葉などでもない。」

「いえ、違いますね。本当は今まで自分が正義だと信じて進めてきたことがすべて悪になることが怖い、そうでしょう?」



その言葉に山崎はまったく反応しなかった。

が、警備部の生徒たちは反応していた。


それをみて、仁井は警備部の生徒たちに再び訴えかける。



「警備部の皆、俺は気づくのが遅すぎた。・・・だがそれでも・・・自らの意志で最高責任者の言葉を裏切ったということをいっても厳島さんは微笑んでそれをあっさりと許してくれた。」



仁井の言葉はまっすぐで、嘘など混ざっていない。


よくわからないが、そういうオーラみたいなのがでている。

そう感じ取れる。

それはきっと皆も一緒だろう。



「・・・まだ間に合う。本当の意味で“警備部の誇り”を守ろう。今までが悪だったならこれから正義になればいい。」



だから一部の警備部の生徒たちは・・・

手に持っていた武器を捨て始めたのだ。










本部会議室前では、未だに沈黙が続いていた。

本部会議室前の警備をしている女性、そしてその本部会議室を目指す男。


2人はただただにらみ合っていた。




「・・・もう一度言います。そこを通してもらえませんか?」



川口はこのままではらちがあかないと考え、沈黙を崩した。



「ですからそれはできませんわ。厳島さんの命令ですし・・・何よりあなたはもう生徒会の生徒ではありませんの。裏切り者をあっさりと本部会議室に入れるほど私が馬鹿だとでもお思いで?」



彼女は言葉的には攻撃的で、武器も川口に向けているが・・・

攻めようとする攻撃的気配は感じられない。



「砕川さん、あなたはこれを続けていればどうなるか、わかっているでしょう?」

「・・・」

「今でもかなりギリギリのラインを歩んでいるんですよ、皆は。」



それは一歩間違えれば大変なことになる、ということだ。



「下手をすればすでに被害がでているかもしれません。」

「・・・私はこの決戦、どちらが勝とうがどうでもいいですわ。」

「!?」



砕川は竹刀の先を川口から床へと向けて、下におろす。

そして柄の一番手前側に手をのせ、杖のようにした。


その動きは川口が冷静な対応をしている、と砕川が認識して・・・

こちらは攻撃する意志はない、ということを伝えることでもあった。



しかし川口本人はそんなことより・・・

砕川のサラッとさりげなくいった一言への衝撃のほうが大きかった。



今までこの勝負に関してはどちらが勝ち、どちらが負けるかを望んでいる人は確実に片方を選んでいる人しかいなかった。

それだけ皆にも関係のあることだからでもある。


生徒会でいうなら、幹部のように「生徒会は勝つ!」と確信付いている人もいれば、「勝ちたい」と山崎のように思う人、そして「勝つためには何でもやる」というジャスティスの連中。

こちらも皆が皆、勝ちたいと思っている。



しかしここにきて「どちらでもいい」という・・・

それも生徒会側からそのような意見の者がでてきた。


こちらなら全校生徒だし、無理に立ち上がった人もいる可能性はある。

しかし生徒会側から、というのは正直予想外だった。




「もし道を間違えれば、どちらが勝とうが負けようが共通の痛手を負うことになりますわ。」

「その通りです。・・・だから早く終わらせないといけない。俺は一生徒として被害を最小限にとどめたい。」



その言葉に砕川も頷く。



「ですがそれでも俺は全校生徒が勝つことを望みます。あなたはなぜどちらでもいいんです?」

「私からすれば権力なんてどうでもいいんです。生徒会がそれを必死になって守ることも、全校生徒が全力で打倒させようとしていることも、くだらないことですわ。」




しかしこの意見は生徒会だからこそいえることでもある。

権力を使う身からすれば、たとえ使っていなくても全校生徒らが今まで帝国主義にどれだけ抑圧され厳しい学校生活をおくってきたかはわかりにくいものである。



抑圧をかける者は、かけようがかけまいが自由。

だからたとえ権力を使わなくても、何にもかわらないのでどうでもいい。

ところがかけられる者は強制。

常に抑圧と隣り合わせに学校生活をおくってきていた。


その違いがこういった「くだらない」などといった新しい考え方を生み出した。




「砕川さん、それはあなたが生徒会だからこそいえることです。締め付けている者に締め付けられている者の苦しみはわかりません。」


被害者の苦しみは被害者にしかわからないものなのだ。


そういった意味では川口自身もそうだ。


今現在、自分の思っている一般生徒の苦しみと本当に一般生徒が感じていた苦しみ、それには誤差があることぐらい理解できている。

ただ川口は副会長として「アルファー」などを言いつける義務があった。


そのたびに苦しむ生徒たちを見てきたからこそ、ある程度の苦しみは理解できただけだ。

本当の苦しみは今、体育館で警備部と話している全校生徒たちにしかわからない。




「さて・・・そろそろ道をあけてくれませんか?急がないと本気で時間が厳しくなってきてしまいます。」

「あなたの言いたいことはよくわかりましたわ。・・・そして私たちは2人とも被害は出したくない、と思っていることも。」



これは通してくれるだろうか・・・?

そう川口は少し期待をした。



「ですがそれでもここをあけるわけにはいけませんわ。警備部として守るべき部分は守らなければなりませんの。」



(残念ですわ・・・私が警備部でなければあけていたのに・・・)



砕川はそんなことを思い、このポジションの悪さを軽く恨むのだった。



「なぜです!?こうしている間にも・・・」



と次の言葉を言おうとした瞬間にドアが開いた。




「・・・輝、お疲れ様だったね。もういいよ。」



生徒会本部会議室からでてきた厳島は砕川の肩に手を置く。



「厳島さん・・・」

「やるべきことは済んだ。戻るよ?」

「え?ですがここの警備はどうするんですの?賤ヶ岳さんに頼まれて・・・」

「ボクは“考えておく”としか答えてない。・・・行くよ。」



それから厳島は川口のほうをみて、軽く微笑んで小さく頷いた。

川口は会釈をして、その頷きに同じ頷きで答えた。


それから静かに砕川をつれて廊下を歩いていく。




厳島のおかげで道が開けた。


「・・・行くか。」



川口は気合を入れなおして、本部会議室へと入るのだった。




「・・・川口だったなら入れてもよかったんだよ?」

「そうだったんですの?」


2人は苦笑しながら廊下を歩いていく。



「そういえば仁井はどうしたんだい?」

「それが・・・」



砕川は的確に厳島に報告していく。

目の前に現れ挑発していった男の背丈、顔つきなどもすべて。



「なるほどね。報告ありがとう。」

「いいえ、当然のことですわ。」


(・・・あの子が・・・ねぇ?)



厳島は歩きながら目を細める。

それからとまって本部会議室から歩いてきた道のほうを見つめた。



(あとは任せたよ、副会長。)



それから再びまた歩き出した。









廊下では竹刀と竹刀がぶつかり合う音が響いている。



「飛沫、退け!」



竹刀と竹刀がぶつかり合う間に声が聞こえる。



「それはできないな。」

「ならこのままずっと続けてるか?」



見ていると、やはり剣道をやっている陽炎のほうが有利らしい。

飛沫は攻撃的に攻めるが、なかなか陽炎を崩すことができない。




「崩せないのであれば・・・崩れるまで押すまで。」



飛沫の攻撃は一見初心のようなテキトーに攻撃を連続でかけているように見える。



「おっと!」



しかし多方向からの攻撃では隙ができる。

・・・というより、隙ができるように攻撃している。

その隙を突いてくる戦法を飛沫はとっている。



「そんな手が俺に通じるとでも思ってるのか?」

「いや・・・」



しかし何かがおかしい。


飛沫は無理なことと自覚したらやらないタイプの人間だ。


今、守りを最も得意とする陽炎はそれで時間を稼いでいる。

それに対して、隙をついて攻撃をする戦法は陽炎にはすでに見破られている。

きかない、とわかりきっている。


なのに今でもその戦法をとり続けている。




「いつまでやるつもりだ?」



陽炎はそういうが、飛沫は至って真剣だった。


そのときだった・・・

内ポケットに入れていたはずの飛沫の「S&W」が激しい動きで内ポケットから抜けて落下した。



それは偶然だ。

時津風はそう思っていた。



しかし・・・

飛沫はその落下していく銃を蹴り上げた。


すでに手でとれる部分より下に行き・・・

床すれすれのところで足を使って蹴り上げた。



「なっ!?」



陽炎も落ちていくときは警戒したが・・・

手で取れるラインは超したので、油断をした。


まさかもう1度落下していた銃が手で取れるラインのところまでやってくるとは・・・



「フッ、勝った!」



彼は自信満々の笑みをうかべ、宙を待っている銃を左手でつかみ取る。

竹刀は両手で握っていたが、今は右手だけとなっている。



「まずいッ!」



油断していて急な対応ができなかったため、飛沫に銃を握らせてしまったが・・・

銃口が陽炎の方向に向いた瞬間には、竹刀がその銃を弾き飛ばす直前のところにまでいっている。

撃つ前には対応できる。




「うりゃ!」



結果銃は再び宙へと舞った。


・・・が・・・



「くっ・・・」



陽炎が膝をついた。



「どういうことだ!?」



時津風も目を丸くする。


飛沫は胴部分を押さえて膝をつく陽炎に竹刀を向ける。



「甘かったな。銃が陽動だとは思わなかっただろう?」

「・・・」


そう、飛沫の攻撃法は銃と竹刀の同時攻撃だった。

右手だけで竹刀を振り回すとはいえ、そこまでスピードが落ちてはいなかった。

右手だけでも先ほどと同じように隙をみての攻撃法を続けていた。



結果、銃をとって撃つときのタイミングと隙ができたときのタイミングが重なり、それは避けられない攻撃となった。


ずっと陽炎にきかないと思っていた隙を作り出しての攻撃法。

あれは銃とのタイミングをあわすための一種の練習とタイミングはかりだった。

そしてちょうど良いところでわざと銃を落とし、見事に2段階同時攻撃を成功させたのだ。



そう、飛沫が竹刀を2本ではなく1本に限定したのはこれを行うためだった。

タイミングを見計らって銃を使う。

それはこの間まで仲間だったから、などという甘い考えなど一切ない、未だ飛沫のことをリーダーと言う陽炎に対して全くの容赦がない冷酷な考え方。



彼は竹刀で弾き飛ばされた銃をとって、銃口を陽炎に向ける。




「おい、勝負はついただろう?」


時津風はとめに入るが飛沫は時津風の方向は見向きもしない。



「いや、ついてない。勝負はとどめをさすまで、だ。」



飛沫は勝つためには、完全に相手が戦闘行為を継続できなくするまで・・・

とどめをさすまで、と考えている。



勝つために努力することは良いことだが・・・

これはやりすぎのさらに上を優に越している。



竹刀を1本捨てたことで彼にはまだ少し暖かさがある、と考えた俺が馬鹿だった。

そう時津風は心の奥底で後悔した。



「ふざけるな、もう勝負はついてる。」

「そりゃお行儀の良いスポーツ格闘技では、の話だ。今は違う。」

「!!」



飛沫のその言葉にさすがの時津風もカチンとくる。



「そうか・・・なら俺は陽炎を守るために戦う。」

「は?1対1といったのはお前らだぞ?」


フツーならもうとっくに勝負はついてる

それでも継続してやる、というのであれば俺は俺のできることをするまで。



飛沫本人も、スポーツ格闘技ではない、といった。

なら剣道の教えは適用しなくてもいいんじゃないか?

なんて自分に甘い考えが生まれてきてしまうが・・・



「陽炎、今度は俺がこの馬鹿と1対1でやる。手出しはもちろんしねぇよな?」

「・・・あぁ。」



(ったく・・・先陣きって時津風を少しでも楽にしてやろうと考えたのに、逆に助けられてちゃ世話ねぇよ・・・)



陽炎は心の中で悔やみながらも、闇討ち時は敵だった自分を守ろうとする時津風をみて感動もしていた。




自分に甘い考えがでてきても・・・

都合の良い結びつけを考え付いても・・・

俺は武道の教えを守る。



なんにしろ、俺は目の前で知り合いがボコされるのをただただ見ていられるほど人ができてはいねぇ、ということだ。


ホント、俺っておせっかいな男だ。

そう自覚する。



「飛沫、次は俺が相手だ。」

「陽炎のとどめをさしたらいくらでも相手にしてやる。」



飛沫は竹刀をこちらに向けつつも、銃口を陽炎に向ける。



「今だ、今俺と勝負しろ。陽炎をぶっ潰すのは俺を先にぶっ潰してからでもいいだろう?」

「・・・つまり2対1でくるつもりか?」

「そういうことじゃない。」



話のわからないやつだ。

そんなことを心の中で思ったりしている。



「ま、2対1でもいい。速攻で片方は潰せるからな。」

「そうじゃねぇっつってんだろうが!」



彼は本気で撃つつもりだ。

狙うポイントとしては肩と足・・・あたりだろうか。

肩を撃てば、とりあえず竹刀は振り回せなくなる。

足を撃てば、動けなくなる。



「そうカッカすんなよ、お二人さん。」

「?」



すると今度はさらに新たに声がきこえた。

また新客登場か・・・


時津風はさっきから新客の続出に苦笑しかできない。



「よっ、飛沫。元気にしてっか?ちなみに俺は元気だぜ。」

「なっ!?お前・・・どうしてここに・・・?」



目の前にはワイシャツしかきていない上に、第1ボタンをあけていてネクタイもしていない背の高い男性が1人。


前々に川口に教えてもらった。

たしか・・・「神威」とか言う男だ。



神威の登場に珍しく飛沫が本気で驚いている。




「どうしてっていちゃまずいわけぇ~?俺、嫉妬しちゃうよぉ~、飛沫ちゃ~ん?」



・・・なんかかわった人だ・・・


時津風は今、本気でそう感じた。



「違う、だってお前は・・・」

「細かいことは気にすんなって。この女性の騎士ナイト様、鴨居神威がきたからにはもう大丈夫だぜ、飛沫の旦那。」



・・・なんか桶狭間みたいなことを言う人だ・・・


時津風は今、本気でそう感じた。



「大魔神、大丈夫なのか?」

「その名前はいい加減やめてもらえませんかねぇ~?俺っちのガラスハートは防弾性じゃないから弱いのよ。」

「サイツーよりはマシだろ?」

「そ~んなセンスのない名前、ご冗談でございましょう、飛沫奥様?」



・・・こいつ、ある意味ジャスティスのなかで一番危ないかもしれない・・・


しつこいようだが、時津風は今、本気でそう感じた。



「んでぇ~?噂の“ときっち”とかいうのはあんたかい?」



ときっち?


・・・そんな名前で呼ばれたのは初めてだ・・・

やっぱりかわってる人だ・・・



「あぁ、多分そうじゃないか?」

「あんたが陽炎を・・・ねぇ?」



神威は時津風をまじまじと見ると、クルリとどこかのダンスのような感じで軽やか(?)に回転して再び飛沫のほうを見る。



「飛沫坊や、どうやら困ってるみたいだな。」

「別に困ってねぇよ。」

「せっかくなら、この神威おじさんも手伝ってあげようか?」

「だから困ってねぇって。」



彼の態度に飛沫は呆れ呆れに返答中。


さっきまでのマジな空気はどこへやら。

・・・やれやれだ。


「か・勘違いしないでよね!別にあんたのために手伝ってあげるわけじゃないんだからね!!」

「・・・お前は結局何がしたい?」



飛沫は神威にため息まじりで質問する。



「実際困ってそうだったからな。ここで提案だ。」

「?」

「俺が陽炎の相手をする、お前はときっちの相手をしろ。どうよ、おわかり?素晴らしく良い提案じゃないか?これならちゃんと1対1にもなるし。・・・というか2対2?」



その言葉に一瞬飛沫は目を細めるが・・・



「俺も陽炎とはいろいろ話したい内容があるわけなのよ。」



神威のいきなりの声のトーンの落ちた言葉に飛沫はただただ無言で頷いた。




「陽炎、てめぇ、裏切っておいて今更味方同士の攻め合いは困る、とかふざけたことぬかすわけじゃねぇよな?」

「・・・あぁ。攻め合いは困る。」



陽炎はゆっくりと立ち上がりながら、神威に言う。



「そのふざけた口、2度と開かないようにしてやろうか?」

「・・・お前がそんな言葉をいうなんて珍しいな。砕川が泣くぞ?」

「余計なお世話だぜ。・・・おい、飛沫。竹刀を1本貸せや。」



飛沫は神威に竹刀の2本あったうちの1本を投げる。



「時津風・・・よかったな、神威がきてくれて。」

「・・・みたいだな。」

「陽炎のかわりに・・・お前をぶっ潰してやるよ。」



そういって飛沫は銃を内ポケットにしまい、竹刀を両手で構える。



「新キャラときっちのお手並みも拝見させてもらいましょうかねぇ。」



神威も竹刀を両手でしっかりと持って、構える。



「・・・陽炎、大丈夫か?」

「あぁ、なんとか。・・・悪いな、巻き込んじまって。」

「いや、勝手に割り込んだんだ。おせっかい野郎はどこまでもおせっかいだよな。」



時津風はお得意の苦笑をする。



「さて・・・んじゃぁいきますか。」

「あぁ。・・・いざ・・・」

「参る!!・・・てか?」

「あぁ。行くぞ!」



陽炎と時津風は同時に走り出す。



「おいで嬢ちゃんたち。軽く炒めてやるよ。」

「痛めつける、の間違いだろ?」

「どちらにせよ、おいしくいただきたいね。」



そういって2人は時津風と陽炎のほうを今までとは違う、真剣な目つきで見た。

それから2秒後に一番最初の竹刀と竹刀のぶつかる音が廊下に響き渡った。








そして放送室前。


ここでも新たに始まろうとしていた・・・



「さぁ?では開始しましょうか。」



目の前の女性はまるでこの状況を楽しむかのように笑顔で催眠スプレーを持ち出す。



「・・・どうしたんですか?」

「・・・そうだな、始めよう。」



大切な仲間を取り戻すための勝負を。

絆同盟の絆が試されるときがきたのだ。



今から彼の本気物語が始まろうとしていた。

1人の仲間を、1人の女性を、救うために1人の男が進みだす。



    

                              「決戦(Ⅴ)」 完


おまけ  Enemy of 冬休み ~⑨たちの戦い~


参加者→十六夜、卯月、桶狭間、中島

途中参加→飛沫



卯「さ~て、楽しい楽しい冬休みもあと少しで終わりね。」


中「今年の冬休みは去年に比べて充実してましたね~、私的には。」


十「・・・」

桶「・・・」


卯「あれ?どうしたの?」


中「顔色が悪いですね・・・」


十(ここは・・・覚悟を決めるしかない!!)

桶(いちかばちか・・・やってやる!!)


卯「?」

中(なんとな~く理由はわかりますが・・・)


十「咲良!!」

桶「中島!!」


卯「な・なによ?」

中「はい?」


十「実は折り入って頼みがある!!」

桶「実は真面目な話、重大な頼みがある!!」


卯「なによ?まさか・・・宿題みせて、とか言わないわよね?」

中「なんでしょ~ね~?まさかと思いますが、ここにきて宿題を見せて、とはいいませんよね~?」


十「そのまさかだよ・・・咲良、宿題を見せてくれ!!」

桶「そのまさかだ!!中島、宿題を見せてくれ!!」


卯「嫌よ、なんであんたなんかに見せないといけないのよ。」

中「嫌ですよ、そんなことしたって何の桶狭間くんのためにもならないじゃないですか。」


十「そ・そういわずになんとか!」

桶「ここだけ凌げればいいんだ!」


卯「大体自分の力でやろうとか思わないわけ?」

中「そもそも人に頼らず、自分で努力しようという考えはないんですか?」


十「うっ・・・そ・それは・・・」

桶「俺は馬鹿だから考えても多分わからん!!」


卯「少しは自分で考えて見なさいよ。」

中「最初から諦めてるなんて信じられません。」


十「サーセン・・・でももう間に合いそうにないんだ!」

桶「ごめんなさい・・・でもどうしてもわからないところもありそうだし!!」


卯「ま、どうしてもっていうなら見せてあげないこともないけど?」

中「・・・そんなに見せてほしいんですか?」


十「頼む、どうしてもだ!!もう僕にはお前しか頼れるやつがいないんだ!!」

桶「ほしい!!じゃないと俺は来年、2年生になれないかもしれない!!」


卯「へぇ~?よくそんな言葉がいえるわね、さっき”ダメだったら五月雨に見せてもらおう”って小言でいってたくせに。」

中「この際留年して、その身に痛みをしみこませたほうがいいのではないですか?」


十「うっ・・・」

桶「ぐぬぬ・・・」


卯「な~にが”お前しか頼れるやつがいない”よ?」

中「お金をだしてこの高校に通わせてくれているお父さんお母さんに悪い、とは思わないんですか?」


十「・・・ケチ。」

桶「・・・鬼。」


卯「!!・・・人に宿題を見せてもらうときの態度がそれ?」

中「だ・誰が鬼ですか!!私は桶狭間くんのことを思ってですね・・・」


十「あ~、もういいよ。他の奴に頼るから。まったくケチなんだから・・・ブツブツ・・・」

桶「へいへい、それでそれで?奇麗事はもう終わりか~?」


卯「るっさい!!もう知らない!!勝手に留年でも退学でもすればいいのよ!!」

中「うぅ・・・も・もう知りません!!桶狭間くんなんて勝手に自滅の道に進んじゃえばいいんです!!」




・・・ということで・・・



十「た・頼む、五月雨!!」

桶「頼む、関ヶ原!!」


五「ハッハッハ、親友よ。この俺がそんな面倒なものに手を染めているとでも思ったか?」

関「お前にだけは見せたくないっぺ。ど~せ文句をいわれるのがオチ。・・・前もそうだったっぺ。」


十「・・・ダメだこりゃぁ・・・」

桶「こりゃ絶対貸してくれないパターンだ・・・前に文句なんていうんじゃなかった・・・」




・・・ということで・・・



十「た・頼りたくないが・・・」


桶「こいつなら確実に宿題をやっているはずだ!!いくぞ!!」



ガチャリ



桶「たのもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


十(・・・なぜそんな喧嘩腰・・・)


飛沫「だぁ~!!!誰だ、いきなりノックもせずに入ってきやがった輩は!!!」


十(うわ~、怒ってる・・・最悪のスタート・・・)


桶「あ、悪い。」


飛「って、てめぇか!!どうしてくれるんだよ、この結果を!!!」


桶「あ~、ゲームオーバー?・・・またエロゲーか?」


十「・・・飽きないな、変態。」


飛「るっせぇよ!!男は皆変態だ、文句あるか!?」


桶「・・・異論はない。」


飛「だろ?」


桶「・・・だから宿題を見せてくれ。」


飛「・・・」

桶「・・・」

十「・・・」


飛「・・・一発撃たせろ。」


桶「・・・ま・待て!!銃をおろせ!!」


十「桶狭間、お前のことは忘れない。」


桶「ちょっ待て!!は・話せばわかる!!」


飛「逝って来い。」


桶「落ち着け!!・・・そ・そうだ、今度ともにエロゲーを買いにいこう!!」


飛「・・・よし、許す。」


十「おい!!!」


桶(助かったぁ・・・しかし2次元には興味ないからな・・・悪い、嘘ついた。口にはださないけど。)



飛「で?宿題?」


十「そう、宿題だ!」


飛「低脳に相応しい問題だな。」


十「るっせぇ!!」


桶「・・・貸してくれないか?」


飛「”貸してください、飛沫さま”は?」


十「うっ・・・か・貸してください、飛沫さま・・・」

桶「貸してください、飛沫さま・・・くそ。」



飛「やなこった。」


桶「て・てめぇ!!」


飛「別に俺は”言えば貸す”なんて一言も言っていない。勝手に勘違いをしたお前らが悪い。」


桶「なんだそりゃぁぁぁぁぁ!!」


飛「近づくな、馬鹿がうつる。あっちいけ。」


十「ひどい扱い・・・」



飛「よし、なら俺の言うことをすべてやったら貸してやってもいい。」


桶「ま・マジか!!」


飛「あぁ。・・・じゃ、まず手始めに・・・3回まわってワン。」


十「嫌だ、絶対嫌だ!!」


桶「十六夜・・・こ・これも宿題のためだ・・・ここはプライドなんて捨てよう・・・」


十「くそ・・・」



クルクルクル 


桶「ワン。」

十「ワン。」


飛「よしよし、次はこの銃をお前らに撃たせろ。」


十「それは嫌だ!!」

桶「断るッ!!」



飛「宿題、いいのか?しゅ・く・だ・い☆」


十「ぐっ・・・せ・せめて違うのを・・・」


桶「考え直せ、な?な?な!?」


飛「・・・ふ~む・・・」



中「ホント、ありえませんよね!!心配していってあげたのに!!」

卯「だよね!!ムカつく、あの態度!!信じらんない!!」


中(・・・やっちゃいましたよね・・・また言いすぎちゃいました・・・)

卯(・・・怒ってるかなぁ・・・星矢。・・・はぁ・・・またやっちゃったなぁ・・・)


十(うわっ・・・咲良・・・)

桶(げっ・・・中島・・・)



飛「お、ちょうどいいところに面白そうな連中発見。」


十(嫌な予感・・・)

桶(・・・これはまずい気がする・・・)



飛「お前ら、あいつらの制服のスカートをめくってこい。」


十「・・・お前、それはさすがにない!!」


桶「か・かえろ!!かえてくれ!!お前は俺に死ねというのか!!」


飛「さっきかえたからかえる予定はない。諦めろ。」


十「うぅ・・・」


桶「こうなったら男、桶狭間!!宿題とスカートめくり、2つの幸せをつかみに玉砕覚悟の特攻に行ってきます!!!」


十「お・桶狭間・・・お前、死ぬぞ・・・いいのか?」


桶「男にはやらなきゃいけないときがあるんだ・・・たとえそれが死ぬとわかっていても。じゃぁな、お前のことは忘れない。うぉぉぉぉぉぉ!!!」


十「・・・馬鹿だ・・・完全な馬鹿だ・・・」


飛「お前はそうやって仲間が死ぬのを見ていることしかできないのか?」


十「・・・救いようのない馬鹿だが・・・お前一人では死なせない!!僕もお前についてくぞ、うぉぉぉぉぉぉ!!!」



ガチャリ



桶・十「うぉぉぉぉぉぉ!!」


中「お・桶狭間くん!?」

卯「星矢!?」


桶(あと少し・・・)

十(・・・咲良、悪く思わないでくれ・・・これも宿題のためなんだ・・・)


中「あの、桶狭間くん!!」

卯「星矢!!」


桶「ん?」

十「なんだ?」


卯・中「さっきは・・・ごめんなさい!!」


十・桶「!!」


卯「その・・・さっきは素直に宿題を渡す、って言わなくてごめん・・・」

中「さっきは言い過ぎました・・・ごめんなさい。」


十「いや、嫌なら無理に渡さなくてもいいんだぜ?さっきのは・・・まぁ、ながれというか・・・」

桶「いや、言いすぎってほどでもないだろ・・・嫌だっていったのに無理に進めた俺が悪いわけだし。」



卯「ち・違うの!ホントは宿題を見せてもぜんぜんよかったの。ただ星矢に頼られてるっていうのがすごく嬉しくて、もっとそういう言葉をいってほしくて・・・」

中「嫌だっていったのはそういう意味じゃないんです。見せてもよかったんですけど・・・もっと桶狭間くんに努力してほしかったというか・・・その・・・別に言う資格もないのに偉そうなこといってごめんなさい。」



十「・・・よし、わかった!!じゃぁ咲良、今度は冬休み明けのテストの勉強を教えてくれ!宿題はさすがに自分でやることにするよ。」

桶「・・・そっか。・・・よし、なら俺はお前のその思いに応えなきゃな!心配してくれてありがとな、中島。お前のその気持ちを励みに頑張るぜ!!だから気にすんな。」


飛(やれやれ、やっと解決か・・・世話がやける低脳2人組みだ・・・)



その後、馬鹿2人組は自力で宿題をやって見事に提出。

バツばかりの答案がかえってきたが、冬休み明けのテストはいつもよりほんの少し点数がよかったそうな。

めでたし×2。


飛「も・もう二度とこんな役回りなんてやらないんだからなッ!!」



                  「Enemy of 冬休み」  完




今回の反省。


まず本編。

相変わらずのグダりようですね・・・

・・・今回難しかったんです・・・

え?最後なぜ打ち切ったか?

長くなりそうなので、次に持ち越しました。

中島と桶狭間の話は、それだけで結構な長さになりそうなので・・・


おまけに関しては・・・

今回は恋愛系が強いですね。

・・・最後はほんのふざけ半分です(てかふざけ100%w

悪気はなかったんだ!(←言い訳乙w


今回もあいかわらず・・・ですね。

いつになったら自分でも頷けるようなものを書けるのやら。

今回もそんなこの小説(らしきもの)を読んでいただきありがとうございました。

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