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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
26/79

説得

学校の鐘がなった。

それは今日の始まりの合図。


「うらぁ~、今日も元気にいくぞぉ~。」


いつもながら、桐山先生は元気である。

この人を見ていると、人生の悩みなんて、カスだ・・・

なんて思えてしまう。



さて・・・

いつもどおり、授業が行われて・・・

早、もう4時間目が終了し、弁当の時間となった。


作戦決行の時間は弁当終了後となっているので・・・

僕はいつもどおり、非常階段にでて、外の空気を吸いつつ、景色を眺める。


いつもながら、雲はゆっくりと流れているわけだが・・・

見ていて飽きない。


すると・・・

「ガチャ」と後ろでドアがあいた。

どうやら、もう1人がきたようだ・・・


・・・おそらく桶狭間か誰かだろう・・・



「よぅ、真面目くん。」


が、そこにやってきたのは、桶狭間でも関ヶ原でも将軍でもない。

同盟のメンツではない。

今日の作戦の標的のうちの1人となっている者・・・

時津風だった。



「・・・真面目くんはなしっつったろう?」

「わぁ~てるよ・・・」



ホントにわかってるのかねぇ・・・



「で?何のようだよ?」

「つれないねぇ~・・・せっかく話し相手になってやろうときてやったのに・・・」

「あのなぁ・・・僕は頼んでないぜ?」

「ひねくれてるねぇ~・・・ゲームのやりすぎでストレスでもたまっちゃってる?」



彼は結構マイペースな人間である。

前々に卯月を僕から離すために意見した凛々しさはどこへやら・・・



「川中と川口は一緒じゃないのか?」

「いや、あいつらはあいつらで忙しいんじゃねぇか?」



なんで質問を質問で返すんだ?

「質問を質問で返すのは関心せんな」と、かの有名・・・

かは知らんが、テイルズオブリバース登場キャラクターの「ユージーン・ガラルド」もいっていたぞ・・・



「で?ホントは僕にききたいこととか、話したいこととかあるんじゃないのか?」

「察しがいいねぇ。相変わらずきみはいい勘してるよ・・・」


それはあいつ・・・

卯月に鍛えられたといっても過言ではない。

まぁ、もちろん本人は気づいてないだろうが・・・



「で?話ってのは?」

「・・・お前、ホントにあいつといて、大丈夫なのか?」


やっぱ卯月関連か・・・



「まぁ、大変だけどね・・・でも、実際退屈はしないし、結構いい奴だよ?」

「ほぅ・・・まぁ、お前がそういうならいいんだけどよ。」


彼は何が言いたいのだろうか?

・・・ここは僕から攻めるしかなさそうだ。



「なぁ、時津風・・・」

「なんだ?」

「・・・「引き裂き」・・・解除してくれねぇか?」



やはりこの状況からみて、川中・時津風の2人が川口を動かしているという見方が一番有力である。

あまりクラスメイトを疑うというのは良いことじゃないとは思うが・・・

違ければあとで謝ればいい。



「「引き裂き」?なんで俺にいうのさ?そういうのは川口に言えよな。」

「今からいうことは、限りなくお前に失礼なことかもしれないが、きいてくれるか?」

「へっ、面白そうだ。きいてやるよ。」



こいつはやはり油断ならない。

ここまで真剣な話をしているのに、マイペースを崩さない。

ガードがかたい。



「僕たちの勘だと、「引き裂き」の継続は、川口が継続させたんじゃないかと疑ってる。」

「ほぅ?」

「それで、それを川口にさせたのが、お前と川中だと考えてる。」

「へぇ・・・なかなか面白い発想だね・・・けど、なんで俺と川中なのさ?」



彼は僕の隣で、僕と同じように空をみながら、いった。



「お前らは仲がいいから頼めば川口はいい奴だから答えてくれるだろう?それに・・・」

「ちょいちょい、坊や、慌てなさんな・・・」

「ん?」



時津風はため息を1つつくと、口をひらいた。



「たしかに川口がいい奴だってのは認める。けど、仮にも副生徒会長。自分の意見はもってるさ。」

「・・・だとしても、あいつは川中のことを「姐さん」と呼んでまで、慕ってる。川中が頼めば、いけるんじゃないのか?」

「まぁ・・・そうかもねぇ。」



あくまで他人事の答えである。



「で?仮に俺たちが川口に継続させるように命令させたとして・・・俺たちに何の得がある?」

「お前らはあまり卯月のことをよくは思ってないだろう?」

「まぁ、図星だな。」



彼は真剣に答えているのだろうか・・・

それともテキトーに答えているのだろうか・・・

認めたり、他人事の答えをだしたり、よくわからない男だ。




「けどな・・・良く思っていないってのは、「嫌い」ってのとは違うんだぜ?」

「え?」



それは意外な言葉。

「嫌い」じゃない?

どういうことだろうか?




「たしかに俺も川中も共通のことで、卯月のことを良いとは見ていない。そこは認めてやる。」

「・・・」

「前にもいったろ?俺たちは中学のとき、あいつに振り回されて崩壊した男子を何人もみてきたって・・・」



あぁ・・・それで警告してきたな。

よく覚えているさ。



「俺たちは次なる被害を防ぐ役目をしようとしたまでだ。お前が困っているように見えたから、俺らは救いの手をだした。それだけであって、あいつのことを排除しようとかそういう考えはない。」

「・・・」



たしかにこいつらは直接卯月への攻撃はしていない。



「というか・・・俺は、もういいと思ってる。」

「え?」

「見てるとあいつも、今までとは違う感じがある。・・・多分、マジでお前に惚れてんじゃねぇのか?」



・・・ついこの間、宣言されたばかりだよ・・・

調子にのって、「惚れさせてみろ!」とか余計なことをいったことまで、よく記憶してあるさ。



「あいつがお前にマジで惚れてて、お前は別に迷惑してねぇってのなら、俺は別にお前らを引き裂こうなんて考えたりしねぇさ。利益がない。」

「・・・」

「恋する乙女の恋を邪魔するなんて、悪役だからな・・・」



なんて時津風は苦笑する。

まるで「俺は悪役なんでやりたくねぇぜ」といっているようだ。




「じゃぁ・・・お前は何も関係してねぇのか?」

「あぁ。」

「川中は?」

「そこまで知らん。あいつの考えてることは俺にもわからないときがある。難しいやつだぜ・・・意外とな。」



彼は遠い遠い空をみながらいった。



「ところで・・・なんだかお前ら、危ない橋を渡ろうとしてるみたいじゃねぇか?」


それは生徒会とのことだろう・・・

どうする?

本当のことを答えるか?

でも、もし時津風は今までのが全部演技で、僕たちの情報を引き出す役目のやつだとしたら・・・

いやいや、クラスメイトを疑うなんて最低だよな・・・



「あぁ・・・まぁ、あまり渡りたくない橋だけどね・・・」

「そうか・・・覚悟はできてんのか?」

「それなりにな・・・まぁ、あいつらはあまり巻き込みたくないがな・・・」



なんていう。

実際、同盟は組んだものの、桶狭間や関ヶ原、五月雨や将軍、中島さんや、卯月だって・・・

巻き込みたくはない。



「まぁ、せいぜい頑張れや。あとのことは、川中にでもきいてくれ。」


そういうと彼は非常階段をでていった。

・・・やはり情報収集役だったのだろうか・・・





飯をたべて、昼休みとなった。


「よっしゃ、作戦を開始するとしようか。」


桶狭間は気合十分のようだ。


ちなみに作戦というのは・・・

中島さんが川中に協力を頼む、ということで外に連れ出し、僕たちが話しをつけるというものだ。


今日は川中。明日は時津風の予定だ。



「ねぇ、川中さん。」

「ん?どうした?」

「あの・・・ちょっと手伝って欲しいことがあるんです・・・」

「どうしたんだ?」


そういうと、中島さんは見事に川中を外に誘導している。



「見事だぜ・・・中島さん。」


なんて五月雨が驚いている。



さて・・・見事に外までつれだしてきた。


「で?手伝って欲しいってのは?」

「俺たちと話をしてもらいたいんだ。」

「・・・なるほどな。」



さすがはクラス委員長といったところか。

すぐに状況判断・整理をしたようだ。




「中島はすでにそっちについてたわけか・・・見事にハメられたもんだな・・・」

「・・・ごめんなさい。」



なんて中島が謝っている。

・・・悪いことをさせてしまった。

が、こうでもしないと話してくれない、というのが桶狭間の意見だった。




「で?話っていうのは?」

「は?わかってんだろ?「引き裂き」のことだよ。」


桶狭間は先頭にたち、抗議する。



「「引き裂き」か・・・」

「あぁ。」

「率直にきくっぺ・・・お前、川口に継続を頼んだか?」



どう答える。

ここでYesとこたえれば、こいつを説得すれば終わる話だ。

だが・・・

NOと答えられたら、完璧に生徒会を敵にまわさなければならない。



「どうだっただろうな?忘れちまった。」


が、答えは、Half。

中途半端な答えである。



「とぼけんじゃねぇ!!」



桶狭間はそのふざけた答えに怒りを爆発させた。



「・・・桶狭間、ここは僕がきく。」

「十六夜・・・」

「まかせとけって。」



ここは桶狭間を後ろに後退させたほうがいい。

いくら責任を感じているとはいえ、冷静さを失えば、破滅を生む可能性すらある。



「答えは中途半端だな。強いて言うなら?」

「う~ん・・・どっちだったっけかなぁ・・・」

「ということは・・・川口が自ら十六夜と卯月を引き裂こうとしたってか?最低な野郎だな、川口ってのは。」


将軍が皮肉をこめていう。


「な!?貴様・・・何をいう!?」



そう・・・これは将軍の作戦。

川口が川中を「姐さん」と慕うのであれば、川中からみれば、川口は大事な子分・仲間である。



「お前・・・川口の気も知らないで!!」

「どうだかなぁ・・・実際、あいつに報告されて桶狭間は見事校長室いきだ・・・最低な野郎だよな?」

「くっ・・・」



だが・・・

川中は口を開かなかった。

それは、川口が生徒会副会長の権力を利用しておこなっている・・・

ということなのだろうか。



「実際、あいつは「アルファー」を継続させるように報告したんだろ?といったら否定しなかったしな。」

「・・・」

「しかも、なんでも気に食わないと「機密事項」だ。あいつが一番怪しいっちゃ怪しい。」

「・・・」



川中はただただ手に力をいれていた。



「・・・どこが気に入らないんだ?卯月ちゃんの・・・」


桶狭間は冷静さを戻し、きく。



「お前らはその女のことをよく知らないだろうからそういうことがいえるんだ。この女は最低だ。」

「なに?」

「中学のころ、多くの男性と付き合って、カップルで付き合っている男子をも横取りして、すぐに切り捨てた。こいつのせいで・・・崩壊したカップルはたくさんある。」

「・・・」

「私も・・・時津風もその女と同じ中学だ。・・・これ以上苦しむものを見たくない。」



それは時津風と同じ理由だった。




「・・・たしかに中学の私は最低だった。だからあなたたちに何を言われようと、仕方のないこと。」


すると卯月が口をひらいた。


「けど・・・今回だけは・・・絶対に譲れない。」

「そういってまた十六夜を陥れるつもりか!?」

「そうじゃない!!」



卯月と川中の真っ向勝負。

いくらか予想はできていた。

あまりこの状況にもっていきたくもなかった。


これは最悪収集がつかなくなっちまうぜ・・・



「今回は・・・今回は本物の恋なの!!」

「そういままでいってきて、何人の男性とカップルをつぶしてきた!?もう私はだまされんぞ!!」

「違うの!」

「お前らうるせぇぞ!!!」


すると意外な声がした。

それは・・・そう、時津風である。



「・・・時津風。」

「チッ・・・援軍かよ。」


桶狭間は下を向いた。


いや・・・違う。

彼は味方だ。

僕にはわかる。



「てめぇら熱くなるのは勝手だが・・・きいてるこっちの身にもなれよ・・・うるさくて昼寝もできねぇぜ・・・」

「時津風・・・貴様、どういうつもりだ?」


川中は時津風をにらむ。



「はぁ・・・ったくよ、川中。お前もお前だぜ・・・ホントは気づいてるんだろ?卯月が本気なのを・・・」

「!」



そう・・・やはり彼は味方だ。



「いつまでも中学の親友のことのトラウマを引きずってるなんて、格好悪いぜ?」

「貴様も同じだろう?」

「そう・・・だな。けど・・・俺はもう十分だと思うぜ。」

「なに?」



時津風の「十分」という言葉に、僕以外の同盟のメンツは皆、驚愕した。

目を丸くしていた。




「前に十六夜に確認した。迷惑はしてないといった。卯月は本気。・・・なら俺らの仕事はねぇじゃねぇかよ。」

「くっ・・・時津風・・・この期におよんで、同盟を裏切るつもりか?」


同盟?

彼らも何か同盟を結んでいたのだろうか?


「裏切るんじゃねぇ・・・やめ時だっつってるんだよ。」

「それが・・・お前の意見か?」

「そうだ。実際・・・皆、もうやめ時だって気づいてる。お前もそうだろうが・・・いつまでもやってるとくだらねぇぜ。」



川中はかなり不満そうだった。



「・・・くっ・・・時津風、こい!!」

「ったく・・・へいへい。」


そういうと、川中は校舎にもどっていった。

時津風は校舎に戻る際に、僕にウインクをした。


「・・・なんだよ、「説得は任せとけ」って意味か?」

「・・・」


しかしながら・・・

彼ら2人は校舎内に戻っちまったわけであり・・・

川中は明らかに納得していない。

説得は失敗である。



「・・・結局川口のことも聞きそびれたな・・・」

「あぁ・・・」



結局、僕たちは川中を怒らせただけ・・・

というのが結論である。




その日の放課後・・・

今日も、同盟のメンツと作戦会議をしていた。

すると、不意にドアがあいた。



「よぅ、諸君。元気にやってるか?」

「時津風!?」


そう・・・

そこに入ってきたのは時津風である。



「お前らいいこと教えてやる。」


本来ならあまり期待しないが・・・

ここは期待してやるぜ、時津風。



「今日から、俺と川中もお前らの同盟に入ってやることにしたから。」

「はぁ!?」


皆は彼の勝手な言葉に驚きを隠せなかったようだ。

まぁ、実際僕も時津風ならまだしも、川中は明らかに納得してない様子だった・・・

到底同盟に入るなんて思えないが・・・




「そういうことだ。これから私たちも時津風の言うとおり、同盟に参加させてもらう。」


すると川中も教室に入ってきた。



「・・・なんだ・・・こりゃぁ、罠か?」

「まぁ、嫌ならいいんだぜ?俺らは断られれば入らない、それだけだしよ。」



なんて時津風は軽く言う。

皆は迷っていた。

それは本当にこいつらを「信用」していいのだろうか・・・

ということだった。



「ちなみに川口は関係ねぇぜ。」

「え?」

「ただ・・・生徒会そのものが動いてる。」



時津風・・・

お前・・・それは悪くいえば、生徒会に擦り付けてるようにしか見えないぞ・・・



「どうする?俺らはお前らに任せるぜ。」

「参加させてもらえるのであれば、可能な限り協力を約束する。」

「・・・」


やれやれ・・・

とんだことになっちまったわけだ。



「・・・いいんじゃない?」

「な!?十六夜、正気か!?」

「だって、生徒会を相手にするなら、いつかはバレることだし・・・こいつらが情報収集のための川口が送り込んだスパイだったとしても・・・早めにバレる、それだけだろ?」



なんて簡単にいうが・・・

実際結構きついものがある。




「簡単にいってくれるぜ・・・」

「私も・・・彼らを信じていいと思う。」


次に賛同したのは卯月だった。

対立していた川中を信じるなんて・・・

個人的にはかなり意外である。




「はぁ・・・十六夜と卯月がいうならいいんじゃねぇか?もともとこいつら2人が中心なんだし・・・」


え!?

それは違くないか?

それじゃぁ、僕たちがまるでリーダーみたいじゃないか・・・

実際、僕は彼らをあまり彼らを巻き込みたくないのだが・・・

まぁ、人数が多いほうが楽しいだろうという勝手な解釈の下に進めているだけなのだが・・・



「・・・そうだな。」


結局皆、理解したようだった。



「で?早速だが・・・生徒会が動いていて、川口は大丈夫ってのは矛盾してないか?」

「いや、川口はこちら側だ。安心してもらってかまわない。」

「だが・・・実際に彼は桶狭間を校長室行きにしたし・・・」


五月雨はやはり不安のようだった。

まぁ、そりゃそうだろうが。


「そのことに関してはいえん。」

「・・・それでどう信用しろっつうんだ?」

「まぁ、俺を信用しろ、とりあえず。」



なんて時津風がいう。

まったく・・・

とんでもないことになっちまったぜ・・・

まさか生徒会を敵にまわすことになるなんてな・・・



その後、少しして・・・



「さて・・・今日は解散にするか。」


ちなみに今日は金曜日なので・・・

次に学校にくるのは月曜日となる。


「次は月曜かぁ・・・ったく、朝の集会は面倒だぜ・・・」



そう・・・

この高校は月曜日の朝に集会がある。

全学年そろえての・・・だ。


たしか月曜は体育祭のルール説明だとか・・・

皆が知ってることを言うらしい。

面倒すぎるぜ・・・




その後、解散して、各自家に帰った。


今日は意外な人物が2人も、同盟に参加した。

正直まだ完全には信じきれないが、多分大丈夫だと思う。


これからがまた・・・大変そうである。


 

                           「説得」   完



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