―27― ニーニャちゃん、弓矢を使う
「順調すぎるしーっ! やっぱりヴァラクちゃん天才かもー!」
そう言って、盛大に笑うヴァラクの姿があった。
その前には火蜥蜴の死骸が。
確かに順調だった。
すでに火蜥蜴の討伐数は3体。
一日でこれだけ討伐できれば上出来といえた。
「自画自賛もほどほどにしてくださいまし。そういった油断が命取りになるんですわ」
「ふっふっふっ、ヴァラクちゃんの危険予知があれば、すごく危険なところがわかるんだし。だから、油断しても平気なのよ!」
「危険予知は危険の度合いもわかるんですか?」
「ええ、そうよ。ヴァラクちゃん、すごく危険なところには近づかないようにしてるんだから。ほら、ヴァラクちゃんをもっと褒めていいわよ」
「ヴァラクちゃんすごいですーっ!」
「あっはっはっ! ニーニャ、もっとこのヴァラクちゃんを褒めなさい!」
「わーっ、すごーい!」
「はぁ」
ネネリは頭を抱えていた。
こんな調子で大丈夫なのかと。
「おっと、どうしようかな?」
ふと、ヴァラクが天球儀を片手に独りごちた。
「この先、危険度がすこし高いわね。恐らく火蜥蜴が群れでいるかも」
今までは、火蜥蜴が1体でいるところをネネリの氷の槍で近くまで連れてきて、ヴァラクの麻痺で動けなくしてからとどめを刺してきた。
火蜥蜴が複数でいる場合、どうしても一匹だけを狙いたくても、他の火蜥蜴に気がつかれたら一斉に襲いかかってくるだろう。
そうなったら対処が困難だ。
「どうする? ネネリ」
「んー、ひとまず気がつかれない距離まで近づきましょうか」
それから、どうするか考えてもいいだろう、とネネリは判断した。
「はぅ……」
ふと、道中でニーニャが溜息をついていた。
「どうかしましたの? ニーニャ」
「あ、えっと……わたしだけなんの役にも立ってないから申し訳ないなーって」
確かに火蜥蜴狩りはネネリとヴァラクの力だけで済んでしまっている。
「気にする必要ないわ! あなたはアイテムボックスを持っているだけでS級の冒険者の価値があるわよ!」
と、ヴァラクが励ましているつもりなのか、そう言う。
「ヴァラクちゃん……っ」
と、ニーニャはヴァラクの優しさに感激していた。
その様子をネネリは冷めた眼差しで見ていた。今のどこに感激する要素があったのだろうか。
「と、これ以上近づいたら気がつかれるわね」
ヴァラクがそう言って足を止める。
遠くには複数の火蜥蜴。
ヴァラクの言った通り、火蜥蜴が群れで生息していた。
「ヴァラクの麻痺は何体まででしたら同時にできますの?」
ネネリの氷の槍を放ったら、あれら全ての火蜥蜴がこっちまで襲いかかってくるだろう。
「んー、がんばっても3体までかな。それ以上は厳しいかも」
どう考えても3体以上の火蜥蜴と相手することになりそうだ。
「やっぱり引き返す?」
と、ヴァラクが提案する。
ネネリもそれがいいだろうと、考えていた。
けど、1つだけ試したいことがあった。
「ニーニャ、ここから弓矢で狙えますか?」
「流石にここからじゃ届かないよ」
「例えば、飛距離を【バフ】させるなんてことはできませんの?」
「えっと、やったことないからわかんないけど……」
「試しにやってみてくれませんか」
「ネネリちゃんがそう言うなら……」
ニーニャはアイテムボックスから弓矢を取り出す。
「えっ、流石に無理があるでしょ!」
と、ヴァラクが言う。
「ヴァラク、念のため麻痺をいつでも放てるよう準備をお願いしますわ」
「えっ、ほ、本気でやるの!?」
ヴァラクが戸惑っている間、ニーニャは弓矢の準備をしていた。
そして、矢を引きながら――
「物理攻撃力【バフ・改】、飛距離【バフ・改】、命中率【バフ・改】」
そう口にして手を離す。
ギュインッッ!! と音を立てながら矢が放たれる。
そして、矢が火蜥蜴の体を引き裂く。
「えっ、うそ……っ」
ヴァラクが絶句していた。
「ニーニャ、他の火蜥蜴が一斉に襲いかかってきますわ!」
「うん……!」
ニーニャはそう返事をしながら、次々とアイテムボックスから矢を取り出しながら、弓に矢をひっかけて、そして弓矢を引く。
【バフ】された矢は確実に火蜥蜴に当たり、そして一撃で絶命させていく。
一匹ぐらいここまで辿り着く火蜥蜴がいるだろうと、ネネリは身構えていた。
けれど、気がついたときにはニーニャが全ての火蜥蜴を全滅させていた。
「えっ、え……?」
ヴァラクは未だに放心していた。
目の前で起きたことを理解するのに時間がかかっているのだろう。
ネネリもある程度予想していたとはいえ、その予想をはるかに上回る結果に驚きを隠せないでいた。
「えっと、ニーニャ。あなた、す、すごいわね……」
やっと放心が解かれたヴァラクがニーニャにそう口にした。
「わたし全然すごくないですよ?」
「え?」
「わたし【バフ】しかできない無能なので」
「け、けど……現に魔物をたくさん倒しているじゃない……」
「んー、弓矢って意外とすごいんですねー」
「いやいや、弓矢がすごいんじゃなくて、あなたがすごいんでしょ」
「わたしなんかよりヴァラクちゃんのほうがすごいですよ。魔物の位置がわかったり、魔物を動けなくしたり、わたし【バフ】しかできないんで、そういうの憧れます!」
ニーニャは純粋な眼差しでそう言った。
「ちょっとぉー」
「……なんですの?」
ヴァラクはネネリの腕を掴んでニーニャに聞こえないよう小声で話す。
「あれ、どうなってんの?」
「いえ、わたくしにそう言われてもわかりかねますわ」
「あなたニーニャの保護者でしょ!」
「保護者でなく姉ですわ。そこは間違えないでくださいまし」
「そこはどうでもいいのよ! なんで、あんなに自分の強さに無知なの!?」
「いえ、わたくしも何度か説明を試みたんですが……まぁ、いいかなって」
「いいかなってなによ!? 諦めちゃだめでしょ!」
「いえ、あのぐらい純粋なのが一番かわいいと思いますの」
「あなたっ、ニーニャのことになると頭ちょっとおかしいわね!」
と、ヴァラクがひとしきり言いたいことを言い終えたとき――
「なんの話をしているんですか?」
と、ニーニャから話しかけられる。
まずいっ、と思ったヴァラクはとっさに嘘をついた。
「ヴァラクちゃんのすごさをネネリに説いてあげていたのよ!」
「ヴァラクちゃんのすごさなら、わたしもうたくさん知っているのです!」
「そ、そうね……あははは……」
ニーニャに褒められてもあまり嬉しいと思えなくなったヴァラクだった。
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