【第29話】学園の風物詩と、帰省前夜の誘惑
学園決闘の大騒ぎも終わり……セリオ先輩が「しつこい求婚者」として新たに覚醒(?)しました。
そして物語は学園生活から長期休暇へ。アデルは待ちに待った帰省、リリアンヌとの再会を胸に抱いていますが――その前夜、アリスが行動をおこします!
コミカルとドキドキを両方お楽しみください!
それからというもの、セリオ・ヴァルディアは休み時間や昼食のたびに、まるで日課のようにクリスへ求婚を繰り返すようになった。
「クリス、今日も君に告白しに来た。僕と結婚してくれ!」 「……お断りします」
「君は強く、そして美しい。身分や性別など関係ないと、君自身が証明したではないか!」 「……だから無理だって言ってるじゃないですか」
「僕は君を妻にしたら、側室など絶対に作らない!この身、この心、すべてを君に捧げると誓おう!」 「……重いです」
最初こそクリスも丁寧に断っていたが、日に日にそのしつこさが増していくセリオに、ついには冷ややかな対応を取るようになっていった。
「ウザいです」 「ぐはっ……! しかしその冷たさすら愛おしい!」
「先輩に興味ありません」 「なんと残酷な……だが、それもまた君の魅力!」
そんな二人のやり取りを、もはやアデルもランドルフ王子も見慣れてしまったらしい。昼食の席でセリオが倒れては立ち上がる姿も、完全に学園の風物詩と化していた。
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そうして騒がしくも平和な学園生活は過ぎ、季節は巡り――長期休暇が訪れた。
アデルは公爵家に帰省し、ランドルフ王子は王城へと戻ることに決まっている。
一方、クリスは「事情がある」とだけ告げて寮に残ることになった。そして、もちろんセリオも。
「クリスが残るなら、僕も残る!」と宣言し、教師陣を頭を抱えさせているという。
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帰省の準備を進めながら、アデルは胸を躍らせていた。
(やっと……リリアンヌに会える。家族と会うのも楽しみだけど、やっぱり一番に顔を見たいのは、彼女だ)
対照的に、メイドのアリスはどこか悲しげな顔をしていた。荷物をまとめながら、ため息を落とす姿は痛々しいほどである。
アデルはその理由を知っていた。だが――だからこそ、優しくすれば期待させてしまうとわかっていた。
(彼女は……僕に想いを寄せている。それは、ずっと気づいていた。でも……僕が心を向ける相手は、リリアンヌだ)
だからアデルは努めて平静に、アリスを他の使用人と同じように扱う。笑顔も、声色も変えないようにして。
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そして帰省前夜のこと。
明日を楽しみに、アデルは寝室の扉を開いた。
(早く寝ないと……明日こそはリリアンヌに――)
その瞬間、部屋の隅にアリスが立っているのに気づく。
「……ん?」
思わず息を呑むアデル。アリスは頬をわずかに赤らめ、かすかに震えながらも、真剣な眼差しをアデルに向けていた。
「ア、アリス……!? どうしたの?」
するとアリスは
「やっぱり私じゃダメですか?」
と涙ながらに訴えるのだった。
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
セリオの迷惑(?)な愛の告白に笑っていただけましたでしょうか。
そしてラストは、アリスの涙!
次回からは「帰省編」本番です。アデルの心情と、それぞれの恋模様にご期待ください。




