【第28話】学園を揺るがす決闘――防御魔法と炎の矢
今回は、学園を揺るがす大事件――防御魔法と炎の矢による決闘の話です。
防御魔法で仲間を守る少女・クリスと、水魔法の天才・セリオの対決は、想像以上の展開に。学園中が見守る中、勝利は意外な人物に――そして、予想外の告白も飛び出します。
昼下がりの学園中庭は、いつもよりざわめいていた。噂は瞬く間に学園中に広まり、決闘の話は教師陣の耳にも届く。
その異常事態を受け、当事者であるクリス・アルベールとセリオ・ヴァルディアは、校長室に呼び出された。
「今回の件、いったいどういうことかね?説明したまえ」
校長の声はいつも通り穏やかだが、その威厳に二人の背筋は自然と伸びる。
クリスが経緯を説明する。
「私の行動は、防御魔法で生徒たちを守ることに集中した結果です。偶然や奇跡ではなく、判断力と魔法の応用の結果です。それを偶然や女だからと批判されるのは我慢なりません! 実力であると証明するための闘いを望みます」
対して、セリオは秩序を重んじる立場から反論する。
「平民の女子が男子に混じり、表彰されるなど、学園の秩序として如何なものか……我がヴァルディア侯爵家や他の貴族も黙ってはいないでしょう。それに女とは、男に従順であるべきもの。それを認めさせるためにこの闘いは必要だと考えます」
議論は静かに熱を帯び、校長と教師たちは慎重に耳を傾ける。
校長は、これは新しい未来を切り開く可能性を感じた。
そして言った。
「決闘を認めよう。ただし、教師の監視下で行うこと。危険と判断したら、すぐに止める」
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放課後、中庭に設けられた闘技場には、噂を聞きつけた生徒たちが次々と集まった。
「本当に、セリオ様とクリスが戦うの?」
「セリオ様の勝ちでしょ。あの方は水の魔法の天才だし……」
誰もが上級生であるセリオの勝利を疑わなかった。しかし、アデルとランドルフ王子だけは、クリスの勝利を信じている。
競技開始の旗が振り下ろされる。
先手を取ったのはセリオ。腕を振るい、膨大な魔力で水の渦を作り出し、クリスに叩き込む。
周囲の生徒たちはその圧倒的な力に息を呑む。
だが、クリスは落ち着いて紫色の防御結界を展開する。炎のように揺らめく結界が、水の渦を瞬時に蒸発させ、打撃を消し去った。
「す……すごい……」
取り巻きたちも声を漏らす。
セリオ自身、目を見張る。初めて、自分の攻撃が完璧には通じない相手に出会った瞬間だった。
クリスは防御を維持したまま、紫の炎を矢のように放つ。
セリオは急いで結界を展開するも、間に合わず、炎の矢を受けてしまった。
「……!」
その衝撃で、水の天才と謳われるセリオも後ずさる。闘技場は一瞬静まり返った。
クリスは息を整え、防御魔法を解きながら旗の合図を待つ。
「……これで勝負は……!」
旗が下ろされると、勝者はクリスだと一目でわかる。観衆からは驚きと歓声が巻き起こる。
クリスは勝利を宣言し、毅然とした声で求める。
「女だからと侮辱したこと――皆の前で謝ってください!」
だが、セリオの反応は意外だった。
「全面的に僕の負けを認めよう。君の防御魔法は美しかった……そして、僕の心は君の炎の矢に撃ち抜かれてしまった。君と交際したい!」
闘技場は静寂に包まれ、会場の生徒たちは固まる。
クリスは平民時代の言葉遣いで、思わず口をつく。
「何いってんの?気持ち悪い。」
しかし、セリオはさらに言う。
「僕に対してそんなことを言うなんて……君みたいな女の子は初めてだ!好きだ!」
クリスは恐ろしくなり、アデルとランドルフ王子の後ろに逃げ込む。
観衆はその奇想天外な告白に唖然としつつも、決闘の意外な結末に湧き上がる。
こうして、二人の決闘は幕を閉じた。
勝利した防御魔法の少女――クリス。
そして、セリオの熱烈な告白。
学園の秩序も、男女の境界も――一瞬にして揺らぐ出来事となった。
クリスの防御魔法と冷静な判断力が、上級生の天才をも凌駕しました。
そして、セリオの告白という奇想天外な結末。学園の秩序も、男女の力関係も一瞬にして揺れ動いた今回の決闘。
次回は、二人の間に生まれた緊張と微妙な空気が学園にどう影響するのか――その波紋を描きます。




