表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/32

【第21話】侯爵令嬢アディシアの嫉妬

次の日の学園。昼休みの中庭には学生たちの声が響き渡ります。

アデルとクリスは昨日の実習を振り返りながら、ほっと一息ついていました。

しかし、そこへランドルフ王子の婚約者である侯爵令嬢・アディシアが現れ、平民のクリスに厳しい言葉を投げかけます。

今日は、友情と嫉妬が交錯する学園の昼休みのひと幕をお楽しみください。



次の日の学園。 昼休みの鐘が鳴ると同時に、中庭には学生たちの活気ある声が広がっていた。 芝生の上で弁当を広げる者、談笑しながら魔法の練習をする者、それぞれが束の間の自由を楽しんでいる。


アデルは木陰のベンチに腰を下ろし、向かいに座るクリスと昨日の実習の振り返りをしていた。 魔獣に立ち向かった時のことや、仲間と連携できたこと――その話題は自然と弾み、二人の間には戦いを共にした者同士の充実感が流れていた。


「昨日の最後、アデルが雷撃を放ったとき……めっちゃかっこよかった!」 目を輝かせるクリスに、アデルは少し照れくさそうに肩をすくめる。


「いや、僕一人じゃないよ。ランドルフ殿下も、みんなも一緒だったからだ」


その瞬間、周囲からざわめきが広がった。


「えっ……侯爵家の令嬢じゃない?」 「学園に入ってないはずなのに、どうしているんだ?」


視線の先に現れたのは、華やかなドレスに身を包んだ少女だった。 ――アディシア・ヘルマン。ランドルフ王子の婚約者であり、由緒ある侯爵家の令嬢である。


堂々とした足取りで近づいたアディシアは、クリスをじっと見つめる。


「あなたがランドルフ様と親しくしている……平民の子よね?」


クリスは少し緊張しながらも、背筋を伸ばして答える。 「はい、そうです。クリス・アルベールです」


アディシアの唇がきゅっと結ばれる。 「……平民が殿下と親しくするなんて、ふさわしくないと思わない? 殿下のそばにいるのは、身分のある子でなければ――私みたいにね」


中庭の空気が一気に張りつめる。 突然の嫌味に、クリスは言葉を失い、アデルは慌てて前に出る。


「ちょっと待って! クリスは――」


だが、アディシアはアデルに鋭い視線を向け、少し背伸びした声で言い返す。 「あなた、噂に聞く公爵家の子よね? 殿下の側近になるなら、平民の子が近づかないようにちゃんと見ておくのが当然じゃない?」


アデルは言葉を返そうと口を開いた、その時――。


「アディシア」


低く澄んだ声が響き、場の空気がピリリと張りつめる。 振り返ると、そこには生徒会での仕事を終えたばかりのランドルフ王子の姿があった。


彼は冷たい光を宿した瞳でアディシアを見据え、ゆっくり歩み寄る。 「彼らは僕の友達だ。志を同じくして、共に戦う仲間。恋人でも、臣下でもない」


アディシアの顔から血の気が引いていく。 王子の声は低く、でも静かに怒りを秘めていた。


「友達を侮辱する発言は許さない。」


その厳しい言葉に、アディシアは青ざめた表情で立ち尽くす。 やがて震える声で、「……申し訳ありません」と言い残し、悔しげにその場を去っていった。


残された中庭には、一瞬重たい沈黙が流れる。 だがランドルフ王子がクリスとアデルに穏やかな笑みを向けると、ようやく張り詰めていた空気が和らいだ。

アディシアの嫉妬は、立場や身分を重んじる世界ならではのもの。

クリスは臆せず毅然と答え、アデルと王子は彼女を守ります。

子どもたちの学園での小さな戦いが、友情と信頼をより強くする瞬間となりました。


次回も学園での波乱と成長をお届けします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ