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【第20話】メイドの涙と心の距離

森での実習を終え、少し疲れながらも仲間と共に達成感を味わうアデル。

しかし、寮に戻った彼を待っていたのは、いつもと変わらぬメイドのアリス――けれど、その瞳には涙がにじんでいました。


心配と安堵、そして胸の奥に秘めてきた想い。

彼女は勇気を振り絞り、ついにアデルへ自分の気持ちを伝えるのです。


森での実習を終え、学園に戻るアデルの足取りは少し疲れているが、充実感に満ちていた。ランドルフ王子やクリスと交わしたハイタッチの感触が、今日一日の成果を静かに祝福しているかのようだ。


寮の扉を開けると、いつも通りアリスが控えめな微笑みで迎えてくれる。しかし、その瞳はどこか緊張で潤んでいた。


「アデル様……!」

小さな声で名前を呼ぶアリス。その手は少し震えている。


「アデル様、大丈夫でしたか……!?授業中の……森での事件、無事で……本当に……」


アデルは静かに頷き、落ち着いた声で答える。

「心配かけてごめんね、アリス。大丈夫だよ。僕たちは無事に戻った」


アリスはほっと息を吐き、両手で胸を押さえながら、小さな涙をこぼす。

「よかった……よかったです、アデル様……!」

一瞬、彼女の声が震え、瞳の奥で涙が光る。アデルは少し戸惑いながらも、その真剣な表情に胸を打たれる。


アリスはすぐに落ち着こうと、手で涙を拭い、少し照れくさそうに微笑んだ。

「……無事で、本当に安心しました。もう、何があってもアデル様のそばにいなければ……」


アデルは傷に消毒を施しながら、今日の実習の話を簡単に伝える。森での中級魔獣との対峙、火球や雷撃で魔獣を討ったこと、クリスが生徒たちを守ったこと……。アリスは黙って話を聞き、時折息を呑み、小さく頷く。その目には、まだ心配の名残が残るが、同時に誇りも感じられた。


夕方、全ての処置を終え、アデルが少し休もうと椅子に腰を下ろすと、アリスはそっと彼の前に座った。


「アデル様……あの、私……」


言葉に詰まりながらも、アリスは小さな手を差し出す。

「私は……二番目でもいいんです。アデル様のそばにいられれば……どうか、私を……恋人にしてください……」


アデルは驚きつつも真剣な表情で彼女を見つめる。

「アリス……君の気持ちはうれしいよ。でも、僕にはリリアンヌがいる。だから…ごめん…」


アリスは小さくうなずき、瞳にかすかな涙を浮かべながらも微笑む。

「はい……わかりました。アデル様の幸せが、私の願いです」

その瞳は、まだ諦めてはいないことを静かに示していた。


アデルは深呼吸を一つして、ベッドに横たわる。森での試練、仲間との戦い、そしてアリスの気持ち――胸の奥で静かに波紋を広げる今日という一日。まだ未来はわからないが、今日の出来事は確かに彼の成長に刻まれたことを、彼は感じていた。


天界ではその光景を面白げに見つめる女神が、

「あらあら、本当に一途なのねぇ、アデルくん。これからどうなるのかしら♡」

と呟いていた。



---


アリスの想いは切なくもまっすぐで、アデルの心に深く残りました。

しかし、彼の胸にはすでにリリアンヌへの想いがあり、選ぶ言葉はひとつしかありませんでした。


涙を浮かべながらも諦めきれないアリス。

そんな彼女を見守る女神の気まぐれな視線。

アデルの物語に、またひとつ新たな波紋が広がっていきます。


次回もどうぞお楽しみに♡



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