表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/32

【第17話】昼休みの誓い

新入生としての生活が始まり、アデル、ランドルフ、クリスの三人が初めて本音を語り合う昼休みのひととき。

ここで芽生えた誓いが、やがて国や世界を変える大きな力となる――その瞬間を描きます。



昼休み。

学園の中庭は、新入生たちの笑い声とざわめきで満ちていた。

購買でパンを買う者、芝生で弁当を広げる者――それぞれが初めての学園生活を楽しんでいる。


アデル、ランドルフ、クリスの三人は、大樹の下に腰を下ろした。

木漏れ日が揺れるその場所は、不思議と落ち着いた空気に包まれている。


「ふぅ……ここなら人目も少ないな。少し腰を落ち着けて話ができそうだ」

ランドルフ王子がほっと息をつき、パンを取り出す。

クリスも静かに弁当の包みを解いた。


その時、王子がふとアデルへ視線を向ける。


「ヴァレンティア公爵子息――アデル。君は、この学園で何を学び、何を成すつもりなのだ?」


問いかけは穏やかだが、眼差しは真剣だった。

クリスも箸を止め、興味深げに耳を傾ける。


アデルは一瞬ためらったのち、真剣な声で答えた。


「……僕は、この学園でしっかり学びたいと思っています。魔法や学問はもちろんですが、それ以上に――世の中に根付く“男尊女卑”の考えを変えていきたいのです」


二人の表情がわずかに揺れた。

アデルは言葉を重ねる。


「入学式でも、女性だからと席を譲れと言われる場面を見ました。……でも本来は、性別に関係なく能力ある者が正当に評価されるべきです。

僕が努力し、結果を残せば、周囲は変わる。周囲が変われば、やがて国も変わる。――その第一歩になりたいのです」


クリスの紫の瞳が大きく見開かれた。

胸の奥を突き動かされるような衝撃に、思わず息を呑む。


「アデル……そんなことを本気で考える人がいるなんて。私、ずっと夢物語だと思っていました」


ランドルフ王子はしばし黙してアデルを見つめていたが、やがてゆっくりと笑みを浮かべた。


「君は面白い。いや、感銘を受けたよ。僕は王族として、この国を導く立場にある。だが、君のように真摯に世界を見据える者に出会ったのは初めてだ」


「殿下……」


「アデル、クリス。共に学び、共に成長しよう。そして――いずれは国を、世界を変える力となろうではないか」


王子が手を差し伸べる。

アデルとクリスは一瞬驚き、だが迷わずその手を取った。


三人の手が重なった瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げる。


「はい。必ず……」

「私も、共に歩みます」


風が吹き抜け、木々の葉がざわめいた。

それはまるで、彼らの誓いを祝福しているかのようだった。



初めて三人で心を通わせた昼休みのひととき。

ここで交わされた誓いが、アデルたちの成長と、やがて国や世界を変える力へとつながっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ