【第14 話】王立学園への旅立ちと、新たな決意
アデルはいよいよ王立学園へ入学する日を迎えます。
家族や使用人に惜しまれつつ旅立ち、そこで彼が抱いた決意とは――。
新たな舞台で物語が大きく動き出します!
あれから2年の歳月が過ぎ、ついにアデルが王立魔法学園へと向かう日がやって来た。館の正門前には馬車が用意され、見送りのために家族や使用人たちが並んでいる。
「アデル様!これからもずっと一緒ですね!」
晴れやかな笑顔を浮かべているのは、三歳年上のメイド――アリスだった。彼女は側仕えとしてアデルに同行することが決まり、今や誰よりも嬉しそうにその胸を高鳴らせている。
「うん、よろしくね。アリス」
アデルは軽く頷き、彼女のまっすぐな視線を受け止めた。
別れの時、母や姉妹、館の使用人たちが次々に涙を浮かべながら声をかけてくる。抱きしめる者、手を握る者、惜しむように見つめる者――皆が一様にアデルの成長を喜び、また寂しがっていた。
(……僕も、本当は名残惜しい。けれど、ここで立ち止まるわけにはいかない)
胸の奥に小さな痛みを抱えながらも、アデルは心を引き締めた。
(しっかり学んで、立派な公爵になろう。そして――少しでも、この男尊女卑の考えを変えてみせる)
そう固く決意し、馬車に乗り込んだ。
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学園に到着すると、まず案内されたのは寮の個室だった。
本来なら複数人と同室になるはずだが、アデルは特例として一人部屋を与えられた。理由は明白――公爵家の長男であること、そして全属性を有するという歴代最高の才能を持つがゆえだ。
「すごいお部屋ですね……!」
荷解きを始めたアリスが、広々とした部屋を見回して目を輝かせる。
「そうだね。でも……少し、落ち着かないな」
アデルは苦笑しながら、寮の外へ出て学園内を歩き始めた。
広い中庭、石造りの講義棟、練習場。行き交う生徒たちがちらちらと視線を向けてくる。
「見ろ、あれが全属性持ちの公爵子息だ」
「歴代最高の結果を出したらしいぞ」
ひそひそとした声が、アデルの耳に届く。やがて囁きはざわめきに変わり、あっという間に彼の周囲には生徒たちが集まり出した。
「アデル様、ぜひお近づきに……!」
「私の父は○○伯爵でして――」
口々に取り入ろうとする言葉が飛び交い、笑顔と媚びた視線が降り注ぐ。
(……こういうの、あまり得意じゃないんだよな)
アデルは困ったように微笑み、柔らかい声で応じた。
「今日は到着したばかりで少し疲れているんだ。また改めて話そう」
そう言って頭を下げると、人の波から抜け出し、自室へと戻っていった。
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夜。
窓の外に広がる月を眺めながら、アデルはベッドに身を横たえた。
(友だちが欲しいな。身分や功績なんて関係なく、心から笑い合える相手が……)
胸の奥で、そんな素朴な願いが芽生えていた。やがてその思いを抱いたまま、アデルは静かにまぶたを閉じる。
――王立魔法学園での新たな日々が、幕を開けようとしていた。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
ついに学園編がスタートしました✨
次回からは新しい登場人物も加わり、アデルの生活が一気に賑やかになっていきます。
ぜひお楽しみにしていただけたら嬉しいです!
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今後ともよろしくお願いします。




