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サリカ様と僕  作者: 結城 からく


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2/2

バッドエンド

 夕方の住宅街。

 公園で遊び終えた少年は、満足した気持ちで自宅への帰路についていた。

 曲がり角を抜けた先で、彼はふと足を止める。


 電信柱のそばに赤いワンピースを着た長身の女が佇んでいた。

 傷んだ黒髪が顔を覆っており、隙間から覗く目が少年とじっと見つめている。


 少年は驚きと興奮の混ざった表情で言う。


「サリカ様……?」


「…………」


 サリカ様の身体がゆらりと揺れ、足を引きずって少年に迫る。

 だらりと垂れ下がった腕から、ぽつぽつと血が滴っていた。

 見開かれた目からも血が流れ落ちている。


 異様な風貌を前に、少年は思わず後ずさった。


「うわっ……」


 サリカ様の手が少年の腕を掴む。

 乾燥し切ってひび割れた指が食い込み、少年は顔を顰めた。

 そのままサリカ様はゆっくりと歩き出す。

 自宅とは反対方向に進んでいることに気付き、少年は悲鳴を上げた。


「た、助けて! 誰かっ!」


 少年の声に答える者はいない。

 夕闇に染まりつつある住宅街は、異様なほどに静まり返っていた。


「お、お姉さんは本物のサリカ様なの!?」


「…………」


「願い事を叶えてくれるんだよねっ! 知ってるよ! みんなが噂してたから!」


 少年は必死に抵抗しながら叫ぶ。

 サリカ様は彼の言葉に耳を貸さず、足を引きずって歩き続けた。


 このままでは取り返しのつかないことになる。

 そう悟った少年は意を決して告げる。


「僕、お姉さんの友達になりたいっ!」


「…………」


「お願いします! 友達になります! だから殺さないでくださいっ!」


 少年は涙を流して懇願する。

 その瞬間、サリカ様が立ち止まった。

 ぎこちない挙動で振り返って少年を見下ろす。

 血塗れの口が裂けながら吊り上がり、壮絶な笑みを形作っていた。


 少年は絶望と共に凍り付く。


「サ、サリカ様……」


 震える少年の頭が抱え込まれる。

 額にかさかさとした感触が触れた。

 それがサリカ様の唇だと理解した少年は、顔を青くしてたじろぐ。


「えっ、あっ!?」


「…………」


 サリカ様は禍々しい笑みを浮かべた。

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