The Library of the Day
おい待て、こいつ今なんて言った?
他の英雄達みたいにボクが省略してあげられる……?
「どういうこと……?」
「えぇ、理解が悪すぎない? だから君とヒメコはまだ神武一体してないから、他の英雄達と違って」
「そこじゃない」
そもそもこいつはなんだ?
さっきから姫子ちゃんのことをヒメコと呼び捨てにする始末、やたらと馴れ馴れしいな。
「じゃあなんだっての?」
「フィストやヴィエラさん達との神武一体を、貴方が省略したってこと?」
「そう言ってんじゃん、時間かかって面倒でしょ。感謝してよね」
〇す。
いけないいけない、言葉遣いが悪くなってしまった。
でもまぁ理解して欲しい、私の怒りが頂点に達するところだったのを必死に堪えたのだ。
むしろ口に出さなかっただけ褒められるべきだと思う。
「なんてことを、してくれたの?」
「はぁ?」
私にとってのご褒美なんだぞ。
これからまた戦闘を始めて、結構痛い思いをするけど、神武一体があるから頑張れたんだ。
それを、それをコイツは……!
「弥子さぁん?」
一気に血の気が引きました。
やだなぁそんな怖い声出さないでよ姫子ちゃん。
私を刀で刺した時ぐらい怖かったよ今の声。
ちょっと色気が出ちゃっただけじゃないか。
君との神武一体が出来るのが楽しみ過ぎてちょっとハシャいじゃっただけだって。
「そうですか、それは良かったです」
そういって姫子ちゃんはニッコリ笑って……薄目に見える瞳が全然笑ってないのは別として、ゆっくりと近付いて私を抱きしめてくれた。
「弥子さん」
「はい」
はい。
なんだろう、姫子ちゃんと抱きしめ合う、それも姫子ちゃんの方から抱きしめてくれるだなんて日本にいた頃も記憶にないくらいのスーパー嬉しいイベントのはずなのに、全然心が休まらない。
そのまま姫子ちゃんは私の背中に思いっきり指をアイアンクローのように突き立ててくる。
「痛っ、痛いです、痛いです姫子さん」
「弥子さん」
「はいっ、なんでございましょうか!」
痛みを堪えながら必死に返事をすると、姫子ちゃんは突き立てた指を緩めて、再び優しく私を抱きしめた。
「弥子さんが浮気性なのは、少し悲しいですけど理解しました。でも」
そこで区切ると、姫子ちゃんは私の耳に唇を近付け、そっと小声で呟いた。
私が目の前にいる時くらいは、私のことだけ考えてください。
そう呟いて姫子ちゃんは私の耳を軽くはむと、少し舐めた後に口を離し、再び私に向き合った。
そしてどこまでも優しい目をしたまま、そっと私にキスをしてくれる。
「ん、むぅ」
淫靡な声を漏らした後に、軽く姫子ちゃんは息を吸うと、私の唇を舌で軽く舐め始めた。
驚いた私が口を少し開けると、それを待っていたかのように舌が侵入してくる。
想像もしていないほど積極的な彼女の行動に、私の脳は溶かされ、麻痺をしてきたような感覚すらある。
経験は私の方がずっと多いはずなのに、幼子が母に甘えるような必死さに、思わずときめいてしまう。
ゆっくりと私の口内から舌を引き抜き、ふう、と一息をついた姫子ちゃんは、再び私を抱きしめた。
「あの日の図書館で貴女からしてもらったキスほど、上手ではありませんが」
でも、これからもっと上手くなっていきますから。
彼女がそう言うと、私達は光に包まれた。
愛していますわ、弥子さん。




