ビッケとアイディール
ヤコ達の下から離れ、飛行能力にも少し限界が来たので休憩がてら抱えていた二人を一旦地面に下ろす。
化け物の破壊力がどれ程のものかは想像も付かないが、きっと力を合わせたフィスト達ならばきっと勝てるはずだと祈るしかない。
とりあえずは気絶している二人をどうにかする為にも医療機関に頼りたいところではあるのだが、機械帝国トレボールが攻めてくるという情報に驚いて一般人は中央王都から避難してしまっている。
残念ながらサキュバスにしか過ぎない自分には気休め程度の回復魔法しか使えず、ましてや気絶している人物の介抱の仕方など分からない。
取り敢えず微かにだが記憶している応急救護の方法を頭から引っ張りだし、脈を確認する。
アイディールに関しては正常に動いているように聞こえる上に呼吸もしているのだが、パンサに至っては人工生命体の為にそもそも脈がない。
というかパンサに至っては治すというより直すが正しいのではないか、なら病院ではなく行くべきところは工場だろうか。
「ほら、起きなさい」
これから更に逃げるとしても、抱える人数は少ないほうが助かる。
自分はそんなに力がある方ではないので、眠っているだけのようにも見えるアイディールの方を起こすことにした。
ペチペチと頬を軽く叩いてみるが、険しく顔を顰めるだけで全く起きる気配がない。
なんだ、目覚めのキスでもご希望なのだろうか?
残念ながら自分はノーマルなので、ヤコのように女性に、ましてやこの女にキスするなどと御免である。
しかしモタモタしている暇はない、いつエクゼロ達が大暴れして、ここが危険区域になるか分かったもんじゃないのだ。
仕方ない、かなり荒っぽいが無理矢理起こそう。
「起きろぉお!」
「きゃあ!?」
私はアイディールの目を指で開きながら大声で叫ぶと、流石に驚いたのか彼女は悲鳴を上げて私を突き飛ばした。
鉄の女とか呼ばれる治安委員のトップにしては、随分と生娘のような可愛らしい声をあげるじゃないか。
なんにせよ起きてくれたようだ、非常に助かる。
ボロボロなところ申し訳ないが、ある程度は自分で行動してもらおう。
「貴女は?」
「私はビッケ、変態女とダークエルフの友人よ。あんたがでっかい機械の化け物に襲われてたから、ここまで担いで逃げてきたの」
意識を失う前の記憶はあるようで、納得いったのか頭を押さえて軽い溜息を吐くと、私に頭を下げてきた。
「それは、ご迷惑をおかけしました」
なんだ、この女意外と素直なのか。
てっきり余計なお世話だなどと嫌味を言われるかと思った。
しかしアイディールは顔を上げると、逃げてきたヤコ達が今まさに戦っているであろう戦場へ振り返る。
「折角逃がして頂いたところ恐縮ですが、私は戻らなければいけません」




