リヴァイアサン
「ったく、ヒデェ有様だよ」
海底都市は都市長であるティーエスが突如混乱し、街を破壊したことの後始末に追われていた。
事件の犯人がこの国のトップであるという事実は広く公開出来るようなものではなく、事実を知る者達はその口を慎むことに決める。
しかしそれでもいつかは真実が広まってしまうだろうが、少なくとも今は街の修復が先だというのは誰もが理解し、重く沈んだ気持ちを振り払うように作業を始めた。
「元々壊れてたのがもっと壊れただけだろ」
「あー。修復機械もぶっ壊れてるのがいくつかあるなこりゃ」
「これでもマシなほうだろ。ほぼ全員が大怪我して作業が続けられないトコもあるみたいだしな」
事件で傷付いたのは建物だけではない。
アレックスやヒストリアが尽力したものの、手が届かなかった範囲ではどうしても怪我人が出る。
歌姫の力はそれこそ暴動を引き起こす程の精神操作性があるが、肉体に直接ダメージを負わせる類のものではない為、怪我人の数は多くはないが、それでもこの再復興には大きな痛手だった。
しかし、そんな彼らに追い打ちをかけるように、更なる不幸が襲う。
「おい、なんか揺れてねえか」
「結構デカいな。崩れかけの建物が倒壊するかもしれん。広場に行くぞ」
揺れに気付いた者たちが避難場所へと走る途中、何処かで爆発したような、とても大きな音が響いた。
まだ暴動が治まっていないのか。
そう不安になった人々が音のした方を見ると、そちらは港の方向だった。
地震が起こった時点で、一番危険な場所として一般人は退避しているはずだが、まだ人が残っているのか。
答えはすぐに分かった。
港にいたのが人では無かったからだ。
「グギャァア!」
そこにいたのは、あまりにも巨大な竜。
翼は無く、まるで足の生えた蛇の様な見た目をしているが、口から覗く鋭い歯は見る者を恐怖させる。
海底都市の港を地響きと共に歩きまわり、獲物を探すようにしてその目をギョロ付かせる。
「リヴァイアサンだ……」
避難していた者の内、誰かがそう呟いた。
実在しないと言われた、神話上の怪物。
自分以外の全てを喰らい尽くし、遂に神にまで襲い掛かったリヴァイアサン。
その強大過ぎる力に神も苦戦したものの、どうにか封印に成功。
未だ誰も見たことが無い海の底で食事も出来ず、動くことなく眠っているとされている。
そのリヴァイアサンが、目覚めた。
空腹だった、何百。いや何千万年の間、食事をしていないのだ。
目の前に見える全ての景色が、美味しそうなごちそうに見えて仕方がない。
海底都市に、リヴァイアサンの歓喜の叫びが響き渡った。




