清宮姫子編 その7
メガロドンはその口を大きく広げ、私を目掛けて突撃してきました。
潜水艦ごと丸飲みにしてしまいそうなその大顎に、一瞬身が固くなります。
しかし恐怖に身を震わせても、誰かが助けてくれるわけではありません。
そして何より、護衛の私にはそんなこと求められていません。
岩徹しを垂直に構え、大顎を受け切る為に動きを見切る。
水中を切るようにして身体を揺らしながら真っすぐに突き進んでくるその姿は、凶悪と言ってもいい程の力強さを感じさせます。
口の中に見える無数の歯は、一つ一つが刃となって触れた物を砕くでしょう。
アレに噛み付かれるようなことはあってはならない。
私は岩徹しを強く握りしめ、その刀身に自分の意識を集中させます。
すると岩徹しはたちまちその姿を変えて、メガロドンの開いた口よりも大きな刀へと変化しました。
そのまま刀と大顎はぶつかり合い、両者押し合いに……ということにはならず、私が普通に押し負けました。
まぁ、仕方がありません。ここは水中。
人間の私には踏ん張る為の大地もありませんし、あちらさんからすればホームグラウンドも同然。
しかし刃と顔でぶつかったことにより、メガロドンの鼻と下顎からは一直線に傷が出来た上に、そこから出血をしています。
結果だけ見れば先程の刹那は私の勝ちです。
しかしこのままでは決定打に掛けます。
そう思い、ぎどらちゃんに振り向くと、心得ているとばかりにすぐに私の下へと飛び込んできました。
そしてぎどらちゃんの身体へ私が触れた時、私とぎどらちゃんの身体が輝きます。
身武一体、この現象はそのように言うらしいです。
悪魔によって無理矢理ぎどらちゃんと一体化してしまい、暴れてしまう私を見かねたドレッド様がエンジュランドにいる間に稽古を付けて下さいました。
お陰で彼女程とは決して言えませんが、それなりに制御出来るようにはなりました。
深い深い暗闇の中に、私とぎどらちゃんは閉じ込められています。
この空間は本当に嫌いですね。何故だか分かりませんが、自然と涙がこみ上げてくるのです。
そんな私が流した涙をぎどらちゃんが舐めてくれると、再び私達は光に包まれるのです。
『身武一体とは精神の繋がり、それ以上でもそれ以下でも無い』
ドレッドさんが言っていたことはイマイチまだ理解しきれていませんが、私の想いをぎどらちゃんが掬い取ってくれた。
そんな気持ちになると、どこからか力がこみ上げてくるのです。




