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女だけど女の子にモテ過ぎて死んだけど、まだ女の子を抱き足りないの!  作者: ガンホリ・ディルドー
第五章 人口生命体のキハーノ
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逃げられたけど助けてくれたけど変な子だけど

 マンホールを下り終えると、地下水道に繋がっていた。

 暗くて全く見えないので、私が立っている場所の近くで水の流れる音がするから地下水道と判断した。

 酷い悪臭を想像していたが、全く匂いはしない。

 匂いの元となるようなものを流していないか、はたまた既に浄化でもしてあるのだろうか。

 ひんやりとした空気が、私の肌を撫でる。

 しばらくして、少女が私の隣に降り立った。


「こっちだ。付いて来てくれ人間」


 そう言って少女は私から離れていってしまったが、暗くて足元が全く見えない。

 少女の位置は美少女感知センサーが示してくれるので分かるのだが、結構なスピードで走っているせいで追いかけるのにはかなり勇気がいる。


「ん? あぁ、そうだったな」


 ついては来るものの、イマイチ足の遅い私に疑問を持ったのか、少女は立ち止まった。


「手を軽く握るぞ」


 私の左手首が、少女の右手で軽く掴まれた。

 とても柔らかいが温かみを感じない、冷たい手。

 しばらくその感触を味わっていたが、突然少女の両目が発光した。

 目からビームが出たのかと思ってびっくりしたが、普通の照明光らしい。


「人間は暗視の機能が無かったな。『思いやり』が足りなかった。すまない」


 恐らくこの少女……人口生命体の少女は、こんな暗闇でも見えるのだろう。

 なので人間である私が暗いので歩けずらいという状況に気が付けなかったのだ。

 しかし、私が遅れているという事実から原因を探り、結果的に答えに辿り着いた。


「なにか不便なことがあったら遠慮なく教えてくれ」


 発光した少女の目に照らされた地下水道を、少女の柔らかくて冷たい手に引っ張られながら走っていく。

 この少女の名前は何というのだろうか。

 間違いなく、エクスト王が言っていた『七色の英雄』とやらの一人ではあると思うのだが。


「ねぇ、貴女の」

「着いたぞ、ここが出口だ」


 貴女の名前は?

 そう聞こうとしたら、どうやら出口に辿り着いてしまったらしい。

 出口は一見なんの変哲も無い鉄の扉で、似たようなものは道中にいくつかあった。

 もう一度最初から一人でここに来いと言われたら、絶対に出来ないと思う。


 少女が鉄の扉を押すと、開かれた鉄の扉から乾いた風が吹き付けた。

 暗闇に光が差し込み、眩しさで思わず私は顔をしかめる。

 段々と明るさに慣れると、そこは壊れた鉄の塊や、巨大な石材などが無数に散乱している場所だった。


産廃の楽園(スクラップ・ランド)へようこそ」


 広がるゴミ山を背に、少女が私に手を差し伸べて口角を上げた。


 少女の手を取り、辿り着いた場所は一面に広がる廃材の山。

 その中をひたすら突き進む少女。

 壊れた重機や、崩れた建物の廃材。

 ここは何処なのだろう。

 少なくとも、トレボールの正面からはこんな景色など見えなかった。


「そろそろ来るな」

「え?」


 少女は歩みを止めて空を見上げる。

 なんだろうと思って私も立ち止まると、少し遠くから何かが近付いてくる音がした。

 音のする方角に目をやると、凄い勢いで近付いてくる空飛ぶ子供達。

 その数およそ10人。

 居場所を気付かれてしまったかと私は身構えた。

 だが、少女が安心させるかのように私の肩に手を置いた。


「大丈夫。彼女らは私の友達だから」


 その言葉通り、近付いてきた子供達は徐々に速度を落とし、私達の前にゆっくりと降り立った。

 先頭にいた子供が近付いてくる。

 身長は私よりも若干低いが、表情がなんというか無機質で少し怖い。


「私達は、貴女を追いかけていた追手の攪乱に成功した。貴女の安全を私達は保障する」


 髪の毛をポニーテールにまとめているその子は、そう言って私に手を差し伸べた。

 握手を求められているのだろうと思い、手を握り返すと、その子は少し首を傾げて口角を上げる。


「私の名はS・パンサ。私のことを貴女はパンサと呼んでください。よろしくお願いします」

「天上院弥子です、ヤコって呼んでね。よろしくお願いします」


 首を傾げて口角を上げる。

 恐らく人間で表すのなら、顔を傾けてニコリと笑う、といった表情なのだろう。

 パンサと名乗ったこの子は、どうやら友好的に私と接してくれるらしい。

 どうしようかと思っていたトレボールだったが、落ち着いて話せる相手が出来て良かった。

 その後もパンサ以外の助けてくれた子供達と同じ様に握手と自己紹介をする。


 そして後は私をここまで案内してくれた少女を残すのみとなったが、最後の一人と自己紹介を終えて振り返ると、既にそこに少女の姿は無かった。


「あれ、さっきここにいた女の子は?」

「私達のリーダーであれば、私達が挨拶している間に私達の拠点へ向かいました」

「拠点?」

「私は、これから貴女を私達の拠点へ案内します」


 そう言ってパンサさんは私の手を取り、拠点へと案内してくれる。

 その手は先程の少女と同じく、柔らかくて冷たかった。


 拠点と呼ばれる場所まではそう遠くなく、歩いて3分程度の場所にソレはあった。

 例えるのなら、とてもミニチュアサイズのお城。

 というか、お城をモデルに作ったのだろうが、武骨な鉄板が主な材料として作られているせいで砦にしか見えない。


「リーダー! 只今我々はヤコと共に帰着しました」


 パンサが建物のてっぺんにあるテラスへと叫ぶと、しばらくして後、ゆっくりと私を案内してくれた少女が姿を現す。

 テラスから登場した少女は先程出会った時と異なる様相をしていた。


「よくここまで来たな人間!」


 少し汚れた布をマントのようにして羽織り、ボコボコになった壊れかけの鉄鎧を備えて、頭にはヤカンをひっくり返して被っている。


「私の名前はD・キハーノ!」


 だが少女は自信満々にその姿を誇示し、胸を張る。


「この世の悪逆非道を正さんと現れた、誇り高き騎士である!」


 いきなりのよくわからない宣言に、私は理解が出来ずに少し固まってしまった。

 え、なに? 誇り高き騎士?

 なんかさっきまで凄いミステリアスっぽい感じだったのに、雰囲気違くない?

 というかなんでヤカンを頭にかぶってるんだろう。


「リーダー! ヤコが困っています」

「おぉ、これはすまない」


 キハーノはそう言うとテラスから飛び降りて私の前に降り立つ。

 だが飛び降りた衝撃で彼女が着ていた鉄鎧がガシャンと派手な音を立てて壊れた。


「……」


 壊れて体から外れた鉄鎧をとても悲しそうな目で見つめるキハーノ。


「せっかく作ったのに……」


 あ、それ自作なんだ。


「また作り直せばいいんですよ、リーダー」

「う、うむ。この鎧はたった今、敵対組織による不意打ちから私を守ったのだ。その功績を称えて更に豪奢にしてやらねばな」


 どうやら彼女的にはそういう話で自己完結させることになったらしい。

 なんか思春期の中学生みたいな病気患ってるっぽいけど、気を取り直したのなら何よりだ。


「えーっと、キハーノちゃん。っていうんだよね?」

「うむ。そうだ、私こそ産廃の楽園の主であり守護者。キハーノだ」


 なんだろう、きっと彼女の中では色々な設定があるのだろう。

 こういう子に対しては、多少検討違いな事を言ってもいいから付き合ってあげるのが大切だ。

 ちゃん付けも止めた方がいいかもしれない。


「その守護者キハーノ様にお聞きしたいことがあるのですが」

「うむ、ヤコといったな。其方と私は出会うべき運命に導かれた魂の盟友。望むべき答えを全て教えてやろう」


 あ、敬称で呼んでみたら口角が上がった。

 人間よりも喜怒哀楽が分かりやすいかもしれない。


「どうして私を助けてくださったのですか?」


 当初の私の目的は、トレボールの偵察と美少女感知センサーが示す反応を確かめることだった。

 かなり行き当たりばったりだったし、最悪の場合は両方とも一旦見送って逃げることまで考えていたのだ。

 だが結果的に、美少女感知センサーが反応した張本人であるキハーノさんがこうして助けてくれた。

 随分と想定外の出来事だったし、その理由を知りたい。


「ふっ。美しい女性を悪から守り、共に打ち払うのが騎士の務めだからさ」


 やばい、割と私も普段から似たようなこと言って口説いてるけど、そろそろ理解するのが限界になってきた。

 どういう意味だろうと考えていると、後ろから制服の袖を引っ張られた。

 振り向くと、少し口をへの字に曲げ、眉毛を八の字にしているパンサさん。

 察するに、困ったという表情なのだろう。

 かなり美形に見えるパンサさんがその表情だと変顔にしか見えないのだが。


「その件については、私から詳しく説明させていただきます」


 そう言ってパンサさんは、私を彼女らが拠点と呼んでいる建物の中に案内した。

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