第10話 ややこしい事情
「受かった生徒はあっちで制服と教科書を配ってるらしいぜ。とっとと済ませてまた飯でも行こうぜ」
「いいね。ただ今日は早めには帰らせてもらうね」
またシズクが拗ねてしまったら大変だ。葡萄酒の在庫はそれほどないのだ。
「えー。つまんない。そうだ、私の住んでる宿に泊まりなさいよカルス」
「はは、なんて恐ろしいことを……」
にやにやと笑いながらからかってくるクリス。そんなことしたらシズクがどんな反応するか分からないよ……。
そんな他愛もないことを話しながら制服を受け取る場所に行こうとすると、いきなりたくさんの人に囲まれる。そして何かが書かれた紙のようなものをたくさん押し付けられる。
「君、占星術に興味はないかい!? 私は占星協会の者で」
「悩みはないかい? 青光教会に入信すれば全て解決するぞ!」
「君いい顔してるね、王都タイムズの専属モデルにならない?」
怒涛の勢いで勧誘される。
話には聞いてたけどこんなに激しいなんて!
どうしたものかと悩んでいると、誰かがドタドタと走ってくる。
「こらー! 敷地内での勧誘は禁止と言ってるだろうが!」
走ってきたのは兄弟子のマクベルさんだった。
マクベルさんの顔を見たその人たちは一目散に逃げていく。あの人たち、許可とか取ってなかったんだ……
「全く。困った奴らだ。門の外でやれってんだ」
呆れたようにマクベルさんは呟く。
どうやら注意しても何回も来てるみたいだ。迷惑な人たちだなあ。
「お、誰かと思えばカルスたちじゃないか。Aクラス決定おめでとう。歓迎するぞ」
「ありがとうございます。無事入れてホッとしました」
マクベルさんはクリスとジャックのこともちゃんと覚えてて二人にも「おめでとう」と言う。なんだろう、マクベルさんは先生がよく似合うね。天職なのかもしれない。
ちなみにマクベルさんは師匠の弟子だけど光魔法は使えない。確か水属性の精霊と契約しているはずだ。
「カルス。ちょっといいか?」
「え、はい」
二人と話し終えたマクベルさんは僕を連れて二人と少し離れる。どうやら二人には聞かれたくない話があるみたいだ。
「どうしたんですか?」
「大丈夫だとは思うが、学園内でゴーリィ様との関係は言うなよ?」
「自分から言うつもりはないですが、なんでですか?」
そう尋ねると、マクベルさんは神妙な面持ちで理由を話し始める。
「ゴーリィ様の立場は少し複雑なんだ。そもそも協会を除名されるってのは余程のことがないとされない。この前の試験の時みたいに、事情をよく知らずに悪く言う奴もいる」
「あー、気絶させてしまったあの人のことですね」
「そうだ、しかしもちろんゴーリィ様を擁護する者もたくさんいる。ゴーリィ様は多くの人に慕われているからな。でもそのせいで勢力が二分化されてしまってたまに諍いが起きる。俺なんか弟子であることが知られているからよくその争いに巻き込まれるんだ」
マクベルさんは事の顛末を知っている。
僕が呪いにかかっていることや王子であること。師匠が会長に楯突いたこと。どれも公には言えないヤバい情報だ。
「だから気をつけろ。お前の事情は知っているがあまり派手に動くなよ。光魔法の使い手ってだけで注目されやすいんからな?」
「はい。心配してくださってありがとうございます」
「だ、誰が心配してるだ! 俺は面倒ごとを起こしてほしくないだけだ!」
そう言ってそっぽを向いてしまう。しかしマクベルさんは最後にこう言ってくれた。
「だがまあ、困ったことがあったら言え。ゴーリィ様からお前のこと頼まれてるからな。俺に出来ることは手を貸してやる」
そう言って去っていく。
口は悪いけど兄弟子は優しい人だ。僕のことを心配してくれている。
「やっぱり僕は人に恵まれてるなあ」
そう呟き、僕は友人たちのもとに戻るのだった。
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[R]
沼の癒し手 リブッチ[水蝲蛄]
青い甲殻のザリガニ。硬い甲殻と強い鋏を持つ。
元々は回復魔法は苦手だったが、マクベルと共に繰り返し特訓することで上達した。攻撃魔法の方も得意。
自分が苦手な回復魔法ばかり使おうとするので彼から離れることも考えていた時期があるが、師に追いつこうと必死に努力する姿が気にいり、ずっと側に居着いている。





