表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/133

16話前半 僕たちは街を守りたい!

 門の外に設置したテントの下、僕、アリシアさん、ダース、マツリさんの四人はテレビ画面とにらめっこをしていた。


 画面に映っているのは、轟音を立てて地面を真っすぐに進む、戦艦ヤマトダイナ。太陽の光を反射して黒く光っており、地面に土ぼこりが立っている。無数に生えている大砲は、右に左にと方向を変え、索敵を続ける。


「この映像は、『魔道ドローン』によって撮影されている今のヤマトダイナの映像よ。あと10分もしないうちにシエラニアに到達するわ」


「こんなのがマジでこの街に突っ込んでくるのかよ……」


 テレビ画面のヤマトダイナの迫力に、ダースが声を漏らす。やはり見れば見るほど、その圧倒的なスケールを感じさせられる。


 本当に大丈夫なんだろうか。正直に言うと少し弱気になってきた。立てた作戦も即興のものだし、かなり粗削りだ。


「うだうだ言っててもしょうがないでしょ」


 ホバーボードを抱え、ツンとした表情で言うリサ。


 彼女はこれから、ホバーボードでヤマトダイナに接近し、エンジンルームの破壊をする。重要な仕事なのに、緊張していないのだろうか。


「……ユート。アンタがしけた面してんじゃないわよ。アンタが諦めなかったから、周りの人間が動いたのよ。絶対にあのデカブツを止めるのよ」


「……ありがとう、リサ」


「ま、いいけどね。あそこの駄菓子屋さんは気に入ってるの。潰れられたらたまらないから」


「やっぱ駄菓子屋は好きなんだ」


 リサはそう言って、テントから出て、歩き出した。


援護部隊(えんごぶたい)の準備はできてるのかしら?」


『おう! 俺たちがバックアップするぜ!』


『後方支援は任せて!』


 馬に乗った冒険者たちが活気よくリサの問いに応答する。残ってくれた人々に協力してもらい数は合計で30。ヤマトダイナから放たれる砲撃は、彼らが馬上から狙撃してくれる。


「さあ行くわよ! せいぜい遅れないようにしなさい!」


 リサが掛け声を上げ、ホバーボードに乗る。板の裏側から青い炎と排気が発生し、少しずつ空中に上昇していく。


「やはり天才の私にかかればこんな板切れ、簡単に使いこなせるみたい……ね!」


 語尾に力を入れると、ホバーボードからさらに大きな炎が噴出され、一気に前進していく。その様子はまるで、空中でサーフィンをしているようだ。


 リサの後に続き、馬に乗った冒険者たちは威勢よく走っていく。あとは魔道ドローンを通して、僕たちはテレビ画面でリサの動きを見ることになる。彼女はマツリさんが開発した『インカム』という道具を付けているらしく、こちらから彼女に指示を出すこともできる。


「アリシアさん、リサが作戦を成功させたらアリシアさんがヤマトダイナをぶった斬るわけですが……本当に大丈夫なんですか?」


「うん。私の必殺『勇者必殺』……『勇者ブレード』なら、行けると思う!」


「勇者ブレード?」


「私の必殺技を寄せ集めた『勇者必殺』の技の一つだよ。きっとあの技なら!」


 普段の攻撃はまだ必殺技じゃないのか。一歩間違えたら破壊兵器だ。


こんな緊急事態だっていうのに、アリシアさんのネーミングセンスは相変わらずだな。多分『技』って言っても単純に剣を振り回すだけなんだろう。単純なパワープレイは、なんとも彼女らしい。


「おい! ロリっ子がそろそろあのデカいのにたどり着くぜ!」


 頼んだぞリサ。アリシアさんにバトンを繋いでくれ。


 僕たちはテレビ画面を凝視した。


「こりゃまた思ったよりデカいわね……」


 私はホバーボードで空を切りながら、小さく独り言ちる。初めて乗ったこの機械、なかなか乗り心地は悪くないけど……魔力の燃費が悪いのも事実ね。


 目の前には、巨大な黒い船、ヤマトダイナがこちらに向かって前進してきている。仰々しい砲台が何本もついていて、サボテンのように見える。


『リサ! 聞こえる!?』


 耳元にユートの声が響く。このインカムという機械から聞こえてるのよね。私はボタンを押した。


「聞こえてるわ。目の前にデカブツも見える」


『そっか! 近づけそう!?』


「私を誰だと思ってるの。超絶天才美少女よ」


 体を前傾姿勢に、ヤマトダイナに急接近する。すると、生き物がそれを見つけるようにして、無数の砲台が一斉に私の方を向く。ターゲットをロックオンした……か。


 こちらを向いた砲台の口から爆発音が響き、砲弾が放たれる。私はホバーボードを上手く操作し、ひらりとそれを躱す。


 加速して自分の位置を変えたり、宙を一回転したり、一つ、二つと避け続ける。そのうち、私が移動した方に向かって砲弾が飛んできた。このまま避け続けても被弾するだろう。


 しかし、一直線に飛来するそれも私に当たることはなく、空中で爆発した。


『リサーーー!! 撃ち落としたぜーーー!』


 私の下には冒険者たちがいる。砲弾を一つ撃ち落とすと、手を振って私に声をかける。高いところから見下ろしているから、彼らはまるで豆粒みたいだ。まったく……騒がしい奴ら。子供じゃないんだからはしゃぐんじゃないわよ。


 砲撃は止まることなく、私の顔ほどの砲弾は横殴りの雨のように私の方へ向かってくる。


 しかし、ただでさえいくつかの砲弾は冒険者によって撃ち落とされており、砲撃のパターンも単純だ。


「止まって見えるわ」


 私は全ての砲弾を躱し、ついに船の甲板に上陸することができた。


「船に着陸したわよ! ここからどうすればいい?」


『エンジンルームに向かって! 甲板の下に、防御結界を張っている機械があるはず!』


「わかった!」


 私は炎魔法で爆発を起こし、甲板に穴を開ける。そこから下に降りると、無機質さを感じる真っ白な壁の廊下が続いている。時間がない。私は走り、エンジンルームを探す。


 少し走ると、ありがたいことにすぐにエンジンルームらしき部屋が見つかった。ドアを爆発で破壊し、中に入る。


 部屋の内部は何やら仰々しい機械がいっぱいで、真っ暗な部屋の中でチカチカと点灯していて目が痛い。


「で、どれを破壊すればいいのかしら?」


「まるい機械だって!」


 私はエンジンルーム内を見回し、丸い機械を探す。そこで私はある事実に気が付いた。


「全部まるい機械じゃない!!」


 エンジンルームにあるのはホールケーキみたいな形をした円柱形の機械ばっかり。こんなの一個一個見ていたら日が暮れてしまう。


 これは探している時間はない。そう合点した私は、このエンジンルームを盛大に爆破することにした。魔法陣を多数展開すると。


「<エキセントリック・エクスプロード・ブレーク>!」


 最高にイカした名前を詠唱し、私は爆発魔法を発動した。


 刹那、激しい轟音(ごうおん)とともに爆発が起き、エンジンルームの機械が爆破四散(ばくはしさん)する。機械が一つ一つとドミノ倒しのように次々と音を立てて爆発していく。


「これでミッションコンプリー……」


 言いかけた瞬間、爆発の影響で船体に穴が空き、強い風を感じて私の体は宙に浮いた。


「うわっ!」


 私はそのままエンジンルームから風に乗って投げ出され、地面に向かって落下していった。



「すごい……あんな大きな船が爆発してる」


 テントの下から見た映像に、僕は息を飲んだ。


 リサが入った後のヤマトダイナは、内部から激しく爆発し、火を噴いている。あれだけたくさんあった砲台たちは爆発で吹っ飛び、一本もなくなってしまった。船体が崩れ、装甲がはがれることで内部構造が丸見えだ。


 リサがやってくれたんだ。こんなに大暴れしなくていいだろうに、派手なところが彼女らしい。


「こりゃアリシアさんが出る間もなくぶっ壊れちまうかもな。今回ばっかりはロリっ子に感謝だな」


 ダースが安心したように言う。なんだかあっけないように感じるが、これだけボロボロになってしまえばいくらあんなに大きな戦艦でも、もうじきに動かなくなるだろう。


「いいえ、まだ防御結界を張る装置は壊れていない……」


 神妙な表情をするマツリさんの一言に、場の空気が凍り付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ