表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/133

51話前半 スライムを克服しよう!

遅くなりました!

 魔王の正体はカタストロフィスライムだった! そりゃアリシアさんも攻撃なんかできるわけない、だってスライムなんだもん!!


「我が城に手を出したことを後悔させてやる!! 今、貴様らをここで滅ぼす!!」


 魔王はかなり怒っているようで、低い声で大きく叫んだ。まあそりゃ怒るよね! 自分の城を破壊されてるんだもん!!


「アリシアさん! 大丈夫ですか!?」


「あ、あああ……嫌……」


 アリシアさんはすっかり怯えた目をして、うめき声を漏らしている。彼女が剣を握ることは、ましてや立って戦うことなんてできないだろう。


「どうした!? 勇者よ、かかってこい!」


 魔王は怒ってアリシアさんを呼びつけているが、アリシアさんは動けない。他のメンバーもカタストロフィスライム相手では勝てないだろう。


「よし、逃げよう!」


「了解です!」


 ロゼさんがリモコンを操作すると、ヤマトダイナはくるりと向きを変え、元来た道を走り出す!


「おい! お前ら逃げるのか!? それでも勇者か!?」


魔王はポヨポヨと跳ねながら罵声を浴びせてくるが、そんなもん知ったこっちゃない。最初から魔王は倒さなくてもいいという作戦だったんだから、計画は上手くいってるんだよなあ! 逃げろ逃げろ!


「6日後だ! 6日後、貴様らの街を滅ぼしに行く!! この借りは返させてもらうぞ!!」


 魔王の恨み言を聞きながら、僕たちはヤマトダイナですいすいと逃げていくのだった。



「アリシアさん、落ち着きましたか?」


「う、うん……ありがとう……」


 魔王城から10分ほど走って、ようやくアリシアさんの息が整ってきた。先ほどまで取り乱して過呼吸気味だったアリシアさん。今まで見てきた中で一番の怖がりようだった。


「どうするのよ。魔王があれじゃアリシアが勝てっこないわ」


 リサが切り出す。彼女の言う通り、スライム嫌いのアリシアさんに勝てる相手じゃない。


「でも、もう取り返しがつかないですよ……魔王城をぶっ壊しちゃったし……」


 それもまた事実だ。カンカンな様子だったし、謝っても許してもらえないだろうなあ。


 まあ、壊したのは主にロゼさんなんだけど。


「おいフランツ。あれどういうことだよ。魔王ってスライムだったの?」


「いや、そうではない。魔王様はある日を境にスライムになったのだ。だから変わり者だといっただろう?」


 そんな上手いこと言ったみたいな表現するなよ……。アリシアさんもチートでなんでもありだが、魔王もたいがいなんでもありなんだな。


 しかし困った。魔王にとどめを刺すには聖剣の力が必要らしい。そりゃそうだ、そうでもなければ聖剣の必要性がないもんな。


 だけどアリシアさんは聖剣でスライムを攻撃することができない。ヤマトダイナの攻撃で弱らせることはできても、とどめを刺せないんじゃ意味がない。


「ごめん……みんなが頑張ってくれたのに、私、こんなで……」


 魔王から逃亡してしまったのがかなり精神的に来ているらしく、アリシアさんは顔を落として甲板に座り込む。


「アリシアさん……」


 声をかけようと思ったが、変に励まそうものなら彼女のプライドをへし折ってしまうような気がして、何も言えなかった。甲板にいる全員が押し黙っていた。


「あ、シエラニアが見えてきましたよ」


 沈鬱とした空気の中、ようやくロゼさんが口を開いた。


 ヤマトダイナを門の前に泊め、僕たちは船から降りる。あまりにも空気が重くなってしまったので今日は解散ということになった。


「アリシアさん!」


 街につくなり、とぼとぼと歩くアリシアさんに声をかけた。彼女はゆっくりと振り返ると。


「ん……どうしたの?」


「魔王がスライムだったのは残念でしたけど……それでも、止まってる場合じゃないです! 明日からスライム克服を再開しましょう!」


 魔王が6日後にやってくることは変わらない事実だ。だったら今のうちに、アリシアさんが魔王に勝てるようにスライム克服をするべきだろう。


 だけど、アリシアさんはそれを聞いてさらに表情を暗くして。


「うん……そうだよね。頑張らないといけないもんね」


「どうかしたんですか? いつもなら自分から率先して言い出しそうなことなのに」


「う、ううん! 何でもないよ! そうだよね、頑張らなくちゃ、はっはっはー!」


 なんだろう。すごく違和感があるような……。


 しかし、僕のそんな考えもよそに、アリシアさんはそのまま歩いて行ってしまった。


 なんだかちょっと不自然な気もするけど……アリシアさんが変なのはいつも通りだもんな。別に大して心配することでもないか。


 そんなことより、スライム克服作戦だ。テレサちゃんが登場したあたりからまったくやっていなかったなあ。ちゃんと再開できるか心配だ。


 とはいえ、スライム克服の作戦自体はテレサちゃんがいた期間も考えてはいたんだ。思いつくたびにコツコツとノートに作戦をメモしておいたのだ。まさかこんな形で使える時がこようとは。


 よーし、なんとしてもアリシアさんにスライムを克服してもらって、魔王を倒すぞ! 人類の平和を守るんだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます(^_^ゞ 無事に撤退完了! …………ところで、フランツくんはキチンと置いてきたのかな? なんか存在自体忘れられ去られていて、そのまま連れ帰ってないか心配になります…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ