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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
畿内三好家飛翔編 永禄六年(1563年) 秋 大規模加筆修正予定

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足利呪縛迷宮 京都 その1 2019/4/16 追加

タイトルはもちろん某ソシャゲから。

なお、作者は二部一章クリアしかしていないので、参加はしていない。

ここの加筆は長くなりそうだから放置していたが、できるところまではする予定。

 この時期の京の都は2つに分かれていた。

 公家屋敷や御所、武家屋敷等が集まっていた『上京』と商人街として繁栄していた『下京』の2つである。

 六角軍の撤退後、三好家はこの京を奪還したのはいいが、それは同時に京の街を守るという責任を負うことを意味する。

 三好家当主である三好長慶は飯盛山城から動かず、幕府や朝廷との折衝は息子である三好義興が上京にある三好屋敷より行うことに。

 一方で万一に備えて、勝竜寺城に岩成友通が入り警戒と幕府に対する圧力をかけ続けている。

 この街は帝がおられる都であり、幕府がある都であり、幕府管領が政務を司る都である。

 そしてその三者とも実権は無い所が、この戦国時代というものを端的に示しているように思えた。


「実を言うと、すっかり忘れていたな」


 馬に揺られながら俺は京への道を有明達と共に進む。

 一応俺がこの地に居る理由は、大友家も毛利家の和議仲介の使者という名目なのだが、公方様が逃げ出す状況ではその仲介もできる訳もなく。

 やっと公方様が京に戻ったのでそれをしようという事での公方様こと足利義輝からの呼び出しである。

 という事で、訓練がてらに兵を連れての上洛となった。


 大友鎮成

  有明・明月・果心 歩き巫女+御陣女郎達  二十人


 大鶴宗秋      馬廻       百

 一万田鑑実     豊後衆     三百

 吉弘鎮理      吉弘家郎党   三百


 野口冬長      騎馬隊     三百


 合計                 千



 名目が名目なので、越水城からついてきた三好家の野口冬長が案内につく。

 騎馬隊なのは訓練を兼ねてだ。

 一方で百人まで膨らませた馬廻を大鶴宗秋に預けた他は、全部九州から来た一万田鑑実と吉弘鎮理の兵を伴っているのは、上洛とお目見えの可能性が九州の人間にとって魅力だからというのもある。

 畿内の人間は朝廷や幕府の現実を知っているからありがたがらないが、遠方の九州あたりでは『公方様や帝がおわす京に行ってきたんだ!』というのは強力な自慢のネタになるという訳だ。

 もっとも、彼らが九州に帰れるかどうかはまた別の話になるだろうが。


「一万田鑑実の豊後衆は遅れずについてきているのか?」


 岸和田から船で越水城に渡り、その日は越水城にて一泊。

 そこから芥川山城に向かって一泊し、山崎を抜けて勝竜寺城にて一泊して京の三好屋敷に向かうというコースになっている。

 俺の質問に大鶴宗秋は後ろを振り返りながら答える。


「今の所隊列も崩れていないようですな」


 隊列は案内である野口冬長の騎馬隊が先頭で、その次が俺たちの馬廻り。

 旗持が掲げる『片鷹羽片杏葉』の大旗を目印に、一万田隊、吉弘隊と続いている。

 豊後の一万田家郎党をベースに作られた一万田隊は来たばかりで士気に怪しい所がある。

 おまけに一万田家は、先代の一万田鑑相が粛清された事で没落しており、一万田家についていた郎党がかなり離れたと聞く。

 今回の上洛は、そんな一万田隊の訓練も兼ねている訳だ。


「むしろ、連れてきた女たちの方の隊列が乱れていないというのがなんと言いましょうか……」

「仕方あるまい。

 世が世なら、それ相応の出の女たちなのだからな」


 有明達の世話を名目に連れてきた二十人ばかりの御陣女郎達は、士気と忠誠維持の切り札みたいなものである。

 果心によって壊された歩き巫女に和泉国の人買い市場より奪ってきた女たちを加えたのだが、彼女たちは元は武家の出で、先の教興寺合戦で敗北した畠山軍の侍の家の出である。

 つまり、それ相応の教養がある上に馬に乗れたのだ。

 俺の隣りにいる有明の馬には明月が一緒に乗って万一を防いでいるが、これは明月が宗像家の姫として武家の教養を習得しているからであり、有明はそれを習得する前に苦界に堕ちたので乗馬が怪しいという理由である。

 この隊列、三好の騎馬隊と女たちを除けばぶっちゃけると、俺と大鶴宗秋と一万田鑑実と吉弘鎮理以外は馬に乗っていない。

 だからこそ、女たちが目立つこと。目立つ事。

 もちろん、昼間に馬に乗っている女たちは、夜には男の上に乗る訳で。

 こういう事をしておかないと、士気の怪しい連中は逃亡したり野盗に早変わりするからこその対策である。

 あと、俺が有明達を連れている事による嫉妬を避ける意味合いもある。

 大将が女に狂って行軍にまで女を連れてきているのに自分たちは何もないなんてのは、最高の嫉妬を生むからだ。

 有明が離れたがらない以上、これはそれ相応のコストと割り切って考えよう。


「けど、京に連れて行って、京女として箔をつけるって考えどこから出るのかしら?」


 俺の隣で馬上姿の有明は俺を見て苦笑する。

 立場上女たちの主人になった有明だが、遊郭でも面倒見がよく彼女たちを掌握したのは流石というかなんというか。

 そんな有明も明月や果心よろしく上洛だからと着飾ったスタイリッシュ痴女姿を惜しげもなく晒している。

 基本、西国の遊女のムーブメントは博多か堺から発信されるので、博多のトップだった有明の登場はこの畿内に『有明仕様』という遊女の新ブームを生み出すのだが、どうでもいい話だろう。


「そりゃ、俺はお前を博多一いや西国一の遊女に仕立て上げた男だぞ」

「忘れていたわ。

 八郎って侍やっているよりそっちのほうがまだ長いのに、すっかり立派なお侍様になって」

「お前も相変わらずいい女だよ。有明」

「どういたしまして」


 馬上での惚気合いに水を指したのは果心だった。

 俺と有明の言葉が止まった隙をついて、果心は兵たちのうわさ話を耳にする。


「そういえば、兵たちが噂しているそうですよ。

 『有明様が上洛なされたら、西国の遊女の一番が決まるのでは?』だそうで」


 ピクリと有明の眉が少し動いた。

 女というのは、自分の居場所にライバルが現れるのを本能的に嫌う。

 ましてや、堕ちて狂って救い出された場所とは言え、有明にとっては故郷みたいな場所である。

 負けたくないと思うのは当然なのかもしれない。


「へー。

 そりゃ、都ですから。

 さぞ有名な太夫様がいらっしゃるのでしょうね」


 全く興味がないふりをしながら有明が話を振ると、果心はあくまで噂話という体を装いながら俺に情報を渡す。

 これは煽っているのだろうな。


「京と堺に天下を二分する女あり。

 一人は一休法師を極楽に導いた堺の地獄太夫。

 もう一人は京の公卿・侍・僧を惑わす魔性の桜こと吉野太夫。

 先代の吉野太夫についてはこんな言葉が残っているそうですよ」


 誰が言ったかは知らないが、遊女として最高の評価を果心は口にする。

 それだけで、彼女が如何に魔性の女だったかわかろうというもの。


「影があるのが妖艶で、悪女ゆえに恋に溺れ、銭がかかるが絢爛で、男が一夜をと争うからこそ美しい。

 夜に花咲く吉野桜。

 その花見たさに、帝は吉野に逃れたとか」


 最高の褒め言葉だろう。

 吉野は桜の名所で、南朝の拠点があった場所だ。

 先代彼女の顧客に帝が居たという暗喩である。

 それを聞いた有明が明らかに不機嫌になる。

 たまらず俺が笑いだして、有明が俺につっかかってくれた。


「八郎!

 何がおかしいのよ!」


「そりゃそうさ。

 有明。

 お前自分がなんて呼ばれているか知らないだろう?」


「まぁ、博多ではそこそこ名前が通っていたぐらいは自負していますけどぉ」


 こういう時の褒め言葉は俺が言うより、他人が言う方が効果がある。

 という訳で、情報通なくノ一である果心の口から言ってもらうとしよう。


「果心。

 有明に有明がなんて呼ばれているか伝えてやってくれ」


「はい。

 博多の有明太夫と言えば、その一夜は一国の値段に値する、国取り太夫。

 それを得たのは門司の戦にて名を馳せて一国を切り取った大友家の御曹司。

 ついには三好の姫をもらうが、有明太夫の為にその姫を側室においたと評判で、吉野太夫と名が並ぶのはある意味当然かと」


 堺の地獄太夫ははるか昔に冥土に赴きその名前を継ぐ者はおらず、代々その名前が継がれて京に咲き誇る吉野太夫が畿内一の看板を持っていた。

 そこに、博多から国盗り太夫と噂される有明が乗り込む構図である。

 畿内の男たちが噂をしてもさもありなんという訳だ。


「そっかー。

 そうよね。

 八郎のおかげで私も名前が売れたけどぉ。

 うん。

 あはははは……」


 明らかに上機嫌なのを笑ってごまかす有明。

 それを横目に果心は焚きつけるのを忘れない。


「で、その西国一をお決めになられるのは八郎様しか居ないのですが、どうなさいますか?」


 既に有明は俺の妻な訳で客は取っていないし取らせるつもりもない。

 という事は、有明の味を知っていて、吉野太夫の味を食べ比べられるのは俺しか居ないという訳だ。


「お前らの相手だけで俺は死にそうなのに、まだ女を抱けというのか?」


「はい。

 何かをお決めになられるというのはそれだけで御身を守る十分な力になります。

 これから行かれる京という都は、そういう力すら使わねば落とされる魔都でございます。

 十二分にお気をつけを」


 果心の淡々とした声が凄みを増して俺の背筋を凍らせる。

 今から行く都は、公家や寺社や幕府が蠢く魑魅魍魎の都であるという事を俺は今更ながらに理解したのである。

 最も、その警告の後で場を和ませるのを忘れないあたりさすが果心というべきか。


「あと、吉野太夫をお呼びになる際は、私と明月は外れておきますので、どうぞ西国の太夫を心ゆくまでご賞味を」


 ごくりと喉が鳴る。

 考えてしまえば男として喉が鳴るのは当然な訳で、西国の一二を争う女たちを並べて一夜をともにするというのは浪漫と言わずしてなんと言うべきか。


「は・ち・ろ・う?」


 ジト目で睨む有明が面白くて笑ってしまう。

 ここまで有明は嫉妬が出せるようになってきた。

 それが可愛くて愛おしい。


「どうせその場にお前が居るだろうが。

 吉野太夫にくれてやる隙を与えずにお前の技を見せつけてやれ」


「はいはい。

 八郎仕込みの有明太夫の妙技を京女に見せつけてやりますとも。

 けど、そんな彼女って呼べるの?」


 我に返った有明が根本的な所を果心に尋ねる。

 この手の太夫クラスの遊女はコネが無ければ呼べず、そのコネを作るまでにとてつもない金と時間を使う。

 今回の上洛は精々一月ばかりだから、それで作るのは無理ではないだろうかと考えた所で果心が笑う。


「大丈夫です。

 私を誰だと思っているのですか?」


 うん。

 こいつ畿内トップクラスのくノ一で、同じくトップクラスの色事の達人だったね。

 そりゃ、そっち方面に強力なコネがあるし無ければ京で動けないのは分かっているが、珍しく見せた果心のミスに俺は遠慮なく攻撃をかける事にした。


「え?

 三好の姫じゃなかったのか?」


 閉口した果心を見て俺たちが大爆笑したのは言うまでもない。

 道中は三好家の歓待を受けながらたいしたトラブルもなく、俺たちは京に入った。

吉野太夫

 なお、歴史で有名な吉野太夫は安土桃山時代が初代とっなているが、八郎による風俗絡みの流行でそのあたりが早まったという設定。

 また太夫の名前がつく前から、吉野の名前の遊女がブランド化している設定。


つまり

 大友義鎮が相手をした吉野という遊女が先代。

 この話で出てくる予定の吉野太夫。

 その次代の吉野太夫が史実の初代吉野太夫。

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[良い点] 久々に一から読み返しておりますw [気になる点] お嬢様を読んで、こちらを読み返して、ふと思う。 元畠山の武家嫁が八郎の軍勢に慰安として入っていたとして、いくら八郎に統率力があっても大抵「…
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