#7
【作者より】
今回は人を殺める場面や死描写、グロ描写(?)といった残酷描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください!
その日の夜は満月――
黒背広で黒手袋をはめ、腰に拳銃が入ったポーチを提げた少し目つきが悪いホスト風の来栖と黒シャツにスラックス、ロングジャケット、手袋姿の隼人。
黒ずくめの彼らは路地裏で待ち合わせをし、徒歩で例のラーメン屋に到着した。
そこにはカウンター席に腰かけ、頭を抱えている男性がいるだけで他の従業員らしき人物は見当たらない。
暗殺者と闇医者の二人による暗殺計画の実施はこれからだ――
「隼人、静かに背後からいけ」
「背中の方からね。分かった」
隼人は静かに店内に入る。
入口はわざと少しだけ開けたままにして――
彼は男性に近づき、黙って背後から首の動脈に狙いを定めて注射を打とうとしていた。
持っている注射器は百円ショップで購入した小さめのものを使用しており、事前に睡眠導入剤二袋分を水で混ぜたものが入っている。
「おい! なんの用だ!?」
「すみませんねー。もしかして、このラーメン屋さんの店長さんですか?」
「ああ、そうだけどよ」
隼人はその男性に気づかれ、慌てて注射器をロングジャケットのポケットに隠し、気にせずに自ら話しかけた。
男性は店主で深刻な表情を浮かべている。
「ちょっと何かに悩んでいませんか?」
「あ、うん。分かるか?」
「はい。顔を見ればすぐに」
「君は探偵みたいだな」
「そう思いますか? 僕でよければお話を聞きますが?」
「いいのか?」
「ええ。かけて話しましょう」
「はい――」
来栖は外から二人のやり取りを見ていたが、やはり気づかれてしまっているのではないかと焦っていたやさき、カウンター席で隼人によるカウンセリングが始まった。
「なるほど……隼人らしい方法だな」
彼は入口から店内を見ており、聞こえてくる会話に耳を傾けながら入るタイミングを計る。
「――俺は従業員や常連客に酷いことをした! みんなに謝りたい……!」
「あなたは本当にそう思っていらっしゃるんですね?」
「ああ、そうだ」
「すみませんが、お手洗いをお借りしても?」
「トイレ? トイレは突き当たりを左だ」
「ありがとうございます」
隼人は立ち上がり、お手洗いに行くのを装い、ジャケットのポケットから睡眠導入剤入りの注射器を取り出し、来栖の指示通り無表情で背後から男性店主の首の動脈に狙いを定めた。
「え?」
注射器に入った睡眠導入剤はみるみるなくなり、彼の身体に入っていく。
「あれ? もう一回チクッとしますよー」
「――」
隼人は嘲笑うような口調で声をかけ、二本目の注射を打った。
男性店主がパタッとカウンターに伏せた状態になり、今度こそ意識が遠退いたのか静かになったことを確認できた瞬間――
入口が開き、コツンコツンと足音がする。
彼は後ろを振り向くと来栖が店内に入ってきた。
「店主は眠ったか?」
「一応な。もう一本いっとく?」
隼人は三本目の注射器を持っているが、一方の彼は冷静な声で「いや」と答える。
「これで十分だろう」
「……お前……」
彼はふと来栖の右手を見ると、拳銃が握られていた。
「計画の段階ではメスで殺るって言ってたよな!?」
「すまないが、俺の気が変わったというか……君は今までアドリブを貫いてもらったから」
「お前がいいなら、別に構わないけど……」
「それは冗談だ」
「なんで?」
「実は拳銃の安全装置は外していないし、発砲音が周囲に響き渡ったら確実にバレるから。俺は計画通りメスで殺めさせていただくよ」
来栖はやれやれと肩を竦めながら腰に巻かれたポーチに拳銃をしまい、背広のポケットから医療用メスを取り出す。
「ったく……こういう時に冗談言うなよ。話してる間にもう確実に睡眠導入剤が全身に入った頃だから今がちょうどいい機会だ。俺は外で待機してるからこの程度ならサクッと終わるだろ? 殺戮者くん、あとは頼んだぞ?」
「闇医者、上手くいけばな。彼には早急に逝っていただこう!」
隼人が外に出た瞬間、彼は狂いにはらんだ表情を浮かべ、背後から医療用メスを突きつけた。
男性店主の身体から出てくる血液が返り血となって来栖の頬や黒背広につく。
遠慮容赦なく医療用メスを振り回し、気にせずに血飛沫を浴びている彼に隼人は唖然としていた。
まるで人格が変わり、どこか狂ったように嗤いながら派手に人間を殺めているのだから――
荻野 隼人の幼馴染みである来栖 直はただ者ではなく、彼の通り名『月下の殺戮者』は伊達ではないと思っている。
意識はとうに消え失せ、冷たくなった亡骸へ変貌した男性店主を来栖は冷酷な視線で見下し、数回踏みつけた。
2025/11/05 本投稿
2025/11/10 修正、次回更新日時削除




