#5
【作者より】
今回は動物を狩る場面が中心です。
苦手な方はご注意ください。
少し暗くなりかけた時間帯に来栖は鞄と武器が入っているケースを片手に屋敷を外していた。
本日は彼の姉である和が経営しているバーに出向いているわけではなく、主である有紗の食材確保のためである。
今の来栖は富永家の執事ではない。
伊達メガネを外し、黒背広で黒手袋をはめた少し目つきが悪いホストだと勘違いしそうな美男子暗殺者としての完全犯罪の時間――
この時間帯は周辺住人や屋敷の関係者には彼の正体がバレないよう、細心の注意をして行動しなければならない中、スマートフォンのバイブレーションが鳴った。
電話の主は隼人からで来栖はスピーカー機能を設定する。
『なおちゃーん!』
「普通に呼べ!」
『ごめん、いきなり電話して。頼んでいた薬が届いたぞ』
「感謝する。俺は任務中(注・ウサギを使った料理を作るための食材確保)だから!」
『直、今日は暗殺者のお仕事か……』
「少しは、黙っていろ……!」
彼は会話しながら拳銃を構え、スコープを覗き込む。
「ちっ、逃げられたか……」
『あーあ……残念』
今回の有紗からのリクエストであるウサギを捕らえるのは難しい。
ピョンピョン飛び回るウサギに悪戦苦闘しつつも、来栖は根気強く狙いを定める。
「今だ!」
『え?』
パンッ! と銃声が辺り一帯に響き渡った。
『おおっ!? 上手くいった?』
「……かもしれない」
スマートフォンを置いたまま歩き出している彼の足音に気がついたスピーカー越しの隼人は『おいっ! スマホは置いてけぼりかよ!』と叫ぶ。
「俺が戻ってくるまで、実況中継並みにしゃべり倒すか下手でもいいから歌っておけ!」
『はいはい、分かったよ』
来栖の指示でご丁寧にイントロから歌い始める隼人。
その曲、俺が一番好きな曲……と思いながら狩ったウサギをポリ袋に入れ、鞄にしまい、後始末を施す。
『終わった?』
「終わった。上手く仕留められた」
『依頼人に連絡するのか?』
「通常は連絡してから報酬をいただくが、今回は無償だな」
『もしかして今回の依頼は身内とか?』
「その通り」
『まぁ、そういうこともあるよな。身内だと報酬は無償だったり、あったとしても少ないけどな』
「ああ。俺は屋敷の関係者に正体がバレたらアウトだから報酬は無償で慎重に行動している。任務完了したからスピーカー機能を解除する」
『はいよー』
来栖はスマートフォンのスピーカー設定を解除し、耳に当てた。
『いい屋敷の執事が暗殺者だけでも十分ヤバいだろう?』
「確かに。ところで、隼人」
『ん?』
「明日辺りにでも、いつものバーで――」
『あ、俺も今は外にいるからあとで都合がつく日は電話する』
「分かった。姉さんにバーを貸し切りにしてもらうから、分かり次第すぐに連絡してほしい」
『了解です!』
二人は電話を切り、彼は狩ったウサギが入った鞄と武器が入っているケースを持ち、その場をあとにした。
数日後、和のバーですべての計画が決まる――
2025/11/03 本投稿
2025/11/09 改訂(改稿)




