#3
【作者より】
今回は医療的(薬学的)な話をしている描写があります。
「はい。お待たせ」
和がカクテルの入ったグラスを来栖と隼人の前に置く。
その間、彼らは彼女からの情報を共有していた。
「へぇ……賞味期限切れの食品の再利用はテレビで報道されるちょっと前からで、数ヵ月くらい前から人手不足で衛生管理が行き届いていなくて、異物混入も同じくらいの時期から始まってただなんて……客入りもよくて、美味しかったけど、最近は相当劣悪になってたんだな。和さん、ありがとうございます」
「いいって。情報料は直からしっかりもらうから!」
「分かった。カクテル代と一緒に支払うよ。姉さん、いただきます」
「流石、なおちゃん!」
「その言い方、止めろ。カクテル代くらいは自分で支払え!」
「ちぇーっ……」
「隼人くん、もう飲んじゃったの? 直はまだ一口も飲んでないのに……」
グラスに同じ量が注がれていたはずのカクテル。
隼人はまだ一口も飲まれていない来栖のカクテルを横目にすでに空になっている自分のグラスを眺めていた。
「俺が飲む前に言っておく。この前、行ったラーメン屋の店主を暗殺しようと思う」
「さらっとそんなことが言えるのはお前だけだよ」
彼は「それはどうだろうか」とおどけながら優雅にカクテルを一口飲む。
「隼人、一つお願いがある」
「ん?」
「俺と手を組まないか?」
突然の彼からの誘いで隼人は「はぁ!?」とすっとんきょうな声をあげた。
彼は今までの会話からすぐに状況を汲み取る。
腕の立つ暗殺者である来栖となら手を組んでも差し支えはないと――
「……同意するよ。さっき電話してくれた時からずっと気になってたけど、どういう手段で進めるんだ?」
「ざっくりだが、俺が――」
「うんうん。なるほど。あ、それ俺もその流れは一緒だな」
彼らは例のラーメン屋の店主を暗殺することに決め、手段はほぼ二人とも同じのようだ。
「――君には薬も提供してもらいたい」
「べ、別にいいけど……その薬は何に使うんだ?」
「その薬は粉にして注射器に入れておいてほしい。あとから水を入れたとしてもすぐに溶けるだろうし……」
「あー……それだったら睡眠導入剤の方がいいんじゃないのか?」
「睡眠導入剤?」
「市販薬としてでも販売しているけどさ」
「ならば、それで」
「いや。市販薬は処方薬と同等の効果があるものがあれば、そうでもないものもある。あとは種類にもよるけど、唾液で溶けるものもあるし。それは錠剤しか存在しないから今回は使わない方がいいと思う。錠剤を使うのならば、きれいにすりつぶすのは難しいぞ?」
隼人は薬学の知識をスラスラと語る。
来栖はグラスに入っているカクテルを再び飲み、「へぇ……」と相槌を打った。
「薬の種類は色々あるんだな。やはり隼人に相談してよかった」
「じゃあ、裏ルートで手配しておくか?」
「是非、お願いする」
「了解!」
情報屋である和は二人の会話を聞きながらシェイカーを洗浄している。
「隼人くん、お水飲む?」
「すみません。カクテルを先に飲み干しちゃったので……」
「はい、どうぞ。お水は無料だよ」
「ありがとうございます」
彼女は隼人が使っていた空のグラスを下げ、コップにミネラルウォーターを注いだが、すでに半分以上飲みきっていた。
「作戦会議は順調そう?」
「俺たち以外の客がいないせいか順調そうだ。隼人、そろそろお開きにするか?」
「うん。薬が手配できたら電話するわー」
「分かった」
彼らは会計を済ませ、和のバーをあとにした。
2025/11/01 本投稿




