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#1

※拙作は短編小説『異物混入のラーメン屋(https://book1.adouzi.eu.org/n3772lb/)』の続編です。先にご覧いただけると幸いです。

 この話は賞味期限切れ食材の使用や異物混入騒動が起こったラーメン屋の報道が出回った後の話――


 あれから数日が経過し、世間はもちろん、富永家の屋敷でも何事もなく平穏な日々を過ごしていた。

 その執事である来栖(くるす) (なお)は自室でスマートフォンの電話アプリを開き、ある人物に電話をかける。


『はい。荻野(おぎの)です』


 電話をかけたのは彼の幼なじみである荻野 隼人(はやと)は落ち着いた声で電話を出た。


「もしもし、隼人?」

『珍しいな。直から電話してくるなんて……』

「唐突ですまないが……今日の夜、時間取れるか?」

『なんかあったのか?』

「ちょっと悪知恵を思いついた」

流石(さすが)、暗殺者執事だな。でも奇遇だな』

「何が? 俺、まだ何も話していないんだが……闇医者で探偵の君こそ何かあるんだろう?」

『よく分かったな。場所はいつものバーでいいか?』

「俺は構わないが」

『じゃあ、決まりだな!』

「執務が終わり次第、そちらに向かう。ではまた」

『ん。気をつけてこいよ!』

「分かった」


 彼らはほぼ同時に通話を切る。


 荻野 隼人と来栖 直――

 二人は幼なじみ。

 表社会では探偵事務所に勤務する探偵と由緒正しき社長令嬢に仕える執事。

 しかし、裏社会では闇医者と暗殺者という顔も持つ。


「今回は俺から切り出したのだからなるべく早めに到着しておきたいところだが……(あるじ)が本日の晩餐(ディナー)で物騒な食事を要求されたら厄介だな……」


 来栖は「物騒な食事?」と腕を組み、首を傾げた。


「ほう……これだったら晩餐(ディナー)としてはちょうどいいではないか……」


 彼は主である富永(とみなが) 有紗(ありさ)晩餐(ディナー)について何か企てていたが、今はそのことは関係ないと首を横にふる。


「いや。まだ隼人には何も伝えていないし、そんなにすぐ簡単にできるわけではないな。晩餐(アレ)の件は計画後にするか……」


 来栖がそう呟いたと同時に彼の部屋の扉が叩かれる音がし、「はい」と返事をした。


「来栖さーん!」

「ど、どうかしたのですか!?」


 彼は使用人の突然の訪問に驚くが、この屋敷では使用人が執事の部屋まで押しかけてくるのは珍しくない。

 特に来栖の場合は有紗が物騒な食事を食べたいと言われた時はその食材確保のため、屋敷から外さざるを得ないことが多く、使用人から確認したいことがあっても残念ながら不在ということもある。


「お嬢様が本日の晩餐(ディナー)はウサギが食べたいと(おっしゃ)っているのですが……」

「本日は私が急用がありまして……誠に申し訳ございませんが、お嬢様のご要望にお答えできないとお伝えください」

「そうですか……」

「ええ。今から代わりとなるものをご用意いたしますので、晩餐(ディナー)の提供は頼みましたよ?」

「はーい。分かりました。失礼しました」


 使用人が部屋から出たあと、彼は本日の晩餐(ディナー)の準備をすべく、キッチンに向かった。



 †



 富永 有紗は使用人を通じてウサギを使った料理が食べたいと申し出たが、来栖から今日は要望に答えられないと告げられると「えーっ!?」と声をあげる。


「今日はウサギが食べたいのに!」

「仕方ないですよ。来栖さんだってご予定があるんですから……」

「そうですけれども……」


 有紗は由緒正しき富永家の軌道に乗っている日用品のプライベートブランド「トーミー」の社長令嬢である。

 彼女は普通の食事の他に動物や文房具まであらゆるものを食べてしまうとんでもない悪食なので不満そうにするのも仕方がない。


「今日は来栖さんが代わりのものを準備してくれていますので、楽しみに待っていましょう。ねっ?」

「確かにそうね……彼が作る料理はなんでも美味しいから期待しちゃおうかしら」

「その方がいいですね」

「キッチンからいい音がするわ。今日の晩餐(ディナー)は何かなー」


 有紗は先ほどの不機嫌な表情からキッチンから聞こえる調理をしている音を聞くとご機嫌になったため、使用人たちはほっとした。


「お嬢様の機嫌がよくなってよかった……」

「お嬢様は単純ですね」

「そうだね。今日の調理当番は来栖さんでよかった……」

「来栖さんの調理の手際よさは誰にも真似できないと思います」

「ところで、来栖さんって……」

「「プライベートが謎じゃない?(ですか?)」」


 彼らが彼の謎に満ちたプライベートに興味を示している時、「何か仰いました?」と機嫌悪そうに問いかける。


「く、来栖さんっ!?」

「い、いえ、何も!」


 使用人たちは怯えきった表情を浮かべている中、来栖は表情を変えずに「……では……」と切り返した。


「今日の晩餐(ディナー)の準備が整ったので、適度な時間で提供と後片付けの方をお願いいたします。お嬢様と屋敷のことは頼みましたよ?」

「「はい!」」

「それと、私のプライベートに関してはシークレットでお願いいたします」


 その時の彼は執事としての顔ではなく、暗殺者の顔になっていた。

2025/10/29 本投稿

2025/11/01 誤字修正

2025/11/06 出だしの「#1」を削除

2025/11/09 改訂(改稿)

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― 新着の感想 ―
ウサギさんはあまり食いでがないと何かで見たなあ。 後、耳の部分が臭いらしい(・_・;) 象さんの鼻も臭うという話だよね。
クルスくん、1話からもう暗殺者の顔に! あ、今回はお嬢様のリクエストはわりと普通ぽいウサギでしたね〜♪
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