91話
今年初めての投稿になります。
やはり、バチが当たったか。
突き放すような真似をしておいて、愛称呼びにしたからか。リアにはごめんと言っておかなければな。そんなことを考えながら、ベッドに潜り込む。
あー、ダルいぜ。熱が上がってきやがったな。中にいる矢恵さんも苦しいだろうか。ふと、そんなことが気にかかった。まあ、今はとにかく休まないとな。瞼を閉じたのだった。
ケホケホと咳が出る。間違いなく風邪だな。ベッドの側にはリアナが控えてくれていた。
「殿下、何か召し上がりたい物はありますか?」
「……水がほしい」
「わかりました、ちょっと待ってくださいね」
リアナは椅子から立ち上がると、テーブルに近づく。置いてある水差しからコップに水を注いだ。それを持って、俺の側に戻ってくる。
「ゆっくりでいいですから、飲んでください。起き上がれますか?」
「ん」
コップをサイドテーブルに置く。リアナは起き上がるのを助けてくれた。幾つかのクッションを積み上げて凭れ掛かれるようにする。俺はクッションに背中を預けるようにした上でコップを受け取った。ゆっくりと少しずつ口に含んだ。
冷たくも甘露のように感じられた。
「ふう、ご馳走さん」
「殿下、ではお休みになりますか?」
「ああ、そうするよ」
コップを返し、俺はクッションに体を沈めた。まだ、ダルいな。リアナは心配そうにしながらも俺の額や顔を水で濡らしたタオルで拭いてくれる。その後、俺がウトウトし始めたのに気がついたらしい。クッションを元の位置に戻してから、体を横たえる手助けをした。
「……しばらくは眠ってくださいね」
「そうする」
「殿下はいつも、頑張っておられたのですし。たまには休む事も大事ですよ」
俺は確かにと頷いた。瞼を閉じたら、眠気がゆるゆるとやってくる。しばらくは寝たのだった。
3日程が経ち、風邪は全快した。リアが様子を見に来てくれた。
「エリック様、風邪をひいたと聞きました。お見舞いもせずにごめんなさい」
「いや、俺はそんなに気にしてないから。謝罪の必要はないよ」
「いいえ、以前にわたくしが熱を出した時はお世話になりましたから。だというのに、お見舞いにも行かなかったのはとんだ失態でしたわ」
俺は苦笑いしながら、リアの頭を軽く撫でた。
「本当に気にしなくっていいって。もう、俺は元気だから」
「それはそうですけど」
「さ、今日も課題やらあるんだろ。頑張ろうな」
そう言うと、リアはしかめっ面から眉を下げた困り顔になった。
「……仕方ありませんね。これ以上は、言わないでおきますわ」
「ああ、じゃあ。神殿まで一緒に行こう」
「はい」
俺が手を差し出す。リアは自身のそれを乗せる。ギュッと握り、自室を出た。
神殿に着くと、久しぶりに仙人爺さんこと、神官長が出てくる。去年よりも何か、背が縮んだような気がするぞ。失礼な事を考えながらも挨拶をした。
「久しぶりですね、神官長」
「ええ、お久しぶりですな。エリック殿下」
「今日はシェリア嬢も連れて来ました。また、魔術の鍛錬をお願いしたいのですが」
「わかりました、では。少々、お待ち下さい」
爺さんはそう言って、礼拝堂の奥にある扉に向かう。行ってしまうと、俺はリアと一緒に待った。
しばらくしてから、爺さんが戻ってきた。手には魔導書や杖が握られている。どうやら、本当に魔術の鍛錬もとい、レッスンをするようだ。
「お待たせ致しました。殿下とシェリア様の分の杖と魔導書を持ってきましたぞ」
「ありがとうございます」
「シェリア様には、神聖魔法の上級の技を、殿下には光魔法の上級の技をお教えしましょう」
爺さんはそう告げてから、シェリアと俺に杖や魔導書を手渡す。受け取ったら、魔導書のあるページを開くように言われた。シェリアは神聖魔法の項、俺は光魔法の項をそれぞれ開いた。
「まず、シェリア様に教えますのは。月の聖女が使う技で、「光の息吹」と呼ばれていますな。呪文は「神よ、我に加護を」と詠唱します」
「成程、試してみます」
「この魔法はアンデッドや闇属性の魔物に効果があります。殿下に教えるのは、「光の矢」ですな。呪文は「彼の者を射抜かん」になります」
「わかりました、やってみます」
リアと俺が頷くと、爺さんは何歩か後ずさる。まずはリアからだ。
「……では、行きますわ」
「はい」
「神よ、我に加護を。光の息吹!」
リアが杖を頭上に掲げた。呪文を詠唱した途端に、眩い銀や白の光が礼拝堂中に満ちる。俺はあまりの眩しさに瞼を閉じた。
「ふむ、初めてにしては。上出来ですな」
「そうですか?」
「はい、やはりお小さい頃から鍛錬を続けた甲斐がありましたな」
爺さんにしては、上々の評価だ。光が無くなり、俺が瞼を開けたらリアはべた褒めされている。ちょっと悔しくはなったが。平常心を忘れないようにしながら、杖を頭上に掲げた。
「では、行きます!」
「ええ、この老いぼれにも見せてくだされ」
「彼の者を射抜かん!光の矢!!」
そう呪文を詠唱したら、光の玉ができる。それから、大量の矢が礼拝堂の石床に降り注いだ。しばらくは続いた。
少し経ってから、光の玉や矢は無くなる。ふうと息をついた。
「ふむ、殿下もなかなかにやりますな。将来が楽しみになってきましたぞ」
「はあ」
「では、次に行きましょうかな」
俺が頷いたら、爺さんはレッスンを続けた。しばらくは礼拝堂で上級魔法を幾つか習うのだった。




