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66話

 俺達はイェルクの森の最深部まで後少しの所に来た。


 シェリアは母君のシンディー様に手を繋いでもらいながら進んでいる。俺は親父――王の後ろを歩いていた。こうして見たら親父の背中は広くて逞しい。普段はお袋に主導権を握られているから余計にだが。

 先頭にはジュリアスとエルがいる。次にフィーラ公爵と親父、すぐ後ろに俺やラウル、トーマス兄貴と続いた。シンディー様とシェリアが次でオズワルド、カーティスにウィリー、クォンという順で進む。


「……最深部にはブリザードキメラとかいう魔獣がいるはずだ。皆、気をつけろよ」


「はい。わかりました。父上」


 そう言ったのは親父――アルフレッド王だ。エルとジュリアス、クォンの表情が変わる。俺やラウル達もだが。


「エリック。お前は俺の後ろにいろ。ある程度は助けてやるよ」


「あんがとよ。ラウル」


「……良いか。シェリア殿をあんまり泣かせるな。もし泣かせたらしばくから。覚悟しておけ」


 俺は頷いた。シェリアを守ると約束したんだ。ラウルの言う事はもっともだった。


「んじゃ、行くぞ」


「わかった」


 ラウルに促されて俺は再び歩き出す。シンディー様やフィーラ公爵がそれを微笑ましげに見ていたのには気づかなかった。


 最深部に行く前に夕方になっていた。今日はここまでだとジュリアスが言う。皆で野宿の準備をする事になる。シンディー様やシェリアには手早く組み立てたテントの中に入ってもらった。男ばかりで焚き火や夕飯の準備をする。


「……エリック様。わたくしも手伝いますわ」


「シェリアは休んでろ。魔力や体力をかなり消耗しているのに」


「これくらいは平気です。母様、良いですわよね」


 シェリアがシンディー様を振り返った。だが、シンディー様は首を横に振る。


「シェリア。殿下のおっしゃる通りよ。今日はもう休みなさい」


「……何故ですか?」


「お前は。自覚がないのね。顔色が悪いわ。それについ数日前まで寝込んでいたのよ。無理はしない方が身のためだわ」


 シンディー様が厳しく言い募る。シェリアは拗ねたような表情になった。


「わたくしはエリック様のお側にいたいのです。母様」


「……シェリア。殿下を困らせては駄目よ。我がままは言わないの」


「母様の意地悪。ただ、エリック様のお手伝いをしたいだけなのに」


 シェリアがぷうと頬を膨らませる。意外な光景に俺は目を開いた。シンディー様は眉を逆立てた。


「……シェリア。母様の言う事が聞けませんか。殿下のお側にいたいのなら。まずはちゃんと休みなさい!」


「……わかりました」


 シェリアは項垂れながらもシンディー様の言う事に従う。俺は親父の元に急いで向かった。


「……ちょっと良いでしょうか。父上!」


「あ。エリック。どうした?」


「いえ。シェリアが心配なので。一緒にいてあげてもいいですか?」


 俺が慌てて言うと親父は苦笑する。ぽんと頭を撫でられた。


「……わかった。シェリア殿の側にいてやれ。あの子もお前がいた方が安心するだろうから」


「ありがとうございます」


「ああ。さ、早く行ってあげなさい」


 頷くと親父は頭から手を離した。俺は一礼すると走ってシェリアの元に戻った。


「……シェリア!」


「……エリック様?」


 息を切らせながら呼びかける。シェリアは不思議そうに振り向く。


「……あの。ち、父上からは許可はもらったんだ。だから、一晩はシェリアの側にいるよ」


「え。わたくしの側にですか?」


「うん。その方が君も安心するだろうからって」


「……ありがとうございます。エリック様」


「シェリア。じゃあ、テントに行こう」


 俺はシェリアの手を握ってテントへと歩いた。もう日が沈んで少しは経っている。代わりに満月が山の端から顔を覗かせていた。


「……エリック様。今日はわたくしが寝るまでは手を握っていてください」


「わかった。そうするよ」


 頷くとシェリアは照れながらも笑った。その表情が可愛らしいのでドキリとする。けど咳払いをして少し速めに歩いた。テントにたどり着く。


「では。わたくし、寝袋を出してきます」


「うん。わかったよ」


 シェリアがテントにある寝袋を出しに入った。少しの間待った。するとシェリアは急いで俺の待つ外にやってくる。


「……できましたわ。エリック様も入ってください」


「……ああ。そんなに慌てなくてもいいのに」


 言いながらも俺は一緒にテントの中に入った。もそもそとシェリアが寝袋に潜り込んだ。俺も毛布を2枚程持ってきてくるまる。


「じゃあ。お休みなさい」


「お休み」


 そう言うとシェリアの右手を握ってやった。安心したらしくすぐに寝息が聞こえてくる。やっぱりシンディー様の見立ては正しかった。流石に母君だな。そう思いながらも横になった。

 満月の明かりがテントの中も柔らかに照らす。俺はため息をついた。どうしたもんかな。7歳で良かったと正直言って思う。だってさ、好きな子が目の前にいて何も思わない方がおかしいだろ。俺だって仮にも男だぞ。やっぱ、シェリアを抱きしめたい。うんで柔らかな髪を触りたい。

 ……煩悩よ、収まれー。アホな事を考えるんじゃなかった。仕方ないので目を閉じた。そのまま眠りにいつの間にか落ちていた。

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