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54話

  俺はシェリアちゃんと共に剣術の稽古に励む日々を送った。


  陽月華や陽光剣の技を繰り出す為に呪文が必要だ。シェリアちゃんが太陽神から教えられたという呪文を爺さんと俺に教えてくれた。確か、陽月華は「美しき炎よ。かの者を滅せよ」だったか。


「……陽光剣は「我ら、光に選ばれし者。かの者に救いと加護を」というらしいです」


「ふうん。そういう呪文だったんだな」


  俺が言うとシェリアちゃんは頷いた。爺さんもほうと片眉を上げる。


「成る程。シェリア様。教えてくださりありがとうございます」


「いえ。神官長様。お礼には及びませんわ」


  シェリアちゃんは首を横に振りながら言う。俺と爺さんは苦笑した。陽光剣の発現の方法はこの子にとってはかなりハードルが高いはずなんだがな。そう思いながらも爺さんの私室の天井をふと見上げた。


「……シェリアちゃん。とりあえず、剣術の稽古に行こう」


「そうでしたね。では神官長様。失礼します」


「ええ。頑張ってください」


  爺さんが優しく言うとシェリアちゃんはお辞儀をする。俺も同じようにしてからウィリアムス師の元に向かうのだった。


  その後、俺はシェリアちゃんと二人で剣術の稽古に臨んだ。珍しくラウルやトーマス兄貴、オズワルドにウィル、カーティスの五人もいる。


「……叔父上。それに皆もどうしたんだ?」


  俺が問いかけるとラウルが代表して答えた。


「……殿下。私や皆ももっと精進しないといけないと思いまして。それで来ました」


「そうか。じゃあ、これからよろしくな」


「ええ。我らも負けてはいられませんし」


  俺は頷いた。その通りだったからだ。ラウルに握り拳を差し出す。一瞬だけ戸惑っていたが。すぐに意味がわかったらしい。同じように握り拳を作ってコツンと軽く当ててきた。いわゆるハイタッチの代わりだ。二人でにっと笑い合ったのだった。


  わたくしはちょっとラウル様とエリック様が羨ましくなった。殿方同士はいいですわね。すぐに打ち解けられて。女同士はそうもいきませんのにね。心中で愚痴を言いながらも目の前にいるウィリアムス先生に頭を下げた。


「……先生。今日からよろしくお願いします」


「いえ。シェリア様。私の方こそよろしくお願いします」


  ウィリアムス先生は丁寧に挨拶をしてくださった。騎士団団長とはいえ、とても紳士的で礼儀正しいお方だ。エリック様が師匠として尊敬しているのがよくわかる。

 

「先生。剣術の基本は何でしょう。もしよろしければ、教えてくださいまし」


「……基本ですか。やはり体力作りでしょうな」


「そうですか。走り込みや準備体操などでしょうか?」


「それもあります。後は体術に素振りも入ります」


「成る程。でしたらわたくしも走り込みをまずはやってみます!」


  ウィリアムス先生はわたくしが言うと目を見開いた。驚いているようだ。どうしたのだろうと思うと先生に止められた。


「……シェリア様。男と同じ量をこなすのは女性にとっては負担になります。それを忘れないでいただきたいのですが」


「え。そうなのですか。でしたらどうしましょう」


「私が副騎士団長と相談してみましょう。副騎士団長は女性騎士ですからね。シェリア様向けの特訓内容を考えてくれるでしょう」


「……わかりました。でしたらお願いします」


「ええ。月光剣を扱えるようになるためにも必要ですからね」


  わたくしが頷くと先生も同意してくれた。その後、走り込みや準備体操、体術を基本にやらせてもらったが。思った以上にきつい。エリック様達は訓練場を十周走り込みして終わったらすぐに腹筋、腕立て伏せ、背筋、スクワットを各三十回ずつこなしていた。それらを済ませてから体術を教えてもらうらしい。わたくしは走り込みを五周しただけで息が上がってしまう。先生はまず、殿方達と同じ量をこなす必要はない事、わたくしなりに鍛えればいいと言ってくれた。確かにと思う。


「シェリア様。まずは腹筋を十五回やってみましょう。次に腕立て伏せです」


「わかりました」


  頷いて見よう見まねで腹筋をやってみる。先生は適度に指導をしてくれた。


「……エリック殿下を呼んできます。少しお待ちください」


「……え。先生?」


「腹筋をやる時は誰かがいた方がいいでしょうから。エリック殿下だったら適任です」


  そう言って先生はエリック様の所に行く。わたくしは落ち着かない。少し経ってエリック様がこちらにやってくる。


「……シェリアちゃん。腹筋をやるって師匠から聞いたんだけど」


「あ。はい。そうですけど」


「師匠は側に誰かがいた方がいいっておっしゃるんでな。俺で良かったらいるけど。いいか?」


「ええ。お願いします」


「んじゃ。早速やるか」


  エリック様はそう言ってわたくしの両足首を押さえにかかる。先生に両腕を後頭部に持っていくように言われた。上半身を軽く曲げた足の方まで上げた。けど思ったようにいかない。半分も曲げられないのだ。


「……うう。できません」


「最初はそんなもんだよ。上半身を上げる時に息を吸って。足の所まで上げきったら吐いて。ゆっくりと地面に下ろしたらいい」


「わかりました」


  頷いてもう一度やってみる。上半身を上げる時にすうっと息を吸った。限界寸前まで上げたら吐く。そうしながら上半身を地面に戻す。それを何度か繰り返したが。汗がじわっと吹き出してきたのだった。

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