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番外編 エリック王子達の初日の出

  俺が前世の記憶を思い出してから3年目の新年を迎えた。


  日本でいう大晦日の夜に俺はシェリアちゃんやラウル、トーマス兄貴、オズワルド、カーティス、ウィリー、リアナの娘で乳姉妹であるアンジュの8人で王宮でも見晴らしの良い南の塔に行った。シェリアちゃんだけ女の子1人だと心細いかと思ってアンジュを誘ったのだが。子供だけだと危ないというのもありオズワルドの父親であるウィリアムス師と同じく兄のジュリアス、何故か俺の親父こと陛下とお袋こと王妃も一緒だ。

  王妃や陛下も一緒なのでオズワルドやアンジュは緊張している。が、陛下と王妃は気にせず、いちゃいちゃしていた。

  王妃はまだ23歳と若く金の髪と青い瞳の清楚な雰囲気の美女だ。陛下も赤茶の髪と琥珀の瞳の美丈夫である。陛下はちなみに26歳だった。


  「……エリック。南の塔に皆で行きたいと言っていたけど。何故なのか教えてくれない?」


  王妃が訊いてくる。


「俺の元々住んでいたニホンでは新年が明けたら初日の出を見るという風習があるんです。お正月と言って新年を祝うんですが。そのお正月の一番最初の日の明け方に日の出を見ると縁起が良いと聞きました」


「まあ。そうなの。初日の出ねえ。おめでたい感じの風習だわ」


  王妃は何やら楽しげに言う。俺としてはシェリアちゃんと2人で行きたかったんだが。何でラウル達(アンジュは除く)がぞろぞろ付いてくるんだろう。大人は仕方ないと思えるけども。


「……エリック。とりあえず、塔の屋上まで行くぞ」


「わかりました。父上」


  陛下は歩き出そうとするが。何かを思い出したのか俺に振り返る。


「どうかしましたか?」


「いや。お前だけだとこの階段はきついだろう。手を繋ごうと思ってな」


「……ありがとうございます」


  俺はそっと陛下の手のひらに自分の手を乗せた。ぐっと握られた。シェリアちゃんはウィリアムス師と手を繋ぎ、アンジュはジュリアスと繋いでいる。女の子は良いとして俺も繋ぐのは何故だろう。


「……エリック。お前はあのオズ君よりは背がまだ小柄だしな。今は我慢してくれ」


「わかりました」


  とりあえず頷くと陛下は歩き出す。他のメンバーも同様だ。そうして塔の屋上を目指したのだった。



  俺は階段で上がる途中で息が上がってしまう。親父とウィリアムス師、ジュリアスは平気そうだ。お袋も少しきつそうだが。頑張って付いてきていた。


「……エリック。お前、息が上がっているな。ちょっと休憩するか?」


「はあ、はあ。平気です……」


「いや。平気そうではないぞ。仕方ない。皆。ちょっと止まってくれ。休憩だ」


  親父が言うとウィリアムス師やジュリアスが真っ先に足を止めた。シェリアちゃんとアンジュもだが。お袋やラウル達もどうしたと言わんばかりに足を止める。


「……エリック。やっぱりこんな寒い中、出歩かなくても良かったのではないの。あなたやシェリアちゃん達が風邪をひいてしまわないか心配だわ」


「大丈夫です。俺や他の子達も鍛えていますから」


「そう。ならとやかく言わないわ。けど体調が悪くなったらすぐに言うのよ?」


「わかりました」


「じゃあ。陛下。今、休憩していたら夜明けがきてしまいます。行きましょう」


  お袋が言うと親父もそうだなと頷いた。そうして休憩を終えて再び屋上を目指したのだった。


  屋上に到着するとウィリアムス師が転移魔法で毛布とピクニック用のシートを用意してくれた。なんといっても真冬だ。ジュリアスも人数分の温石(日本でいうカイロ)を用意していた。温石は文字通り人の拳くらいの石を火の中に入れて温めたのを言う。そうして温まった石を紙と布で包んで使うのだ。


「……殿下もどうぞ」


「ありがとよ」


  ジュリアスが手渡してくれた温石をズボンのポケットに入れる。そうするとじんわりとお腹の辺りが暖かい。俺がシートに座り直すと親父がちょいちょいと手招きをした。何事かと思いつつも行くと親父は膝の上を手で示した。


「……父上?」


「シートの上で毛布にくるまっているとはいえ、寒いだろう。俺の膝の上に乗れ。そうしておいたら暖かいだろう」


「父上。俺は赤子じゃないですよ」


「それでもお前はまだ6歳だろう。風邪をひくよりはましだ」


「……わかりました。じゃあ、失礼します」


  仕方なく俺は親父の膝の上に乗った。骨ぼったくてゴツゴツした感じだが。それでもシートの上にそのままいるよりかは暖かい。

  親父はどう思ったのか俺の分の毛布を取るようにジュリアスに言う。毛布をジュリアスが取り、持ってくると受け取った。それを何と俺の体に巻きつけた。


「……こうしておいたら風邪はひかんだろう。そうだな。ジュリアス、ウィリアムス殿に言ってシェリアちゃんとアンジュの2人を連れて来なさい」


「……かしこまりました」


  ジュリアスはウィリアムス師の方に行く。少ししてシェリアちゃんとアンジュが連れてこられた。


「シェリアちゃんは王妃の膝の上にでも乗せて貰いなさい。アンジュは。ジュリアスの膝の上に乗せてもらうのはどうだ?」


「……わたくしはいいですが。アンジュさんが殿方の膝の上に乗るのはちょっと……」


「まあ、そうだな。だが風邪をひくよりはましだろう。ジュリアス。アンジュを膝の上に乗せてやってくれ」


「……わかりました。アンジュちゃん。いいか?」


「……あたしが乗ったら。ご迷惑では……」


  アンジュは緊張しきりで不安そうに言う。ジュリアスは苦笑しつつも言った。


「いいんだよ。それに陛下の仰せだしな」


「……わかりました。ではお願いします」


  ジュリアスはそのままアンジュを軽々と抱っこする。そういや、ジュリアスはアンジュを可愛がっていた。妹がいないからアンジュをそのように見ているようだった。けどアンジュは照れていた。


  その後、初日の出が見られるようになるまでは俺とシェリアちゃん、アンジュは大人達の膝の上に乗って温めてもらっていた。けどトーマス兄貴とラウル、ウィリー、カーティス、オズワルドの5人は背中をくっつけあって寒さをしのいでいた。いわゆるおしくらまんじゅうだ。


  朝方になりお日様が出てくる。やっと初日の出だ。俺は親父に抱っこしてもらいながらそれをじっと見ていた。


「……こうやって初日の出を見るというのもいいな。清々しい気分になる」


「そうでしょうね。俺もよく初日の出を見に行ったものです」


「そうか。矢恵殿は初日の出をこうやって見に行っていたのか」


  親父が感慨深げに呟いた。シェリアちゃんはお袋と手を繋ぎながら、アンジュはジュリアスに抱っこされながら初日の出を見ている。ウィリアムス師とオズワルド、ラウルやトーマス兄貴達も感慨深そうに見ていた。空はオレンジと黄色、藍色と不思議な色合いだ。この三色がグラデーションみたいで綺麗である。俺は親父に降ろしてくれるように言う。親父はすんなりと降ろしてくれた。俺はシェリアちゃんの方に行く。


「シェリアちゃん」


  声をかけながら近づくとお袋とシェリアちゃんがこちらを見た。お袋は「行きなさい」と言って手を離した。シェリアちゃんはすみませんと言って俺の方に行く。


「……シェリアちゃん。あけましておめでとう。これからもよろしくな」


「……はい。あけましておめでとうございます。わたくしこそよろしくお願いします」


  俺が新年の挨拶を言うとシェリアちゃんも答えてくれた。はにかみながらも笑いながらだが。俺はシェリアちゃんに手を差し出した。彼女は驚きながらも俺の手の上に手を乗せてくれた。


「……エリック様?」


「いつか別れの時は来るけど。俺は君を守るよ」


「……エリック様。わたくしもあなたの事は忘れませんわ」


  シェリアちゃんはそう言ってにっこりと笑う。俺はぎゅっと彼女の手を握る。シェリアちゃんも握り返してくれた。朝日が昇ってくる中で俺とシェリアちゃんは固い握手を交わしたのだった。

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