113話
昼食を済ませ、オズワルドと2人で先に教室に戻った。
ラウルは後で行くからと言っていたが。ちょっと、心配ではある。
「エリック様、ラウル様の事が気になりますか?」
「うーむ、若干心配ではあるな」
「確かに、朝方の件もありますしね」
オズワルドが頷く。王宮に人型の魔物が出没した件だ。学園内には出る事はまあ、無いとは思うが。用心するに越した事はない。
「……オズ、俺らも注意しないとな」
「そうですね、僕も剣や魔術の鍛錬にもっと励まないと」
「無理は禁物だがな」
「はい、エリック様も程々にお願いしますよ」
「わあってるよ、言ってみただけだ」
ちょっと、顔をしかめたが。オズワルドは苦笑いしながら、先を歩く。後を付いて行った。
6時限目の授業も終わり、放課後になる。オズワルドやクォンの2人と合流した。3人で停車場まで向かう。
「あー、やっと放課後か。かったりいな」
「お疲れさん、クォン」
「おうよ、王子もな」
クォンがニカッと笑う。オズワルドも笑いながら、頷く。
「エリック様、クォンさんにも朝の件について訊いてみましょう」
「そうだな、分かった」
頷き、速歩きで急いだ。御者が気づいてタラップを用意したりと手早く、準備をする。完了するとクォンが御者に礼を述べた。すると、御者は笑いながら軽くお辞儀をしてくれる。オズワルドや俺も同じようにした。嬉しそうにしながらも扉を開けてくれる。最初にクォン、次にオズワルド、一番後に俺が乗り込む。やはり、2人に手伝われながらだが。扉が閉められ、クォンが馬車の覗き窓の方を右手で軽く鳴らす。少し経ってから、馬車がゆっくりと動き出した。俺は素早く、防音と侵入者避けの結界を張る。
「クォン、オズ。結界は張っておいたぞ」
「わざわざ、悪いな。けど、内密の話ではあるから助かる」
「ですね、クォンさん」
オズワルドが頷く。おもむろに俺から話を切り出した。
「そいでだな、クォン。ラウルが教えてくれた朝方の件なんだが、何か聞いていないか?」
「……実は今日に中等部の同級生や上級生にそれとなく、訊いてみた。そうしたら、人型の魔物はある上級貴族の坊っちゃんが飼っているとか、夜な夜な若い女の子を拐っては魔物の生け贄にしているとかでな。穏やかな内容ではなかったぜ」
「げっ、また不気味な内容ではあるな」
「それは僕も思いました」
「ああ、実はな。他にはさっきに言った坊っちゃん、名前はノエル・グレント侯爵子息と言うらしい。王子やオズ君なら名前くらいは知っていると思ったんだが」
グレント侯爵家か、家庭教師のウェルズ先生やお袋もとい、王妃に教えてもらった事を思い出した。確か、フォルド国の南部を領地にしていて。国内でも有数の名家で知られていたはずだ。特産品は白ワインで葡萄の栽培を主産業にしているんだったか。
他には侯爵家には3人の息子と2人の娘がいる。ノエルがそこの次男坊だったのは知っているが。ふむ、また親父や騎士団長に要相談だな。
「……ノエルが侯爵家の次男坊なのは知っている」
「だろーな、けど。あんまり、良い噂は聞かなかったぜ」
「でしょうね、グレント侯爵閣下は真面目で堅実な方で知られてはいるんですけど」
3人で難しい顔をしながら考え込む。
「まあ、ここで考え込んでても仕方ないな。俺から陛下やウィリアムス師匠に相談してみるよ」
「そうしてくれ」
「同意です、陛下や父上なら良い案を出してくださるでしょうし」
3人で頷き合う。まだ、俺やオズワルドは10歳、クォンでも15歳だ。子供の立場では出来る事は少ない。どうしても、大人に頼らざるを得ないのは仕方ない事だ。それでも歯がゆくはあるが。モヤモヤした気持ちに蓋をする。小さくため息をついた。
王宮に帰ると早速、リアナに頼んだ。陛下やウィリアムス師匠に話したい事があると。そうしたら、割と早くに許可がおりた。
俺は急いで陛下の執務室に行く。侍従が中から出てくる。用件を告げるとドアを開け、入らせてくれた。
「……来たな、エリック」
「はい、お時間をいただき、ありがとうございます」
「堅苦しくせずとも良い、そちらにソファーがあるだろう。掛けなさい」
「分かりました」
「皆、余とエリック、ウィリアムスを残して。退がりなさい」
陛下が言うと、宰相や他の者達が執務室から出て行く。人払いが済むと師匠は呪文を詠唱しながら、防音魔術と侵入者防止の魔術が重ねがけする。普通、無詠唱で行うのは結構魔力を消費するのだが。俺やラウルは魔力量がかなり多いから、負担にはならない。だから、出来るのだが。
「早速ですが、父上に師匠。王宮に人型の魔物が出たとラウルから、聞きました」
「やはり、あやつから聞いたか。そうだ、昨夜にいきなり現れた。私やエリザベート、お前達は無事だが。近衛騎士の内、5人程が重傷を負わされている」
「ええ、息子のジュリアスも右腕を斬られ、療養中です。5人の騎士達は全員、腕や足の骨を折られて。しばらくは戦えないでしょう」
陛下や師匠は淡々と言う。思ったより、被害は深刻だ。俺は全身が凍りつく心地になった。




