104話
あれから、夏季休暇は終わった。
現在、季節は春だ。俺やリア、オズワルドは初等部の2年生に進級している。また、同じ時期に編入したクォンも高等部へ進学して1年生になっていた。俺達3人が10歳でクォンは16歳になり、忙しい日々を送っている。
ちなみに、護衛騎士でありオズワルドの兄貴であるジュリアスも30歳になった。そのため、彼は近衛騎士を引退して実家の伯爵家を近年中には継ぐと宣言している。親父もとい、陛下やお袋もとい、王妃殿下も許可していた。まー、俺にしたら。寂しくはあるが。仕方ないとも思う。
リアナも近い内に侍女を辞めると言っている。新しく、姪のケイトが俺付きの侍女になるのが決まった。まだ、十八歳と若いが。なかなかに明るくて機転が利くから、侍女には向いているなと思った。
そんな事を考えながら、俺は学園で出された課題に取り組んだ。
学園に行き、オズワルドやクォンと三人で行動するのが増えた。食事の時は必ず、二人の内のどちらかが毒味をしてくれる。
「……エリック様、これは大丈夫ですよ」
「分かった、早く食べよう」
俺はそう言って、カトラリーを手に取った。オズワルドやクォンも同じようにする。とりあえず、主菜の鶏肉のソテーから食べた。二人も各々で食べ始める。ナイフで切り分け、フォークで突き刺す。口に運ぶとジュワリと肉汁が溢れ出た。鶏肉が凄く柔らかくて味もシンプルながらにまろやかさがある。これは美味い!
ロールパンやサラダ、ミネストローネも絶品だ。はっきり言って王宮のよりも美味く感じる。クォンやオズワルドも黙々と食べていた。俺は気がついたら、完食していたのだった。
お昼休みが終わり、午後の授業になる。今は魔術の座学になっていた。
「……まず、魔術についての基本から説明します。この世界には魔素と呼ばれる物が存在しますね、これは人や動物、植物の体内にもある事が分かっています」
『はい』
魔術の授業の担当教師はまだ、若い女性だ。名前をエミル・クライン先生と言った。年齢は二十代半ば程だろうか。なかなかに分かりやすく、明瞭に説明してくれる。エミル先生はその後も基本について進めていく。
俺や他の子供達は黙って聞いていた。一通り、終わると質問の時間になる。
「先生、魔素は魔物にもあるんですか?」
「あります、魔素はどの生き物にも含まれていますね。もっと言えば、大地にも魔素の流れがあります」
「あ、わたくしは知ってます。大地にある魔素の流れを霊流と呼ぶんですよね」
「はい、よく知っていますね。確か、フィーラさんでしたか?」
「はい」
エミル先生は笑いながら言った。
「フィーラさん、あなたも質問はありますか?」
「あ、だったら。魔物のコアでしたか、あれは何なんでしょう?」
「コアですか、あれは魔物の源と言えます。抜き取ってしまえば、無力化できますよ」
エミル先生は驚きながらも答えた。周りの子供達もぽかんとしている。あ、リアったら。やっちまったな。
「で、では。フィーラさんは席についてください。これで授業は終わりです!」
『はーい!』
先生が告げ、皆で立ち上がり、礼をした。授業は終わる。同時に鐘が鳴ったのだった。
その後、六時限目が終わり、放課後になる。俺は席にいたリアに声をかけた。
「よっ、リア。ちょっといいか?」
「あ、これは。リック様」
「うん、あのさ。四時限目の授業なんだが」
「はい、どうかしましたか?」
「……魔物のコアについて話していたろ?ああいう話は場馴れしたヤツでもないと、分かりにくい。リア、お前さんが選ばれた立場だという事をバラすようなもんだ。今後は気をつけた方がいいぜ」
俺は淡々と言った。リアは目をぱちくりさせる。
「まあ、それは失念していました。すみません、リック様」
「うん、分かってくれたんなら良い。じゃ、俺は行くな」
「はい、また明日ですね」
俺はリアに軽く手を振り、カバン片手に教室を出た。
廊下にてクォンやオズワルドが待ち構えていた。
「話は済みましたか?」
「ああ、待たせて悪い」
「じゃあ、行きましょう」
よそ行きの顔でクォンが言った。オズワルドを加えた三人で廊下を歩く。窓からは夕方特有のオレンジ色の日差しが差し込む。
「エリック様、明日も学園ですね」
「ああ、オズは課題は終わったのか?」
「はい、ほぼ終わりましたよ」
オズワルドはにっこりと笑う。俺は驚きを隠せない。
「さすがにあのジュリアスの弟というか、かっちりしてるなあ」
「……エリック様はまだなんですか?」
「まだ、七割くらいしか終わってない」
それを言うと、クォンとオズワルドは呆れたような表情になった。
「エリック様、僕で良かったら教えます。クォンさんも一緒にどうですか?」
「……分かった、俺も手伝います」
二人は顔を見合わせると頷き合った。俺はちょっと背筋が冷える思いだった。たぶん、オズワルドもクォンもスパルタ教育でやってきたはずだ。ぶるりと震え上がったのだった。




